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概要編集

中世ヨーロッパの9世紀から11世紀にかけ、海賊としてヨーロッパ各地を蹂躙した北欧人(ノルマン人)の武装集団。


英語では"Viking"、ドイツ語では"Wikinge"、古ノルド語では"víkingr"で、古ノルド語で「入り江(vík)に住む者(-ingr)」の意味となる。

北方ゲルマン人の多くがこれに当たり、世界史に言う”ゲルマン民族の大移動”にヴァイキングの侵略行為も含まれている。


現代に至るヴァイキングのイメージと言えば、野蛮な戦闘集団で、略奪と殺戮を繰り返した、というのが一般的だが、現在では、農業漁業、交易商業、手工業など多岐にわたる生業をこなしつつ海に乗り出し、交易や戦闘・入植活動を行った民族集団と理解されている。


基本的にヴァイキング達の本業は農業や漁業であり、出稼ぎのような形で交易(当時の武装商人と海賊の間に明確な区別はない)に従事したり、欧州諸国の王や貴族の求めに応じて傭兵となって参戦したりしていた。

無論、傭兵稼業に特化した戦闘集団も多数存在しており、治安維持のために王室に雇われたり、軍団として召し抱えられる者たちもいた。


ヴァイキングたちが操る帆船はヴァイキング船と呼ばれていた。

主に使われたのは細長い「ロングシップ」というもので、喫水が浅いことから海はもとより川を伝って内陸奥深くまで侵入することが可能であった。

さらに船首と船尾が同じ形だったため、素早く後進して氷山などの障害を回避できた。

ロングシップは速度に優れ、ヴァイキング達の優れた航海技術も相まって、ヴァイキング船はヨーロッパ各地を縦横無尽に蹂躙することになった。

ヴァイキングが用いた大型船としてはこのほか、ややずんぐりとした形の「クナール」というものがあり、たくさんの荷物を積めることから交易用に用いられたほか、大西洋の荒波を乗り切ることができることから、グリーンランドやアイスランドなどへの入植に用いられた。

なお『海賊』のイメージが強いヴァイキングではあるが、船は主に移動・交易用であり、水上戦を行うことは稀だった。


ヴァイキングの活動は初期には略奪が中心であった。

8世紀ごろはブリテン島やフリースラント(現在のオランダ・ベルギーの沿岸部)への略奪活動を行い、冬になると故郷に戻っていった。

やがて侵略先に越冬するようになり、後期になるに従い現地に定着する傾向が強くなる。

イングランドにはウェセックス王国より領地を安堵され「デーンロウ」と言われる広大な支配地域を築いた。

自分たちの国を興した例もある。

フランスのノルマンディー地方、イタリアのシチリア、ルーシ(ロシアウクライナの源流)などがその代表である。

最終的には1066年ノルマンディー公によるイングランド全土の征服(ノルマン・コンクエスト)、そして1077年から1139年にかけてのノルマン人によるナポリの征服によって、ノルマン人の征服活動は一区切りがつく。


彼らの一部は大西洋を越えてフェロー諸島、次いでアイスランドグリーンランド、そして北アメリカのニューファンドランド島(ヴィンランド)にも入植地を築いた。

だが、ヴィンランドの入植地は原住民たちとの争いにより放棄され、グリーンランドの入植地も近世の寒冷化による厳しい気候に耐えられず放棄された(現在のグリーンランドは後に入植したイヌイットの土地となっている)。


やがて北欧にもキリスト教文化が浸透していくにつれて彼らの独自文化も薄らいでいき、各地に入植したノルマン人たちも現地に同化してしまい、ヴァイキング達の文化・生活様式は廃れていった。

ただ、アイスランドやフェロー諸島(デンマーク領)には今に至るまでヴァイキング時代の北欧の文化の面影が色濃い。


文化編集

彼らに一つの民族であるという意識は希薄であった。

法律部族によってバラバラであり、復讐というものがある種の抑止力として機能していたことから、とかく血なまぐさい話が多く残っている。

ヴァイキング社会では”名誉”が何よりも重要視されており、名誉を失うことは死にも等しいことであった。


ヴァイキングは好戦的な男性原理の社会であり、優しい者や争いを好まぬ者は軽蔑されるのが常であった。

北欧神話に代表されるような北欧古来の多神教を信仰し、戦うことこそが神々に認められる道であると信じられており、死をも恐れぬヴァイキング達の精神的土壌であった。

しかし、ローマ帝国の滅亡によって文化・教養レベルが著しく衰退した当時のヨーロッパにおいては優れた冶金技術・航海術・手工業を有した技術集団であった。

先述のように交易商人として各地で商いをしていたのも、ヴァイキング達が当時ヨーロッパ最高峰の造船技術と航海術を有していたからである。


女性の多くは家事育児や船の帆を作る仕事に従事したとされている。

しかしアイルランドには『赤毛の娘』なる女ヴァイキングが戦士団を率いて襲撃してきたという記録が残っている。

またスウェーデンでは多数の武器と共に埋葬された女性の遺骨が発見されており、戦士として生きたヴァイキング女性も多少はいたことが分かっている(戦争ゲームの駒も副葬されていたため、指揮官クラスだったとも考えられている)。


ヴァイキングの社会は実力至上主義のシンプルな構造をしており、キリスト教圏ほど強固に身分が決まっていたわけでは無かった。

ために王侯貴族であっても安穏とはしていられず、実力不足であると思われれば即座に寝首を取られる厳しい世界であった。

そのため、女性であっても実力や家柄に申し分なしとされれば戦士や支配階級に推されることも珍しくなかった。

ある意味現代より性差の少ない社会であったとも言える。

だが、ヴァイキングの生活環境は過酷であり、死と隣り合わせの人生を男女ともに歩んでいた為に、男と女で生き方を分けるような余裕はそもそもなく、女も男のような強さを時に求められる”厳しい平等”であったと言える。


文字はルーン文字が使われていたが、ヴァイキング達の識字率は決して高くは無く、彼らの物語の多くは口伝として後世に伝えられた。

それらはサガと呼ばれており、ヴァイキング達の子孫に連綿と受け継がれていった。


ステレオタイプなヴァイキングのイメージとして、「毛皮のベストと鎖帷子を着込み角の生えた兜を被り、戦斧を携えている」というものがあるが、実際のヴァイキング戦士の装備にそこまで明確な個性はなく、いでだちは当時の他のヨーロッパ人の戦士と変わらない。

角の生えた兜に至ってはケルト人のイメージが転用されたものである。


関連タグ編集

北欧神話・・・独自の神話

ゲルマン人 ケルト人


ヴィンランド・サガ

ヴァルキリーアナトミア

アサシンクリードヴァルハラ


ガラルニャースニャイキング - ヴァイキングをモチーフとしたポケモン


シェイキング - ワリオランドシェイクのラスボス。同じくヴァイキングをモチーフとしたキャラクター


ミネソタ・ヴァイキングス - NFLの球団。スカンディナヴィア系の移民が多い地域を本拠地とすることがチーム名の由来になった。


ヴァイキング(グラブル) - グランブルーファンタジージョブの一つ。

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