最も暗く、最も穢れた場所に蔓延り、凋落と絶望の中に栄え、平和や希望、幸福を辺りの空気から吸い取る。
概要
ウィザーディング・ワールドに登場する闇の生物。腐敗した灰色の肌で、黒いローブを常に被っている。浮遊しながら辺りに冷気を放つ。
人間の感情、幸福感を餌として貪る。ディメンターが近くにいるだけで普通の人間は絶望と憂鬱に苛まれる。(過去のトラウマがフラッシュバックすることもある) また、顔を覆うローブを脱ぎ「キス」を行うことで、人間の魂そのものを吸収することができる。これを行われた人間は抜け殻になり、廃人同様になることが作中で示唆されている。
なお、「廃人同様」とはいうが、魂を抜かれ空っぽにされているので、精神の問題であり何らかの事情で立ち直れば再起出来る廃人とは異なり、どんな奇跡が起ころうと社会復帰は不可能である。
幸福な思い出をトリガーに正のエネルギーを放出する魔法である守護霊の呪文「エクスペクト・パトローナム」が唯一の天敵。
ただしとても高度な魔法(特に有体の守護霊の召喚)なうえ、そもそも吸魂鬼は近くにいるだけで幸せな記憶を減衰させ守護霊呪文の発動を困難にするため、ほとんどの魔法使いはディメンターに対して無力である。
ちなみにシリウス・ブラックの「自分は潔白である」という意志は「幸福な思い出」でもなんでもない「絶対的に確固たる事実」でしかないためディメンターは吸い取ることはできなかった。
一般的な者は「潔白である」事よりも、幸福が色褪せていくことの方に耐えきれないが、彼はピーターへの報復心というこれまた幸せでも何でもない、むしろ吸魂鬼の好まない後ろ暗い意志によって正気を保っていた。
通常ディメンターの影響による精神的な傷にはチョコレートが効くらしく、これが歴とした医療法となっている。
普段は魔法省に管理され北海の牢獄アズカバンで看守を行なっている。魔法族がアズカバンを恐れるのはディメンターの存在が大きい。またホグワーツの警備に派遣された際は、許可証を持つ生徒のみホグズミート村への通行を許すよう指示されていた。このように、言葉を交わす描写はないが人間との意思疎通がある程度可能なようである。ただし、決して人に忠実ではなく、自分の餌となる人間が差し出されなかったり、相手が守護霊により防衛されていなかった場合は容赦なく牙を剥く。
ディメンターが闇の生物と考えられている理由、それはこのような危険性だけでなく闇の魔法使いとの親和性にある。闇の魔法使いは守護霊なしでディメンターと共存することができる。(闇の魔法使いは例外を除いて守護霊を出せない/出さない)
実際にヴォルデモート復活後はディメンターはアズカバンを放棄して死喰い人に協力していた。ヴォルデモートいわくディメンターは「生来我らの仲間」であるらしい。
どのように繁殖するのか、寿命があるのかなど生態は謎に包まれている。
初めから生命として生まれていないため死も存在せず、守護霊によって退去させられることはあってもアバダ・ケダブラなどを受けても死ぬことはない。
作者いわく鬱がモチーフなので、人に心がある限りこの世界から去ることはないのかもしれない。
アズカバンが北にあること、シリウスが4巻で南方に逃げていたことから、南や暖かい所ではあまり活動できない可能性がある。(うつ病も日照時間と関係がある)
まぁ、南方は南方でレシフォールドというディメンターの近縁種とされる超危険な生物(?)が存在するのだが……。
ちなみにマグルには視認できない。ただしそれでも感情や魂を吸われる。ヴォルデモート復活後はマグルの世界にもディメンターが溢れ、原因不明の異常な霧と寒さ、そして人々のパニックが継続していた。
ホグワーツの戦いの後はキングズリー・シャックルボルト魔法大臣のもとアズカバンの看守の任を解かれ、人間が人間の看守をするようになる。これはアルバス・ダンブルドアの悲願でもあった。
余談だが、映画版ではディメンターのビジュアルをどう実写化するべきか試行錯誤した結果、「水中を漂っている」イメージで映像化された。
正体と歴史
闇の魔術師エクリジスが創造した生命体であると言われている。エクリジスは北海の孤島アズカバン要塞で魔法使いやマグルを対象に残虐な暴力と人体実験を繰り返した。
そしてエクリジスの死後、調査部隊が酸鼻をきわめる要塞の中で見たのが、人の魂を吸う鬼たちだったのである。
ダモクレス・ロウル魔法大臣はその要塞の堅牢さとディメンターの恐ろしさを見込んで、アズカバンは監獄として使用することを決定。ディメンターを看守とする政策を打ち出したのである。後の大臣であるエルドリッチ・ディゴリーは囚人たちが味わった恐怖と狂気を目の当たりにし衝撃を受けアズカバンを改革しようとした。しかし、「ディメンターを開放すればイギリス本島に攻めてくる」などといった反対意見にあい頓挫した。
「キス」
ディメンターは「キス」をするときのみローブを脱ぐ。
顔に眼はなく、窪んだ眼窩を皮膚が覆っており、口が大きく開いている。
「キス」を受けた魂がどうなるのかは不明。読者の間では「吸魂鬼に魂を吸われた人間は新しい吸魂鬼となる」と考察されることも多いが、これは公式設定ではなく原作でも裏設定でも言われてない。
(ただし、リーマス・ルーピンは「吸魂鬼には魂が存在せず、キスを受けた人間もまた同様に魂を失う」と語っている。)
ただ、ウィザーディング・ワールドにおいてゴーストになるには魂が必要であるとされているため、吸魂鬼の被害者は現世に痕跡を残すことは不可能であることは確かである。その点では彼の末路と似ている。
余談
「Dementor」は「発狂する」という意味の動詞「dement」を行為者名詞にしたもので、「狂気をもたらす者」、転じて「おぞましい怪物」といった意味を持つ。ハリポタ以前にも用例が無いわけではないが非常にマイナーであり、欧米でも単に「Dementor」と言った場合は本作の吸魂鬼を指すことが多い。