概要
ハリー・ポッターシリーズ第7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』で様々な人物を翻弄する3つの重要アイテ厶。
おとぎ話『吟遊詩人ビードルの物語』に収録された『三人兄弟の物語』で『死』が魔法使いの三兄弟に創り出して授けた下記の魔法具。
無敵の魔法武器『ニワトコの杖』
死者を現世に呼び出す『蘇りの石』
被った者の身を隠す『透明マント』
これらを全てを手に入れた者は死を制するとされる。
ただし魔法世界の住民であっても『死(Death=死神)』という存在は寓話的と捉えられていたようで、殆どの魔法使いは「実在せず物語も完全な創作」として、存在を信じていない。実際の所、兄弟が死の秘宝を作ってたものに尾ひれ羽ひれがついたと推測されている。
いずれの秘宝も所在も所有者も分からず、物語のモデルとなった三人兄弟『ペベレル家』の墓には死の秘宝を表すマークが刻まれているので、秘宝が実在する可能性が示唆されている。
ちなみに、原作では様々な秘宝をハリーとヴォルデモートとで対比しているが、映画版では死の秘宝に関する設定や物語は殆どカットされた。
作中では全ての秘宝を手に入れたのはハリー・ポッターのみ。(ただしあくまで一時的。蘇りの石は使用後に禁じられた森に落としてしまい、ニワトコの杖に関しては途中までは忠誠心を持っていただけで原作ではダンブルドアの墓に返して映画ではへし折って捨てている)
三人兄弟の物語
本記事では実写映画版での朗読を記述する。
昔、三人の兄弟が、曲がりくねった道を夕暮れ時に旅していました。
やがて兄弟は、渡れないほど危険な川に差し掛かりました。
でも三人は魔法を学んでいたので、杖を一振りして橋をかけました。
けれど渡りきる前に、何者かが行く手を遮ったのです。
……それは『死』でした。
『死』は悔しがっていました。大抵の旅人なら、溺れ死ぬからです。
でも『死』は狡猾でした。
魔法で死を免れた三人を褒めるふりをし、賢い三兄弟に褒美をあげると言いました。
一番上の兄は、この世で一番強い杖を欲しがりました。
『死』はニワトコの木で杖を作り、与えました。
二番目の兄は『死』をもっと辱しめてやりたいと思い、愛する人達を死から呼び戻す力を要求しました。
『死』は川から一個の石を拾い、与えました。
最後に『死』は、一番下の弟を見ました。
慎ましい弟は、こう言いました。
「『死』に後を付けられずに、此処から立ち去れるような物が欲しい」
そこで『死』は渋々、自分の『透明マント』を与えました。
一番上の兄は遠い村に着き『ニワトコの杖』を武器に魔法使いと決闘し、殺しました。
ニワトコの杖の強さに酔いしれた兄は、自分は無敵だと自慢しました。
けれどその夜、別の魔法使いに杖を奪われ、喉を掻き切られたのです。
『死』は、一番上の兄を手に入れました。
二番目の兄は家に戻り、貰った石を手の中で三度回しました。
すると嬉しい事に、かつて妻にと望んだ今は亡き女性が現れたのです。
しかし彼女は、命ある者の世に馴染めず悲しげでした。
彼は彼女を想う余り、一緒になる為、自ら命を断ちました。
『死』は、二番目の兄も手に入れたのです。
一番下の弟は『死』が何年探しても見つける事が出来ませんでした。
やがて、とても年老いた彼は自ら透明マントを脱ぎ、息子に与えました。
そして『死』を古い友として迎え、喜んで死と共に、この世を去って行きましたとさ。
秘宝詳細
ニワトコの杖
ニワトコの木とセストラルの尾毛を芯材にして作られた、実を象った丸いフシが特徴的な「最強無敵の杖」。制作者は一番上の兄『アンチオク・ペベレル』。
「ニワトコの杖、永遠に不滅」という言葉もあるように、如何なる敵をも打ち破る力を与え、折れた杖を甦らせる等の規格外な性能を秘めるが、所有者を殺し合わせ、新たな所有者の手元へと移り続ける『死の杖』。
元々所持していた最悪の闇の魔法使いゲラート・グリンデルバルドがアルバス・ダンブルドアに倒されてからはダンブルドアに所有権が移り、以降は長らく善の為に使われていく。
セストラルという死にかかわる魔法生物が芯材に使われてる故に、『死を受け入れる事ができる者』が扱えるという。
ちなみに、英語で『年長者』『長老』を意味するニワトコ自体が『長男』のアンチオクに手渡された物語上の理由にもなっている。
なお、「ニワトコ製の杖」という意味のニワトコの杖を作るのは、ニワトコも別に珍しいものでもないため杖職人なら別段難しくはない。
しかし、杖の材料に使う木にはそれぞれ特性があり、例えばトネリコの杖は「強い信念、意思を持ち自惚れない主の為に最大の力を発揮する反面、他者に譲られると一切心を開かない」と言うような性質がある。(ロンの初代杖はコレで、チャーリー・ウィーズリーのお下がり、それ故に暴れ柳にへし折られ新しいものを見繕ってもらうまでの1年生時、2年生時のロンは上手く魔法を扱えなかった)
同じくニワトコにも性質があるのだが、その性質は「強力な魔法力を秘めるが、自分の所有者の力不足が露呈したり、周りと比べ劣っていると感じた瞬間所有者を見捨て、忠誠心を捨てる」というもの
通常、杖の忠誠心というのは「常日頃踏んづける」「使わない」「そこらへんに放置する」「手入れを怠る」「"杖に誓って"という宣誓を破る」などの無礼で敬意のかけらもない扱いをしない限り一定以上を保ち、丁寧に扱われると最大限のポテンシャルを発揮する。(故に杖に誓う、というのは魔法族にとって呪法を使わない中で最大限の誠意と言える)
しかしニワトコは所有者の力以外を一切評価しないため、相当な傑物でもない限り、ちょっとした事であっという間に使い物にならなくなってしまう。
一方で秘宝のニワトコの杖は現在の所有者が決闘で武装解除されるなどで「明確に負ける」以外で忠誠心を揺らがさず、忠誠心を向けるものに対しては必ず100%の力を発揮するという特性を持つ。
それこそがニワトコの杖=秘宝とされる所以である。
蘇りの石
所有者の望む故人を甦らせる石。
ただし、呼び戻した死者は現世に長くは留まれず、再び死の世界へ帰ってしまう。
死者蘇生ではなく『死者を一時的に呼び出す』故に大切な人を持つ者ほど甦りと二度目の別れに苦しみ、悲劇の結末を辿ってしまう。
制作者は、二番目の兄『カドマス・ペベレル』。
子孫の一人は、ホグワーツでダンブルドアが警戒していたトム・マールヴォロ・リドルである。
彼の生家が長きにわたって独占している故か他の秘宝と異なり劣化市販品が存在しない。
ある意味で唯一真に秘宝たりうる品と言える。
透明マント
所有者の姿を不可視にするマント。
制作者はポッター家の祖先で一番下の弟『イグノタス・ペベレル』。
同名の物が市販されているが数年経つと能力が切れる市販品と違って呼び寄せの呪文にも反応せず、魔法が直撃しても効果が切れない永続的な効果を持つ。
死の秘宝では最も応用と使い勝手が良いが、あくまで消えるのは姿のみ。
何かに触れれば物は動くし、人はぶつかる、足音も立ってしまうので工夫が必要。
そこまでしても吸魂鬼(ディメンター)や魔法の目は中身を透視するので効果が無いなど、扱いに反してそこまで便利なアイテムとは言い難い。
関連動画
ロンのツッコミはご愛敬。
関連タグ
死を制する者:秘宝を全て揃えた者を指す。ただし、「死を超越した者」ではなく「死の恐怖を前にしても一切自身をゆらがさない者」を意味する