概要
数値あるいは数式同士を掛け合わせる計算のことで、その結果は「積」と呼ばれる。
AとBを掛け合わせるとは、実数においてはB個のAを足し合わせる事を意味する。
逆演算は割り算。
演算子には「×」が用いられ、これは足し算の演算子「+」を45°傾けただけのものとなっている。
「・」が用いられる事もあり、数値同士以外の場合は演算子を省略する事でも表現される。
プログラミングにおいては大抵「*(半角のアスタリスク)」で代用される。
ベクトルや行列など、掛け算が複数定義されている場合は、A×BとA・BとABが別々の意味を持ってたりしており、×を「クロス」、・を「ドット」と読んだりする。
整数や複素数における掛け算には交換法則や結合法則が成り立つが、足し算とは異なり、ベクトルや行列や四元数などでは成り立たない場合もある。
整数で交換法則が成り立つ事を理解するには、物体を以下のように並べる方法がある。
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これは見る方向によって、3×5にも5×3にもなる。小学校における掛け算の順序問題(外部リンク)もこのような事象が原因となっている。
足し算を繰り返したものが掛け算であるのに対し、掛け算を繰り返すと冪乗(べき乗 / 冪 / 累乗)となる。
この辺の話は巨大数で有名なハイパー演算という概念でまとめられており、足し算はhyper1、掛け算はhyper2、冪乗はhyper3と表現される。
足し算の場合、正の数を足せば必ず増加し、負の数を足せば必ず減少したが、掛け算の場合は、正でも1未満の数を掛けると減少し、更に掛けられる数が負の数ならば増加と減少が逆転する。
例えば、1に対して2を掛ければ2となり増加となるが、0.5を掛ければ0.5となり減少、-1に対して2を掛ければ-2となり減少、0.5を掛ければ-0.5となり増加となる。
掛け算においては1に影響力が無く、A×1=A=1×Aである。
この性質により、1は乗法単位元(掛け算に関する単位元)と呼ばれる。
また、分子と分母を逆転させた数を逆数と言うが、逆数との掛け算は、乗法単位元である1になる。
つまりA×(1/A)=1である。
この性質により、逆数は「掛け算に関する逆元」と呼ばれる。
一方、足し算において影響力が無かった0は、掛け算においてはA×0=0=0×Aという絶対的影響力を持っており(∞は除外で)、掛け算に関する吸収元と呼ばれる。
論理演算や集合におけるANDと結び付けられ、結果をそれぞれ論理積、積集合と言ったりする(ただ、積集合には別の意味もある)。
実際、真と偽を数値で表すと、通常は真は1、偽は0とされるが、この時ANDと掛け算の結果が一致している。
一応、OR⇔掛け算、真⇔0、偽⇔1とした場合や、XOR⇔掛け算、真⇔1、偽⇔-1とした場合でも成り立つ。
対してORは足し算と結び付けられる。
カップリングにおける掛け算
この場合は大抵、交換法則は成り立たない。
例えば、A×Bという表現だけがある場合なら、単にAとBによるカップリングを意味するが、ここでB×Aという表現が現れると、B×Aは一般的に「Bが攻めでAが受け」という意味合いとなり、対してA×Bにはその逆の意味合いが生まれる。「東京発大阪行き(東京×大阪)」と「大阪発東京行き(大阪×東京)」ではベクトルと目的が異なると喩えればご理解いただけるだろうか。
ただし受け攻めを気にしないリバや多くの百合の場合、例外的に交換法則が成り立つ。
「人外×人間」「人間×人外」においてはまた別の定義がなされている。
合成モードにおける乗算
色の値を0.0~1.0のレンジに移した上で掛け算し、元のレンジに戻すという処理となっており、これは結局の所「掛け算して色の最大値で割る」という形となる。
結果は必ず元と同じか暗くなり、デジタル8色同士ならばANDと同じ働きとなる。
同様の処理に比較(暗)や焼き込み(リニア)や焼き込みがあるが、これらと比べると自然で滑らかな変化となり、比較(暗)よりは暗くなり易く、焼き込み(リニア)よりは暗くなり難い。
加算とよく比較されるが、加算では最大値を超えたら最大値に戻すという処理を行っていたのに対し、乗算では色の値の範囲を踏み外す事が無いためそのような事は行われず、純粋に掛け算となっている。
対となる処理法としては、逆演算として除算があり、OR版としてスクリーンがある。
乗算とスクリーンを組み合わせたものとしてオーバーレイやハードライトがある。
ベクトル・行列における掛け算
ベクトルにおいてはまず、ベクトル同士の掛け算と、ベクトルとスカラーの掛け算が定義されている。
後者はスカラー乗法と呼ばれ、行列とスカラーの掛け算の場合もそう呼ばれる。
そしてベクトル同士の掛け算には更に内積や外積や直積があり、演算子としては内積には・が、外積には×が、直積には⊗が用いられる。
内積と外積は、要素数の等しい場合にのみ定義されており、更に外積は通常、要素数が3の場合にのみ定義されている。
内積はスカラー積とも呼ばれるが、スカラー乗法とは別物であり、結果がスカラーになる事に由来する。
また、直積の事を外積と呼ぶ事もあり、これ対しては外積はベクトル積とかクロス積と呼ばれる。
以上のベクトル同士の掛け算に関しては、いずれも単位元は無い。
スカラー乗法の場合は、別の集合にあるもの同士による演算であるが、1が乗法単位元と扱われているようである?
単位ベクトルというものもあるが、以上においては単位元としての働きはしない。
行列においても同様に、行列同士の掛け算とスカラー乗法があり、行列同士の掛け算にも様々な種類がある。
行列同士における通常の掛け算は、「掛けられる行列の列数=掛ける行列の行数」である場合にのみ定義されており、演算子を挟まない形で表現される。
行列同士の掛け算においては、ベクトルも行列の一種とみなされ、(a,b,c)なら1行3列の行列として扱われており、ベクトルの内積と直積は、片方を転置した上で通常の掛け算を行う形となっている。
正方行列同士の通常の掛け算においては、単位行列が乗法単位元となる。