注意
- 「シリウス」というタグの作品が多いが、検索の利便性を考慮するならば「シリウス・ブラック」とフルネームでタグ付けするのが望ましい。
この記事では『ハリー・ポッターシリーズ』本編に登場する「シリウス・ブラック(三世)」を主に取り扱い、彼と同名の先祖二人(一世、二世)についても触れる。
概要
「君なら友を助けに来ると思った。君の父親も私のためにそうしたに違いない。君は勇敢だ。先生の助けを求めなかった。ありがたい。その方がずっと、事は楽だ」
『ウィザーディング・ワールド(魔法ワールド)』の人物。魔法使いの男性。
『ハリー・ポッターシリーズ』に登場。主人公ハリー・ポッターの名付け親(Godfather)(代父)(後見人)。ハリーの父ジェームズ・ポッターの一番の親友で、彼がリリー・エバンズと結婚する際の花婿付添人も務めた。
ジェームズとリリーがヴォルデモートの手にかかり命を落とした悲劇の夜、一人生き残った赤ん坊のハリーをアルバス・ダンブルドアにより指令を受けたルビウス・ハグリッドがダーズリー家へと連れ出す際、シリウスは自分の空飛ぶバイクをハグリッドに貸す。
第3巻にて本編に初登場。ハリーが「三本の箒」にてファッジやマクゴナガルらの話を立ち聞きしたところによれば、ヴォルデモートがポッター夫妻を狙っていると知ったシリウスは、彼らの居場所が死喰い人側に露見するのを防ぐべく「秘密の守り人」の役目を買って出たという。ジェームズは無二の親友であるシリウスを信用していたが、実は死喰い人側のスパイだったシリウスがポッター家の居場所をヴォルデモートに密告してしまい、結果、その年の10月31日の夜に夫妻がヴォルデモートの襲撃を受けて死亡する悲劇の原因を作った。
しかし、同時にヴォルデモートがハリーの殺害に失敗して失踪したため、裏切り者であるシリウスは後ろ盾を失って逃亡を余儀なくされる(ハグリッドはシリウスが自分にバイクを貸したのは逃亡するためだと考えていた)。その後、シリウスは自分を追跡してきたピーター・ペティグリューを返り打ちにして殺害。当時魔法惨事部の次官であり、事件発生直後の現場に到着した第一陣の1人だったファッジによれば、ピーターの遺体は指1本を残して跡形も無く消し飛び、さらに12人のマグルが巻き添えで死亡する惨事となった。現場で仁王立ちしながら高笑いをしていたシリウスは、抵抗することなく魔法界の監獄アズカバンへと連行され、12年もの間収監されていた。
しかし、1993年度にアズカバンを脱獄。ホグワーツに出没して何度も襲撃を仕掛ける。12年前にヴォルデモートが殺し損ねたハリーを狙っていると考えられていたが……。
第3巻の題名『アズカバンの囚人』とは、彼のことを指す。
真相
「信じてくれ、ハリー。私は決してジェームズやリリーを裏切ったことはない。友を裏切るくらいなら、私が死ぬ方がましだ」
実はシリウスの罪は冤罪。マグル12人殺害およびジェームズとリリーへの裏切りを行った真犯人はピーター・ペティグリューだった。ピーターによる巧妙な偽装工作と、当時の強硬派の官僚バーテミウス・クラウチ・シニアが裁判を省いたことが原因で、無実のシリウスが収監された。
シリウスは自身が潔白であるという意志を保ち続け、アズカバンの中でも正気を失わずにいた。
ハリーと再会してからは、彼の初めての「父」そして「兄」として頼れる存在となる。1995年度(第5巻)では肩を並べて死喰い人と戦った。
プロフィール
Name | Sirius Black
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誕生 | 1959年11月3日 |
死去 | 1996年6月18日 (享年36歳) |
死因 |
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血統 | 純血 聖28一族 |
家族 |
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生家 |
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婚姻 | 未婚・子供無し |
出身 | ホグワーツ魔法魔術学校 🔴グリフィンドール寮 |
組織 | 不死鳥の騎士団 |
異名 | |
杖 | 詳細不明(ギャリック・オリバンダー製と思われる) |
動物もどき] | 🐾大きな黒犬 |
守護霊 | 🐾大きな黒犬 |
所有アイテム |
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映画版演者 | ゲイリー・オールドマン |
映画版吹替 | 辻親八 |
容姿
光り輝く者
黒髪に、白皙の肌、瞳の色は灰色。眉目秀麗で文句のつけようがない美男子。
無頓着なのにハンサム。
しかし第3巻のアズカバン脱獄直後の姿は、髪が肘まで縺れ伸び、頬はこけ、蝋のように蒼白な顔はまるで死人や吸血鬼そのものだった。第4巻以降は持ち直し、12年ものアズカバン収監生活や34、5歳という年齢にもかかわらず、ポッター夫妻の結婚時(20歳頃)の容姿に近付いた。
非常に高身長で、ピーターと比べると頭ひとつ分以上、スネイプと比べるとかなり背が高い。
ロン・ウィーズリーのようにひょろっとした瘦せ型ではなく、チャーリーやフレッド・ジョージのようにマッチョな筋肉質でも無いため、体格はその中間である。
原作者J・K・ローリングがチャリティで書き下ろしたハリーの生まれる(1980.7.31)前を描いたと思われる短編では「ロックバンドのメンバーのような」長髪だが、アズカバン収監前の1981年の夏頃に撮影した不死鳥の騎士団の写真では短髪だった。
学生時代は短髪のイメージも多いがチャリティ短編から長髪のイメージが定着したが、実は髪型を定期的に変えている。
またアズカバン脱獄直後は肘まであった長い髪も、ハリーと暖炉で再会したときは「こざっぱりと短く」切っている。
長髪のシリウスはスネイプのようなshoulder-lengthでは無くlong hairと描写されているため、おそらく長髪時は肩よりも長いと思われる。
焼き焦がす者
原作の挿絵や旧Pottermoreではストレートの黒髪。またアズカバン脱獄直後の身なりが汚いときでも髭無しというビジュアル。
しかし映画版では体に様々なタトゥーを入れているほか、黒髪が濃い茶髪になり、肩くらいで切り揃えたリッジ感強めのパーマに髭というビジュアルとなっている(映画版の学生時代も同様の髪型)。
原作で巻き毛の設定があるキャラはcurly hairやwavy hairと明言されているため、原作の設定では癖のない艶やかなストレートの髪をしている。
最も明るい一等星
他人の容姿に厳しい主人公ハリーから容姿を褒められることが多く、高慢ちきに構え退屈している様子や両親の仇だと誤解していたときでさえハンサムだと言われ、トンクスからは「アズカバン後もハンサム」と言われるほどの美形っぷりである。
顔立ちの似ている弟レギュラスでも「シリウスほどハンサムではない」と言われるくらい容姿端麗であり、英語版では「シリウスに比べたらかなりハンサムではない(rather less handsome)」と描写されているほどの公式美形。
チャリティ短編では赤の他人であるマグルの警官からも美男子と評されている。余談だが同行していたジェームズにも美形設定はあるが美形とは言われなかった。
他にも前髪がジェームズもハリーも絶対に真似できないやり方で、はらりと優雅(elegance)に目もとにかかっていたり 5巻、両手をポケットに突っ込んでいるにもかかわらず、軽やかに自然な優雅(easy grace)さで歩いていたり 7巻、と原作では優雅で上品な所作が書かれている描写が目立つ。
上流階級育ちのせいなのかはわからないが、気取っておらず、何気なく自然で美しい身のこなしとなっている(casual elegance/easy grace)。
映画でもルシウス・マルフォイを相手取った時、華麗な杖さばきで彼を撃破していた。
エレガンスは内面の上品さを含む言葉であり、洗練され、垢抜けた人物であると言える。
コーネリウス・ファッジから粋と評されたこともある。
ドッグ・スター
実は非合法のアニメーガス(動物もどき)で、死神犬(グリム)を思わせる大型の黒犬に変身する。
パッドフットの異名はここからで、犬の柔らかい肉球、それがパタパタと踏まれる様子を意味している。
性格
陽気で奔放
上流階級育ちだが、性格は悪戯好きで大胆。学生時代は親友ジェームズ・ポッターと友人のリーマス・ルーピンとピーター・ペティグリューと共に校則を破って悪戯ばかりしていた。「危険のない人生はつまらない」と考えており、進んでスリルを求める傾向がある。そのため、ジェームズに比べると慎重なハリーに不満を漏らしたこともあった。
魔法省による指名手配のせいで騎士団の本部(実家であるグリモールド・プレイス)を出ることを禁じられていた際は、非常に鬱屈していた。
魂の友情
ジェームズ・ポッターとは兄弟のような深い友情で結ばれており、それが忘れ形見のハリーへの惜しみのない愛情へとそのまま反映されている。
それ故か、モリーやハーマイオニーにはシリウスがハリーとジェームズを重ねて見ている節があるという。
ただしシリウス本人はこの指摘に対し「この子(ハリー)が誰かははっきりわかっているつもりだが」と否定している。
尤もモリーはハリーに過保護な傾向があり、シリウスがハリーを対等に扱うことにも難色を示していたため、このような言い方になったと考えられる。またシリウスはヴォルデモートのことでハリーが事実を知る必要があると考えており、そのことについても彼女には反対されていた。
しかしこの考えは、ダンブルドア本人が「(ハリーに)打ち明けるべきじゃった」と間違いを認めており、シリウスの方針は正しかったことが示唆されている。
一方で原作だと閉じ込められるストレスを感じていない4巻では「わたしに会うために学校を抜け出したりしないでくれ。許可なしにホグワーツを出たりしないように」と、父らしい注意をハリーにしている。
映画版『不死鳥の騎士団』ではハリーとのタッグマッチで、ハリーがルシウス・マルフォイの杖(一本目)を「武装解除」した時に彼に「いいぞジェームズ!」と呼びかける描写があるが、タッグマッチも含めて原作には無い映画のオリジナル脚本である。
血と反骨
自分たちを事実上の王族と信じる、純血主義のブラック家に生まれながらも、家族に反発し一族の中で唯一人グリフィンドールに入寮。
卒業後も不死鳥の騎士団として純血主義者や死喰い人と戦いの人生を送った。
周囲の環境に挑戦し自分を貫く、非常に自立心が強い性格である。
しかし一方で入学時から敵対していたセブルス・スネイプが、ジェームズの尻尾を掴んで退学に追い込もうとルーピンの秘密を嗅ぎ回っていたことを疎み、暴れ柳(人狼のいる叫びの屋敷に生徒を近づけさせないためルーピンが入学した年に植えられた)の抑止方法をスネイプに教えており、満月の日にルーピンと引率する校医のポピー・ポンフリーを見つけたスネイプは、二人を追跡しようとシリウスから聞いた方法を試し、危うく人狼になりきったルーピンと鉢合わせかけた。
この件は叫びの屋敷に辿り着く前にジェームズが急いで連れ戻したため、大事には至っていない。
またブラック家の一員である屋敷しもべ妖精のクリーチャーとは、一族の例に漏れず折り合いが悪く改善するつもりもなかったため、後に取り返しがつかない事態の原因となっている。
ダンブルドア曰く、魔法使いは屋敷しもべ妖精を虐待してきた歴史があり、シリウスは嫌いな実家を思い出させるクリーチャーも冷淡に扱い、そのツケを払う形になった。
ちなみに、弟レギュラスは屋敷しもべ妖精全般に優しいと明言されている。
またそれとは別に、脱獄直後ホグワーツでピーターを捕らえようとして太った婦人の肖像画を切り刻み、寮に忍び込んでロンの枕にナイフを突き立てる、といった非常に手荒な手段を取っていた。これは杖を持たないがゆえの制限、ピーターへの復讐心、焦燥などが原因と思われる。
暴力沙汰で自身の容疑を強めてしまったが、ポッター夫妻の命日が近く精神的にナーバスであったことを考慮すると強硬手段を取ったのも理解できなくはない。
メタ的には残虐な殺人犯のミスリードまたは実際に傷害沙汰を起こしていない(=シリウスが犯罪者ではない)とダンブルドアに気付かせるためであると考えられる。
以上の事実を総括すると、罪なき人々のために自身の命も惜しまず献身する反面、嫌悪する相手には徹底して冷酷で無慈悲な一面もあり、好きな者と嫌いな者への態度に非常に大きな差があり、皮肉にもブラック家の特徴を受け継いでいることが示唆されている。
独特な魅力
総じて実年齢よりも若々しい(悪く言えば子供っぽい)部分が見られ、それが彼の魅力と欠点にそのまま繋がっている。永遠の青年たるシリウスに対して原作者は「21歳の時から十数年間もアズカバンに投獄され、社会人として過ごす時間がほとんどなかったせいである」と述べている。
実家のことや親友ジェームズ・ポッターの忘れ形見ハリーに対しては感情に突き動かされる傾向にあるが、3巻終盤で誤解が晴れた後や大嫌いな実家に閉じ込められていない4巻ではロンにフォローを入れたり、新聞の少ない情報から冷静に状況を判断しており、本来なら通常生活を送っていたであろう大人としてのシリウスの一面が垣間見える。
悪戯好きな性格や優雅な立ち居振る舞い、どこか複雑な様相も見せ、正に大人と子供を感じさせるようなギャップ萌えの宝庫である。
経歴
生い立ち
1959年11月3日、純血魔法族ブラック家本家の嫡男として生まれ、ロンドンのグリモールド・プレイス12番地で育つ。父はオリオン・ブラック、母はヴァルブルガ・ブラック。
ブラック家はあらゆる純血家系と繋がりを持ち、巨大な家系図を有する純血中の純血家系で、作中に登場するほぼすべての純血魔法族と血縁・姻戚関係にある。
一族は自分たちを事実上の「王族」と考え、純血主義者の中でも選民思想じみた過激な思想に色濃く染まっており、マグル狩りや魔法族の浄化を推進している。そのため、スクイブやマグル出身の魔法使いを擁護する魔法使い(家出したシリウスへの資金援助が発覚した叔父アルファードやマグル生まれと結婚した従姉のアンドロメダ・ブラックなど)は家系図から抹消されている。
シリウスは一族が掲げる純血主義を毛嫌いしていたため異端児扱いされ、のちに16歳で家出をし、勘当されている。
また親の言葉に従っていた弟レギュラスの方が「良い息子」だと言われながら育った。
特に母親と折り合いが悪く、家族に対して激しい嫌悪感を抱いている。とはいえ、自身も家族であることを否定はしていない。日本語版の「ここ(家系図)に載っている連中はわたしの家族ではない」は誤訳であり、英語版だとthey're not my familyのtheyは直前にThey're in Azkaban(二人はアズカバンにいる)と言われたベラトリックスとロドルファス・レストレンジ夫妻のことを指し、血縁にあたる人物を確実に家族ではないとシリウスが断言したのはベラトリックスのみである。
学生時代
1971年、ホグワーツ魔法魔術学校に入学、在学中はスリザリンへの入寮が伝統のブラック家としては例外的にグリフィンドール寮所属。
グリフィンドールにて、ジェームズ、ルーピン、ピーターと親しくなり「マローダーズ」(徘徊者、襲撃者、略奪者、悪戯仕掛け人)と名乗る。
特にジェームズとは入学前のホグワーツ特急で意気投合して以来、唯一無二の親友として兄弟同然の付き合いをしており、またルーピンが持つ穏やかなユーモアのセンスを気に入り誰にでも親切なところに感心し、彼と仲良くなった。ピーターとは、彼に親切だったルーピンが説き伏せなければジェームズもシリウスもきっとピーターを相手にしなかったが四人はすぐに親友になった、と書き下ろし短編で語られている。
2年次にルーピンが人狼であることを見抜き、数年掛かりでアニメーガス(動物もどき)となることで友情を示した。
群を抜いて聡明で、何事も卒なくこなし、5年次に受けるO.W.L.試験の闇の魔術に対する防衛術と変身術では、1番いい成績であるO優を取れなければおかしい、(教科書に対して)そんなくだらない本は要らない全部知ってる、と述べる辺り、見たものを簡単に覚えられるくらいに記憶力も良く、学業成績には自信がある。
得意科目はアニメーガス(変身術)、呪文学、無言呪文(Pottermoreより)。
ルーピンからは「学校で一番賢い生徒だった」「君のお父さん(ジェームズ)とシリウスは何をやらせても学校で一番だった」と言われており、成績はジェームズと同じ首位である。
また公正で厳格なマクゴナガルからは「ブラックとポッターは非常に(very)賢い」の後「実際に(In fact)ずば抜けて(exceptionally)賢い」と言われているので、本当に頭脳明晰であった事が窺える。
「ジェームズに次ぐナンバー2」や「次席」というのはHead boy/Girlを首席と訳した日本語版の誤訳が由来の二次創作であり、原作にシリウスの成績がジェームズよりも下という記述は無い。
ヘッドボーイ/ヘッドガールは日本で成績の一位を意味する「首席」とは違う概念で、日本の学校で無理やり例えるなら生徒代表や生徒会長のようなものである。
素行の悪さから監督生やヘッドボーイにはなれなかったが、女生徒を含む多くの生徒の憧れの的であった。
我慢の限界で16歳の夏休みに実家を飛び出し、ポッター家に転がり込む。この際、母ヴァルブルガによって家系図から抹消された。17歳時に叔父のアルファード・ブラックからの経済援助を受け、一人暮らしを始める。
マグル製のバイクを所有し、魔法をかけて空を飛べるようにカスタマイズして、ジェームズと共にマグルの警察&死喰い人とチェイスをやらかした挙句、(乗っていた者がいなかったとはいえ)パトカーを魔法で宙に持ち上げ死喰い人にぶつけて撃破という方法を使用した。
やっていることは器物破損であり、場合によっては死人が出てもおかしくないことであり、悪意がない以上ある意味死喰い人よりもタチが悪いことである。
5年次の回想では高慢な一面もあり、成人後のシリウス自身、この頃の自分とジェームズを「高慢でイヤなガキ」と評している。
卒業後と収監
ジェームズとリリーの結婚式にて花婿付添人(best man)を務め、ハリーの代父(Godfather)、後見人となる。
Godfatherを日本語で名付け親と訳されているのを時に誤訳と見なす考え方もあるが、他作品でもGodfatherは名付け親と訳される。名前を付けたかどうかは別として、シリウスはハリーの名付け親(洗礼親)であり、宗教的な教育の責任が生じ、正式なもう一人の父親となっている。
ヴォルデモートの惨禍が魔法界を襲っていたため大っぴらにハリーの洗礼式を開くことはできず、式は慌ただしく静かなものだった。
「不死鳥の騎士団」の創立メンバーとして死喰い人と戦いの日々を送る。ヴォルデモートがポッター夫妻を狙っていると知ると「秘密の守り人」を自分でなくピーターにするよう助言。これは、自分が狙われることを自覚しており、それを利用して自身が囮となって攪乱するという陽動作戦のつもりだった。しかし逆に裏を取られてピーターの裏切りによって2人は殺害されてしまう。
このため、全く故意でもなくむしろ2人のことを思っての提案だったとはいえ、彼の提案が死因の一つになってしまったことは事実である。本人もそのことは自覚しており、誤解されていた時にも「私が殺したも同然だ」と全否定することなく後悔しながらも部分的には受け入れている。
もっとも、死因は彼のみならず、スネイプ、ピーターなど敵味方問わず夫妻とのかかわりのあった主要人物ほぼ全員の行動が重なり合ったからなのだが。
生き残ったハリーをダンブルドアの元へ連れて行こうとするルビウス・ハグリッドを引き留め、名付け親の責任を果たそうとするが聞き入れられなかった。断念したシリウスはハグリッドにバイクを渡し、その時点で自分だけがスパイと知るピーターの後を追う。しかし、彼の罠に嵌められてしまう。ピーターはマグル12人を爆死させた後自分の指を切り飛ばすとネズミに変身、シリウスに全ての罪を着せて逃走する。精神的なダメージから高笑いをしていたところを現行犯で捕らえられ、「ポッター夫妻の殺害幇助およびマグル12人とピーター本人の殺害の罪」によってアズカバンへ収監される事となる。
冤罪であるにもかかわらず、バーテミウス・クラウチ・シニアの命令で裁判は行われなかった。
脱獄とその後
ほとんどの囚人が数週間で発狂するアズカバンにおいて、「自分は無実だ」という吸魂鬼に吸い取られぬ思いだけで正気を保ち続けた。また、犬に変身する事で思考を単純化するという搦め手も使っていたようである。
収監当初、ベラトリックスやクラウチJr.などの敗残した死喰い人たちがアズカバンに送られてくるのを目撃している。
収監されてから12年後のある日、日刊預言者新聞でロン・ウィーズリーの肩に乗ったスキャバーズ(=ピーター)の姿を発見し、脱獄。痩せこけていた犬の姿で独房の柵をすり抜けると、北海へと身を投げイギリス本島まで泳ぎ切った。
そして3巻にてハリーの前に姿を現し、自分に対する誤解を解き真実を明らかにしたが、ピーターを再び取り逃したことで無実は証明できなかった。
その後、ヒッポグリフのバックビークに乗りホグワーツから脱出、再び逃亡生活に入るが、ハリーの名付け親としてホグズミード村に行ける許可証を出し、またペットを失ったロンにフクロウ(後にピッグウィジョンと名付けられた)を譲った。
4巻ではハリーを案じてホグワーツ周辺に潜伏し、ネズミなどを食べて生き延びていた。そのため差し入れの食事には叫ぶほど喜んだ。「チキン!」
5巻で「不死鳥の騎士団」が再結成されると、実家であるグリモールド・プレイス12番地を本部としてダンブルドアに提供し、屋敷での軟禁生活を余儀なくされる。
1996年6月、ヴォルデモートの策に嵌ったハリー達を救出するため、魔法省神秘部にて死喰い人と交戦(原作では主にハリーのサポートだが、映画ではアントニン・ドロホフとルシウスを相手にしたハリーとの本格的なタッグマッチに変更され、ドロホフを倒しルシウスにトドメを刺すなど見せ場が大幅に増えた。登場時に「私の息子に近づくな」と言いながらルシウスに顔面パンチを見舞うのも有名。)、従姉ベラトリックス・レストレンジの呪文(原作では決闘の際に喰らっているが何かは不明。映画では不意打ち気味だがアバダケダブラと明記されており、どの道助からなかっただろう。)によって「死」へ繋がるアーチへ押し込められ、ベールの彼方へ行った。36歳没。
6巻でシリウスの遺言に則り、ハリーがブラック家の全てを相続した。ブラック家の新しい主人となったことで、クリーチャーはハリーに仕えることになる。
また、冤罪も死後晴れることとなった。
7巻にてヴォルデモートとの最後の闘いに向かうハリーの前に、蘇りの石によって姿を現した。
「死ぬのは苦しい?」と問うハリーに対し、「眠るより早いさ」と諭した。
名前の由来
名前のシリウスはおおいぬ座(大犬座)のα星で、ギリシャ語で『光り輝くもの』『焼き焦がすもの』を意味する「セイリオス」に由来する。
この星は太陽系の天体を除くと地球から望む天球上で最も明るい恒星である。
肉眼では一つの恒星に見えるが、実際にはA型主系列星のシリウスAと、白色矮星のシリウスBの二つの星から成る連星である。
おおいぬ座にあることから、Dog Star(犬の星)とも呼ばれており、彼の動物もどきの姿そのものである。
ブラック家においてこのシリウスの名を持つ人物は複数人存在するが、他の名前とは違い、長男にしか付けられていない名前であり、もしかしたらブラック家の紋章が犬であることに関係しているのかもしれない。
他のシリウス・ブラック
原作者直筆のフィニアス・ナイジェラス・ブラックの代より書かれたブラック家の家系図では本編に登場するシリウス・ブラックは三人目のシリウスにあたる。
そのため便宜上、本編に登場するシリウスを三世、同名の先祖を一世、二世と呼ぶ。
一世
シリウス一世はホグワーツ魔法魔術学校の校長を務めたフィニアス・ナイジェラス・ブラックの夭折した兄。
長男であったシリウス一世こそが父シグナス一世の跡を継ぎ、ブラック家の当主となるはずだったが8歳で夭折してしまう。
死因について不明だが魔力の暴走などの魔法的疾患、あるいは時代背景から1846年から1860年のインド起源のコレラ流行の可能性や多くの魔法族の死因となっている龍痘の可能性も考えられる。また、享年を考慮すると、オブスキュラスの可能性もある。
通常魔法族は非魔法族のマグルよりも強い生命力を有し、マグルと同じ病気にかかってもマグルと同じ病気は簡単に魔法や魔法薬を用いて治せてしまうとファン交流サイトにて原作者がコメントしているが、魔法族の子供は7歳頃に魔法の力が現れ始め、不安定な時期であることからその時期にシリウス一世はコレラ感染したのかもしれない。ただその場合治せるはずの病に誰も治療を施さなかったということになるが……。
二世
シリウス二世はフィニアス・ナイジェラス・ブラックの長男でありシリウス三世の曾祖父である。
恐らく夭折した伯父のシリウス一世に肖っての命名であり、シリウス三世はこの曾祖父に因んで命名されたと思われる。
弟妹にフィニアス二世、アークタルス二世、ベルヴィナ、シグナス二世らがいるが長弟のフィニアスはマグルを支援したため家系図から抹消される。
世代的には兄弟揃ってダンブルドアと同世代でシリウス二世はアルバス・ダンブルドアの3、4学年先輩に相当する。
初代魔法大臣を輩出したガンプ家出身の純血の魔女、ヘスパーと結婚し二男一女を儲ける。
長女のリコリス、次男のレギュラス一世は未婚で亡くなるも、第一子の長男のアークタルス・ブラック三世は結婚し、シリウス三世曰く「金を積んで」マーリン勲章勲一等を授与されるなどの栄誉に輝いた。
ただしマーリン勲章を授与されたのはシリウス三世の父方ではなく、母方の祖父の可能性もある。
余談
誕生日
原作完結からもかなり長い間誕生日が発表されず、2015年突如として原作者J・K・ローリングのTwitterにて誕生日が11月3日と発表、ファンが大騒ぎとなった。
ちなみに、11月3日はジェームズ、リリー夫妻が死んだハロウィンからほんの数日後である。
女性関係
シリウスは女性に人気があり、O.W.L.試験中に女子生徒がテストそっちのけでシリウスを後ろの席から見つめている描写や、ルーピンからは「女にもてるのはいつもあいつだ(He always got the women.)」と語られている。
しかし、特定の恋人を作る暇がなく、シリウスの恋愛・結婚に関して原作者は「忙しすぎて結婚をする時間がなかった」と述べている。
また、シリウスの部屋にはビキニ姿のマグル女性のポスターが複数飾られており、それを見たハリーはシリウスの度胸に感心していた。部屋の装飾に対して、ハリーはシリウスが両親を苛立たせることに努力したようだと予測している。
初登場
正式に登場したのは3巻だが、実は1巻の第1章で既に名前が出ている。
犬種
アニメーガス(動物もどき)になった際、映画版『アズカバンの囚人』ではジャーマンシェパード、映画版『不死鳥の騎士団』ではスコティッシュ・ディアハウンドと全く違う犬種になっている。
黒い犬であればどんな犬にもなれるということなのか、犬のキャスティング問題なのか、その時の健康状態によって犬種が変化するのかどうか不明。
余談だが、後者のスコティッシュ・ディアハウンドとはその名の通り鹿などの大型哺乳類の狩猟に使われていた猟犬であるが、彼の親友のジェームズの動物もどきは牡鹿なので犬種をチョイスした映画関係者はこの事を考慮したのかもしれない。
シリウスおじさん
日本語版ではハリーにシリウスおじさんと「おじさん」を付けて呼ばれているが、これは翻訳者が付け加えたものである。
原語版及び映画では「Sirius」のみで、バーノン・ダーズリーのようにUncle Siriusと呼ばれたことは無い。
ミドルネーム
弟レギュラス・ブラックにはミドルネームが付けられているが、シリウスは公式で何も言及されていない。
そのため二次創作にあるシリウスのミドルネームはすべて非公式である。
人気と二次創作
登場期間は第3~5巻と短いが、映画『死の秘宝Part2』の公開時に行われた人気投票では海外ではスネイプと主役3人に次ぐ5位、日本ではハリーとロンを抑えて3位と根強い人気を誇る。
Pixivでも投稿件数はセブルス・スネイプに次いで2位。映画化前の個人サイト時代からハリポタの同人人気を牽引するキャラクターである。
日本のファンアートではストレートヘアの黒髪、一人称は俺という設定が二次創作として広く定着している。