解説
つづりは「Surströmming」。
スウェーデン語で「シュール(Sur)」は「酸味のある食べ物」を、「ストレミング(strömming)」はバルト海産のニシンを意味する。日本人的には「干してないくさやのようなもの」と言えばイメージしやすいかもしれない。
強烈な悪臭を持つ事から「世界一臭い食べ物」などと評される。(アラバスター指数において世界有数の臭い食べ物の中では群を抜いた数値が出ている)
但し、これはギネス等が公式に認定した記録ではない。
料理への利用法は、くさやかアンチョビのような扱いを受け、パンに載せたりして食べる。スウェーデンでも珍味の部類であり、日常的に食べられるわけではない。
そのまま食べる際には塩気がかなり強いので、堅めのパンにスライスした玉ねぎやトマト、マッシュポテト、ブラーナと呼ばれるヤギ乳のバターにクリームとシナモンを加えたものやクリームチーズなど、シュールストレミング一缶に対し大量の付け合せが用意される(「付け合せで誤魔化してるだけなのでは…」などと考えてはいけない)。
実際に食べた人によると、「強烈な臭いの原因は皮であるため皮を外すのがベスト」だという。
現地のスウェーデン人も皮はエグみが凄いのであまり食べないらしい。
日本の規格(日本農林規格=JAS)では缶詰は高温殺菌することを定めているため、殺菌しないで製造し缶の中で発酵がすすむシュールストレミングは缶詰の定義に当てはまらない。
その製造法のためか見た目は缶詰だが実質常温保存不可で冷蔵保存必須の生ものであり、更に発酵が進み過ぎたエラー品が時々混ざっているため、エラー品や保存に失敗したものがしばしば逸話にあるような強烈な悪臭+爆発の惨事を引き起こしている。
ちなみに保存期限内でも中身が溶けたシュールストレミングは保存に失敗したかエラー品の場合が多く、適切に保存している正規品の場合は強い臭いはあるものの中身は溶けておらず爆発もしないためおいしくいただけるという。
奇天烈な食べ物だが誕生したのにはもちろん由来があり、本家スウェーデンは北極圏であるため農耕に適さず、牧畜と漁業を生業としていた。そこで冬の保存食として大量の魚の漬物を作ることで貴重な塩分とたんぱく質を摂取していたのである。
しかし夏でも日照時間が短く製塩に不向きな土地であるスウェーデンでは塩は貴重品であり、塩の節約のためにも致し方なく濃縮した塩水(当時は海水)に漬けるという保存方法を採らざるを得なかった。また塩分濃度も薄いため、結果的に腐敗は防げても発酵までは止めることはできず、シュールストレミングが生まれることになったのだった。
ちなみにこれは余談だが、上述のくさやも塩の節約のために漬け汁を何度も使い回したことで生まれた。
逸話
- 強烈な悪臭のため主に屋外で開封・賞味される。風向きに注意。屋内で空けたら最後、一か月は住めなくなるレベルで臭いが沁み付く。
- 醗酵の過程で発生したガスが缶の中に充満しているので、ひとたび缶切りの刃を入れようものなら、猛烈な悪臭を放つ漬け汁が噴出する。そのため水中での開封が推奨される(漬け汁が飛び散らずに済むらしい)。
- スウェーデンから輸出しようとすると、相手国の税関が開封して調べるのを大抵嫌がり、手続きがなかなか進まない。
- 噴出した内容物で目や鼻をやられないように防護マスクとセットで売られていることもある。
- 一般に飛行機内へそのまま持込むことは禁止されている(気圧で缶が破裂して悪臭が充満する恐れがある為)。そのため一般的な輸送手段は陸路および海路に限られ、結構値段が張る。
- ただし海路でも梱包の手間や万が一の際の貨物汚損のリスクが嫌がられてほとんどの業者に断られる。
- 遠方の国へ輸送中、途中暑い地域を通過すると、発酵が止まっていないため目的地(日本含む)に着く頃には固形分が残っていないこともある。
- 計画的になら空輸することも一応可能。しかし国連の航空規制液体(通常は劇薬・爆発物等用の規制)が入っていると表示された厳重な容器内に特殊梱包してでないと積み込みが許可されず、結局その費用の為に安くは上がらない。
- 国内で販売されているものには「化学兵器と誤解される恐れがある」という注意書きが添えられている。
- ウクライナ侵攻の抗議行動としてか、フィンランド・ヘルシンキのロシア大使館に投げ込まれた。飯テロ(物理)ならぬバイオテロ(ガチ)である。
- ノルウェーにて屋根裏の隙間で25年前の古いシュールストレミング缶が発見されたが、屋根を持ち上げるまでに膨らんでいた。
- 「爆発するのではあるまいか」と恐れた家主が念のためノルウェー軍に通報。軍当局は爆発の危険性はないとし、代わりにスウェーデン在住のシュールストレミング専門家であるルーベン・マドセンを紹介。マドセンと複数のメディアが見守る中で開封式が行われたが、中身はどろどろに溶けて腐った卵のような異臭を放ち、食べられたものではなかったという。(参照:外部サイト)
…等々、逸話に事欠かない食べ物でもある。
日本での扱い
日本では1999年11月、バラエティー番組「探偵!ナイトスクープ」にて取り上げられたことで有名になった。
その際の依頼は「友人からスウェーデン土産にもらった缶詰が膨らんでいるのでなんとかしてほしい」というものであった。
スウェーデン大使館に連絡し「ニシンの塩漬け」、「絶対に室内で開けてはいけない」と教えられたが、立原啓裕探偵が忠告を無視し開封。その結果、室内に悪臭が充満し誰も立ち入れない事態に。加えてただ事ではない異臭に反応してか近所の飼い犬が吠え出す有様であった。
缶詰を回収するため頼みの綱としてスウェーデン人留学生を召喚するも、実際に食することの無い地方の出身だったため何もできず撤退。結局、宅配業者に丸投げすることになった。
その後は番組の常連である辻学園調理・製菓専門学校主任教授、林裕人に調理を依頼。大量の日本酒、山葵、醤油を使って臭いを消し、美味しいオープンサンドを完成させた。
以後もその臭さから、一時期バラエティー番組の罰ゲームや挑戦企画にこれが出されたこともあった。
世界の果てまでイッテQ!では、「珍獣ハンターイモト」にてスウェーデンでのロケ中イモトが口にしており、その悪臭を「ウ○コ」と評している(それもあってか食後口からは黄色いエフェクトが生じている)。ちなみにその後野生のヘラジカを捜索していたが、嗅覚の発達しているヘラジカはあまりの異臭に警戒したのか、全く姿を見せなかった(それを聞いたイモトはシュールストレミングを薦めたガイドに対し「じゃあ何で食わせた」とキレた)。
またザ!鉄腕!DASH!!では城島茂&山口達也と東山紀之の対決で1口でも食べたら勝ちのルールで1人1缶出されたが、開けるだけでも2分かかり、最終的に誰も口にできず全員アウトになった。なお東山はシュールストレミングの事を全く知らず、不用意に缶をつついたり不用心に缶切りを突き立て開けようとしたりして城島に「危険ですよ」と警告されていた。また、城島が缶を開けようとした時、吹き出た液が大先輩である東山の衣類に直撃し、ブチギレられる一幕もあった。
外部リンク:2012.7.22 ザ!鉄腕!DASH!! シュールストレミング
他にも、2018年6月3日のグリル厄介で外来生物アフリカマイマイを捕獲するためのエサとして、城島が用意していた(ただし塩気を嫌うアフリカマイマイにはほぼほぼ見向きされなかった)。
擬似的ではあるが、ニシンと海水があれば家庭でも手作りのシュールトスレミングを調理できる模様(生のニシンが無ければイワシで代用可能)。
外部リンク:シュールストレミングの作り方と美味しい食べ方
関連タグ
もやしもん:作中に登場。本場での食し方が紹介された他、食用以外のとんでもない使い方をしていた(迷惑行為どころではないので決してマネしないように!)。なおアニメの声優陣(沢木惣右衛門直保役の阪口大助、長谷川遥役の大原さやか、川浜拓馬役の杉山紀彰、及川葉月役の神田朱未)が実際に食しているが、その冒頭で杉山が材料のニシンをイワシと間違えている。
外部リンク:もやしもん「強烈!発酵食品に挑戦」DVD特典映像
ドラえもん2期:2013年10月25日放送に放送された『味見スプーン』に登場。味見スプーンは写真に写っている食べ物をすくって食べることができるスプーンで、作中では日本に来てたスウェーデン人が写真に写っていたシュールストレミングを味見スプーンを使っておいしそうに食べていたのを見ていたスネ夫が興味本位で味見スプーンを使って食べるもあまりの臭いと味により悶絶してしまった。
ドドリアンボム(トリコ)︰漫画『トリコ』に登場する食材であり、名前の通り巨大なドリアンの実。トリコの世界において「世界一臭い食材」として知られており、シュールストレミングと同じような逸話を持つが、規模は桁違いである。
リンクス・ランドゥー(崩壊スターレイル):戦闘スキルに『塩漬け野営缶詰』という指定した仲間に「サバイバル反応」を付与して最大HPをアップさせる(が特定の運命=属性を含むキャラである場合は敵から狙われる確率もアップする)というスキルがあるが、この「塩漬け野営缶詰」というのがシュールストレミングであると公式が明かしている。「サバイバル反応」を付与って、それを食べさせられたことで生死の境を彷徨っているとかいう意味ではないと信じたい。
シュールたん(朝まで起きてたのに…):シュールストレミングをモチーフとしたキャラクター。