概要
長方形の枠に串で刺した珠を縦に5つ設けてある。下の4つは1を表す玉で「一玉」と呼び、上に枠で区切って1つ設けてある珠は5を表し、「五玉」と呼ぶ。珠を上下させて十進法で数を計算する。そろばんを使って計算する事を「珠算」と言い、検定試験も実施されている。
中国から伝わった「算盤」(スワンバン)が日本で独自に改良され、名称も訛って「そろばん」となった。中国の算盤は五玉が二つあるが、これは16進数の表現や繰り上がりの桁を表現するために使う。日本で使われている五玉が1つのそろばんは十進法特化で、計算の際指を複雑に動かさなければならないが、訓練すると高速に計算できるというメリットがある。桁数は23桁のものがポピュラーだが、23桁をフルに使うことは殆ど無く、左側は乗除算を行う際の乗除数の置数に使われる。
そろばんによる計算技術は江戸時代の日本で特に発達し、昭和中期まで実用的な計算器具として愛用されてきた。昭和の日本人のそろばんの達人は、歯車式計算機やリレー式計算機よりも高速に計算できたという逸話が多く残されている。
手動式計算器としては他に「計算尺」もあるが、あちらは計算論理がアナログ(連続した値をそのまま扱う)であるのに対し、そろばんは冒頭の通り論理がデジタル(値を飛び飛びの数値で扱う)である(外部リンク)。計算自体は頭の中で行い結果に合わせて珠を動かすので、計算機と言うよりは計算補助用具である。
昭和40~50年代の電卓の普及により使われる機会は少なくなった。それでも計算の基礎練習としては有用な方法と考えられており(珠算式暗算といって一定以上そろばんに習熟すると脳内に「エアそろばん」ができあがり、高速かつ正確に暗算する事ができる)、習い事として学ばれている。
また日本のそろばんは世界中に広まり、ハンガリーやトンガの様に小学校の授業に取り入れている国もある。
そろばんの歴史
日本には、室町時代以前に中国から伝わったとされる。
今の日本で使われる5玉そろばんは十進法のみに特化した構造(五玉1個・一玉4個)であるが、日本でも江戸時代までは中国と同様の五玉2個・一玉5個のものが用いられていた。これは16進数にも対応できるほか、割り算の際に現代行われる「掛け算九九」を用いた「商除法」ではなく「割り算九九」を用いる「帰除法」という方式が用いられたため、複数の五玉が必要だったからである。明治になって五玉1個・一玉5個となり、現代の五玉1個・一玉4個の構造が固まるのは昭和に入ってからである。
「アバカス」(abacas)と総称される類似の計算器具は世界のあちこちに存在していたが、多くは構造が洗練されておらず加減算しか扱えなかった。ヨーロッパでは古代ギリシャ・ローマ時代から溝に珠を置く形式のアバカスが使われ、アバカスという名も古代ギリシャ語に由来する。しかし、西欧のアバカスは筆算で代用されるか一足とびに機械式・電子式の計算機に移行するかで廃れてしまった。日本や中国でこれを四則演算に使えるのは、九九のような掛け算の暗唱・暗記の習慣があり、その結果を用いて盤上で加減算を行うからである。ちなみに立方根(n^1/3)まで扱う計算方法がある。なお、ロシア周辺でも「ショティ」(日本や中国と同じく珠を串で刺した形態)と称するアバカスが比較的最近までよく使われていたが、ロシアやウクライナに九九に相当する掛け算の暗算方式があることと無関係ではないだろう。「インド式九九」が有名なインドでも、教育用として独自のインド式アバカス(Indian Abacus)を普及させようという動きがある(独自とはいえ五玉1個・一玉4個の日本のそろばんを模倣したと思しい形態である)。
ちなみに卓上計算機の普及初期は熱によりエラーを起こすことがしばしばあったため、金融機関などでは「計算機の計算結果をそろばんで検算する」という冗談のようなことが行われていたという。
計算以外での使用
そろばんを振ると特徴的な音がするため稀に楽器に使われる事がある。また親に見つかると怒られること必至だが、子供がスケボーやローラースケートの代わりにして遊ぶ事もあった。「足つぼマッサージに使える」という意見もあるが、効果の程は不明である。
フィクションにおけるそろばん
フィクションでは「商売人の持ち物」という記号として、お金にがめついキャラや商人キャラに持たせられる事がある。
これに関連して、西洋風ファンタジー作品にも登場することが稀にあり、某有名作品では『東洋の計算機(器)』と呼ばれている。
ドラゴンクエストシリーズやトルネコの大冒険シリーズでは、長い棒の先にそろばんが付いた「せいぎのそろばん」という武器が登場する。
関連イラスト
関連動画
そろばんができるまで
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8月8日 - 「パチパチ」というそろばんをはじく音の語呂合わせから「そろばんの日」とされている。
楽器・ローラースケート…そろばんを計算以外で使用した例。前者はコメディアンのトニー谷が芸としてやっていた。後者は絶対真似してはいけません。