"Ate breve! Obrigado!"
概要
1992年1月5日から12月13日にかけて、全49回を放送。前2年とは異なり原作となる小説は存在せず、田向正健によるオリジナル脚本となっている。また本作より、制作体制がそれまでのNHK単独から、系列会社であるNHKエンタープライズとの共同制作へと移行、この共同制作体制はその後『花の乱』(1994年)まで3年4作にわたって継続された。
NHK大河ドラマとしては第30作目であることから、初めて織田信長を単独主人公に据えた作品でもある。信長が主人公に据えられたケースは、過去にも『国盗り物語』(1973年)があるが、こちらは斎藤道三とのリレー形式での主人公という扱いであった。
主演を務めた緒形直人は、『太閤記』『峠の群像』において大河ドラマで2度も主演を務め、前年放送の『太平記』にも出演していた緒形拳の次男で、これにより親子2代での大河ドラマ主演となった。
本作は、ポルトガル人宣教師であるルイス・フロイスの視点から展開され、信長の生涯を描くのと並行して日本のキリスト教伝来にまつわるストーリーも描かれている。こうした背景から、ナレーションには「聞くところによると」という、伝聞である事を強調したセリフが多用された。また、各回の締めくくりは冒頭に示したフロイスによる挨拶(※)が定番となっていた。
演出面では、戦国時代という舞台設定にリアリティを出すべく、番組前半を中心に屋内のシーンにおいては照明を抑えた撮影が試みられた。また放送当時、岐阜市に作られた1万2千坪にも及ぶ広大なオープンセットは、その時点までの大河ドラマとしては史上最大規模のものであり、期間限定ながら一般公開も実施された。
(※ 読みは「アテブレーベ・オブリガード」。「また会いましょう、ありがとう」の意)
エピソード
- 言葉遣い(特に助詞を抜く表現)が戦国時代の話し言葉としては古すぎると指摘されたが、訂正はされなかった。こうした助詞抜きの言葉遣いは、脚本家が共通する『武田信玄』などにも見られる傾向である。
- 明智光秀を演じたマイケル富岡(アメリカ出身)は、日本人レベルの流暢な日本語は話せたものの、あぐら、正座などの日本特有の動作ができず苦労したという。
- ルイス・フロイス役のフランク・ニールは出演が決まった際に日本語の特訓を開始。クランクアップ時まで特訓していた。
- ポルトガル語指導担当の安部井シルビアは指導に厳しく、少しでも発音がおかしかったりすれば、中々OKを出さなかったほどだった。
- 加納随天を演じた平幹二朗は、失明した随天の気迫や異様さを表現するために、コンタクトレンズを片目に2枚ずつ入れて芝居をした。だが、やはり目の痛さは尋常ではなかったようで、過酷な撮影の連続になってしまったという。
- 秀吉役の仲村トオルは、次回作の琉球の風でも第1話のみゲスト出演した。
オープニング
大河ドラマで初めて歌詞が付けられているのが特徴で、この歌詞はオープニングのサビに付されている。こうした歌詞付きのメインテーマは、本作と同様のスタイルの『新選組!』、それに完全にフルボーカルでNHK交響楽団が演奏しない『琉球の風』など、本作以降の大河ドラマでも度々見られるようになった。
スタッフ
原作・脚本…田向正健
音楽…毛利蔵人
演出…重光亨彦 他
主な登場人物
- 織田信長…緒形直人
- 帰蝶…菊池桃子
- 市…鷲尾いさ子
- 織田信秀…林隆三
- 織田信定…船越英二
- 織田信行…保阪尚輝
- なべ…若村麻由美
- 林秀貞…宇津井健
- 池田恒興…的場浩司
- 柴田勝家…滝田栄
- 羽柴秀吉…仲村トオル
- 明智光秀…マイケル富岡
- 徳川家康…郷ひろみ
- 土田御前…高橋惠子
- 斎藤道三…芦田伸介
- ルイス・フロイス…フランク・ニール
- 加納随天…平幹二朗
- 語り…ランシュー・クリストフ