解説
ドーラ一家の本拠地である小型の飛行船(ゴリアテに比しての話だが)。フラップターを搭載する母船でもある。タイガーモス(Tiger Moth)は英語でヒトリガという蛾の一種を指す。全体的には鳥を思わせるような外観である。
開発者のハラ・モトロから「儂の可愛いボロ船」と呼ばれている通り、見た目はボロいがゴリアテの苛烈な弾幕を回避するなど、その性能は中々のものである(小説版では特に速力について『軍最新鋭艦には劣るが、未だそれに次ぐ』と評されている)。主翼部はティルトウイング方式であり、離着陸の際にローター部(プロペラ周り)を含む主翼が可動する。
なお、操縦席と飛行船本体を結ぶ通路や、本体側の居住区の廊下には、申し訳程度に転落防止用のフェンスが設置されているが、その簡易的な構造上からして簡単に落ちそうで怖いものがある(まかり間違っても、背の低い、幼い子供などを乗せる事はできない)。なお、各ブロック間の通信は機内に張り巡らされた伝声管を使用する。
武装は一切施されていないようで、武装船等に遭遇したらひたすら逃げの一手に徹する他ないと思われる。
劇中
ムスカらに連れ去られたシータが乗船していた飛行船を襲う際に登場。その後はしばし姿を見せなかったものの、パズーとシータがドーラ一家に加わって乗船するシーンから再登場する(この数時間前に要塞に向けて出発するドーラが部下達に「お前達は本船でお待ち」と指示しているため、スラッグ渓谷近くで待機していた模様)。シータの持っていた飛行石が示した方角にラピュタがあると知り、その方角に進路を取る。軍の飛行戦艦ゴリアテもラピュタを目指しており、しかも相手の方が巡航速度が速いため、まともにやれば追いつけないのだが、ドーラはゴリアテからみて、自分達が風上にいることに注目。風を捕まえてこれに乗ることで加速し、ゴリアテに追いすがる手段をとる(この時、ドーラは東洋の計算機こと算盤を使って計算上、ゴリアテに追いつけることを確認している。また貿易風を捕まえればいい、と言っているが、現実世界の貿易風は「赤道付近を恒常的に東から西に向けて吹く風」であるが、この時点のラピュタは前半の舞台となった地域から見て真東にある=東に向かう、という点から矛盾するため、作品世界の貿易風とは現実世界のそれとは逆に「西から東に向かって吹く風≒偏西風」のことを指していると思われる)。
夜間飛行中にパズーが雲の中から突然現れたゴリアテを発見するも、その奇襲攻撃を受け、雲海に緊急回避する。その後、シータとパズーの乗った見張り用の凧を雲海外へと射出して周囲の警戒を行った。気流が急変し操縦が難しくなり、それが『竜の巣』の影響である事を悟る。
実はその『龍の巣』こそがラピュタの居る場所であるとシータとパズーは確信。しかし、乱気流による悪影響でタイガーモス号の船体は耐えきれるかわからず、空中分解する恐れがあるとドーラは危惧した(この時点でエンジンも限界ギリギリだった)。
しかも雲の切れ間から、再びゴリアテが出現し完全に後方を取られてしまった。最悪のタイミングで出くわし、苛烈な砲撃を受ける事となり、尾翼や本体に被弾してしまう。危機的状況に陥る中、パズーとシータの説得を受けドーラも龍の巣へ突入を決意する。
だが、その直後にゴリアテの砲撃が直撃。操縦室に直撃を受けてコントロールを失ってしまった挙句、シータとパズーを乗せた凧とを繋いでいたワイヤーも千切れ、離れ離れになってしまう。制御不能になっている所を、更に追撃されて大破(この時、エンジンルームにも直撃を喰らっており、むしろこちらが致命傷だった様子)。機関部より火を吹きつつ『龍の巣』に呑み込まれてしまった。船体は大ダメージを受けながらも、操縦室にいたドーラはじめとする船員は全員無事であり、操縦室への直撃はどちらかといえば軽微であったようだ(恐らく操縦室に当った砲撃は主砲によるものではなく、口径や威力が小さい砲によるものだったのだろう)。
撃墜されてしまったかと思いきや、どうやら運よく風に流される形でラピュタの居る部分まで辿りつけたようであったが、激しい損傷及び、着陸の影響で全損し完全に飛行不能となってしまった(フラップターのある格納庫は奇跡的に無事だった模様)。
その後、崩壊するラピュタから脱出する際に、本艇は崩落する地盤と共に海中へと没しその役目を終える。当然モトロは嘆き悲しむが、ドーラは「もっといい船作りゃいい」と、くすねたお宝を手に再起を目指すのであった(小説版では後日談として新しい飛行船を使っていると思しき描写がある)。
船体の構成
操縦室
先頭にある部位。タイガーモス号の操縦は勿論、ドーラが航海図の作成をしたり、軍の無線を傍受するための機器も備えている。機首先端のノーズコーンなどから鳥の頭部を彷彿とさせる形状。
居住区
船体中央部分には、乗員が日常生活を営む部屋がある。劇中で確認できるのはドーラの部屋(船長室)、食堂(基本的に男共は食堂でハンモックも使って雑魚寝の様である)、キッチン(シータが来るまで腐海の如き惨状であった)等。シータが来たことで掃除洗濯炊事等をしなくて済むとドーラの息子達が歓喜するため、彼等が家事が苦手かつ嫌いだったことがキッチンの惨状などを招いていたのが判る。
エンジンルーム(機関部)
ハラ・モトロが一手に管理している。人手不足だったようでパズーは此処に配属された。内部は高温なので、洗濯物が干されている。『竜の巣』付近でゴリアテからの攻撃を受けた際、砲撃を喰らって大破した(その前にエンジンが限界を迎えたらしく、モトロは脱出して操縦席に向かい、無事だった模様)。小説版では焼玉エンジンを使用しているとの描写がある。
格納庫
船体中央の下部にある。フラップターが離着艦する部分となるが、床の部分は一部を除けば予算の都合か軽量化の為か定かでないが、布切れが張っているだけであり、うっかり踏み込もうものならボッシュートになる危険性アリ。
見張り台
船体の大部分を占めるガス嚢の上部に設置されており、ハシゴを登って乗り込む(因みに命綱なし)。非常時には上部に翼となる布幕を展開することでワイヤーで繋がれたグライダー(凧)として射出でき、より広範囲の索敵を行う(射出後は伝声管が使えないため通信は電話を使用)。パズーとシータはラストシーンでこのグライダーにのり、ドーラ一家と別れ帰路についた。