概要
スウェーデン生まれの発明家でダイナマイトの発明により巨額の富を築いたアルフレッド・ノーベルの遺言により、その遺産を基金として設立された賞。
1901年に第一回の授与が行われた。
物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞の5部門がある。「ノーベル経済学賞」と言われることのあるアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞については、ノーベルの死後70年も経ってからスウェーデン国立銀行が始めたもので、厳密には経済学賞はノーベル賞ではない。このため、ノーベル賞委員会は経済学賞の存在自体に否定的である。
授賞式は毎年12月10日(ノーベルの命日)にストックホルム(平和賞のみノルウェーの首都オスロ)で行われる。平和賞だけスウェーデン国外で授賞式が行われるのは、ノーベル賞創設当初スウェーデンとノルウェーが同君連合を組んでいた名残である。
物理学賞と化学賞はスウェーデン王立科学アカデミー、生理学・医学賞はカロリンスカ研究所、文学賞はスウェーデン・アカデミーが選考主体となる。平和賞については選定者のノルウェー国会の思惑によって授与が決定されるため、これまでの実績だけでなく、受賞後への期待を込めて贈られる場合が多く、政治的立場により賛否が分かれることが多い。
ノーベル賞が対象としない分野
数学・生物学・コンピュータ科学・気象学の分野のノーベル賞は存在しない。
このため数学分野ではアーベル賞およびフィールズ賞、生物学ではダーウィン・メダル(ダーウィン賞ではない)、コンピュータ科学ではチューリング賞、気象学ではボイス・バロット・メダルがノーベル賞に相当する栄誉として扱われる。ただし、DNAの二重螺旋構造を見出したジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックのように生理学・医学賞を受賞した生物学者は多くいるし、トランジスタを発明したウィリアム・ショックレーらのように物理学賞を受賞した半導体研究者もいる。
それでも、中立進化説の提唱者木村資生、気候変動モデルの第一人者真鍋淑郎、ディープラーニングの父ジェフリー・ヒントンのように、生物学や気象学やコンピュータに少し詳しい人なら誰もが知る偉大な業績を上げながら、「ノーベル生物学賞」、「ノーベル気象学賞」「ノーベル計算機賞」がないがために一般の知名度ではノーベル賞受賞者に及ばない研究者も少なくはなかった…。のだが、2021年に真鍋淑郎がノーベル物理学賞(クラウス・ハッセルマン、ジョルジョ・パリージと共同)、2024年にはジェフリー・ヒントンもノーベル物理学賞(ジョン・ホップフィールドと共同)を受賞し、世界を驚かせた。気象モデルはともかく、機械学習を物理学扱いは少々無理筋にも見えるのだが、受賞理由とされた連想ニューラルネットワークとディープラーニングは脳の神経細胞のネットワークとともに物理モデルに着想を得ているためだという。このように、物理学賞の対象分野は近年かなり拡大しており、今やコンピュータ科学と気象学の賞を兼ねているといっていいだろう。
数学賞がないのはノーベルが数学者ミッタク=レフラーに恋人を奪われたためだとか、不仲だったからその腹いせであるという説がささやかれているが、確たる文献による証拠がなく俗説の域を出ない。
主な受賞者
※ピクシブ百科事典に記事がある人物・団体のみ
- レントゲン(1901年、物理学賞)
- キュリー夫人(1903年、物理学賞・1911年、化学賞)
- セオドア・ルーズベルト(1906年、平和賞)
- ウッドロウ・ウィルソン(1919年、平和賞)
- アインシュタイン(1921年、物理学賞)
- ウィンストン・チャーチル(1953年、文学賞)
- ヘミングウェイ(1954年、文学賞)
- マザー・テレサ(1979年、平和賞)
- ゴルバチョフ(1990年、平和賞)
- 金大中(2000年、平和賞)
- 国際連合(2001年、平和賞)
- ジミー・カーター(2002年、平和賞)
- バラク・オバマ(2009年、平和賞)
- 劉暁波(2010年、平和賞)
- EU(2012年、平和賞)
- ボブ・ディラン(2016年、文学賞)
- 日本原水爆被害者団体協議会(2024年、平和賞)
日本人のノーベル賞受賞者
2024年時点で29人の日本人受賞者がいる(外国籍を有する者も含む)。
なお、2024年現在時点でノーベル経済学賞を受賞した日本人は存在していない。経済学賞は非西欧人の受賞者が一人しかおらず、過半数がアメリカ人で占められている。
- 湯川秀樹(1949年、物理学賞)
- 朝永振一郎(1965年、物理学賞)
- 川端康成(1968年、文学賞)
- 江崎玲於奈(1973年、物理学賞)
- 佐藤栄作(1974年、平和賞)
- 福井謙一(1981年、化学賞)
- 利根川進(1987年、生理学・医学賞)
- 大江健三郎(1994年、文学賞)
- 白川英樹(2000年、化学賞)
- 野依良治(2001年、化学賞)
- 小柴昌俊(2002年、物理学賞)
- 田中耕一(2002年、化学賞)
- 小林誠(2008年、物理学賞)
- 益川敏英(2008年、物理学賞)
- 南部陽一郎(2008年、物理学賞)※国籍はアメリカ合衆国
- 下村脩(2008年、化学賞)
- 鈴木章(2010年、化学賞)
- 根岸英一(2010年、化学賞)
- 山中伸弥(2012年、生理学・医学賞)
- 赤崎勇(2014年、物理学賞)
- 天野浩(2014年、物理学賞)
- 中村修二(2014年、物理学賞)※国籍はアメリカ合衆国
- 大村智(2015年、生理学・医学賞)
- 梶田隆章(2015年、物理学賞)
- 大隅良典(2016年、生理学・医学賞)
- カズオ・イシグロ(2017年、文学賞)※国籍はイギリス
- 本庶佑(2018年、生理学・医学賞)
- 吉野彰(2019年、化学賞)
- 真鍋淑郎(2021年、物理学賞)※国籍はアメリカ合衆国