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焼玉エンジン

やきだまえんじん

かつて広く用いられた多燃料内燃機関の一種。セミ・ディーゼルや焼玉機関とも言われる。
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概要編集

焼玉エンジンとは19世紀末から20世紀半ばまで広く用いられたエンジンである。焼玉と呼ばれる球殻状の点火栓と燃料気化器を兼ねた燃焼室をシリンダーヘッド上に持ち、焼玉を何らかの方法で加熱することで混合気の熱面着火を起こして始動する。

 

火花点火式のガソリンエンジンと比べれば点火栓やマグネトーなどの電装系や気化器のような燃料供給系が要らず、ディーゼルエンジンのように高価で複雑な噴射機構も用いない簡便な構造なので製造やメンテナンスが容易であった事や、適切なタイミングで焼玉に着火できさえすれば重油灯油などの石油系燃料だけではなく、植物油や動物油でも作動できる多燃料機関だったことで世界中で使われた。


しかし、1950年代に入り石油精製工業の発展による供給量の拡大によってガソリンや軽油の入手が容易になったことや、ディーゼルエンジンと比べて圧縮比を上げられないため重く低出力で燃費も悪く始動や操作にも手間がかかり、特に始動時に起きやすい急回転による機関損傷が多発したため、焼玉エンジンは衰退して駆逐された。


歴史編集

ホーンスビー・アクロイド式オイルエンジン編集

焼玉エンジンの概念はイギリス人発明家のハーバート・アクロイド=スチュアート(1864–1927)が考案したのが始まりであった。彼は誤って灯油を加熱した鍋にこぼした体験をヒントに焼玉エンジンの試作機を製作し、1890年にその特許を申請した。翌年、リンカンシャー州グランサムに存在したリチャード・ホーンズビー&サンズ社がアクロイドの特許を購入して商品化した。


この4ストロークエンジンは特許出願者と製造者の名前からホーンスビー・アクロイド式オイルエンジンと呼ばれ、それまでの蒸気機関のようなボイラーが必要ないことから広く用いられ、1892年にはシリンダーヘッドを強化して圧縮比を上げることで圧縮点火による動作にも成功しており、これはディーゼルエンジンに先駆けていた。


注水式焼玉エンジン(ミーツ式)編集


ホーンスビー・アクロイド式オイルエンジンは1891年から1905年までの期間に合計32,417基のエンジンが生産され大成功を収めたが、4ストロークのため構造がやや複雑で非力かつ巨大という欠点があった。アメリカのドイツ系移民、カール・ヴィルヘルム・ワイス(1858-1940)とアウグスト・ミーツ(1834-1917)はイギリス人技師のジョセフ・デイ(1855-1946)が考案した吸気バルブの無いクランク室圧縮式掃気式2ストロークエンジンのアイデアを取り入れた焼玉エンジンを開発した。

 

ミーツとワイスの会社であるミーツ・アンド・ワイス・ワークス社が製造したこのエンジンはミーツ式と呼ばれ、注水式焼玉エンジンの代表作となり汎用エンジンとして1930年代まで生産された。その仕組みは、掃気ポート(シリンダー内に新鮮な空気が入る入口)から燃焼室に向けて水を噴射し、蒸発した水蒸気がシリンダー内に入ることで燃焼時の燃焼温度を下げて高負荷時の焼玉の加熱損傷と過早爆発を防ぎつつ、膨張した水蒸気で出力を上げる役目も果たしたことで、部品を減らしつつ小型化と高出力化に成功した。反面このタイプのエンジンは、負荷や回転数の変化に応じて注水の時期と加減が必要で、特に負荷の変動が激しい船舶用機関では操作のために人が張り付いていなければならず、燃料と同量から3倍の水を必要だった事や、当時の硫黄分が多い石油系燃料によるエンジン磨耗と腐蝕による燃料消費の増大や故障という欠点があった。


無注水式焼玉エンジン編集


注水式焼玉エンジンは多くの国で生産されて改良されれた。特に改良が進んだのは限られた真水を使いたくない海洋船舶機関で、焼玉のシリンダー側下半分の周囲にウォータージャケット(水の通り道)を備え冷却を行うことで焼玉の必要以上の高温化を防ぐ無注水式焼玉エンジンが開発された。無注水式の燃焼室は各社がさまざまな方式を開発されたが、スウェーデンのポリンダー社が多くシェアを占めていたのでボリンダー式と呼ばれることもある。

 




関連タグ編集

ディーゼルエンジン ポンポン船


タイガーモス号

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