児童書
角野栄子作。1982年から「母の友」に連載、2009年10月に最終巻「魔女の宅急便その6 それぞれの旅立ち」が刊行され、24年にわたって描かれた。
2015年から「特別編」が執筆され、2022年現在、3巻まで刊行されている。
原作本編の補完で、前日譚もしくは後日談が多い。以下は各巻の大まかな内容。
2巻:キキの誕生から魔女として旅立つまでの経緯。
3巻:本編6巻でケケが描いた物語。1冊丸ごと作中作が占める異色作となっている。
1989年に宮崎駿監督でアニメ映画化された。後述する実写版もあるが、こっちの認知度が高いのでpixivではアニメ準拠の投稿が大半を占める。
アニメ映画
『となりのトトロ』の制作メンバーがそのまま横滑りする形で制作された。当初、若手の佐藤順一や片渕須直が監督を務める予定で立ち上げられたものの『トトロ』の制作作業を終えた宮崎駿が制作現場に横槍を入れるようになったのと「宮崎監督でないと資金は出せない」というスポンサーの意を受けて片渕は演出補に退いた。本作が、他の宮崎アニメと比べてキャラクター造形などの面で異質な面が目立つ(特に女性キャラの描き方)のは、もともと企画を立ち上げ脚本を書いたのが片渕須直だったからである。
原作1巻がベースになっているが片渕や宮崎の意向でキャラクター設定やストーリー展開などに大きな改変が加えられており作者は当初、内容が大きく変わることに否定的であり、宮崎との話し合いの場が持たれた。
宮崎駿が監督を務めたスタジオジブリの長編映画では初となる他者原作の作品で、これまでジブリを支えてきた徳間書店に加え日本テレビ、さらに「宅急便」を商標登録しているヤマト運輸がスポンサーに付いた。
なおヤマトが「宅急便」の名称やロゴを商業作品に使わせるのは恐ろしく希有なケースであり、実際世界に名だたる模型メーカーのタミヤ、それも元々宅急便のために開発されたトヨタ・クイックデリバリーのプラモにすら宅急便カラーを使わせてもらえなかったほどである。
また「ヤマト運輸が商標権を理由に映画化にクレームをつけてきたが、黒猫が登場することを知って渋々スポンサーを承諾した」と世間的に言われることも多いが、これは誤りである。(原作第1巻の刊行時点で商標権にまつわるトラブルが発生(原作者が宅急便を普通名詞だと思っていたため)していたが、「『魔女の』という冠がついているため同一商標には当たらない」という判断が下されたことで落着している。実写映画された時も『特別協力』の形で参加した。)
ちなみに、黒猫であるジジが作中に登場するのは、単純に魔女の使い魔をイメージして黒猫が採用されたからであり、スポンサーへの配慮ではない。
テレビCMなど宣伝にも力が入れられた結果、配給収入21.5億円を記録し、従来アニメ映画を見なかった若い女性、そして家族連れを中心に幅広い層に人気を集めた。意外なことだが、本作は興行的に初めて成功したジブリ映画である(『風の谷のナウシカ』はスマッシュヒットだったがあくまでトップクラフト名義の制作=『風の谷のナウシカ』はジブリ作品ではない、『天空の城ラピュタ』は実際に観た人たちの評価は高かったが興行成績は惨敗、『となりのトトロ』と『火垂るの墓』の二本立ても興行収入は赤字であり、トトログッズやビデオの販売で利益を出している。)。
英語版製作の際に題名は「Kiki's Delivery Service」とされ、魔女を意味する「Witch's」は入れられなかった。これは日本と違い欧米では未だ魔女に対して悪いイメージが根強いためで、代わりに題名に主人公の「Kiki's」が入れられた。
主な登場人物
13歳になり魔女の掟である独り立ちの日を迎えた活発な女の子。魔女としての能力はホウキで飛ぶことだけ。おソノの店で「魔女の宅急便」を開業し、いろいろな経験をしながら成長していく。原作ではロングヘアーだが、アニメ版ではショートヘアー。性格も原作以上に快活で元気。 ジブリ版の魔法が弱くなる理由はキキで述べる
キキの相棒の黒猫で、キキとだけ言葉で意思疎通できる。
キキの居候先のパン屋のおかみさん。ふとした偶然からキキと出会い、彼女を気に入ってパン屋の屋根裏部屋に住まわせ面倒を見てくれる。本編中では妊娠中だが、エンディングでは子が生まれている。
おソノの夫(CV:山寺宏一)
キキの居候先のパン屋。妻とパン屋を切り盛りする。無口でいつもムスッとした顔をしているが好人物で、キキを快く受け入れ、彼女を屋根裏部屋に住まわせる。原作での名は「フクオ」と後に明かされたが、アニメ化の際にはまだ決まっていなかった。
飛行クラブに所属する丸メガネの少年。
トンボは愛称で本名は「コポリ」(氏か名かは不明)
キキが空を飛んでいる場面を見かけ、興味深げに声をかける。最初は煙たがられていたが、徐々に親しくなる。 原作では後に教師になりキキと結婚し、双子をもうける。ジブリ版ではあくまで友人の一人と宮崎氏は言っており、原作者との軋轢の一つになった
ウルスラ(CV:高山みなみ)
森の中の小屋に暮らす画家の少女。ウルスラという名前は公式設定であるが、劇中では1度も名前で呼ばれていない。
また、劇中での製作途中の彼女の絵は、八戸市立湊中学校養護学級の生徒たち3~4名が共同制作した版画作品『シリーズ「虹の上をとぶ船」』の中の「星空をペガサスと牛が飛んでいく」という版画が元になっている(参考・おたくま経済新聞の記事)。
アニメオリジナルキャラ。良くも悪くも本作を語るうえでは欠かせない存在。
キキがあこがれる女性(マキ)(CV:井上喜久子)
おソノさん夫婦が経営するパン屋によくパンを買いに来る美女。職業はファッションデザイナーらしい。
キキにも優しい笑顔を見せるが、ジジは彼女が飼っている白猫のリリーをいけすかない猫だと思っている。
甥のケットおよびその母親からは「マキおばちゃん」と呼ばれている。
ジブリ版のその後=原作ではない
ジブリキャラのキキは”原作のその後”とは異なる
よく、アニメ版の続きとして原作が引き合いに出されている。しかし、ジブリ公式は原作とは異なる、「ジブリキャラのキキ」のその後を見せているため、アニメの続きが原作であるというのは間違いである。
原作が完結した後にも、ジブリは描きおろしイラストなど(現在では公式LINEスタンプとしてが多い)を出しており、スマホを持っていたり、和服を着たものなど、原作ではもちろん、ジブリアニメ内ですらありえなかった、キキ達の現在の姿や、ジブリによる扱いを見ることができる。ジブリは原作のその後とは別に、あくまで魔女の宅急便(宮崎作品)として扱っていることがわかる。
原作者いわく
また、原作者の角野栄子氏は、実写化の際、アニメ版やミュージカル化について触れながら、「いろいろなキキがいてもよい」と言っている。このことから原作者も、アニメ版は「原作がそのまま映像化したもの」ではなく、あくまで別作品・別のキャラクターとしている。よって、しばしば言われる、「ジブリの魔女宅は後にこうなった→原作」というのは不適切である。ジブリはジブリで、キャラたちの今を見せているからである。
実写映画
2014年3月1日に実写映画が公開された。 こちらは原作のイメージに近い設定となっており、アニメ版よりもキャラクターの心理状況に踏み込んだ作品に仕上がっている。こちらもアニメほどではないものの高い評価を得ている。
キャスト
- キキ:小芝風花(3歳時:横溝菜帆、6歳時:原涼子)
- トンボ:広田亮平
- ジジ(声):寿美菜子
- おソノ:尾野真千子
- フクオ(おソノの夫):山本浩司
- すみれ:吉田羊
- ナヅル:新井浩文
- 園長:志賀廣太郎
- イシ先生:浅野忠信
- オキノ:筒井道隆
- コキリ:宮沢りえ
ショートムービー
日清食品のインスタント食品カップヌードルの、2017年のテーマである「青春(アオハル)」にちなんで、青春を応援するCMプロジェクトの第1弾として、魔女の宅急便のキキやとんぼが現代日本の高校で学生生活を送っていたらというパラレル作品のショートムービーが製作された。
キャラクターデザインは窪之内英策氏が担当し、アニメーション制作はタツノコプロが行っている。
ちなみにキキたちは、以降のシリーズにもチョイ役で出演している。
詳しくは→アオハルかよへ。
キャスト
マクドナルドCM
2024年6月26日から行われた原作コラボかつ期間限定商品「魔女のお届けもの ヨーロッパバーガーズ」の販促である、『宝石の国』EDなどを手掛けた映像作家の久野遥子氏の手によって新しく起こされたキャラクターデザインとなっており、原作のイメージ通りに黒いワンピースを着たキキを踏襲しているほか、ジジのしっぽに赤いリボンが付いているが「角野栄子先生のアイディア」と久野が語っている。
キャスト
公式サイト
関連イラスト
外部リンク
以下2つのリンクは、wikipedia
関連タグ
ちいさなおばけアッチ・コッチ・ソッチ・・・同じ作者の作品。
現代魔女の就職事情:本作を基にしたと思しき漫画作品で、舞台は21世紀の日本。15歳になった少女の玉城禰子(たましろ ねこ)は普通の女子高生になるのを夢見て、ある街で1年間の独り立ち修行に奮闘する。