フィニアス・ナイジェラス・ブラック
ふぃにあすないじぇらすぶらっく
ハリー・ポッターシリーズに登場する主人公、ハリー・ポッターの名付け親であるシリウス・ブラック三世の出身である純血の魔法一族、ブラック家の家系図に登場する魔法使い。
シリウス三世の直系の高祖父であり、ホグワーツ魔法魔術学校の校長を務めた人物として知られている。
本編ではすでに故人だが、生前の時代である19世紀末のホグワーツが舞台となるゲーム『ホグワーツ・レガシー』では現役の校長として登場している。
容姿・身体特徴
黒い髪に暗い色の目の白人種、細い眉毛、そして尖った山羊ひげが特徴。
黒髪は灰色の目と共にブラック家の子孫たちの多くに引き継がれている。
後述の晩年を描いたであろう肖像画は甲高く不快な声で喋る。
子孫たちの多くは容姿に対する辛口評価に定評のある主人公から美しいと評される者が多いが、フィニアス・ナイジェラス自身が若かりし頃にその容姿をしていたかどうかは不明。
性格
卑劣で皮肉な人物で、他人の気持ちなどを考えない。
学校の校長を務めていたにもかかわらず、若者に対する忍耐力はないに等しい。
またブラック家のモットーも通り、純血を重視し、マグル及びマグル生まれを見下す思考の持ち主である。
一方で後述の通り早くに父と兄を喪い、苦労してきた過去があり、息子たちには亡くなった兄と父、幼少期に支えてくれた叔父の名前を与えていることからも家族に対する愛情が深い人物であることが窺える。
フィニアス・ナイジェラスの死後に生まれた直系の最後の子孫である玄孫のシリウス・ブラック三世は家風に反していたため、肖像画のフィニアス・ナイジェラスとシリウス三世は共に反目しあっていた。
玄孫のシリウス三世を「ろくでもない曾々孫」と呼ぶ肖像画のフィニアス・ナイジェラスだったが、彼の死を聞かされた時は取り乱してホグワーツからグリモールド・プレイスに向かい、必死に玄孫を探していた。
また自身の出身寮であるスリザリンに対する誇りが高く、同寮出身の校長がヴォルデモートを倒したのに貢献したことを我がことのように喜ぶ様子が描かれた。
幼少期
フィニアス・ナイジェラス・ブラックは、1847年に純血の魔法使いシグナス・ブラック一世と、純血の魔女エラ・マックスのもとで生まれた。
二つ上の兄にシリウス・ブラック一世、妹にエラドーラとイオーラがいた。
しかしフィニアス・ナイジェラスが3、4歳の時に父親でありブラック家当主であったシグナス・ブラック一世が21ないし22歳の若さで亡くなってしまう。
加えて父の跡を継ぐ筈だった兄のシリウス一世が7歳ないし8歳で夭折してしまう。
父の弟、叔父のアークタルス一世がフィニアス・ナイジェラスが魔法社会における成人となる17歳になるまでブラック家を管理していた可能性があるが、フィニアス・ナイジェラスは5歳又は6歳でブラック家を背負う立場となった。
殆どの純血至上主義の魔法族の家庭がそうであったように、フィニアス・ナイジェラスは魔法族の純血性を尊び、マグル及びマグル生まれの魔法使い・魔女に差別感を抱いて育った。
兄の死の可能性
父親の死因は不明だが、兄のシリウス一世の死因は時代背景から1846年から1860年のインド起源のコレラ流行の可能性がある。
魔法族は「ありふれた現象」を簡単に修正、ないしは無効化することができる。つまり彼らはマグルの罹る病気(あるいは傷害)はなんでもなるが、その全てをいとも簡単に治すことができる。(【公式記事】Illness and Disability)
しかし魔法族の子供は7歳頃に魔法の力が現れ始め、その時期は魔法が不安定であることからシリウス一世はそのせいでコレラ感染した可能性がある。
兄の死の原因がマグルの間で流行した病であった場合、フィニアス・ナイジェラスに胸に宿ったマグルへの憎しみは凄まじいものであったとも考えられる。
ただしこの場合、周囲の誰もシリウス一世を助けようとしなかったということにもなるが……
あくまでファン間にある推論でしかないことに注意。
結婚、妹たち、子供たち
1858年、11歳となったフィニアス・ナイジェラスはホグワーツ魔法魔術学校に入学し、組み分け帽子によってスリザリン寮へと組み分けられた。
1865年、17または18歳でホグワーツを卒業し、その後、聖28一族のフリント家出身の純血の魔女アーシュラと結婚した。
一方で、末の妹のイオーラ・ブラックが魔法力のないマグルのボブ・ヒッチェンズと結婚してしまった。
一族から半純血の魔法族を生み出す行為をした妹は家系図から排除されるが、それが兄であったフィニアス・ナイジェラス自身によるものの可能性が高い。
家系図から抹消されてしまったため、妹とその血族の消息は不明となっている。
もう一人の妹のエラドーラ・ブラック、イオーラと双子の可能性がある彼女はこの一件がショックだったためか、1931年に81歳で死ぬまで生涯結婚することはなく子供を残さなかった。
屋敷しもべ妖精が年老いてお茶の盆を運べなくなったら首を刎ねて壁に飾るというブラック家の伝統を作り上げた彼女はブラック家らしい女性として尊敬を集めたのか、彼女の名前の一部であるella(エラ)、dora(ドーラ)の名前がブラック家の娘たちの名前に一部流用されている。
1877年、29歳又は30歳の時に長男が生まれて以降、四男一女に恵まれる。
長男には夭折した兄のシリウス一世に肖りシリウス二世。
続いて生まれた次男には自身の名前を与え、フィニアス二世。
1884年に生まれた三男は幼少期に後見人となったであろう叔父のアークタルス一世に肖り、アークタルス二世。
1889年に生まれた四男は若くして亡くなった父のシグナス一世に肖って、シグナス二世。
生まれてきた息子たちには自身を含め身内と同じ名前を与えている一方で、1886年に生まれた長女のベルヴィナはケルト版のヴァルプルギスの夜、ベルテンに派生した名前を名付ける。
ホグワーツの校長
時期は不明だが、フィニアス・ナイジェラスはブルータス・スクリムジョール(クィディッチ今昔ではスクリムガー表記)の後任として母校、ホグワーツ魔法魔術学校の校長に就任した。
このことから、フィニアス・ナイジェラスはホグワーツ卒業後に教員採用試験を受けて教授となり、スクリムジョールの死去ないし引退に伴い校長に選出されたと思われる。
アルバス・ダンブルドアやミネルバ・マクゴナガルの例にもある通り、副校長を務めて、校長不在時に代理を務めた後に正式に校長に就任したとも考えられる。
仮に卒業後に直ぐに何らかの教科の教授となり77歳まはた78歳で死ぬまでの間ホグワーツの校長を務めたとしたら、彼の教職在位期間中にはアルバス・ダンブルドア(1881年生まれ、1892年入学時フィニアス44-45歳)、ニュート・スキャマンダー(1897年生まれ、1908年入学時フィニアス60-61歳)や自身の子供たち、孫たちが在籍していた可能性がある。
作中のホグワーツの歴代校長たちは一部の例外を除けば高齢者の印象が強いが、ダームストラングのように壮年のイゴール・カルカロフを校長にしている例からも実力などが認められれば年功序列を無視して校長になると考えれば、ブラック家の当主であるフィニアスが40代で校長になれる可能性も無きにもあらず。
しかし、校長としては若者に対する忍耐力はないに等しい卑劣で皮肉な人物だった。
ホグワーツ在学中の出身寮であるスリザリン寮を特別視し、「穢れた血」といったマグル生まれの魔法使い魔女を蔑視する言葉を平然と使うといった、行き過ぎた純血主義の傾向があったため人望が無く、世代を隔てた玄孫のシリウス三世からは「ホグワーツの歴代の校長の中で、一番人望がなかった」と評されていただけにその人望は酷かったと思われる。
このマグル生まれを「穢れた血」と呼ぶのは生涯続き、後述の肖像画になっても使用していた。
一方で、グリフィンドール寮出身の校長、母親がマグル生まれの魔女の半純血であるアルバス・ダンブルドアのことを肖像画のフィニアスが「彼は粋だ」と擁護したこともあった。
ダンブルドアは在学中から優秀な功績を叩き出し、監督生および首席に選出されているため、教職在任期間が被っているのならば自慢の教え子だった可能性がある。
更に彼の父親のパーシーヴァルが“マグル嫌い”でマグルを襲撃したことでアズカバンに獄中死しているため、フィニアスの性格上この行為を称賛している可能性がある。
対して、魔法生物が絡んだ事故を起こしたニュート・スキャマンダーに退学処分を突き付けたのは恐らく校長であったであろうフィニアスで、当時教授としてホグワーツに在籍していたダンブルドアは猛抗議したが、その意見を退けている。
子供を「真理を理解しようとしない未熟な存在」といって嫌っていた彼が校長を務められていたのは彼が良くも悪くも仕事が出来る有能な魔法使いであったためであろう。
ホグワーツの教授および校長を務める一方で、フィニアス・ナイジェラスの家族の間でのトラブルが見られた。
恐らく彼の人生最大の汚点となったのは自分と同じ名前を与えた次男、フィニアス・ブラックがマグルの権利を支援する主張と唱えたことであろう。
フィニアス・ブラックは家系図から抹消され、イオーラ・ヒッチェンズ(旧姓ブラック)同様にその後の消息は一切不明となった。
彼が校長だった時代が舞台のゲームホグワーツ・レガシーでは、私的な理由で鐘楼の鐘を外させたり、公費で私的な買い物をしたりと、教師らしいところを全く見せない。
自分の評価が下がるの嫌がって純血の生徒のいじめを止めたりすることもあるが、「純血は生まれながら凄いのでそれ以外を貶める必要はない(要約)」と差別意識丸出しの発言をしている。
さらにクィデッチの試合で純血の生徒に負傷者(校医をして"怪我のうちに入らない。これだったら私も怪我している"と言わしめた程度)が出たことを理由に、自己保身のため当年の試合を全面中止して生徒からも教師陣からも大顰蹙を買った。
「スリザリンの連中は校長におべっかを使ってる」と陰口を叩くグリフィンドール生もいるが、実際のところスリザリンにも彼を嫌う生徒は多い。
二枚の肖像画
フィニアス・ナイジェラスの肖像画は生前に長い間過ごしたホグワーツ魔法魔術学校とブラック家の持ち家、グリモールド・プレイス12番地の二か所で作成され飾られている。
魔法世界における肖像画は喋ったり、同じエリアにある絵画や肖像画の中へと移動することが可能であり、フィニアス・ナイジェラスたちホグワーツの歴代校長の肖像画は生前の特徴を反映した行動をし、絵の中外の他人と会話でき、知恵を教授や過去の経験を語ることができる。
二か所に肖像画が飾られている肖像画たちはそれぞれの場所に移動することが可能で、フィニアス・ナイジェラスの場合はホグワーツ内からグリモールド・プレイス12番地へと移動することが可能であった。
ホグワーツ魔法魔術学校の校長室に飾られた歴代校長の肖像画たちは基本的に当代の校長に協力的である。
作中での活躍
グリモールド・プレイス12番地はフィニアス・ナイジェラスにとっては不本意ながらも、玄孫のシリウス三世によって不死鳥の騎士団の本部として提供されたため、ホグワーツのアルバス・ダンブルドアたちと本部に待機しているメンバーとの連絡を取るために協力した。
ハリー・ポッターがハーマイオニー・グレンジャー、ロン・ウィーズリーたちとヴォルデモートを倒すために分霊箱を捜している間、グリモールド・プレイス12番地に一時滞在した際、フィニアス・ナイジェラスの肖像画があるため、ダンブルドアを殺して校長になったセブルス・スネイプに居場所を伝えることになりかねないとハーマイオニーの持っていた検知不可能拡大呪文をかけたビーズバックに肖像画は押し込まれた。
その後、三人がホグワーツなどの情報を得るためにフィニアス・ナイジェラスが目隠しをした状態にして三日おきに会話することになった。
フィニアス・ナイジェラスは三人にとってはあまり良い会話相手ではなかったものの、ホグワーツの状況を知る事ができたが、実は肖像画のフィニアス・ナイジェラスは元々スネイプにわざと殺されたダンブルドアの計略に協力しており、ヴォルデモートを倒そうとするスネイプにも協力していた。
ハーマイオニーがビーズバックを開けた状態で今いる場所について話していたため、その日の夜にスネイプが正体を知られずにグリフィンドールの剣を三人に渡すきっかけにもなっていた。
スネイプの死んだ後、ハリー・ポッターが校長室に行った時にその場に肖像画の中にも誰も居なかったためフィニアス・ナイジェラスはおそらく、1998年に起きたホグワーツの戦いを観戦していた。
ヴォルデモートの敗北した後、ハリーたち三人が校長室に行ったとき、非常に満足した様子のフィニアス・ナイジェラスは自分と同じスリザリン出身の校長がこの戦いに貢献したのだという話を肖像画の全ての校長がいる中で話していた。
フィニアス・ナイジェラスは1925年に77歳ないし78歳で亡くなった。
絶縁した次男を含めれば子供は五人(四男一女)、死亡時に孫は少なくとも13人、曾孫が二人(ルクレティア・ブラックとヴァルブルガ・ブラック)いた。
しかし、直系の子孫はシリウス三世の死亡によって絶えてしまい、ブラックの名を持つ子孫は家系図上はいなくなってしまった。
絶縁したフィニアス・ブラックや魔法の使えないスクイブだったマリウス・ブラックの子孫が生きている可能性もあるが、ブラック家の財産相続がベラトリックス・レストレンジに移ったことからも男系子孫が絶えている可能性が高い。
しかし傍系は作中多く登場しており、ハリー・ポッターの親友であるロン・ウィーズリー及びその兄妹たちはフィニアス・ナイジェラスの玄孫(やしゃご)、ライバルのドラコ・マルフォイは来孫に相当する。
他にも孫のカリドーラ・ブラックがハーファング・ロングボトムに嫁いでおり、ハリーと共にヴォルデモートを倒すのに貢献したネビル・ロングボトムもフィニアス・ナイジェラスの玄孫の可能性がある。
ハリーとハーマイオニーはウィーズリー家との婚姻によりフィニアス・ナイジェラスの系譜に加わり、フィニアス・ナイジェラスは傍系とはいえ史上最悪の魔法使いを倒した英雄たちの血を引く子孫を有することとなった。
詳細はブラック家を参照。
フィニアス/Phineas
名前のフィニアスは聖書由来の名前だがヘブライ語の名前Pinhasは『蛇の口』を意味する説がある他、派生したエジプトの名前Pa-Nehasyには『ヌビア人』または『黒い人』という意味がある。
またブラック家の命名の伝統から、ギリシャ神話のピーネウスに由来するとも考えられる。
ピーネウスは神話の中で複数人登場するが、盲目の予言者が有名。
エウロペが大伸ゼウスにさらわれたとき、ピーネウスは他の兄弟たちとともに捜索に出され、父親からはエウロペが見つかるまで帰ってくるなと言い渡された。
ピーネウスは黒海とマルマラ海を分けるテュニア半島に向かい、そのままこの地に住み着き、クレオパトラ(クレオパトラ七世ではない)と結婚した。
予言の力を持つピーネウスは、人間の未来を予言したため、又はプリクソスの子供たちにコルキスからギリシアへの航海の方法を教えたために神々に罰せられ、盲目にされた。
その後、神々はこの地にハルピュイアを遣わし、ピーネウスの食事が用意されると、ハルピュイアたちが空から飛び降りてきて奪い去り、わずかに残った部分も臭気に満ちて食べることができなかった。
アルゴナウタイのカライスとゼーテースがハルピュイアたちを追い払ったので、ピーネウスはイアソンたちに航海の路を示し、シュムプレーガデスの岩について忠告した。
又は盲目になった理由には別のパターンが存在し、後妻のイーダイアーがクレオパトラの息子たちに犯されたと偽って訴え、その虚言を信じて二人の息子を盲目にしたために、ピーネウスは舅のボレアースとアルゴナウタイによって盲目にされたとされる。
ナイジェラス/Nigellus
ミドルネームのナイジェラスはラテン語で『黒』を意味し、ブラック家を意味するのと同時に、ラテン語で『白』を意味する名前を持つアルバス・ダンブルドアとの対比となっている。
またフィニアス・ナイジェラスはペスケンニウス・ニゲル(シリア軍団長)、ダンブルドアはクロディウス・アルビヌス(ブリタニア軍団長)とローマ皇帝を僭称した三人の帝国軍軍団長の名前がモチーフとなっており、最終的に皇帝となったセプティミウス・セウェルス(アフリカ軍団長)はセブルス・スネイプがモチーフとなっている。
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