概要
- 天体の成分となる気体の中でも、岩石状の地殻をもつ岩石型天体(地球型惑星および惑星の衛星)の地表面の上にある気体(空気)の層を、通常「大気」とよぶ。
- 木星などの巨大ガス惑星の主成分である水素ガスなどの気体も広い意味での「大気」であるが、地球などのように地殻を形成していないため、惑星本体との明確な境界がない(言ってみれば、核部分以外「ほとんど全部が大気」)。そのため巨大ガス惑星の場合、便宜上気圧が地球の地表面と同じ1気圧である面を「地表」とし、それより上の気体の層を「大気」としている。
- 太陽などの恒星も水素ガスを主成分とし、その核融合反応によって熱と光を発するが、これを「大気」とは呼ばない。
- 大気を持つ天体の地表面と宇宙空間の間、すなわち大気が存在する範囲を大気圏という。大気をもつ天体、例えば地球の地表面からロケット等で大気圏外に移動したことを指して、一般に「宇宙(空間)に出た」と表現する。
「空気」と「大気」の違い
- 一言で言えば、「部分(空気)と全体(大気)の関係」である。
- 例えば、ある星に送られた探査機がその星の空気(一部)を採取した場合、それを「○○星の大気(全体)のサンプル」と呼ぶことができる。それを運搬・保存の便のために冷却して液体にすることもあるだろうし、再び気体に戻すこと(気化)もできるが、いずれも「○○星の大気の一部であった物質」であることに変わりはない。
- 室内で長時間ストーブを炊いたり、不完全燃焼が起きた場合、窓の開放や換気扇により換気を行うが、それを「空気を入れかえる」とは言うが「大気を入れかえる」とは言わない。
- 仮に未来の科学技術によって他の惑星、例えば金星の二酸化炭素が大半を占める高温・高圧の大気(後述)を、地球人が呼吸・居住可能な適温・常圧の大気に転換できたならば(テラフォーミング)、それは「大気を入れかえた」と表現することができるかもしれない。
太陽系において大気を持つ主な天体
*巨大ガス惑星を除く(「概要」参照)。
- 金星 二酸化炭素96%、窒素3.5%。90気圧、450℃以上。
- 地球 窒素78%、酸素21%。 1気圧、平均10℃前後。
- 火星 二酸化炭素95%、窒素2.5%。0.007気圧、平均-40℃
- タイタン(土星の衛星) 窒素98%、メタン1.4%。1.5気圧、-180℃前後。
その他、水星、冥王星、イオ、エウロパ(以上木星の衛星)、エンケラドゥス(土星の衛星)、トリトン(天王星の衛星)等にもごく薄い大気の存在が確認されている。