概要
東京都江東区に本社を置く日本の重工業メーカーである。旧称は「石川島播磨重工業」で、この名称はかつて東京都中央区にあった佃工場(旧・東京石川島造船所、現在の大川端リバーシティ21)並びに兵庫県相生市に現存する相生工場(旧・播磨造船所)に由来している。
事業は航空宇宙産業や産業機械、インフラ設備、エネルギープラント製造など多岐に渡っている。
その中には東京駅丸の内口駅舎の鉄骨構造や初の国産ジェット機橘花に搭載されたジェットエンジン「ネ-20」、国内最大の海水淡水化装置、明石海峡大橋の柱とその基礎など、数多くの業績も存在している。
現在の主な事業
航空宇宙産業
ジェットエンジン生産には「ネ-20」「J3」など草初期から携わっており、現在では国内シェア60%を占めている。
近年では民間部門の売り上げが増加しており、GE・P&W・ロールスロイスのいわゆるビッグスリーとの共同開発に参画している。あまり知られていないがエンジンシャフトの世界シェアは非常に高く、世界中のジェットエンジン用ロングシャフトの70~80%を生産している。ちなみにこのシャフトを製造しているのは呉第二工場であり、大和建造で知られる旧呉海軍工廠である。
宇宙開発事業は子会社のIHIエアロスペースが主に担っているが、これは元々戦前に中島飛行機が行っていたものを日産が継承した事業であり、日産に外国資本(ルノー)が参入するにあたって国策上の観点からIHI傘下に移ったものである。H-IIロケットやH-IIAロケットのエンジン等に携わっている(液体燃料用ターボポンプはIHI本体が担当している)。
なお戦前には子会社の石川島飛行機製作所(のちの立川飛行機、現在の立飛企業)を設立し航空機本体の製造にも携わっていた。特に陸軍機の開発・製造を行う事が多く、九五式中練や一式双発高練といった練習機や万能偵察機九八直協の開発、また中島航空機が設計した「隼」こと一式戦闘機の大規模移管製造で知られる。戦後も新立川航空機として航空機製造に携わっていたが、2011年にMBO(マネジメント・バイアウト)を行った事でIHIとの資本関係が切れ、またメーカーとしての新立川航空機も2013年にその事業を終了している。
産業機械
インフラ設備
エネルギープラント
過去の主な事業
造船
IHIの源流にあたる石川島重工業、播磨造船所、呉造船所は全て造船業に端を発するメーカーである。このうち石川島重工業は1853年に水戸藩の手により設立された石川島造船所を、呉造船所は戦前の呉海軍工廠を、それぞれ源流としている。
そのため、かつては商船や幕府海軍・旧帝国陸・海軍・海上自衛隊の艦艇なども製造していた。
後に造船事業は分社化され、ユニバーサル造船との合併を経てジャパンマリンユナイテッドに継承されている。
各造船所が手掛けた主な艦艇は以下の通り
- 石川島造船所、IHI佃工場(1939年造船部門閉鎖、1979年閉鎖)
- IHI東京第一工場(2002年閉鎖)
詳細は石播東京組参照のこと。
自動車製造
1918年に英国ウーズレー社とライセンス契約を結び同社の自動車を製造し始めたのがきっかけ。1927年にウーズレー社との契約を解消した後は「スミダ」ブランドの純国産車製造に転換、1929年に自動車製造部門が石川島自動車として独立した。
その後石川島自動車は合併と社名変更を繰り返し、自動車工業、東京自動車工業、ヂーゼル自動車工業を経て、1949には同社の自動車ブランド名のひとつを社名とする形でいすゞ自動車と改称、現在に至る。
石川島自動車が併合した企業の中には日本初の純国産車メーカーであるダット自動車工業や、東京ガスの機械部門から独立した東京瓦斯電気工業(瓦斯電)の自動車部門があった。
このうちダットは石川島自動車との合併時に小型車部門と「ダットサン」の商標を当時の親会社であった戸畑鋳物(現在の日立金属)に譲渡している。この戸畑鋳物自動車部が現在の日産自動車である。
一方、東京自動車工業と瓦斯電自動車部門が合併しヂーゼル自動車工業となったのち、同社日野工場が特殊車両専門のメーカー「日野重工業」として独立する事となった(現在の日野自動車)。この日野重工には瓦斯電出身の技術者が多く関わっていたため、日野自動車は自社サイトの沿革において自らのルーツを石川島ではなく瓦斯電として紹介している。なお、近年ではいすゞと日野はその後も両社のバス製造事業をジェイ・バスとして統合を行うなど再び関係を深めている。
なお自動車製造からは撤退したものの自動車に用いる一部部品の製造に関しては現在でも関与している。例えば子会社のIHIターボ(旧石川島汎用機械)は自動車用過給機(ターボチャージャー)の主要メーカーとして有名で、ギャレット・モーション、三菱重工エンジン&ターボチャージャ、ボルグワーナー・ターボシステムズ(旧KKK。一部は家電でおなじみの日立製作所の流れも汲む)とともにターボメーカー四強の一角として知られる。
関連タグ
湾岸ミッドナイト - 終盤で悪魔のZ(S30フェアレディZ)にIHI製のF1タービン(RHC6 RACING。正確には市販車のチューニングカー向けのビッグタービン)が装着される。
関連企業
ジャパンマリンユナイテッド:上述の通り、IHIの造船部門を継承した会社。現在、JFEホールディングスとともに同社株式の45.93%を取得している大株主である。
新潟トランシス:経営破綻した新潟鉄工所の鉄道車両部門などを継承すべく設立された。