概要
首都 | ストックホルム |
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面積 | 45万295平方キロメートル |
人口 | 1055万1707人(2023年12月) |
建国 | 1523年6月6日(カルマル同盟より独立) |
公用語 | スウェーデン語(2009年6月1日制定) |
通貨 | クローナ |
国家元首(職) | 国王 |
政体 | 議院内閣制 立憲君主国 |
スウェーデン王国(スウェーデンおうこく、スウェーデン語:Konungariket Sverige、読み:コーヌンガリケット・スヴェーリエ)は、北ヨーロッパのスカンジナビア半島に位置する立憲君主国。北ヨーロッパ諸国で最大の人口・面積を有し、西にノルウェー・北東にフィンランド・南西にカテガット海峡を挟んでデンマーク・東から南にバルト海が面している。
2023年12月時点での人口は1055万1707人で、メーラルダーレン周辺とエーレスンド地域で人口が特に集中している。
歴史
成立
古代はスウェーデン・ヴァイキング(ヴァリャーグ)として、主に東方で活動してヨーロッパの文化・キリスト教も受容した。13世紀頃にフォルクンガ朝が現在のフィンランドを含む地域を統一し、1397年6月にデンマーク・ノルウェーとカルマル同盟を締結して同君連合となる。
1523年6月にカルマル同盟から離脱して王政(ヴァーサ朝)となり、16世紀の宗教改革ではプロテスタントを受容してバルト海地域へ進出する。1611年10月にグスタフ2世アドルフが即位してバルト帝国が建国され、三十年戦争に参加して新大陸にも植民地を築いて王国は最盛期を迎える。
バルト帝国
1654年6月に王朝がプファルツ朝に替わってもバルト帝国を維持したが、1721年8月にカール12世の治世でバルト海の覇権を争ってロシアとの大北方戦争で敗北し、沿岸の領土を失って一時的に没落する。1771年2月にホルシュタイン=ゴットルプ朝のグスタフ3世が即位するも、1809年9月に第2次ロシア・スウェーデン戦争で敗北してフィンランドを失った。
1809年3月に革命で立憲君主制が成立し、1814年1月にデンマーク=ノルウェー連合王国とキール条約を締結してノルウェーを併合した。その後は1818年2月にカール14世ヨハンが国王に即位してベルナドッテ朝が始まり、身分制的・封建制的秩序の解体が進み出した。1814年1月にノルウェーと同君連合になったものの、1905年6月にスウェーデン=ノルウェーは分離した。
世界大戦
19世紀半ばにスウェーデン王が推奨した汎スカンジナビア主義が頓挫して北ヨーロッパは小国分立に向かい、スウェーデンでは1866年6月に身分制議会が廃止され、その後発生した大不況でアメリカへ人口が流出した。国内では自由教会運動・禁酒運動・社会民主主義労働運動などが発生し、1914年7月からの第一次世界大戦では中立であった。
1932年に9月に社会民主労働党政権となった後に武装中立を取り、第二次世界大戦にも参加する事は無かったが、大戦では義勇軍を組織していた。特に第二次世界大戦では1940年にナチス・ドイツが周辺のフィンランド・ノルウェー・デンマークなどに次々と侵攻していく中で独立を保持し続けており、これは枢軸国と連合国の両方に様々な便宜を図った事が理由の1つで、中立違反として戦中・戦後も国内外から批判されている。
ただし、当時は連合国・枢軸国も国際法を遵守していなかった上に、両陣営がそれぞれ優勢な時期でも宣戦布告や領土内に対する侵攻を許さなかった事は事実である。デンマーク・ノルウェー・フィンランドの反ナチス・レジスタンスやユダヤ人を保護した事は人道に重きを置いた決定と言えるもので、日本政府の終戦を事前に交渉している。
戦後
1940年代後半から1950年代にかけてイタリア・ユーゴスラビア・ギリシャ・トルコなどから、労働力不足を補うべく労働者を受け入れた。
東西冷戦があった時期はノルディックバランスを構築し、アメリカ寄りと中立主義を行き来していた。
近況
2022年2月にロシア・ウクライナ戦争が開戦したのを受けて中立主義を放棄し、同年5月にフィンランドと共にNATOの加盟を希望した。2023年4月にトルコから承認されてフィンランドが先に加盟し、2024年3月に加盟に関する文書をアメリカに提出して32番目の加盟国となった。
政治
政体は議院内閣制の立憲君主国であり、国家元首である国王は国家の象徴で、儀礼的な職務のみを執行する。1975年1月に憲法改正が実施され、通常の立憲君主国での君主が有する首相の任命権を初めとする全ての官吏の任命権を形式的にも失っている。国王の権能は情報閣議による大臣からの情報収集(いわゆる内奏)・外国使節の接受など、専ら儀礼的な機能に限定されている。
リクスダーゲン
スウェーデンの立法機関に当たる議会はリクスダーゲン(Riksdagen)と呼ばれ、1971年1月に両院制から一院制に変更された。2006年9月に議会選挙が実施された時の定数は349議席で、議員(任期は4年)は比例代表制によって選出される。
首相
行政府の長である首相は議会の総選挙が実施された後、国会議長が副議長と各党の代表者を招集して推挙され、議会の過半数の反対では無い事で承認される。反対票を投じないまでも賛成できない議員は投票を棄権した後、国王が臨席する任命式で国会議長が首相を任命したと同時に首相は各大臣を任命して組閣するが、前にも述べたように象徴君主である国王は自ら首相を任命しない。
軍事
陸軍・海軍・空軍の3軍で構成されたスウェーデン軍を保有し、1815年11月にナポレオン戦争が終結してからは他の国との対立を避けて1度も戦火を交えず、2世紀以上に亘って軍事的な非同盟を維持してきた。バルト海を挟んでソ連の軍事的圧力に晒され続け、1952年6月にソ連に空軍機を撃墜され、1981年10月にソ連の潜水艦による領海侵犯と座礁事故に遭遇した。
1901年5月に国防改革で男性のみを対象とした徴兵制度(女性は対象外)を実施し、兵役の拒否を希望する男性に対して介護・医療など公共の利益に直接寄与する代替役務を課す良心的兵役拒否が認められていた。2010年7月に徴兵制が正式に廃止されたが、志願兵だけでは必要な軍隊の規模を確保できなくなった。2014年3月にロシアがクリミア半島を侵攻してからバルト海でもロシア軍の脅威が高まった事もあり、2018年1月から男女両方を対象とする徴兵制が復活した。
2016年5月にNATOとパートナーシップ協定・2023年12月にアメリカと防衛協力協定を締結している他、2017年7月に一旦非武装化したバルト海のゴットランド島に軍を再配備している。同年6月にフィンランドと共にイギリスの主導で、NATO・国際連合に協力する合同派遣軍に参加すると決定し、イギリスのマイケル・ファロン国防相はこれを歓迎した。
地理
スカンディナヴィア山脈が大部分を占め、フィンランドと同様に湖が多い。国内の最高峰はケブネカイセ山(標高約2103メートル)で、国内のほとんどの都市は平原・湖岸・海岸に位置している。冷涼な気候である上に土地も痩せているので農業生産力は低く、農産業は酪農が中心である。日照時間は冬至と夏至の間で10時間以上の差があり、北部の夏は白夜・冬は極夜になる事もある。
経済
元々軍事国であった故に他の北ヨーロッパ諸国と比べて工業が発達している一方で資源に乏しく、食料品・燃料は海外からの輸入に依存している。軍事産業から派生した自動車産業・航空機産業・IT産業は強い競争力を有し、エリクソンやボルボは我が国でも知られる有名企業で、重化学工業を担う大企業はスウェーデンの軍需産業とも密接な関係を有している。
社会
結婚
かつて婚姻は父の姓に統一する事を原則として例外的に別姓とする慣習法があったが、1982年3月に夫婦同姓・複合姓・夫婦別姓を選択できる事が明文化された婚姻法が施行されている。2009年4月からは同性同士の結婚(同性婚)が合法化された他、2003年6月から結婚していない同棲者のカップルを保護するサムボ法がある。
行事
夏至に近い6月19日から26日の間の金曜日に行われるのが夏至祭(Midsommar)である。洗礼者ヨハネの祭りに由来し、北欧の短い夏の訪れを祝うスウェーデンで最も重要な祝日の一つ。収穫と子孫繁栄を表す野外に立てた草花で飾った柱(マイストング)を囲んで踊り、マリネニシンや茹でた新じゃがいも、イチゴの菓子などの料理で祝う。
旧暦の冬至に当たる12月13日に一番大切な冬の行事と言われる聖ルチア祭が開催される。イタリアの女性聖者・聖ルチアに因んだ行事で、長く暗く寒い北ヨーロッパの冬に光を呼ぶ光の聖人や農耕の守護神として親しまれた。クリスマスの様式が取り込まれた祭りで、子供たちが聖ルシアに扮して行列となり、お菓子を運んだり「サンタ・ルチア」を唄ったりする。
言語
2009年6月からスウェーデン語が正式な公用語に制定され、その他にもフィンランド語・メアンキエリ・ロマ語・サーミ語・イディッシュ語を話す者も少数いる。スウェーデン語は隣国のノルウェー語・デンマーク語と類縁関係(ゲルマン諸語)にあり、スウェーデン語話者とノルウェー語話者は相互に会話で意思疎通が可能であると言われる。
テレビ番組にアメリカ製番組の字幕版が多いといった文化面の影響もあり、イギリスの方が近いにもかかわらず、イギリス英語では無くアメリカ英語で話す人たちもいる。
治安
性犯罪
人口当たりの性犯罪発生率が世界屈指の高さだが、スウェーデンでは同意の無い性行為は全て性犯罪と見做されるため治安が悪い訳では無い。
しかし、性犯罪の中でレイプの発生率だけでもスウェーデン人男性10人に1件という極度の高さであり、法律に適応できていない国民も多い事を示している。
人権
スウェーデンでは他者を侮辱する事を表現の自由として受け入れており、2023年8月に政府は「スウェーデンでは侮辱が許されており、今後もそうである。」と公言している。
しかし、スウェーデンは他者の人権の受け入れ・汚職の少なさ・情報の自由な流れ・良好なビジネス環境・高い程度の人的資本・資源の公平な配分・十分に機能する政府・近隣諸国との良好な関係で決まる同年6月に発表された積極的平和指数で世界第28位を獲得した。
移民問題
2023年7月に政府は新しい移民政策を実施し、スウェーデンの移民の数を減らすと宣言したが、研究者にとってはむしろ改善された条件もある。
人種差別
2019年5月にEUの人々の約21パーセントがアジア人と仕事する事に不快感を覚え、約32パーセントが「自分の子供がアジア人を愛するようになると自分は不快感を覚えた。」と報告した。対照的にスウェーデン人の約4パーセントだけがアジア人との仕事に不快感を示し、自分の子供がアジア人を愛するようになると自分は不快感を覚えたと訴えたのは約10パーセントだけだった。これはオランダと並んでEUに於いて、アジア人に対する人種差別で最も低い程度である。
国際関係
2022年2月にロシア・ウクライナ戦争が開戦した後、同年5月に隣接するフィンランドと共にNATOに加盟する事を申請した。しかしその加盟国であるトルコがNATOに加盟するプロセスを凍結する事を示唆しており、スウェーデンがNATOに加盟するのは難航していた。
2023年1月にストックホルム市庁舎の前でクルド労働者党支持者が、エルドアン大統領を模した人形を逆さ吊りにする抗議活動を展開してトルコ語付きの動画が広まった。同月にストックホルムのトルコ大使館前でコーランが燃やされる事件が発生し、同年6月にスウェーデン最大のモスクの前で再びコーランが焼却されるデモンストレーションが開催され、トルコを含むイスラム圏諸国は表現の自由を理由に抗議活動を容認するスウェーデン政府に反発した。
同年3月にスウェーデンはヨーロッパ連合議長国の一員として、トルコ・シリア地震で人道支援を実施した。同年7月にエルドアン大統領はオランダのマルク・ルッテ首相との電話会談の中で、スウェーデン国内でクルド労働者党支持者がテロ行為を称賛するデモを自由に組織している状況を批判し、NATOに加盟する取り組みが台無しになっている事を指摘した。
1950年5月に西側諸国で2番目に外交関係を樹立し、国際連合で中国の議席に対する中華人民共和国の主張を常に支持してきた。しかし中国政府のウイグル人に対する人権問題の告発が激しくなる中で、2022年4月にスウェーデン議会の代表団が台湾を訪問して外交関係を転換し始め、2023年2月から同年5月の調査で国民の85パーセントが中国に対して否定的な見方を示した。
日本との関係
1868年11月に大日本国瑞典国条約書を締結した時に外交関係を樹立し、日本はスウェーデンにとってアジアで2番目に大きい貿易相手国である。福祉・少子高齢化・平和維持・政府開発援助などの国際問題に関するスウェーデンの政策の一部は、日本によって関心を持たれてその手本とさえされており、NHKの大河ドラマであるいだてんは首都のストックホルムで撮影が敢行された。
渡航
査証免除取極により90日以内の短期滞在なら査証は不要。10年以内に発行された残存有効期間が出発予定日から3ヶ月以上のパスポートが必要。その他
- 滞在先の確認書類(ホテルの予約確認書やホームステイ先の招待状)
- 1日あたり450クローナの滞在費用と帰国費用
- 3万ユーロを保証する海外旅行保険への加入(推奨)
が必要。
日本の外務省は危険情報は発令していないがスリや置き引きに注意してほしいとのこと。
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楽曲、ミュージシャンなど
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