あたりまえさね!
海賊が財宝を狙ってどこが悪い!
解説
声:初井言榮
空中海賊「ドーラ一家」の頭領にして飛行船・タイガーモス号の船長。
当初は貴重な秘宝である飛行石のみを追い求めていたが、パズーの証言や政府の動きからラピュタの実在を確信し、軍に先んじてラピュタの財宝を手に入れることを目論むように。小説版によれば「空飛ぶ宝島」ラピュタの存在自体は御伽噺として幼少時から知っており、彼女の夢であったようだ。
要となる飛行石を稼働させる鍵となるシータと、彼女を助けたパズーを追い回すが、後に2人をタイガーモス号に仲間として迎え入れ、よき理解者となった。
人物
劇中の発言より、年齢は50歳前後である事が分かる。
老婆そのものな容姿ながら、頭脳明晰で決断力に富み、性格や行動も年齢に似合わずかなりパワフル且つアグレッシブで破天荒という、「海賊のお頭」として十二分すぎる資質を備えた文武両道の傑物。
持ち運びサイズの大砲や手榴弾を使いこなし、オートモービルのハンドルを握らせれば、無茶苦茶ながらも高度なドライビングテクニックを見せ、更には配下として働く三人の息子や子分たちを追い抜くほどの健脚の持ち主でもある。
健啖家でもあり、パズーの家を占拠した際には大量の御馳走を持ち込み、巨大なエビや分厚いハムを豪快にたいらげている。
さらに暗号解読に関しても天才的であり、劇中では軍が飛行船を呼び寄せる暗号を「ANGO」というタイトルの本で解読していた。ほかにも「東洋の計算機」と称してそろばんを使いこなし、航法計算をする場面がある。
日頃は海賊の親玉として強権的に振舞っているが、根は息子想い、部下想いであり、パズーを案じてわざと突き放し、ラピュタを諦めさせて要塞から帰らせたシータの健気な行動を見て「ワタシの若い頃にそっくりだよ」と発言して息子達を驚かせている(ちなみに、船内のドーラの自室にその「若い頃」と思われるかなりの美人の肖像画が飾られている)。
またパズーの「見た目と違っていい人」との言葉にも驚きつつも満更でもなさそうな顔をしていた。
小説版によれば海賊稼業は父の代から引き継いだものとのこと。亡き夫は天才的な発明家だったらしく、現在海賊内で使われている道具の殆どは夫の遺品。その夫は元々人質同然として団に連れてこられたらしいが、日々を過ごす内に正反対なお互いは惹かれ合ったのだという。
作中の動向
政府軍によって攫われ、搬送中のシータの持つ飛行石を狙って飛行船に襲撃を仕掛けるも、あと一歩のところでシータが飛行船から落下したため失敗に終わる。
それでも飛行石を諦めきれず、スラッグ渓谷まで追跡する。追跡の途中で深い谷底へと落下することになったシータたちだが、飛行石の力によって無事に落下。その場面を目撃したことによってドーラは飛行石への執着をさらに深める。
その後、パズーの家を(無断で)拝借し一時的な拠点としていたところにパズーが帰宅、彼を捕縛する。パズーの落胆する姿からシータがパズーを突き放した行動の理由を的確に推理、パズーの再起を促す。シータ救助の目的のためのパズーの海賊入り志願を受諾(パズーを引き込めばシータが自分達の言うことに従うという打算もあった)、ティディス要塞を襲撃しシータを奪還。シータが飛行石を持っていないことに落胆するも、ラピュタ捜索のためそのまま二人を引き連れる。
ラピュタ捜索の最中、パズーの父が竜の巣の内部にてラピュタを目撃した証言から竜の巣へ突入する決意をするもタイガーモス号はゴリアテに撃墜される。
息子達共々ラピュタ内で政府軍に捕えられていたが、シータ救出のために単身乗り込んでいたパズーによって密かに救出される。この際、丸腰のパズーに大砲と弾丸2発を渡して送り出す。ムスカによって起動した無数のロボット兵がラピュタを徘徊するようになった際、捕らわれの振りをやめて逃亡。早急な脱出を促す息子たちを諫めてタイガーモス号に隠れつつもパズーとシータの二名を待ち続ける(フラップターの飛行能力では飛行タイプのロボット兵から逃げ切れる可能性は零に等しかったので、この判断は間違ってなかった)。
ラピュタの崩壊と限界を察知したドーラは苦渋の決断の末に二人を置いて辛くも脱出、ラピュタが崩壊してゆく様を見て「あの子らはバカどもからラピュタを守ったんだよ」と呟く。
しかしパズーとシータが生還した際は二人の無事を心底喜び、髪を短くされてしまったシータに同情していた。とはいえ息子達共々目当てだった金銀宝石類のお宝は少ないながらしっかり盗んでおり(ドーラの場合は大粒の宝石を一握り分)、「情けないじゃないか。さんざん苦労してこれっぱかしさ」と皮肉をこぼしながらも、生きて帰れた喜びを皆で大爆笑しながら分かち合い、パズーやシータと別れた。これに前後して再起を匂わす言葉を口にしており、小説版では早くも数ヶ月後にはタイガーモス号に代わる新たな飛行船で海賊稼業を再開していることを窺がわせている。
余談
年配ながら豪胆でパワフルな女性というキャラクター像には、『風の谷のナウシカ』制作中に脊椎カリエスという病気で71歳で亡くなった宮崎監督の母親の姿が投影されているという。
監督の次々回作『魔女の宅急便』には、同名の老女が登場しているが、体が弱く温厚と、本作のドーラとは人物像が大幅に異なる。本作のドーラよりかなり年上と思われるため、「年を取って丸くなった本人ではないか」と冗談交じりに推測するファンもいる。
pixivでは
劇中のある場面に映った自画像、および設定資料に掲載された若き頃の姿、通称「若ドーラ」のイラストも散見される。