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腐海

ふかい

ウクライナ本土とクリミア半島の間に横たわるアゾフ海の干潟の呼称。又は、宮崎駿原作の「風の谷のナウシカ」に登場する独自の生態系を持つ森を指す。
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地球上に実在する腐海について

アゾフ海西岸にある干潟。腐海とその周辺はラムサール条約に登録された国際的にも重要な湿地である。


ウクライナのペレコープ地峡クリミア半島の間の海域。水面は2560平方キロメートルの面積が有り、長さ200キロメートル、幅35キロメートルある。一方で水深は深い場所でも3.5m程度と浅い為、湖並みの面積を持ちながらも干潟又は沼と定義される。

ウクライナに位置するが、2014年および2022年からの戦争により、現在全域がロシアの実効支配下にある。


当地は海との接続が切れた内陸部にあり、高温でめったに雨も降らない。それゆえ水の蒸発が激しく、海水が濃縮されて塩分濃度が非常に高くなっている。ここで得られる塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムの他に、臭化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの無機塩類が多量に含まれている。塩分濃度の濃い場所で繁殖するドナリエラという藻類の影響で、上空から撮影した際にはピンク色や橙色、はたまた濃い水色など、一般的な湖とは違った色合いとなる。


夏に気温が高くなると塩分濃度の高い海水が強く熱せられて蒸発し、腐ったような悪臭を放つため、現当地に先住しているクリミア・タタール人からは「泥」や「汚れ」を意味する「シヴァーシュ」(腐海)と呼ばれるようになった。


後述する「風の谷のナウシカ」を視聴(又は読書)した人が「腐海」と聞くと同作品に登場する独自の生態系を持つ森の呼称(詳細は後述)を思い浮かべる人が多いだろうが、その名前の元ネタになったのはこの腐海と言われている。


漫画での登場

大和田秀樹による漫画ムダヅモ無き改革の登場人物ユリア・ティモシェンコ(実在の人物とはあまり関係ない)は付近の刑務所に収監中、この悪臭、毒気を自らの技(当然イカサマ(以上の何か)だが、触れないのはお約束。)として取り込んでいる。


「風の谷のナウシカ」に登場する腐海について

風の谷のナウシカの劇中に登場する独自の生態系を持つ架空のを指す。この森は巨大なのような樹木が茂っており原生林のような深い森になっている。また、森の中にはと呼ばれる大小様々な生物が多数生息している。


正確には現実の森林のような"森"とは大きく異なるが、同作品で"森"と呼称している事から以下の解説では腐海を「森」と解説する。



瘴気を出す森

劇中に登場する腐海の植物は現実世界で見られる生物や植物で構成された森とは似ても似つかない独自の生態系を持つ。一見すると原生林のような深い森のようだが、食虫植物のような奇妙な形態の植物から菌類を中心とした似ても似つかない生態系になっている。


また、この森の最大の特徴として瘴気と呼ばれる猛毒を空気中に放出する。この瘴気は非常に毒性が強く、ナウシカ曰く「瘴気を肺に取り込むと5分で腐ってしまう」と話す程、現実世界では化学兵器に分類されかねない程の強い毒性を持つ。


腐海の植物は胞子によって殖え、繁殖力が非常に強い。そのため腐海の外に胞子が持ち込まれると、着床した場所から腐海の植物が急速に生育してしまいその場所が一気に腐海化する恐れがある。劇中に登場する全ての人物はこれを非常に恐れており、胞子が持ち込まれた可能性があれば発芽する前に火で燃やすなど徹底的な消毒や除染を行っている。


この毒性が強い森は人類は元よりそれまで地上に生息してきたあらゆる動植物も腐海の瘴気に適応出来ず死に絶えてしまう。人間や家畜が腐海に入る場合(又は生態系に近づく場合)には瘴気の吸引を防ぐために防毒マスクを装着する必要がある。


森に住む"住人"

腐海には「」と呼ばれる独自の生物群が存在し生息している。このは現実世界のと姿形が似ているが、厳密には従来ののどの系統樹にも繋がらない別種の生物である。また虫より遥かに巨大であり、小さいものでも数十センチ、巨大なものは数十メートルほどある。この瘴気に適応できない旧来の生物とは異なり森の瘴気に適応出来る生物であり、逆に瘴気が無い環境下では生きられないという特徴がある。そのため滅多な事では腐海から出ることはない。(ただし、瘴気が無い環境でも一定期間は生きられる模様)


には様々な種が存在しており、王蟲、大王ヤンマ、ウシアブ、ヘビケラなどが生息している。これらの達は形状や大きさなど多種多様で異なる種と見て取れるが、同士の仲間意識は非常に強く外部から侵入してきた者がに対して危害を加えた場合(又は加えようとした場合)森に住むあらゆる達に伝わり一斉に襲いかかるという排他的な特徴を持つ。この時のの攻撃性は凄まじく上述した生息域である森から出ても侵入者を殺害(駆逐)するまで止めようとしない程である。また、達が怒った場合は眼球が赤く染まる。一方で「危害を加えない限り」は多くの場合、人間に関心を見せていない。


このような暴走に出た瘴気が無い森の生息域外まで進出した場合は例外なく息絶えるが、の躯に付着していた胞子が発芽して新たな腐海を生むきっかけにもなってしまう。これによってただでさえ限られている人類の生息域が更に狭まってしまう事からの住む森は「不可侵的な存在(場所)」として人類に恐れられている。






森の真実(ネタバレにつき注意!)













尺の都合上、劇場版では腐海の真相について語られていないが、原作の漫画版ではナウシカが旅を進めていく過程で腐海誕生の秘密が描写されている。


物語に登場する人間の共通認識として腐海は「突如発生した攻撃的な生態系」という認識しかなく、中には「(腐海は)人類が侵してきた罪への報い」などといった憶測と宗教的観点で見られていた。そのような当時の価値観の中で主要人物の1人であるユパは「腐海が人類の罪ならば、従来生息してきた全ての動植物まで罪を被るはずがない。」「それなのにどうしてこのような攻撃的な植物群が突如発生したのか」と疑問を感じ、腐海の真相を知るため世界中を旅してまわる事になる。長い旅を経ても答えを見つけられない中で立ち寄った風の谷から物語が始まる。


トルメキア軍の大型飛行船が墜落し谷にトルメキア軍が進駐するなど、一連の事件に巻き込まれる形になったユパが戦争へ出陣する前(アニメではトルメキア本国に連行)にナウシカに会うため、風の谷の城にあるナウシカの隠し部屋に入った。そこでユパは腐海の植物群で覆われた部屋に驚愕する。ナウシカの言によれば大風車で地下深くから汲み上げた汚染されていない水で育てれば瘴気を吐かない事を知る。


長年求めていた真相の入口に、ナウシカが若くして既に辿り着いていた事に驚愕するユパは、盟約により戦争へ出陣するナウシカを見送りつつ、自身も再び真相を求めて風の谷を後にする。そして、物語後半で苦難と苦悩の旅路の末にナウシカは腐海の真相と成り立ちを突き止める。



腐海の真相とは土壌を浄化するシステムである。



腐海とは元々人類によって人為的に創られた土壌を浄化するために作られた人工の生態系である。誕生時期は明確でないものの、少なくとも劇中から1000年前かそれよりも更に昔から存在している事が示唆されている。


この腐海と呼ばれる浄化システムは汚染された物質(無機質、有機質問わず)に取り込まれた毒素を排出するため、巨大な植物にて吸収しその副次作用として有害物質を空気中に排出する。そして毒素を全て放出して無毒化されると結晶のような形となり、小さく砂状に砕けて地上に還るようになる仕組みになっている。このような工程を長期間に渡って繰り返し、地上の全ての土壌を浄化するのが腐海の本当の役目だった。

上述したナウシカの研究結果や腐海の地下で発見された地下空洞はまさにその浄化機構の真相である。


は腐海の浄化作業を補助する役割として生み出された存在であり、外部の存在が腐海の動植物に対して攻撃を行うと全ての蟲が連携して過剰なまでに攻撃するのはこの浄化システムを守るためのものである。


しかし、この腐海による浄化システムは毒素の強い瘴気を放出するという難点を抱えていた。また、浄化が地球規模で行われるため、完了するには数千年という長い月日を要する事から旧来の動植物は生存が不可能という問題があった。この問題を解決するためそれまで人類が保有してきた「知と技」や人類を含む「種」を後世に残すために別途保管する場所を建設した。それが土鬼の聖都シュワにある「墓所」である。


この人類の遺産が保管されているとも言える「墓所」だが、浄化システムが完了するその日まで存続させる必要がある。そのためには外部から人為的に保護を受ける必要があると考えた旧来の人類は「腐海の瘴気によって星全体が汚染されるが、その汚染された空気でもある程度耐えうる生命体」を創造する事にした。それがナウシカを含めた新しい人類達であり、彼らに知と力の一端を与える代わりに墓所を守護させる事にしたのである。


一見協力関係にあるように見えるが、ナウシカら現生人類の体は毒素に対して強い耐性を持ち、なおかつ多少の毒素(瘴気)なしでは生きていけない(清浄な空気に耐えられない)肉体に改造されており、浄化システムが役目を終えて瘴気が無い澄んだ世界が実現した暁に、穏やかでかしこい知恵を持った新人類の誕生と入れ替わりで滅びるように設計されているという事実が判明する。


すべての真実を知らされたナウシカは、清浄のみが正しく一切の汚濁を忌むべき闇と断じる墓所の主に反発し、死を撒き散らす負の連鎖と旧人類の奴隷的束縛からの解放のため、墓所を永遠に封じるべく最後の闘争に挑むのであった。


劇中でナウシカ王蟲の心を覗くシーンがあり、そこで王蟲は「全にして個、個にして全」とナウシカに語る。

これは風の谷のナウシカの世界を一言でまとめたようなセリフである。意味合いとしては「有機生命体は1つ1つの個体が結びついて意味のある全体となる」であり、逆に「一個一個切り離しては考えられず、機能も生命も維持できない」という反証を意味している。


旧来人類が行った土壌汚染もそれに伴う腐海や墓所も結局は他生物を省みない愚行の果てに「死」を拒絶した「醜い姿」をナウシカは糾弾し、腐海も死も生活の一部であり「生」として生きる現生人類こそが「光」だと墓所の主に諭すのである。


浄化システムが完了すれば滅ぶしかない腐海と蟲。その腐海の主である王蟲から悟りを開いたナウシカの旅が本作の本筋である。



ネット上での扱い

上記のような「風の谷のナウシカ」作中の腐海の印象と名称からマイナス的なイメージが一般的に強く、廃棄物が密集した場所などを指す際に使われる場合がある、また、一部のネットユーザーからはBLジャンルを愛好する女性に対して「腐女子」と呼称(自称)する場合があり、その女性陣が集う場所を「腐海」と蔑称する場合がある。「腐女子」という言葉自体が本来、自嘲もしくは自虐を込めたなネタ自称であり、他者からは侮称的な意味を含めていて、「腐海」自体も良い意味のニュアンスを持っているとは言いづらいため扱う際は注意が必要である。


関連イラスト

【箱庭シャーレ】腐海と王蟲腐海


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風の谷のナウシカ    王蟲 瘴気

黒海 アゾフ海 クリミア

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