概要
元素記号はN、原子番号は7。第2周期15族(旧2B族)の元素。常温の単体では、2原子が共有結合した気体窒素(N₂)の状態で存在する。
窒素の名は、酸素を抜いた空気中で動物が「窒息」することから。
地球と窒素
大気中の窒素は、酸素(乾燥大気の21%)とアルゴン(同1%)、水蒸気(状況により0~4%まで大きく変化する)を除いた空気の大半を占める。このほか、大気汚染物質として二酸化窒素(NO₂)などの窒素酸化物が少量存在する。
太陽系でこれほどの窒素が存在する惑星は地球だけである。太古の大気は二酸化炭素と水蒸気が主体であったと考えられているが、植物の光合成で二酸化炭素が消費され、酸素が供給されたことにより今のようになった。また、アルゴンも地球誕生後の長い時間の中でカリウムの同位体の崩壊によって供給されたと考えられているが、地球大気中の膨大な窒素がどこから供給されたのかは未だによくわかっていない。
生物と窒素
窒素はタンパク質の元になるアミノ酸や、DNAの元になる核酸を構成する重要な元素であるが、動植物の多くは空気中の窒素を直接利用することができない。大気中の窒素は落雷や窒素固定細菌によってアンモニア、硝酸塩、二酸化窒素などとして固定され、植物に利用される。動物は植物体を摂取することで窒素を利用している。
人間と窒素
空気中の窒素の生理的な役割はほとんどなく、酸素という毒を希釈する役割のみを担っている(人間が高分圧、すなわち高気圧かつ高濃度の酸素を吸入すると酸素中毒を発症し、最悪死亡する)。しかし、スキューバダイビングなどで窒素分圧が4~5気圧程度に達すると窒素酔い(思考力の低下)という症状を発するため、深度約30mを超える潜水には空気中の窒素を他の反応性の低い気体(通常はアルゴン)に置き換えた気体を用いる。
20世紀のドイツでハーバー・ボッシュ法が開発され、人類は空気中の窒素を化学肥料として直接利用することが可能になった。
(※なおその開発に関わった化学者の1人であるフリッツ・ハーバーは後の戦争にて毒ガスの開発に関与した結果、『化学兵器の父(Father of Chemical warfare)』と呼ばれる事になるのはまた別の話である)