概要
このエンジンはレシプロエンジンの一種であり、「シリンダー内の気体を熱変化(加熱および冷却)させることにより体積変化させ、その変化を動力とする、あるいは逆に変化から熱などを生み出す」仕組みの装置である。
メリット
- 外燃機関であるため熱源を選ばない
- エネルギー効率が理論上他のエンジンよりも良い
- 燃料の爆発等を必要とせず、運用時の音が静かである
- 単純なエンジンであるならばそれほどの加工技術は必要としない、ボイラーのような高圧も使用する必要はない
デメリット
- 機関の体積当たりの動力が小さい、すなわちほかのエンジンよりも大型化する必要がある
- 大型化するとロスが増えてエネルギー効率が低下する
- 出力を上げたり下げたりするのが苦手
- 燃費の効率化をしようとすると高度な技術が必要となる
用途および歴史
このエンジンはスコットランド人の「スターリング」という牧師が1816年に発明した。当初は蒸気機関のボイラーの爆発の危険性のない、かつエネルギーのコストの良いエンジンとして開発されたものの、当時の技術ではまだ十分に取り扱えるものではなかったとされる。
技術の上昇に伴い取扱い環境が整ったものの、ライバルである蒸気機関も信頼性がましたため交通機関のエンジンとしてはほとんど使われることはなく、その特徴から「あまりパワーを必要としない、かつ技術者を必要としない動力」、たとえば揚水器やパイプオルガンの空気を送る装置、おもちゃなどにしか使えなかった。
20世紀中頃にオランダのフィリップス社により、真空管ラジオ用の発電機としての研究が行われた。この時「逆転させると動力から熱を取り出せる」という特徴から冷凍機としての利用が発見され、現代でも使用されている。
その後20世紀後半のオイルショックにより見直され、自動車などのエンジンなどの研究がなされ、中には少量ながら販売されたものもあったものの、結局実用化はほとんど行われなかった。1980年代には体温程度の低温で動作する平板型が登場し、教育用として用いられている。
また、1960年代頃からスウェーデンのコックムス社により、その静音性を利用して潜水艦の補助動力としての利用が研究され、1990年代以降に用いられるようになった(ゴトランド級潜水艦が最初に採用。日本でも同社の技術を導入してそうりゅう型潜水艦が建造された)。また、船舶の動力機関として利用する研究が行われている。
近年においては排熱やバイオマス利用のための小型発電機として使用する研究が行われている(ちなみに発電所のような大規模なものではコスト面で使用できないことが明らかである)。