リアル界のフットボールやバスケットボールに似ていて、チームで戦う。イングランドにおけるフットボールの原型の最古の記録より1世紀ほど早い1050年代に発明されたスポーツ。
大きな特徴は、プレイヤーが箒にまたがっていて「空中戦」を繰り広げることと、かなり小さくとても速い「スニッチ」の捕獲が試合終了の要件であること。ときに半年近く続くこともあり、体力・精神力を要する過酷な試合である。
映画でも、迫力あるシーンが大きな見せ場となっている。
2003年には当スポーツをテーマとしたPS2、ゲームキューブ向けに『ハリー・ポッター:クィディッチ・ワールドカップ』が発売されている。
2024年9月には各ハード向けに『クィディッチ・チャンピオンズ』が発売。
フィールド
長径500フィート(152メートル)、短径180フィート(55メートル)の楕円形の競技場の両端に三本ずつのゴールポストが据え付けられ、ポストの上にゴールリングが存在する。
地上に存在するフィールドの境界線の外側に出てはならないが、上限高度は設定されていない。
ルール
4種のボールを用い、両チーム7名の選手によって競技が行われる。
基本的に試合時間中、選手は(墜落して負傷した場合を除き)地面に足をついてはいけないが、キャプテンが審判にタイムを申し立てた時のみ足をついても良い。試合が極端に長引き
12時間を超えた場合、このタイムは2時間まで延長できる。
空を飛ぶスポーツだが、基本的には雨天だろうと強風の中だろうと決行される。
反則にあたる行為は700の規定があるものの、当局がこれらの反則すべてを公開した事はなく、一般的に知られているのは
「相手チームや観客からの妨害に対する自衛のため、試合中に杖の携帯を認めるが、呪文で敵を攻撃するのは禁止」
「他選手が持っているクアッフルを奪っても良いが、相手の体や箒を掴む、体当たりだけを目的とした攻撃は禁止」
などの原則的なルールのみとなっている。
ただし実際にはラフプレーが行われる事が非常に多く、学生リーグ、プロリーグともにブーイングをもらうことはあっても、反則による試合中断・退場は無いとされる。
クァッフルが相手チームの手に渡るというペナルティはあるが、その程度で済むならと反則に走る選手は多い模様。
特に第1回クィディッチ・ワールドカップの試合はもはやスポーツではなく、ただの殺し合いと言っても過言ではない反則攻撃の嵐となっており、700ある反則のすべてが行われたという逸話がある。
具体的には「相手の箒に火を付けたり棍棒で破壊しようとする」「相手選手を斧やダンビラで殺そうとする」「ローブから吸血コウモリの群れを放つ」「相手選手をスカンクに変身させる」等の危険な反則行為が行われていたとされる。
ボール
クアッフル
赤みがかった革のような素材で作られたボール。
バスケットボールほどの大きさで、いくつか凹んだ部分がある。
他のボールと違って自立して動き回るわけではないが、片手でキャッチしたり投げやすくする呪文、落下速度減少の呪文がかけられている。
ゴールに入ると10点。
ブラッジャー×2
クィディッチは高度数十~数百メートルを高速で飛び回るただでさえ危険な競技であるが、クィディッチの黎明期、それでもスリルが足りないと感じたらしいプレイヤーが岩塊に魔法をかけてプレイヤーを叩き落すような仕掛けをした。頭のねじが飛んでる魔法界の住民はそのアイディアをえらく気に入り、クィディッチのルールに取り込まれてしまった。
以降ブラッジャーはプレイヤーをより効率よく叩き落すために危険度を増していき、現代は鉄の球体となっている。
両チームのプレイヤーを見境なく狙って突進する危険なボールで、ビーターは棍棒でこれを打ち返して味方を守り、同時に相手チームへ向かわせる。
スニッチ
一対の翅で飛び回る、クルミほどの大きさをした金色のボール。13世紀に魔法使い評議会議長のバーベラス・ブラッジが、試合が行われている最中の競技場に「スニジェット」という金色の鳥を放ち、捕まえた選手に150ガリオンの賞金を約束したことが起源。興奮した選手が捕獲の際にしばしば押しつぶしてしまったり、クィディッチゲーム以外の場でも乱獲されたりして絶滅危惧種となったため、その代用品として16世紀にスニッチが発明される。
キャッチするとそのチームに150点が入り、同時に試合終了となる。
両チームのシーカーがほぼ同時にスニッチをつかんでしまったときのために「肉の記憶」と呼ばれる機能が存在する。
プレイヤー・ポジション
チェイサー(3人)
クアッフルを扱う専門のプレイヤー。クィディッチが単なる箒に乗ったバスケットボールだった時代から存在する最も古いポジション。キーパー、ビーター、シーカーが誕生するに従い区別の必要が発生したために生じたレトロニム。
キーパー
ゴールを守る。黎明期はチェイサー同様にクァッフルを扱って敵ゴールを攻めたりもしていたが、現代ではもっぱらゴールポスト周辺にとどまって自チームの守備に専念する。
ビーター(2人)
どこかの命知らずがブラッジャーというふざけた発想に至った際にほぼ同時期に発生したポジション。片手サイズの棍棒を振るってブラッジャーから自チームのプレイヤーを守る。
この際敵チームに向かってブラッジャーをたたきつけることが奨励されている。
シーカー
スニッチを追跡する専門のポジション。シーカーがスニッチを取ると、シーカーが所属するチームに150点が入り、試合が終了する。
チームの中で最も俊敏かつ高速に飛行できるものが選出される。そして敵チームのビーターに集中攻撃を受けることが多いため、一番ひどいケガをするのもシーカーである。
発祥は1269年とされ、比較的新しいポジションでもある。
箒
特にこれといった規定はないが、より競技に向いたカスタムが施された箒が使われる場合が多い。
作中、何種類かのモデルについて言及されているが、イラストや映像化作品ではクィディッチ用の箒は前傾姿勢で乗りやすいように後部に鐙のようなパーツが取り付けられていたり、軸がグリップ状に作られている、穂先が流線型になるように整えられているなど、一般的な掃除用の箒とは異なる形状をしている。
また試合用に限ったことではないが、魔法使いの箒は長時間乗っていても疲れないよう、尻が当たる部分に『見えないクッション』と呼ばれる魔法がかけられている。
普及型のクィディッチ用箒としては「クリーンスィープ」というシリーズがあり、比較的安価である事、値段の割に性能のバランスが良くコーナーリング性能が良い事から、ウィーズリー兄弟を筆頭に様々な選手に使われている。
高級モデルを求めると価格も青天井になるようで、「ニンバス」シリーズ、「コメット」シリーズ、「ファイアボルト」などは高級モデルとして言及されている。
特にファイアボルトはプロの一流選手専用と言ってよい値段で、両親から莫大な遺産を受け継いだハリーでさえ自分で買うのは諦めたほどである(ハリーが入手後、クラスメイトたちが護衛のため付き添うこともあったが、あながち大袈裟ではない)。
チームメイト全員が高性能な箒に乗ればそれだけでかなり有利になるため、特にプロチームではチームメンバーが使う箒を確保できるだけの財力が重要な要素となる。
逆に、お金持ちが箒の提供と交換条件で何らかの見返りを求める事もあり、作中でもルシウス・マルフォイはスリザリンチームに当時最新モデルだった「ニンバス2001」を全員分寄付する見返りとして、息子ドラコをシーカーのポジションにねじ込んでいる。
グリフィンドールチームの場合、最もスピードが求められるシーカーであるハリーに当時最高性能だった「ニンバス2000」が与えられた。
試合の流れ
両チームがポジションについた状態で、審判がブラッジャー、及びスニッチを解放する。
スニッチが両チームシーカーの視線から外れたころ、審判がクアッフルを空中に投げ上げ、試合が始まる。
チェイサーがクアッフルにより互いのゴールを奪い合い、その間シーカーはスニッチを捜索し、ビーターが手近なプレイヤーに向けてブラッジャーを打ち込んでいく。
シーカーがスニッチを発見、追跡、ビーターの妨害に負けずに捕獲すると、捕獲したチームが150点を得るとともに試合終了。
重要なのはシーカーがスニッチを捕獲した際に試合が終了すること。
スニッチが捕獲されれば何があろうと試合は終了し(3.5秒で終了した記録がある)、スニッチが捕獲されなければ両チームキャプテンが試合中止で合意するまで何か月だって続く(数か月続いた記録もある)
チェイサーが高速で三次元機動を行うクィディッチでは一試合の中でクアッフルによって150点以上の差がついてしまうことはしばしばある。また大会などではそれまでの総合得点等との兼ね合いから、味方チェイサーがある程度点数を稼ぐまでスニッチを捕まえられないこともある。そういった状況において、シーカーはさもスニッチを発見したかのように高速で飛んで相手選手を明後日の方向に誘導したり、さながらカーレースのように相手シーカーのコースを妨害して時間を稼ぐなどのテクニックも要求される。
作品世界での普及
原作小説の舞台となる時代では、クィディッチはアジア以外の世界各地で行われており、ワールドカップも開催されている。
アジア圏の魔法使いはそもそも空を飛ぶのに箒ではなく絨毯を使うため、基本的にクィディッチは行われていない。
しかし箒で世界一周を試みたホグワーツの生徒が日本の魔法学校『マホウトコロ』に不時着したことがあり、それがきっかけで日本では例外的にクィディッチが盛んに行われているという裏設定が存在する。
日本の魔法使いは過酷な環境で飛行訓練を積むため優秀な選手が多く、上述のホグワーツ生は彼らにクィディッチを教えたことを後悔したらしい。
代表的なプロチームとして豊橋天狗が存在するが、試合に負けるとハラキリの如く箒を焼き捨てる習慣が問題視されている。
ちなみにクィディッチ以外の箒を使ったスポーツでは、レース競技が盛んに行われている模様。
かつては大量の空飛ぶ石の只中へ箒に乗って突っ込み、頭に乗せた鍋にどれだけ石を集められるかを競うというクィディッチ以上に危険な競技もあった(この競技の影響でクィディッチにブラッジャーが導入されたとも言われる)が、死者が続出したのでさすがに禁止令が出された。
リアル界でのクィディッチ
何と、アメリカでは本格的且つ大真面目なスポーツとしてルールが作られ、大会まで開かれていたりする。
我々「マグル」(一般人の意)は空を飛べないが、プレイヤーには、箒にまたがること、が義務付けられている。
捕まえれば一発で逆転できる「スニッチ」(ただし、原作及び映画とは点数が異なるが、捕獲すればゲーム終了になるという事は同じである)は、お尻にクッションを付けた人間が演じる。