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ディーゼルエンジン

でぃーぜるえんじん

圧縮着火エンジンの一種。扱いやすさと燃費効率の良さから、船舶・自動車から据置の産業用まで広く用いられる。
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概要編集

ドイツの機械技術者ルドルフ・クリスチアン・カール・ディーゼル( Rudolf Christian Karl Diesel、1858-1913)は熱効率の高い合理的熱機関を研究、独自の独自設計の圧縮着火式内燃機関を開発した。当初は「オイル・エンジン」と呼ばれていたが、後に彼に因んで「ディーゼルエンジン」と呼ばれるようになった。


仕組み編集

1.空気をシリンダー内に取り込む

2.ピストンで空気を圧縮、すると断熱圧縮で高温になる

3.高温の空気に燃料を噴射し、自然発火させる

4.燃焼ガスがピストンを押し返す

5.排気する

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ガソリンエンジンとの最大の違いは点火プラグが存在せず、断熱圧縮による高熱で燃料を自然発火させるという点である。

このためプラグから燃焼を伝播させられる範囲内にシリンダーの容積が制限されるガソリンエンジンと違い、シリンダーを非常に大きくできるので一行程あたりに発揮できるエネルギーが大きく、低い回転数でも大きな力を生み出すことができる。


しかしながら燃料を自然発火させる程の圧力は部品に高い負荷をかけ、また自然発火に頼る都合振動も大きくなるため、ディーゼルエンジンは各部品を頑丈に作る必要がある。

このため部品の重量が大きいことに加え、軽油の燃焼速度がガソリンより遅いことも手伝い、ディーゼルエンジンは回転数があまり上げられない。


その他に頑丈に作らざるをえないことによるコスト増、振動、騒音による乗り心地への影響や、自然発火故に不完全燃焼が発生し汚染物質を多く産生してしまう点もデメリットである。


ディーゼル機関の大きな区分編集

ディーゼル機関には、大型舶や内燃力発電所用の巨大な物と、鉄道車両や小型船舶、自動車に積まれている比較的小さいものとでは理論サイクルが異なり、定格時の機関回転数も異なるため、低速ディーゼル機関と高速ディーゼル機関とに分けられている。大まかな違いは下表のとおり。


項目\機関低速ディーゼル機関高速ディーゼル機関
理論サイクルディーゼルサイクルサバテサイクル
定格回転数数百r/min数千r/min
よく使われる燃料重油軽油
熱効率50%以上30%前後

本記事では特に記述がない場合、我々一般市民にとって身近な高速ディーゼル機関を扱う。


ディーゼル機関と過給機編集

ディーゼル機関はスパークプラグを用いず、高圧縮された空気に燃料を噴射して自然発火させることで爆発を起こす。裏を返せば点火するまで燃料を噴射しないので、(エンジンが耐えられる範囲で)どんなに高圧縮にしてもガソリンエンジンで起きるような異常燃焼(ノッキング、意図せぬ)が無い。つまり高圧縮比を実現できるため燃焼効率がいい。


加えて過給により圧縮比を上げられ、それに伴い熱効率もさらに上げられる。そのため現代のディーゼルエンジンは高速・低速の別を問わず大抵ターボチャージャー付きである。


大型の低速ディーゼル機関では、ターボチャージャーに加えエンジンの排気を動力に利用するターボコンパウンドも採用しさらに効率を上げている。


ディーゼルエンジンとバイオ燃料編集

発明者のディーゼルは元々、彼の住む地域の名産物であるピーナッツの油を燃料とするエンジンを開発していた。そして現在のディーゼルエンジンも、ピーナッツ油で動かすことは理論上可能である。


化石燃料由来のガソリンしか燃やせないガソリンエンジンと異なり、ディーゼル(車種にもよるが)は軽油だけでなく、植物や廃油由来のバイオ燃料も用いることが可能なのである。


化石燃料を燃やすということは、地中に埋まっていた炭素(C)を二酸化炭素(CO2)として地上に放出することであるため、地上のCO2量は増加していく一方であるが、植物は元々地上でCO2を取り込みながら育つ存在であり、つまり長期的にはCO2は増加しないことになる。これはカーボンニュートラルの基本的な考え方の一つでもある。


※注):ただし、植物油は種類にもよるが長期保存や熱によって変質しやすく、また含まれる不純物が長期的にはエンジンや補機に悪影響を及ぼすため、自動車用燃料として用いる場合は軽油と同等に使用できない。現在でも100%植物油の燃料の実績もあるが一般的には加工されたうえで軽油と混ぜて使用される。

※注2):近年はガソリンでも植物由来のバイオ燃料の研究が進み、一概にディーゼル特有のメリットとは言えなくなっている。


乗用車用ディーゼルエンジン編集

車両用ディーゼルは高速道路の定速走行など負荷が一定の状態ならガソリンより3割ほど効率が良い。しかし常用回転域が狭いことから市街地走行のような負荷変動と加減速を含む走行パターンでは一気にガソリンとの差がなくなる。このため、配送用の小型トラックではディーゼルハイブリッド車が設定されている。


過給付きで高い圧縮比を実現するためのエンジン強度の都合上、ガソリンエンジンよりも大きく重くなりがちであるため、現在のディーゼル車の排気量はごく一部の排ガス規制のゆるい新興国向けのものを除くと、排気量1.5L以上のものに限られている。

過去には1.0L以下のディーゼルエンジン搭載モデルも普通に存在しており、ダイハツシャレードが1.0Lの3気筒エンジンで有名であった。また360cc時代の軽自動車では、ヤンマーが360㏄V型2気筒ディーゼルエンジンを搭載した軽トラ「ヤンマー・ポニー」を1960年代に出していたことがある。現在はスズキが東南アジアで800ccの2気筒ディーゼル車を販売している程度である。


ディーゼルエンジン車の特徴編集

ディーゼルエンジンは乗用車に限定して話すのであれば、低速トルクが尋常でなく太い。クリーンディーゼル車の場合、マツダ以外の日本車では主にSUVミニバンに採用されることが多いことからもその特性が窺える。


ex.アクセラの場合の最大出力と燃費

SPORT 15S(1.5Lガソリン) 111ps/6000rpm 14.7kgm/3500rpm 20.6km/L

SPORT 15XD(1.5Lディーゼル) 105ps/4500rpm 27.5kgm/1600~2500rpm 21.6km/L


参考までにこのトルクの数値、ガソリンエンジンであれば高級車に積まれる2.5L~3.0Lクラスの自然吸気エンジンに匹敵する。それでガソリン以上に低燃費なのだから恐ろしい限りである。

※データは2017年9月、グーネット中古車より。全車AT車、燃費はJC08モード。


しかも軽油はガソリンより税金が安いため、燃料代は総じてガソリンエンジンよりも安く済むことになる。


排ガス問題編集

  • 燃費が良い。
  • CO2排出量が少ない。
  • カーボンニュートラルを実現し易い。
  • 燃料は自由が効く。
  • なのにガソリンエンジンよりパワフル!

…ここでまで書くとディーゼルはガソリンなどメではない、理想的なエンジンにしか思えないであろう。事実その考えの下で、ディーゼルエンジンは欧州を中心に全力で推進されていた。にもかかわらずディーゼルエンジンは乗用車の主流にはなれなかった。


最大の理由は、排気ガスが汚い事にある。ガソリンエンジンの排ガスは三元触媒でクリア出来たが、ディーゼルの場合、排ガス中の空気の多さからガソリン車用の触媒が機能せず燃焼制御だけで排気ガスの低減が必要なのだがPMを減らそうとすれると完全燃焼に近くなり燃焼温度が増加することによりNOx(窒素酸化物)が増加してしまうので、両方の排出削減を実現するのは極めて難しい。なお現在排気ガス中の空気が多い状態でも機能するリーンNOX触媒が対策の決定打と言われているが耐久性の低さやコストの問題から実用化は難航している。以上の理由から現在のディーゼルエンジンは、NOXの発生を抑える目的に向けて燃料噴射時期を理想位置から大きくずらしたり排気ガスの一部を吸気に戻すEGRを行っている=意図的に不完全燃焼させる制御 が一般的であるためPM発生量が極めて多くメーカー問わずPMによる汚損に悩まされているのが実状である。2016年にはフォルクスワーゲン・グループが、検査を不正に潜り抜けるソフトウェアを用いていたことが発覚(俗に言う"ディーゼルゲート")。以降、欧州車メーカーはディーゼルによるエコを諦め、急激なEVシフトへと舵を切って行くこととなった。


ただし絶滅したという訳ではなく、乗用車でも欧州車やマツダを中心に豊富なラインナップが用意されている。さらに、トラックバス等の大型商用車大型の作業車両はまだ電動化できず、ディーゼルの独壇場である。現状では発生したPMはディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)でキャッチし、NOxは搭載スペースに余裕にあるミドルクラス以上の車両を中心に尿素SCRシステムで排出量を低減している場合が多い。


DPF編集

DPFは、先に述べたとおりフィルターの一種である。

そのまま使い続けるとフィルターが目詰まりを起こして機能が低下するため、セルフクリーニング(いわゆる再生)が必須である。ディーゼルエンジンから排出されるPMは基本的に可燃性の化合物であるため、フィルターへの堆積量が増えると、フィルターそのものを高温に熱して溜まった有害物質を燃焼させて害の少ない(あるいは無害な)ガスとして排出する。


しかしながらフィルターをある程度高温にしなければならないため、運転時間が短くフィルターが温まりづらい日本の都市部のような、短距離走行(いわゆる「チョイ乗り」)が多い環境では詰まりなどのトラブルが目立つのも事実である。

またDPF再生を行っている間は燃焼工程のあとで燃料を噴射するため、燃費とドライバビリティが悪化するうえDPF再生用の燃料がオイルを希釈してしまういうデメリットも見逃せない。(オイル燃料希釈がエンジンにダメージを与え最悪希釈オイルを吸い上げてランオンに至るリスクを回避すべくオイルレベルゲージに通常の満タンのFレベルより上に希釈限界を示すX表示が儲けられているエンジンも多い)


専門業者に依頼すればDPFを車両から外して内部の詰まりを除去することが出来るが、当然それには費用がかかることになる。


マツダのSKYACTIV-D(乗用車ディーゼルエンジン)は、ディーゼルの高圧縮比にできるメリットを捨てても触媒無しで排ガス規制をクリアすることを狙った低圧縮比ディーゼルであるが、燃焼改善によってPMとNOXの発生量の削減は実現したものの後処理が不要になるまでのFレベルには至っていない(その証拠にEU向け仕様では尿素SCRを併用する)ためその保守にはDPF再生の管理と内部に滞積するPM由来のスラッジの定期的な掃除がキモとなる。




尿素SCRシステム編集

NOxの削減は積年の課題であったが、日産ディーゼル(現UDトラックス)が実用化した自動車向け尿素SCRシステム(据え置き用の大型のものは1970年代にIHIにより実用化されていた)によって削減することが可能になった。

尿素SCRシステムは後処理装置の一種で、「AdBlue」と呼ばれる専用の尿素水を排気管内に噴射し、NOxを化学反応によって窒素ガスと水蒸気に分解するものである。ただし、尿素のタンクや噴射システムは大型でスペースを要求する。

現在ではトラック、バスなど大型ディーゼル車では排ガス対策から解放されパワーを追求可能となるうえ前述の搭載スペースも十分なことから必須装備となっており、乗用車向けにも搭載スペースに余裕があるミドルクラス以上の車種についてはドイツ車を中心に採用が進んでいる。

マツダ車を除く多くのディーゼル車は給油に加え、この尿素の補充が必要となる。


またこれは形式に関係なく、ディーゼルエンジンはガソリンエンジン以上に、エンジンオイルのこまめな交換・補充が要求される。乗用車ディーゼル専用オイルは比較的高価なため、燃料代で浮いたはずのお金はオイルで相殺されてしまうことになる。

そのため毎日長距離通勤をするような人や、大トルクに惚れた人以外にはオススメしづらいエンジンである。





レース用ディーゼルエンジン編集

とはいえパワーも燃費もガソリン車より優れているのなら、排気ガスを気にする必要のないモータースポーツでは無敵だな!と思われるだろうか?確かに00年代後半はアウディプジョーはどちらもディーゼル車でル・マン24時間レースの覇権を争っていたし、WTCC(世界ツーリングカー選手権)でもディーゼルのセアトがチャンピオンになったことがある。

2009 Audi R15 TDI


しかし弱点もある。低回転型であるため最大馬力で劣り、トップスピードが伸びないのである。最大馬力を高めるには排気量を大きくする必要があるが、元々重いディーゼルエンジンをさらに重くすればシャシーバランスに悪影響が出てしまう。


またディーゼルが有利か、ガソリンが有利かというのはレギュレーション(規則)に依存する部分が大きく、一概にどちらが有利とは言えないことのほうが多い。特に現代的レーシングカーでは当たり前になった、重量の嵩むハイブリッドシステムを乗せやすいのは明らかに小型・軽量のガソリンターボであり、2015年以降のル・マン24時間ではそれが顕著になっていた。

マツダも2014年から北米IMSAにSKYACTIV-Dを搭載したLMP2車両で参戦したが、数年掛けて1勝もすることができず、結局ガソリンターボへ切り替えていたことがあった。


加えて言うなら前述のディーゼル車たちの実績は、00年代のディーゼルがエコの最先端と思われていた時代に、運営がメーカーを呼び込むために規則上優遇していたという面も否定できない。

そのためサーキットでの参戦例は実は数えられるほどしかない。


一方でダカールラリーのようなオフロードレースは、車体がもともと大柄でエンジンの重さが不利にならないことや、安全上の理由で最高速度が制限されていることから、ディーゼルエンジンでの参戦は車からトラックまでごく一般的である。


関連タグ編集

軽油 エンジン ディーゼルカー ディーゼル ディーゼルパンク


外部リンク編集

ディーゼルエンジン - Wikipedia

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