地球温暖化
大気に熱を蓄える温室効果の原因となる気体(温室効果ガス)の排出などにより、地球規模で気温が上昇する事。その結果、海面上昇や異常気象の発生などの重大問題が引き起こされる。
温室効果ガスとしては石油や石炭の燃焼などによって発生する二酸化炭素のほか、メタン、フロン、亜酸化窒素などがある。水蒸気も温室効果への寄与は大きいが二酸化炭素やメタンに比べ非常に短いタイムスケールで循環しているため放出された水蒸気が二酸化炭素やメタンのように長期的に蓄積されることはなく長期変動である地球温暖化には直接寄与はしないことから温室効果ガスには含められないことが多い。ただし他の要因で生じた温暖化を水蒸気が増幅するような間接的な効果は起こりうる。
現在の大気中の二酸化炭素の比率は約400ppm強(0.04%)だが、産業革命が始まる頃は約300ppm(0.03%)であった(NASA)。増加分は人間活動の影響によるものである。これに伴って世界の平均気温は2020年までに1.1℃上昇してしまった。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書によると、温室効果ガスの排出抑制策をとらなければ21世紀中に地球の平均温度が最大で4.5℃上昇し、海水面は1m上がる。2015年のパリ協定(温室効果ガス削減に関する国際的取り決め)に基づく対策(脱炭素化)が積極的に実施されると、世界の平均気温は少なくとも1.5℃をやや上回り、海水面は約0.5m上がることになる。(国立環境研究所)
メカニズム
温室効果ガスは赤外線を吸収し大気中に熱を保持する性質がある。温室効果が無い場合の地球の表面の温度は氷点下19℃と見積もられているが、温室効果のために現在の世界の平均気温はおよそ14℃となっている。
地質時代の中では、地球上の温度の高い時期には大気中の二酸化炭素濃度も高く、逆に温度の低い時期には二酸化炭素濃度も低かったことが知られる。現在の二酸化炭素の大気中の比率は400ppm(0.04%)だが、氷期は200ppm(0.02%)未満にまで下がったこともあり、地上に氷河がなかった中生代ジュラ紀の二酸化炭素の濃度は2000ppm(0.2%)もあった。大気中の炭素は、植物の光合成によって植物体として固定され湿地帯で泥炭→化石燃料になったり、海洋生物の貝殻や骨格(炭酸カルシウム)として固定され深海に沈殿することによって大気から何百万年もかけて隔離される。産業革命以降の二酸化炭素濃度の上昇は、化石燃料という形で大気から地中に隔離されていた炭素を燃焼させてわずか300年で大気中に放出し続けた結果である。(NOAA)
地球温暖化による気温上昇は世界で一様ではなく、概ね低緯度より高緯度、海上より陸上の方が大きい。都市部が周辺部より気温が高くなる現象はヒートアイランド現象といい、地球温暖化とは別のメカニズムである。
高緯度の気温上昇により北アジアや北アメリカの永久凍土が溶け出すと、氷中に閉じ込められた有機物が分解されることによりメタンが放出され、さらに温暖化に拍車がかかる。
そして温暖化による水温上昇が深海におよび、メタンハイドレートが溶け出すと、そこから放出されたメタンによって温暖化が暴走、メタンは海洋中に溶け込んだ酸素と反応するため海洋に溶け込んだ酸素が極端に減少する海洋無酸素化が発生、海洋生物は無酸素化でほぼ全滅、陸上生態系も極度の高温と乾燥化によって破滅的な被害を受ける。これは古生代末のペルム紀の大量絶滅で現実に起こったことである。
また温暖化を引き金に海洋の温度変化や、極地からの淡水の流入による塩分濃度変化により海流のパターン(深度方向の流れを含む)が急変し、急激な気候変動が生じることも懸念されている。
これらのような温暖化に関連した種々の効果は「温暖化の程度に比例して効果が出る」というようなものではなく、「ある条件に達した時に突然スイッチが入る」というような挙動を示すものが多く、将棋倒し的に『スイッチ』が入ることも起こりうる。これは温暖化の予測を難しくする原因となっている。
一方で、人間活動以外で現在の温暖化を説明する理論(太陽放射、火山活動、宇宙線、地球の公転軌道の変化など)には欠陥があることが示されている(参考論文)。
地球温暖化による生態系・人間生活への影響
これらの影響は既に現実に発生しており、いくつかの項目は日本でも多くの人が実感しているはずだ。
- 氷河の消失
- 海面上昇と高潮被害の増加
- サンゴの白化現象
- 高山植物の消失
- 桜などの開花の早まり
- 猛暑日の増加
- ゲリラ豪雨などの増加
- 超大型台風の増加
- 干ばつの増加
- 農作物の収量減少・病虫害の増加
- マラリアなどの熱帯に多い感染症の北上
対策
国連の広報センターのサイトでは、「個人でできる10の行動」として
- 家庭で節電する
- 徒歩や自転車で移動する、または公共交通機関を利用する
- 長距離の移動手段を考える
- 廃棄食品を減らす
- リデュース・リユース・リペア・リサイクル
- 家庭のエネルギー源を替える
- 環境に配慮した製品を選ぶ
- 声を上げる
などを挙げている。「野菜をもっと多く食べる」も上がっているが、これは見出しが不適切であり、実際には「動物性食品の代わりに植物性食品の摂取を増やす」である。また「電気自動車の利用」も挙げているが、これはマイカーで移動せざるを得ない場合の対策であり、できれば公共交通機関を利用した方が良い。
しかしながら、パリ協定の目標達成の実現には個人の対策だけでは全く足りず、政府機関による抜本的な対策(再生可能エネルギー、電気自動車などの普及)が必要となる(Carbon Brief)。上記の10の行動のうち「声を上げる」ことによる社会の変化の後押し(例:温暖化対策を公約に掲げる政治家に投票する、「温暖化対策は負担ではなく前向きな変化である」と情報発信するなど)が個人ができる中では最も強力な対策となる(参考論文、Vox)。
日本において社会の変化を後押しした例としては東京都の新築住宅への太陽光発電設置の義務化が挙げられる。
アメリカのバイデン政権は2022年に「インフレ抑制法(IRA)」を導入し、再生可能エネルギー・電気自動車の普及、家屋の断熱性向上、製造業のグリーン化などを後押ししている(ホワイトハウス)。この法律が機能し続ければ、2035年までにアメリカの温室効果ガス排出量は2005年比で約40%減少すると予測されている(参考論文)。2024年に選出されたトランプ政権の意向により法律の存続が危ぶまれるが、再生可能エネルギーの普及や地域レベルでの温暖化対策への取り組みは継続するとみられる(ロイター通信、Gizmodo)。
二酸化炭素排出量の多い中国とインドも温暖化対策の重要性を認識しており、特に中国は経済力でアメリカを超えるチャンスとして力を入れている(Yale Climate Connections)。
温暖化対策のメリットとしては、エネルギー安全保障の確保、大気汚染の改善、農作物の収量増加、貧困・不平等の減少などが挙げられている。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」にはSDGsへの取り組みとの関連を示した図が掲載されている。
故・安倍晋三は、2019年6月11日開催の第40回地球温暖化対策推進本部にて「気候変動への対応は、経済にとってコストではなく、未来に向けた成長戦略です」と述べている(首相官邸)。
地球温暖化への懐疑論・否定論
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」では、人間活動により地球温暖化が起こっていることに疑いの余地はないと結論付けられている。また、世界中の学術団体も「人間活動により地球温暖化が進行している」ということに同意している(カリフォルニア州のサイトにはその一覧がある)。
しかしながら、ごく一部では温暖化対策を妨害するために地球温暖化に関する誤情報・偽情報を発信する動きも見られ、温暖化の科学に「論争」があるかのように見せかけている(Yahoo!ニュース エキスパート)。
毎年の猛暑、暖冬などで地球温暖化が明らかに体感できるようになった近年では、あからさまに地球温暖化を疑う言説は少なくなったものの、今度は「技術革新がそのうち解決してくれる(Techno-fix)」「二酸化炭素の排出量が多い国(中国やインド)が対策していない」など、より巧妙なものに変化している(The New Republic)。よくあるのが温暖化対策のコストやデメリットを極端に強調して、気候変動対策を全否定する詭弁である。ピクシブ百科事典でも、「太陽光発電」の項目が太陽光パネルによる事故や災害ばかりを極端に強調する暴論になっていたりする。「再生可能エネルギー」の記事に至っては、エネルギー保存則を曲解した言葉遊びにより温暖化対策を誹謗している。
なお、日本では「地球温暖化対策=暑さ・寒さなどを我慢する」とのネガティブな印象が根強く、上述の温暖化対策のメリットが伝わっていない点も懸念されている(参考論文)。
関連タグ
温暖化対策 省エネ 節電 燃費 エコロジー エコマーク SDGs
バビロンプロジェクト・・・物語世界の根幹を成す設定
シロクマ/ペンギン/アザラシ・・・地球温暖化で大きな影響を受ける動物。
バーナーマン・・・好きなものが地球温暖化という設定
甲虫王者ムシキング アダーの計画編・・・地球温暖化をテーマとしたストーリーがある。
外部リンク
- 気候変動に関する政府間パネル(気象庁による和訳)
- 気象庁 地球温暖化情報ポータルサイト
- 国立環境研究所地球環境研究センター ココが知りたい地球温暖化
- 国立環境研究所 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)
- NASA Science
- NOAA Climate
- Skeptical Science・・・モナシュ大学の気候学者ジョン・クックによる地球温暖化懐疑論に対する反論(科学的知見)
- Climate Feedback・・・科学者による地球温暖化に関する情報のファクトチェックサイト