概要
原油の蒸留によって得られる石油製品。主に高速ディーゼル機関の燃料に用いられる。ガスタービン機関の燃料に用いられる場合もある。
「軽油」という名前は「重油」よりは軽質(比重が小さい)な油であるということからで、ガソリンよりは重質(比重が大きい)である。
消防法における乙種第四類(引火性液体)第2石油類に該当する危険物。運搬や保管には同法に規定される設備や器具(保管場所および規格容器)が、また規定量以上の運用では危険物取扱者の国家資格を必要とする。
なお農機燃料としての需要がデカい(主には耕耘用トラクターおよびコンバイン用。特に耕耘トラクターは通年で使うため需要が大きい)事から、田舎などでは携行缶販売も行われている。指定される携行缶の種別は緑色のポリタンクであり、給油違いを防ぐためタンク本体と両蓋に「軽油」と但し書きする(あるいは軽油用の表示シールを貼る)よう定められている。
軽油は灯油に性質が近い(あまり意識されないが灯油も軽油と同じく乙種第四類第2石油類指定の危険物である)ので、灯油をディーゼルエンジンの燃料として用いても稼働には通常問題がないが、軽油引取税の脱税に当たる(不正軽油)上、エンジントラブル(軽油と異なり潤滑効果が無いため、そのまま使用すると燃料噴射ポンプの劣化が早まる)さらには大気汚染にもつながるので絶対にしてはいけない。
また「灯油を軽油にする添加剤」なる商品を通販などで見かけるが、あれは公道を走行しないディーゼルエンジン(定置型もしくは移動型発電機や構内用作業機など)を対象にしたものであり、ナンバープレートの登録がなされた車両(トラックや乗用車などのディーゼル車のみならずホイールローダーなどの重機も含む)に入れると上記の通り脱税となってしまう。さらには灯油とA重油には軽油識別剤としてクマリンが1ppm添加されており、ブラックライトの紫外線を照射すると黄緑色の蛍光を発するため、識別が可能となっている。
誤使用
なお、稀にガソリンの代わりに軽油を入れる者がいるが、ガソリン対応車に軽油を入れると点火温度の違いなどから黒煙が出る、ノッキングが発生(異音が出る)、異常振動が発生するなどし、エンジンが大きく損傷する恐れがある。
ところが、「軽油」という響きと値段の安さから稀に「軽自動車だから軽油だろ」などととんでもない勘違いをする者がおり(下イラスト参照)、セルフスタンドで油種間違いが度々発生している。そのため一部の店舗では、「軽油」の表記の代わりに「ディーゼル車用(軽自動車には給油出来ません)」などと書いてある場合がある(軽自動車でディーゼルエンジンの車両は現在日本国内では販売されていない)。
なお、これの逆でディーゼル車にガソリンを入れるともっと危険な事態になり、燃料系統の潤滑油として軽油が利用されているのがガソリンによって洗い流されて深刻な作動不能に陥り、最悪燃料系統の交換まで必要になる恐れがある。先に書いた通りガソリンの方が値段も高いので入れる理由など全くない。気を付けよう。
石油製品を沸点の低い順に並べると:
LPG(プロパンガス)<ナフサ(ガソリン)<ケロシン(灯油)≦軽油<重油<アスファルト
となる。