概要
重油は石油の蒸留で石油製品を得たのち、最後に残った粘質の油。ここから発電などに使われるボイラーや大型船舶向けのディーゼル機関の燃料、舗装用のアスファルトを作る。
種類と区分
石油製品は『LPG(プロパンガス)<ナフサ(ガソリン)<ケロシン(灯油)<軽油<重油<アスファルト』の順に重質化する。
但し日本での「重油」は軽質なものから順にA~Cの三等級にわかれ、このうちA重油は軽油90%に10%と申し訳程度の残渣油を混ぜることで「重油」とした税制上の重油であり、化学的に言う純然たる重油は100%残渣油であるC重油だけである(B重油は半々で混合)。
性状
重油は価値の高い石油製品を生成した残渣であるため他の石油製品よりも価格が安いが、粘り気が強く不純物が多く含まれるためにガソリンなどの他の燃料と比べると扱い辛い部類に入る。
常温では流動性が低いため、移送などには予熱を行って流動性を高める必要があるほか、引火点が60~70℃と高いために普通の方法で点火することは不可能である。
故に燃やすためには、重油を流れやすく加熱した後に、燃焼用バーナーで霧状に噴射し、点火用に別に用意したバーナーなどで火を点ける必要がある。
つまり、ただ燃やすだけでも大掛かりな設備が必要になることから一般家庭で使われることはまずなく、火力発電、大型施設のボイラーや産業用の燃料として用いられる。
また、すでに述べたとおり不純物が多いために、燃やす前に不純物を取り除いたり燃やしたあとの排気ガスを浄化しなければならず、経済性の恩恵を受けられるのはごく一部の用途に限られる。
また、引火点が高いということは引火しづらく安全ではあるものの、裏返せば一度火がつけばその時点で油が高温になっている事を意味し、火災が発生すると消火が難しいという危険性を孕んでいる。
利用
船舶用エンジンの燃料としては、油清浄機で念入りに不純物を取り除いたうえでディーゼルエンジンで使用される。
大型船に搭載される低回転数(200rpm程度)の超大型ディーゼルエンジンには主に経済性に優れたC重油が使用される。
このクラスのエンジンは主にユニフロー掃気式と呼ばれる2サイクル機関が殆どで、劣悪な燃料が使用できるにもかかわらず熱効率は50%と極めて高い。反面、縦方向に嵩張るうえ振動が強い傾向がある。
昨今ではAまたはB重油で中高速(600~2000rpm)のエンジンを駆動する場合もある(この場合は熱効率は35%強となる)。
昔は蒸気タービン船や、蒸気機関車でボイラーを焚くのにも使われた。