概要
モニターとして選ばれた家庭のテレビに計測機器をとりつけて得たデータを元にしている。
「どのくらいこの番組が見られているか」という指標のひとつともなり、人気の度合いを計るバロメーターでもあるため、番組の延長やテコ入れ、打ち切りにも影響する。
一般的にニュースなどで出る視聴率は世帯視聴率と呼ばれる。その世帯(家族)のうち誰か一人でも番組を見ればカウントされるので実際の視聴人数よりも大きな値が出る。例えば「視聴率10%の番組は『日本の人口1億2000万人×10%=1200万人』という計算で1200万人が見た」と誤解されがちだが、先述の理由でもっと少ない人数になる。対して個人視聴率は個人単位で計算するので正しい視聴人数を求めやすい。
視聴率の調査は関東、関西、名古屋、札幌、岡山香川、北部九州(これらはいずれもテレビ東京を含む民放5キー局が入る地域)、仙台福島、新潟、静岡、広島で毎日行われているが、一般的に報道などで「視聴率○%」と表される時の数字は関東のものである。
調査する世帯数は関東・関西・名古屋地区が600世帯、その他の地域が200世帯の標本調査であるが、調査対象が総世帯数と比べてあまりにも小さいため誤差が大きく出やすいなどの指摘がある。例えば関東地区で「視聴率10%」と発表された場合、視聴率計測をしていない約1500万世帯を含めた真の視聴率は「7.6~12.4%の間に収まる確率が95%」という理論値となり、さらに20回に1回はこの枠からも外れる。視聴率20%と発表された場合は同じく「16.7~23.3%の間に収まる確率が95%」である。つまり視聴率1ポイントの差はただの誤差であり何の意味も持たない。
このように単発の視聴率は誤差が大きく出るため、テレビ局の現場では単発の視聴率よりも同じ時間帯の前4週間の視聴率を平均した「前4週平均視聴率」を重視しており、これを番組の継続・打ち切りなどの判断基準としているところが多い。
なお、年に数回、上記以外の地方都市でも視聴率調査が行われている(ただし民放が2局以下の福井や宮崎などは調査の対象外)。
現在、日本の視聴率調査はビデオリサーチ社が事実上一手に握っている状態となっている。かつてはニールセン社も実施していたが、1994年に個人視聴率の導入を巡ってテレビ局側と揉めた結果撤退した経緯がある。
世帯視聴率と個人視聴率
従来の視聴率調査は世帯視聴率を主流としていたが、2020年からビデオリサーチの視聴率調査のリニューアルが実施され、これにより各局とも世帯視聴率よりも個人視聴率が重視されることになった。
このリニューアルに合わせ、テレビ朝日を除いた各局ではコア層(49歳以下または59歳以下の現役世代)を重視した編成に大きく舵を切った(テレビ朝日は運営に関与しているABEMAとの兼ね合いや日本の人口構成からこの方針を取らないとしているが、系列のABCテレビは他局と同様の方針を取っている)。
世帯視聴率はその名の通り世帯単位で計測するため実際に何人が見たのかがわからず視聴者層を知ることもできない。また、現在は少子化なので若者向けの番組を作ると世帯視聴率が低くなってしまうという問題点もあった。さらに、世帯視聴率が上がったのに収益が減るなどの逆転現象も起こりますます役に立たない指標となっている。
従来の指標であった世帯視聴率が高い番組には高齢者が好む番組が多く、要は人口比率が高い高齢者に好まれれば自ずと世帯視聴率は上がるという訳である。しかし高齢者は購買力が現役世代よりも低い傾向にあるため、スポンサーには好まれず、一見高視聴率なのに良いスポンサーが付かず、低視聴率なのにスポンサー受けは良いと言った、新しい動向が出始めている。
「世帯視聴率が常に10%以上の番組よりも、5~6%程度の番組の方がスポンサー受けが良い」という現象が散見されるようになってきているのだ(代表例が平均視聴率が3%台まで落ちてもずっと続いているニチアサキッズタイム)。その理由に前述のコア層視聴率があり、要は「世帯視聴率では前者の方が圧倒的に高いが、その多くは高齢者が見ているのであり、コア層視聴率では後者の方が勝っている」といった状況でこのような現象が起こり得るのである。
リアルタイム視聴のみのデータでありそのため録画機材の発達した現在ではデータの扱いに付いて度々論争のネタともなっているが、ビデオリサーチ社やテレビ業界などは「視聴率は『どれくらいの世帯がコマーシャルを見てくれるチャンスがあるか』、というスポンサーのために計測している数字であるから、CMの飛ばし見が多くなる録画率は計測する意味が無い」というスタンスを一貫して取り続けてきた。2015年からは録画視聴率の一種である「タイムシフト視聴率」も計測されるようにはなった。
更に2015年からは民放各局で見逃し配信サービス「TVer」を開始、テレビ局側もこちらの再生回数をアピールすることが増えており、2025年10月からはTVer再生回数も視聴率に編入されることが正式に決定した(2024年現在は関東地方のみで試験運用中)。
一方、芸能ニュースやネットニュースに掲載されるのは依然として世帯視聴率のほうが多い。このことに腹を立てた松本人志が、未だに世帯視聴率の記事を書いているライターに対して「勉強不足のバカライター」と批判したほか、NHKも2021年に放送された紅白歌合戦が最低視聴率を記録したことに対し「世帯視聴率だけで判断するのは危険である」と定例会見で、民放連も「もはや世帯視聴率は指標にならない」とそれぞれ見解を述べている。
こうした動きから産経新聞のように視聴率ランキングを個人視聴率に切り替えた新聞社も現れ、もはや視聴率だけで人気を判断できるのは(リアルタイム視聴が最重視される)スポーツ中継だけと言っても過言ではない。
視聴率と視聴者
かつては視聴率は各放送局に問い合わせれば一般視聴者にも教えてくれたため、2ちゃんねるなどでは「視聴率スレ」がドラマやアニメ関係の板に立ち一喜一憂や論争を繰り広げる様が定番であった。
しかし2013年初頭頃から各局ともこのサービスを相次いで打ち切ったため、一般視聴者が視聴率を知る機会は大幅に限られたものとなった(が、それ以降も何だかんだ言いつつ一部の番組を除いて情報がいろいろと流出している模様)。
「テレビ局がビデオリサーチ社から有料で買い取っている情報を視聴者からの問い合わせに対して無料で教える、という行為は企業コンプライアンスの面から見て問題がある」というのがサービス停止の理由と公表されている。
こう書くと「金を出せば教えてくれるのでは?」と聞こえそうだが、そもそも視聴率というのが視聴者の興味本位に応えるためのものではなく「スポンサー企業の広告効果の指標のひとつ」として測定している、というのが第一目的であることから、有料であれば教えてくれるという訳でもないようである。
なお、欧米では視聴率と同時に視聴人数も計測されており、日本のように視聴率よりも「○○○万人が視聴した」といった視聴人数の発表の方が重視されている。
ちなみにモニターとなっている世帯は原則非公開(秘密)となっており、テレビ局からの買収等で視聴率操作を防ぐ為である。
しかし、それが本当に起こってしまったのである。(後述)
現状
2024年現在の世帯・個人視聴率の一位はテレビ朝日であるが、広告出稿額については日本テレビの7割程度と苦戦を強いられているのが実情である。
視聴者の在宅率にも左右されるため当然時間帯によって上下差がある。
視聴率が最も高くなる時間帯は夜の19時~23時で、この時間帯を『プライムタイム』と呼び、NHK総合や4大民放では10%(いわゆる『2ケタ』)が最低限のノルマとされている。
次いで高くなるのが平日朝のお出かけ前と夕方18時~19時、夜23時~深夜0時であり、この時間帯のノルマは時間帯にもよるがだいたい7%くらいと考えられている。
土日の日中や平日のランチタイムでは全体の視聴率がプライムタイムの約半分程度となり、5%を超えられるかどうかが一応の目標となる。日曜朝や夕方時間帯放送のアニメの成否に視聴率5%ラインが意識されている理由もここにあると言える。また平日ランチタイム前後の時間帯はもっと低くなり、深夜0時台と比べても大差がなくなる。
そして最も視聴率が低くなるのが深夜枠であり、午前1時を過ぎると2%とれれば御の字、1%を切る番組も少なくなくなる。
視聴率の動向がもっとも注目されるのは無論プライムタイム(広告料で言うところのAタイム)の時間帯であるが、近年では各テレビ局ともプライムタイムとド深夜(同・Cタイム)の狭間に当たる深夜時間帯(23時~25時、Bタイムに当たるゾーン)に力を入れており、この時間帯を日本テレビは「プラチナゾーン」、テレビ朝日は「プライム2」と独自に呼んでいる。
アニメ
アニメ番組の場合は視聴率よりも関連グッズの売上などによるスポンサー収入の方が重視される傾向が強い。そのため、視聴率が高くてもスポンサー収入が少ない番組は放送を終了してしまうこともある。
逆の極論を言えば、たとえ視聴率が0%であっても何故かスポンサーの離れない(収入が得られる)番組があったとしたら放送局側としては打ち切らなくても儲かるということになる。
テレ東の全日帯アニメ・特撮は概ね視聴率が低く1%台が普通、ニチアサキッズタイムも初期と比べると大幅に低い数字になっているが、この手法で成り立っている。
録画・配信視聴と円盤販売や配信料で成り立っている深夜アニメは視聴率とコンテンツ力の乖離が極端で、社会現象クラスでも視聴率は微々たるものである。
視聴率操作
2003年、日本テレビのプロデューサーの一人がビデオリサーチのモニター世帯を割り出して、その世帯に金銭授受させて日本テレビの番組のいくつかの視聴率を買収した事件があった。当然日本テレビどころか業界でも震撼させた問題となった。
これと似た話が1992年こちら葛飾区亀有公園前派出所80巻収録「両津リサーチ会社の巻」でリサーチ世帯の機器を遠隔操作して視聴率操作をする話があった。まさかの11年後に同じような事が現実に起こるとは誰も思っていなかった予言となった回である。
この話では両津が外から赤外線機器(一般的にリモコンで使われるテレビとの通信方式)を使って番組を変えて視聴率操作していた。ちなみに実際のリサーチ機器はリモコン側が計測機器と繋がっているらしく、そこからどのチャンネルを選択しているか・視聴時間がどれくらいか等を計測している様子(おそらくチャンネルや電源ボタンを押した回数等もカウントしているとされる)。
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- 探偵!ナイトスクープ…ナイトスクープ視聴率調査という企画を不定期に放送。といっても、金曜日の23時に一般家庭にお邪魔してチャンネルをナイトスクープに変えさせるというものだが。