その人の名を口に出してはならない。
概要
「ウィザーディング・ワールド(魔法ワールド)」の人物。魔法使いの男性。
「ハリー・ポッターシリーズ」に登場する。
主人公ハリー・ポッターの宿敵にして、彼の両親であるジェームズ・ポッターとリリー・ポッターの命を奪った仇でもある。
開闢以来の最悪の魔法使いであり、当代最強の力を持つ。純血主義という魔法族の選民主義・民族浄化をイデオロギーとして掲げ、イギリス魔法界で暴虐の嵐を巻き起こした。
その恐ろしさから名前を呼ぶことすら憚られた結果、「例のあの人」や「名前を呼んではいけないあの人」と呼ばれる。
肌は青白く、髑髏あるいは蛇のような恐ろしい顔をしている。髪・眉毛・鼻がない。眼も蛇を思わせる縦長に切り裂いたような瞳孔であり、紅色(映画版では瞳の色が青になっている)。
「ヴォルデモート卿は……僕の過去であり、現在であり、未来なのだ」
その正体はかつてホグワーツで最も優秀な学生だったと言われるトム・マールヴォロ・リドル。
過激な純血主義者だが、本人は非魔法族の父と純血魔法族の母との間に生まれた半純血。
父と同じ名前を嫌い、学生時代から密かにヴォルデモート卿と名乗っていた。
当時はゲラート・グリンデルバルドに近い知能犯タイプであり、パワーよりも自身の容姿や巧みな話術といった繊細な人心掌握を主軸としていた。用意周到な計画と知略によって数々の完全犯罪を成し遂げるなど、現在とはほとんど別人。
元々はハリーも認める程の美形で、黒髪・黒眼・細身でどことなくハリーと通じる雰囲気を持つ細面の青年だった。激昂した際には瞳が紅色に染まる体質。
分霊箱をはじめとする闇の魔術の影響で、前述のような顔へと変わり果てた。本人は父親似な顔への未練はなかったらしく、作中では気にも留めていなかった。
呼称・発音について
正確には「ヴォルデモート卿」(原語:Lord Voldemort)で、本名のアナグラムにより作られた自称。
ヴォルデモート(Voldemort)とはフランス語の「Vol de mort」が元で、「死の飛翔」あるいは「死の窃盗」を意味する。正確には末尾につけられる「t」は発音せず、「ヴォルドゥモール」あるいは「ヴォルデモー」と呼ぶのが正しい。そのため、日本語吹き替え版映画シリーズや文庫版ではヴォルデモートと呼ばれているが、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』では一貫して「ヴォルデモー」の呼び方になっている。ただし、原語版(英語)の映画内でも「ヴォルデモート」と呼んでいるキャラクターもいるほど浸透してしまった呼び方のため、原作者であるローリング自身も、「(末尾の「t」を発音しない)その呼び方をするのはおそらく私だけでしょう」とファン達の発音の矯正は諦めている様子。
Lordは「卿」の他に「帝王」や「神」という意味もある。
プロフィール
Name | Voldemort
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---|---|
名前の意味 |
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異名 |
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正体・本名 | トム・マールヴォロ・リドル(Tom Marvolo Riddle) |
杖 |
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ペット | ナギニ(雌蛇) |
配下 | 死喰い人(Death Eater) |
象徴 | 闇の印(Dark Mark) |
ボガート | 死(自分の屍) |
誕生 | 1926年 12月31日 |
死亡 | 1998年 5月2日(享年71歳) |
映画版演者 |
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映画版吹替 | 江原正士(第1作〜第8作) |
ゲームEA版CV |
来歴
愛なき出生
ホグワーツ創設者の1人サラザール・スリザリンの末裔で、ホグワーツの伝説にある「スリザリンの継承者」その人。
さらに、死の秘宝を生み出したとされるペベレル三兄弟の長男あるいは次男の末裔でもある。
両家は強大な純血一族で、魔法界の歴史を凝縮したような血統ながら、複雑な事情から半純血(魔法を使えない人間であるマグルと魔法使いの混血)として誕生した。
スリザリンの末裔、聖28一族ゴーント家の長女メローピーは父や兄による家庭内暴力・虐待の末に家出し、ハンサムなマグルの男性を愛の妙薬により強制的に自分の夫とした上で子供を孕った。
妊娠後、メローピーが妙薬を使わなくなったため薬の効果が切れた父は逃走。メローピーはそのショックで廃人同然となる。
這う這うの体となったメローピーはロンドンの孤児院に飛び込んで赤ん坊を出産し、死の間際に息子に夫と父の名前を組み合わせた名前を付ける。以降、トム・マールヴォロ・リドルは出自を知らぬままマグルとして生きることとなる。
ただし、以上の事実は本人とアルバス・ダンブルドア、そしてダンブルドアから知らされたハリー・ポッター以外は誰も知ることはなく、決して公にされたことはなかった。
ヴォルデモート卿の本名、学生時代、血族については闇に包まれており、死喰い人の側近にすら明かされたことはなかった。
彼は、自らの過去を捨てたのである。
邪悪の台頭
1950年頃、ヴォルデモート卿と名乗る人物が英国魔法界に姿を現す。
純血主義者を中心に人々の関心を集める。
この頃は死喰い人も組織されておらず、その前身となる彼の支持者は「ヴァルプルギスの騎士(ナイト・オブ・ヴァルプルギス)」と呼ばれていた。
また彼の危険性に気づく者もほとんどいなかった。
そして本編開始の20年前の1970年頃、彼は「純血主義」の名の下に、仮面をつけた「死喰い人」や吸魂鬼や巨人や人狼といった闇の生物と共にマグルや敵対者に大弾圧を行った。
一部の者はこういった見境のない囲い込みを「真に差別のない思想を持つ証」と誤解し、自ら下ることもあった。当然「使えそうだから」というだけで、「迫害を受けた者への慈悲」などでは一切無い。ヴォルデモートが掲げた純血主義の膾炙に伴って魔法界は賛成派と反対派に分断され、誰が死喰い人なのか分からないこと、魔法省に内通者がいたことも相まって魔法界は大いに混乱。果ては政治に直接関わりが無いはずの学生達にまで対立が波及、ヴォルデモートの出身寮であるスリザリンの名声は地に堕ち、世は暗黒時代と化す。
この時からヴォルデモートの名は恐怖の対象となり、イギリス全土で「例のあの人」「名前を呼んではいけないあの人」と呼ばれるようになる。犠牲者の数は凄まじく、最も強力とされた魔法使いたちが死亡している他、有力な非純血主義の旧家が族滅に追いやられている(ロンの母モリーの実家、プルウェット家等)。
その規模は一世代前に「史上最強にして最悪」と謳われたゲラート・グリンデルバルドの存在を人々の記憶から霞ませてしまったほど。
なお、当時闇の勢力に対抗していたのが、ホグワーツ校長アルバス・ダンブルドア率いる秘密結社不死鳥の騎士団である。
ただし、数的には死喰い人の方が圧倒的に優位であり、ハリーの両親を始め当時の騎士団のメンバーの多くが命を落としている。
この戦乱期は英国〜欧州魔法史において最悪の暗黒時代とされ、「Wizaring War(魔法戦争、魔法使いたちの戦い)」と呼ばれている。
しかし、開戦から約10年後の1981年のハロウィン(10月31日)、とある「予言」に従ったヴォルデモートは当時赤ん坊だったハリー・ポッターの殺害に失敗。
逆に自らの死の呪いが跳ね返り肉体を失った。
帝王の復活
「父親の骨、知らぬ間に与えられん。父親は息子を蘇らせん」
「下僕(しもべ)の肉、喜んで差し出されん。下僕はご主人様を蘇らせん」
「敵(かたき)の血、力ずくで奪われん。汝は敵を蘇らせん」
肉体を失ったヴォルデモートは霊魂以下の状態でアルバニアの森を彷徨っていた。
これは後述するが、彼が魔法により不死性を獲得していたからである。
ダンブルドアなど一部を除いて世間はヴォルデモートは完全に死亡したと思っており、1981年から約10年間は魔法界は平和であった。
しかし、ハリー・ポッターが11歳になりホグワーツ魔法魔術学校に入学する頃から、ヴォルデモートは徐々にその力を取り戻す。
そしてハリーが4年時(第4巻)の学年末に復活。魔法界は2度目の大戦へ突入していく。
これらの詳細な過程はハリポタシリーズ全7巻を参照されたし。
終幕
第二次魔法戦争の末期に勃発した「ホグワーツの戦い」において、アルバス・ダンブルドアの計略とハリー・ポッターの活躍により全ての分霊箱を破壊され、最終的には1998年5月2日にハリーとの一騎打ちで敗北し命を落とす。
ヴォルデモートの敗因は様々な要因が複雑に絡み合っているが、簡潔にまとめると以下の2つとなる。
- 「ヴォルデモートが生きている限りハリーが死ななくなっていた」
1981年10月31日にヴォルデモートが当時1歳のハリーを殺すべく放った"死の呪い"(アバダ・ケダブラ)はリリー・ポッターの愛による防御呪文で跳ね返され、逆にヴォルデモート自身が肉体を失う結果となったが、実はこの時もう1つ重要な事が起こっていた。
あくまでもダンブルドアの推測によるものだが、ヴォルデモートの魂は度重なる分霊箱の作成によって非常に不安定な状態になっていた。両親のみならず幼子までも殺そうというダンブルドア曰く「言語に絶する悪行」を為そうとした時、死の呪いを返されたヴォルデモートの魂は本人が意図しない形で引き裂かれ、その欠片がその場にいた唯一の生きた魂…すなわちハリーに引っ掛かった。
つまり、ハリーは「ヴォルデモートが事故的に作ってしまった分霊箱」だったのである。
ハリーが蛇語を話すことができたり、ヴォルデモートとの間に精神的な繋がりが生じていたのは、彼の魂にヴォルデモートの魂の欠片が付着していたためであった。
1995年6月、ヴォルデモートはワームテールとバーテミウス・クラウチ・ジュニアの協力によって、蘇生魔術で自身の肉体を復活させた。
この時、儀式に用いる材料として「父親の骨」「下僕(しもべ)の肉」「敵(かたき)の血」の3つを揃える必要があったのだが、このうち「敵の血」としてハリーの血液を使った。
これによって、ヴォルデモートの肉体はハリーの中にあったリリーの防御呪文まで一緒に取り込んだため、ヴォルデモートはハリーと接触しても彼に宿る加護に体を焼かれなくなり、ハリーはヴォルデモートの肉体が生きている限り死ななくなったのである。
ヴォルデモートはあの事故の影響に気付かないまま、「強力な魔法特性をもったもの」という分霊箱を破壊することが出来る条件を満たすニワトコの杖を用い、アバダケダブラをハリーに使用した。
結果として、上記と下記の理由でハリーを殺すことはできず、ハリーの中にあったヴォルデモート自身の魂の欠片のみが破壊されることとなった。
- 「ニワトコの杖の忠誠心を得ていなかった」
作中でギャリック・オリバンダーが語ったところによると、「全ての杖は持ち主を選び、その持ち主に対し忠誠心を持つ」。そのため杖の忠誠心を得ていない魔法使いや魔女がその杖を使うと、唱える呪文の威力が弱くなってしまう。
忠誠心は不変ではなく、勝ち取ること(殺害する、(エクスペリアームスによって)武装解除する、力尽くで奪取する)によって次の持ち主に移る。
ただし、計画された死(殺す・殺されることを事前に示し合わせる)では忠誠心は変化しない。通常の杖は、持ち主が変わった場合、新しい持ち主に対する強い忠誠心を持つものの、以前の持ち主への忠誠心も完全には失わない。
しかし死の秘宝の1つで、「死の杖」「宿命の杖」とも形容されるほど強力な魔法特性を持つニワトコの杖の場合、新しい持ち主への忠誠心が非常に強く、以前の持ち主への忠誠心を完全に無くすという特徴がある(そのため「殺人によって継承されてきた」という伝説がある)。
この杖は長きに渡ってダンブルドアが所持していたが、自分の死期を悟ったダンブルドアはニワトコの杖の忠誠心が自分以外の誰かに移動しないように、セブルス・スネイプと示し合わせて「スネイプにダンブルドアを殺させる」という計画を立てた。
ところがこの計画は、スネイプが殺す前に、ドラコ・マルフォイがダンブルドアにエクスペリアームスを成功させたことでニワトコの杖の忠誠心がドラコに移ってしまい、密かに頓挫していたのである。
ヴォルデモートはダンブルドアの墓から盗み出すことによってニワトコの杖を入手し、ナギニに命じてスネイプを殺害させたが、その忠誠心は得られなかった。
ドラコがダンブルドアからニワトコの杖の忠誠心を奪っていたことも、ダンブルドアがスネイプと示し合わせていたこともヴォルデモートは知り得なかったのである。(たとえドラコがダンブルドアを武装解除しなくても、スネイプは事前に示し合わせた上でダンブルドアを殺害したため、いずれにせよ忠誠心がスネイプに移動することはない)。
ドラコはこれらの事情を何も知らないまま、ニワトコの杖に触れることさえなくその忠誠心を勝ち取っていたわけだが、マルフォイ邸で繰り広げられたハリー達と死喰い人との戦闘において、ハリーがドラコから彼の杖(オリバンダー製)をエクスペリアームスで奪い取る。
この瞬間、彼の杖とニワトコの杖、どちらの忠誠心もドラコからハリーに移動した。
つまり、ニワトコの杖の真の所有者はハリーとなっていたのである。
最終的にヴォルデモートはハリーと対峙した際に、自分ではなくハリーがニワトコの杖の忠誠心を得ていることを告げられ、これまでに犯した罪に対する悔恨(分霊箱の作成によって分割された魂を元に戻す唯一の方法であるが、自らを滅ぼすほどの苦痛を伴うとされる)のチャンスを与えられたが、これを無視し、ニワトコの杖を用いてアバダケダブラをハリーに放つ。
ニワトコの杖の強固な忠誠心によって、杖の真の所有者であるハリーにアバダケダブラは効力を発揮せず、逆にハリーの放った武装解除呪文によってヴォルデモート自身に押し返された。
この件に関連して、ダンブルドアに対して過大な評価をしていた点も敗因の1つである。
作中におけるダンブルドアの力量はニワトコの杖で少なからずともブーストされた上でのものであった。
通常の相手であればヴォルデモートは自分と対等以上に渡り合う相手の過剰戦力を疑問視し、杖の正体に気付く事は容易であったはずである。
しかし、ダンブルドアは決してヴォルデモートに弱みを見せないように努め、ヴォルデモートは唯一自分と渡り合うダンブルドアを必要以上に恐れた。
結果として、ニワトコの杖でブーストされているダンブルドアの実力を今この世に生きる最も偉大な魔法使いと呼ばれたダンブルドア本人の才覚と誤認し、杖の確保が大きく遅れる事になった。
もしも杖の確保が迅速であれば7巻の大半を杖の捜索に費やしたヴォルデモートは自由に行動できる事になり、最終的な戦局は大いに変わったはずである。
このように幾重にも重なった要因によって、ヴォルデモートの魂と肉体は完全に滅び去った。
その魂を自ら引き裂いていた代償として、死した彼はゴーストになって現世に戻ることも死後の世界に進むこともできず、永遠に生死の世界を彷徨うことになった。
年表
幼年期
1926年 大晦日(12月31日)に孤児院で誕生。
少年〜青年期
1938年 約11歳 ホグワーツ入学。スリザリン寮に選ばれる。
1942年 約14歳 ホグワーツ監督生に選出される。秘密の部屋を開き、マグル生まれの女子生徒を殺害。罪をルビウス・ハグリッドに着せる。この時に初めて分霊箱を作成。
1943年 約15歳 在学中に父とその両親を殺害。罪を伯父に着せる。この時に初めて母方の血筋を正確に知る。ゴーントの指輪を入手。
1944年 約16歳 ホグワーツ首席に選出される。
1945年 約17歳 ホグワーツを卒業。
1946年 約18歳 ボージン・アンド・バークスに勤めるが、ヘプジバ・スミスの殺害に関与し蒸発。ハッフルパフとスリザリンの遺品を入手。ここで本名と過去を捨てる。
ー空白の10年ー
1956年 約28歳 ダンブルドアにホグワーツ教授職を求めるが拒絶される。
この際、某所で入手していたレイブンクローの遺品を必要の部屋に隠す。
この時点で既にヴォルデモート卿の名は浸透していたが、人々から関心を得ており恐怖の対象ではなかった。既に外見はやや恐ろしげに変化し、瞳が完全な赤に。
ー約10年間でヴォルデモート卿として台頭ー
壮年期・中年期
1970年 約44歳 死喰い人と共に第一次魔法戦争を起こす。本性を現したヴォルデモートを人々が恐れ始める。
1970年代後半 英国魔法界を事実上支配する。その名を呼ぶ事を憚る習慣が生まれる。
1979年 約53歳 闇の帝王を滅ぼす可能性を持つ唯一の存在が生まれる予言を知る。
1981年 約55歳 予言の子ハリーに死の呪いを反射され一時的に破滅する。第一次魔法戦争が終結する。
ー約10年間仮死状態で潜伏ー
高年期
1994年 約68歳 肉体を取り戻す。第二次魔法戦争を起こす。
1997年 約71歳 魔法省を制圧。今回は表には姿を現さず黒幕として英国魔法界を支配する。
1998年 約72歳 グリンデルバルドを殺害。ホグワーツの戦いでハリーに敗北し、完全な破滅を迎える。第二次魔法戦争が終結する。
能力
至上の魔法使い
最強であるアルバス・ダンブルドアをして「存命中の魔法使いの誰をも凌ぐ広範な知識を備える」「私がどれほど巧妙な魔法を用いてもヴォルデモートには突破される」と言わしめる力を持つ。
戦闘においては即死の呪い「アバダケダブラ」を主軸に「悪霊の火」を思わせる「炎の大蛇」、ニワトコの杖の呪文さえ弾く「銀色の盾」などを操った。
アバダケダブラを一発撃つだけも強力な魔法力が必要とされるため、それをメインウェポンとして連射するというのは相当な魔法の使い手であることを意味している。
神秘部の戦いにおいてはダンブルドアにはさすがに劣勢となり撤退しているが、ニワトコの杖を用いるダンブルドアですらヴォルデモートを倒す事も捕縛する事もできず、ほんのわずかなダメージを与える事すらもできなかったのである。
そもそも学生時代から非凡な優等生であり、直接的な決闘術以外の魔法も熟達している。
開心術の腕前は人知を超えると称され、他人の記憶を自由自在に改竄する事もできる。
ヴォルデモートの開心術はあまりにも強力で、常人の閉心術など意に介さず、相手の心を細切れにして全てを見通す事ができる。
作中ではバーサ・ジョーキンズに本気の開心術を使用し廃人にしている。
ジニーからは「何にも疑わない人達を罠にかけて捕らえるような事が上手」、ハリーからは「その気になれば、魅力的になれた」とそれぞれ評されている。
無言呪文はもちろんのこと、杖なしで魔法を使うこともできる。
これは最高位の魔術師にしか使えない繊細な奥義であり、ホグワーツ入学前から独学で習得していた。その実力を強調するためか、映画版では素手で魔法を使う場面が増加している。
『ハリー・ポッターと呪いの子』では、ネビル・ロングボトムが死亡してナギニが倒されなかった場合の未来が描かれているが、こちらはヴォルデモートが戦況を覆し、闇の陣営が勝利する事となった。
つまり、ヴォルデモートたった1人で「ホグワーツの戦い」の勝敗が左右されるほどの力を有していたという事になる。
それに加えて、7巻終盤のホグワーツの戦いにおいては、数百は下らないであろう手下共の総攻撃でもビクともしなかったホグワーツの守りを一撃で破壊している。
これらはどちらも、杖が言うことを聞かず並の杖以下の力しか出せていないというハンデを負っている状態でのことである。
それはすなわち、手下共を束にしたよりもヴォルデモート1人の方が強いということを意味する。
なお、映画版ではフリットウィックなど教授陣数人で張った結界という印象だが、原作ではそもそも何人も突破不可能と評される強固な古代魔法によるホグワーツの守護結界が存在し、それを教授陣がさらにパワーアップさせたものである。
秘術の探究者
魔法の探究者としての一面もあり、数々の新術の発明を行っている。
例えば「欠損した肉体を修復する魔法(ピーター・ペティグリューに用いた)」「箒を用いずに煙のように空を自在に飛ぶ魔法」などを開発している。
作者は箒なしで空を飛べる人物を「魔法使いの中のトップ1%、そのさらに上位の者だけ」としており、ヴォルデモートはこの条件に当てはまる数少ない存在となる(ダンブルドアでさえ空を飛ぶには箒を用いる)。
しかも、ヴォルデモートの飛行速度はセストラルにも容易に追いつくほど速い。
セストラルは競技用箒ファイアボルトをも上回る速度とされており、そのファイアボルトすら時速150マイル/時速241.402km以上ものスピードを誇っている。
まさに「死の飛翔」である(映画版では見映えのためかなぜか成人の魔法使いのほとんどが使用できる。ただし、箒を超えるスピードを出せないため、本格的な飛行には原作同様ヴォルデモート以外は箒を用いている。)。
また、一定の条件下において運命を操作することができ、かつて「闇の魔術に対する防衛術教授が1年以上在籍する」という事象が未来永劫排除されるよう運命を操作した。
これはダンブルドアがニワトコの杖を用いてさえ修正することはできなかったため、かなり特殊な魔法であることがうかがえる。
作者曰く、彼は魔法の深淵にある法則を捻じ曲げており、究極的な力と技を発揮する事ができた。しかし、ハリーの杖がヴォルデモートに対してのみ異常に強力になるという事象の原因でもあったという。作中でもダンブルドアから「魔法の深淵にある法則をいじくった」と言及されると同時に「愚かな事」とも言及されている。
不死の禁術
学生時代から不死魔術ホークラックス(分霊箱)により魂を7つ(実際には8つ)に引き裂き体外の物品に閉じ込めており、その全てを破壊しなければ倒せない。
分霊箱それぞれに強力な防衛魔法がかけられているだけでなく、当時の彼の邪悪な魂が分霊箱を持っている者を乗っ取ろうとする。
しかもどこに隠されているか他人からは分からない。
これら全てを破壊することはほとんど不可能であり、ヴォルデモートは不死も同然となっていた。ダンブルドアもヴォルデモートを「不滅、或いは他の誰も到達できないほど不滅に近い」と認めている。
歴史上に分霊箱を作った魔法使いはいても、複数、それも7つに自分から魂を引き裂くという行為は魔法の技量的にも倫理的にも常軌を逸しており、ゲラート・グリンデルバルドを倒したダンブルドアも、ヴォルデモートを倒す手がかりを掴む、ただそれだけで人生の大半を使う事になった。
彼が作った分霊箱の一覧は分霊箱の項目を参照。
悪の首領
彼の元には学生時代から、「自分より洗練された暴力に惹かれる乱暴者」「栄光のおこぼれを得たい欲深者」「庇護を求める臆病者」などが集った。
ヴォルデモートは悪としてカリスマ性を持っており、それは同じような悪を誘惑し惹きつけ、支配してきた。また、純血を守るという大義名分は多くの保守派にとって魅力的であった。
人物像
性格
邪悪にして苛烈
ダンブルドアが「開闢以来最も危険な魔法使い」「通常我々が悪と呼ぶものを超越している」とまで評するほどに邪悪。
敵にも味方にも一切容赦がなく、邪魔な石ころをどけるのと変わらない心情で、他人を心身共に傷つけ、踏み躙り、殺してしまう。
突発的な事故ではない、確固たる殺意を持った殺人を行わねば作成できない分霊箱を7個も作れたことはそれを明確に示している。
しかし、自分の力が極まるまではその邪悪な本性を決して人前に晒そうとはしなかったため、かつての才能に満ち溢れた美しい魔術師と同一人物だと気付いた者は極少数だった。ただし、幼少期からいじめの主犯であり(やり返しの可能性もあるが)、孤児院の子供達から物を巻きあげたり、ペットを痛め付けたり、恐怖を味わわせたりするなど、既に片鱗は見えていた。
青年期も裏では躊躇なく人殺しをしている(描写されている分では3人)あたり、生粋の俺様気質である。
作者公認のサイコパス。おそらく母方の濃すぎる血も影響している(母方のゴーント家には精神病気質の人間が多かった)。
映画版ではカットされているが、死喰い人達への制裁としていちいち極限の苦痛を与える磔の呪いをかけるなど、その残虐さはもはやヒトのそれではない。
自己愛と孤独
愛や他者との関係性に基づく魔法を過小評価しており、学生時代からダンブルドアと多くの議論を重ねたが平行線をたどった経験がある。
成人後も闇の魔術を研究する過程で、「愛が力に勝る」というダンブルドアの信条を決して認めなかった。認めてしまえば自分の存在を全否定されたも同じなので当然であったとも言える。
また「依存」を何よりも嫌い、他人に対する信頼は皆無。幼少期から何事も一人で事を成したがり、初めて魔法界に足を踏み入れた時から一人で教科書を揃えてホグワーツに出向き、以来現在に至るまで家族や友人、仲間を必要としたこともない。配下である死喰い人に対しても、友人ではなく召使いという認識に近いとダンブルドアに言われている。
卓越した魔法の技術により、杖や箒さえ必須ではなくなった。闇の帝王となってからも、重要な仕事は自身の手で行うことを好み、そのためドラコ・マルフォイにダンブルドア暗殺を命じたのはかなり珍しい例である。
そんな彼が唯一気を許す存在が巨大な雌蛇であるナギニ。
愛を否定するヴォルデモートだが、ダンブルドアが言うには「もしもヴォルデモート卿が何かを好きになる事があるとすれば、それはナギニだろう」との事。
ハリーは「ヴォルデモートはホグワーツに強い愛着があったのではないか」と考えていた。
孤児であり周囲に恵まれず、家と呼べる場所がなかったヴォルデモートにとって、ホグワーツは初めて自分が魔法使いとしてありのままでいることが肯定される場所であり、好きなだけ学ぶことのできる場所だった。
実際に、ヴォルデモートは幾度となくホグワーツ教授の職を求めており、分霊箱の隠し場所としても選んでいる。
このように自己以外を基本的に考慮しないため、「裏切りに気付かない」「自分が無価値と切り捨てたものには恐ろしく無知」「保身に執着するあまりやり過ぎて墓穴を掘る」といったミスが多く、特に物語終盤ではダンブルドアの計画やハリーの活躍もあって分霊箱の大半を破壊されるまで自らの危機に気づかなかった。
魔術への耽溺
愛することをしない彼だが、特定のものへの「愛」着は激しい面が見えてくる。
まず幼い頃から収集癖があり、相手から奪った物をコレクションしていた。
学生時代から魔法界の伝統的な品々に関心が強く、己の魂の入れ物も創設者の遺品や自分の家宝で揃えている。
またその隠し場所は自分にとって特別な場所にしたり、予言を信じて行動したり、ハリーを自らの手で殺すことに固執したり、いかなる時も決闘の際はお辞儀をさせ、相手への敬意を見せるなど「礼儀」「験担ぎ」や「流儀」を重んじる。
ここから見えるのはヴォルデモートのある種の依存傾向である。ヒトへの愛情はないが、自分を特別にしてくれる魔術をはじめとするモノやコトを過剰に礼賛している。裏を返せば惨めなマグルとしての自分から目を背けたい貧乏性なのである。
思想
原作・映画版でも共通する描写として、支配者であるという事を強く意識した言動が多いものの、実際には表立っての権力や栄誉、女性や富を求めることはなかった。
死喰い人を結成し、魔法界からマグルや、マグルとの間のハーフを迫害・弾圧する強い選民思想を持っているが、マグル支配もグリンデルバルドなどと比べるとイデオロギーとして利用している側面が強く、選民思想自体も、魔法界に従来から存在する過激な保守派の思想であり、彼特有の思想ではない。
彼が前進する最大の動機は、「死の克服」そして「自分の血筋の正当化」である。
不思議な話なのだが、数多の人を犠牲にし政府まで乗っ取った悪が求めたのは実は「自己防衛」と「保身」のみであり、強大な力や不遜な態度や言動とは裏腹に、欲求そのものはむしろ矮小かつ賎陋(せんろう)である。
世界を支配するほどの悪の欲求というものは、おおよその場合「全人類が幸福になるために全人類を管理する」という、行き過ぎた正義や理想としての高尚な一面が存在するのだが、彼の言動にはそんな理念は無い。
これは彼の思想の本質が唯一無二の特別な存在になりたいという自己顕示欲にあり、究極的には誇大妄想を拗らせてしまっただけでしかないという事が根底にある。
皮肉なのは、彼の持つ「特別な何かになりたいという願望」は、万人が、それこそマグルですらもが持ちうる「ごく普通の欲求」でしかないという事だろう。
言い換えるならば彼は、「偶然周りより強大で非凡な才能を持っているだけの、ちっぽけで平凡な人間」でしかなかった。
これは「愛という平凡な思いが何よりも特別な魔法」というハリー・ポッターのテーマが裏返しの形で現れたともとれる人物造形であり、「どんなに特別な才能が有ろうとも、その本質は凡人と変わらない」と言うヴォルデモートの存在は、解釈次第ではシリーズ最大の道化なのである。
血と死への拘泥
自己愛が強い反面、強烈なコンプレックスの塊であり、特に血筋と自分の死に対しては終生において異常なまでに執着していた。
母が死んで自分が孤児となったこと、母がスリザリンの継承者であるにもかかわらずマグルへの歪な愛に狂い、自己を守れずに死んだことが彼の中で凄まじい劣等感となっているからか、ある種幼稚なまでに彼は自分自身の死を極端に恐れている。
また孤独であり適切な愛情や教育を受けなかったこと、そして魔力や血統により自分が特別であると認識したことで彼の世界における自他が完全に切り離され、自分の命を守るためにいくらでも他者を犠牲にするようになった。
ヴォルデモートは「誰にも愛されたことが無かったから、誰も愛さなかった」のである。
作者曰く「メローピーが生き残って彼を育て、彼を愛していたらすべてが変わっていたでしょう。」とポッターモアで記述している。
また、ボガートがヴォルデモートに見せる恐怖は「自らの死体」である。
主な人間関係
- ハリー・ポッター:最大の因縁の相手。自らの手で殺すことに固執する。
- アルバス・ダンブルドア:かつての師で仇敵。初対面の時点から自分の本性を見抜き、決して自分の意のままに操れなかった唯一の人間である彼を、「自分より手強い相手」と認識して内心では非常に恐れている。アルバスの存命時にはホグワーツには一切の手出しをせず、排除する時となっても自らに何らかの不運が起こることを恐れ、ドラコに暗殺を行わせる手段を使った。普通ならば選択肢の一つであり違和感を覚えることではないが、他人を全く信用せず重要な案件は自分で行う彼の性格を考えると異常な行動といえる。なお、その恐怖心はアルバスの死後も消えることはなく、ハリーのレジスタンスが活発になるに連れて逃れることのできないトラウマとなり疑心暗鬼に陥っていった。
- ベラトリックス・レストレンジ:最大の腹心であり弟子。
- セブルス・スネイプ:腹心として重用。しかし……。
余談・裏話
リアルでも正体はイケメン
トム・リドル時代の彼が美形であった事は前述の通りだが、あの恐ろしいヴォルデモート卿状態の彼を演じているレイフ・ファインズはベテラン英国人俳優勢内でもトップクラスのイケメンであり、よく「ヴォルデモートを演じているのはこの人」という情報のみで初めて彼の素顔の写真等を目にした者が己が目を疑わんばかりに驚いた等といった話はわりかし良く聞く。
言うまでもなく本人に鼻はちゃんとあり、特殊メイクでのっぺり顔と青白肌にはしてるものの、鼻だけはCG加工で消していたとの事。
ともあれ、鼻有りでも十分におどろおどろしいそのメイク状態でファインズ氏は「この機にフザケなければ損」とでも思ったのか、撮影機材を手にスタッフ相手に幾度となくチョケて回っていたらしく、その光景は抱腹絶倒のオフショットフォトという形でしっかり残されている。
そのカリスマ性をリアルでも遺憾無く発揮して飛行機でCAと盛ってしまったなんてエピソードも……。
「イケメンな上にユーモラス」だなんて、ぶっちゃけズルい…
一人称と迷言
よく邦訳版での一人称が俺様であることや、おじぎをするのだという台詞から日本ではネタ的な人気を誇る。
多くのAAも作られた。
どちらも原語での雰囲気を損なうという評価が主流だが、ヴォルデモートの俺様感や言動から垣間見える幼稚な精神性を表現するのには合っているという声もある。
LEGOムービー
「レゴバットマンザ・ムービー」にキングコングやサウロン達とサプライズゲストとして出演 (ちなみに、ヴォルデモートにはサウロンの親玉冥王モルゴスと似ている部分もある。「Dark Lord」という自称は冥王の原著版の表記。また、MERPにはクトゥルフ神話と似た描写の存在が登場するが、そこに「名前を言ってはいけない存在」も含まれている)。
極悪ゾーンに投獄されていたところをジョーカーの手引きで脱獄。魔法を使って活躍したものの、バットマンファミリーの活躍で再びファントムゾーンへ投獄された。
子供向け映画である為か、映画版で多用したアバダケダブラなどは使用せず、浮遊術や変身術などを使う程度に留まっている。(お前そもそも児童書のキャラなのに人殺しすぎだろなどとツッコんだら即アバダされる。)
演じたのはエディー・イザード(日本語版は山路和弘)。ハリポタ映画版でヴォルデモートを演じたレイフ・ファインズが出演しているものの、こちらのファインズはアルフレッド・ペニーワース役を演じている。
2012年ロンドンオリンピック
開会式にヴィランズの一員として主人公ハリーを差し置いて登場。同式ではJ・K・ローリング女史や、『秘密の部屋』でギルデロイ・ロックハートを演じていたケネス・ブラナーも出演している。
関連イラスト
関連タグ
イゾルト・セイア:母方の血筋がゴーント家で、ある事情から自身のフルネームを並べ替えた偽名を使用していた点が共通。だが、こちらはヴォルデモートとは対照的な生涯を送っている。
蛇を操る、青白い蛇のような顔、不死に執着している等やけに共通点が多い。
(NARUTO自体奇妙なまでにハリー・ポッターと共通点が多い。)
こちらも分霊箱のようにバックアップを作っており死亡しても条件が揃えば復活する事が出来る。
ゴア・ザ・ゴッド・ブッチャー:MARVEL作品に登場するヴィラン。性格や経歴はどちらかと言えば正反対なのだが、白い肌・黒い服・切れ込みを入れたような鼻と外見がそっくりなため、実写化に際しては意識して変更された。(参考)