概要
許されざる呪文のひとつで、通称「磔の呪い」。
この呪文をかけられたものは、耐え難い苦痛に悶え苦しみ、かけ続けられればやがて廃人に至る。
作中の表現では、この呪文の前では、どんな拷問器具も及ばないと評価されており、「全身を1000本の灼熱のナイフで刺されるような感覚」を与え、被術者に「死んだ方がマシだ!」と思わせるほどである。
しかしこの呪文の最大の特徴は、一切の身体的外傷を伴わないため、何度かけられても命に別状はない。また呪文を止めれば苦痛も忽ち収まる。
詳細な説明がなされていないものの、痛覚そのものに作用する呪文だからと考えられる(ノーシーボ効果で死ぬ可能性がありそうなものだが…)。
ただし、余りに長時間この呪文にかけられると被術者は、心的外傷後ストレス障害を負い、精神治療を受ける必要が出てくる。最悪の場合は廃人となってしまう。
このような結果は、他の呪文でも長時間かけられ続けた場合に見られるが、どれほど苦痛を与えられても死ねないという特性から、ある意味死の呪いより恐ろしいものだとされている。
非常に強力な呪文であり、軽はずみに唱えても効果を発揮することはなく、『本気』で唱えなければならないとされている。
作中の表現を引用すると「相手を苦しめることを楽しむぐらいでないと真価はでない」と説明され、呪文が不完全な時は、効果が薄く短時間で解けてしまう。
この呪文の性格上、何度も繰り返し使用した魔法使いのクルーシオは、経験の浅い魔法使いが使用した場合より格段に効果を発揮することが分かっている。
もともとは、拷問のために開発され、のちに決闘で相手の動きを完全に抑え込むためなどに使用された。
実際にこの呪文を受けた者は、身動き一つできなくなるものの、生命に支障が出ない(もっとも魔法界では、よほどの大怪我であっても治療が間に合うのだが)。
また真実薬が入手できない場合や相手を自白させる呪文が信用できない場合、拷問に用いられるようにもなったが、やはり苦痛によって知り得た情報にも同じく信頼がおけないため、あまり有用な使用法とは見做されていない。
そもそも魔法族にとって尋問する前に秘密を知る人間と秘密を知らない人間を区別する方法があり(開心術)、その上で知りたい情報だけを自白させる方法(真実薬)があるため、拷問の呪文そのものが役に立たないという事情がある(一応開心術や服従呪文等、精神力や反対呪文でレジスト出来る術を使用する前にこれをかけて、抵抗する術を奪うという使い方はある)。
また、「闇の帝王の並大抵の閉心術をこじ開ける開心術」と「真実薬及び服従の呪文による自白」への対抗策として「忘却呪文を自分にかけておく」という行動をとった者に対し、闇の帝王が当呪文を使用して忘却呪文を打ち消し、忘れ去ったはずの記憶を無理矢理引き戻すという荒業を行った事があるが、これも結局「忘却呪文で忘れている」のか、「本当に知らない」のかがわからなければやはりどうしようもない。
作中の使用例
ベラトリックス・レストレンジの十八番。
ネビルの両親、フランクとアリスを精神病院送りにした(ただし彼女一人で二人を廃人にしたわけではない)。
原作の神秘部の戦いにおいてはネビル本人にもこの呪文をかけている。
ハリーは5巻でシリウスを殺された怒りのあまり、ベラトリックスに対してこの呪文を使ったものの、一瞬苦痛を与える程度の効果しか出せなかった。
しかしその後7巻ではミネルバ・マクゴナガルを侮辱したアミカス・カローに対して再び使用し、その際は本来の効果を発動させ気絶に追い込んだ。
怒りの度合いで言えばシリウスを殺された怒りも凄まじいはずだが、やはりハリーは闇の魔術を使う訓練は受けておらず、コツを知らなかったことが大きいだろう。
皮肉にも5巻でベラトリックスが調子に乗ってこの呪文のコツをハリーに講釈してしまったため、7巻でアミカスがそのツケを払うことになったと言える。
ちなみにそのアミカスは、その年のホグワーツにおける『闇の魔術に対する防衛術』教師という名目で実質的に闇の魔術そのものを生徒達に教えていたが、あろうことか規則を破った生徒をこの呪文を教える為の実験台にして、他の生徒達にこの呪文を使わせるという倫理観や生徒の人権を完全に無視した非道な授業を課していた。