“あの男というのは当然ながら、ゲラート・グリンデルバルドの事です。もしもヴォルデモート卿が次の世代に現れなかったとしたら、彼こそが100年ぶりに現れた歴史上最も強力で邪悪な魔法使いでした。”
「法律のせいで、我々は溝鼠のようにこそこそと、本当の自分を押し殺して生きねばならない。ひとつお聞きしたい、議長。皆に聞きたい。誰を守るための法だ?我々か? 彼らか?」
「殺すがよい、ヴォルデモート。私は死を歓迎する! しかし私の死が、お前の求めるものをもたらすわけではない……お前の理解していないことが、なんと多いことか……」
概要
『魔法ワールド』の人物。
名前は1巻「賢者の石」から登場しており、詳細が明かされるのは7巻「死の秘宝」からとなる。
ヴォルデモートに次いで歴史に爪痕を残した闇の魔法使いであり、アルバス・ダンブルドアのかつての親友。
魔法族が正体を非魔法族へ表し、彼らを屈服させるという思想を掲げ欧州を中心とした動乱を引き起こした。魔法界に反旗を翻し後に「ゲラート・グリンデルバルドの反乱」と呼ばれる事になる革命活動に従事したが、各国魔法省がグリンデルバルドに屈する事はなく、アルバス・ダンブルドアとの決闘に敗北し鎮圧された。
作中の記事によれば、ヴォルデモートが現れなければ最も危険な魔法使いの王座にあったとされており、魔法界の歴史における転換点として「ヴォルデモート卿の凋落(一度目)」、「国際魔法使い機密保持法の制定」と並び、「グリンデルバルドの敗北」が挙げられている。
プロフィール
名前 | Gellert Grindelwald
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血統 | 純血または混血(半純血) |
誕生 | 1883年ごろ |
死亡 | 1998年3月 (享年115歳~116歳) |
家族 |
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出身 | ダームストラング (退学処分により中退) |
映画版演者 |
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映画版吹替 |
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来歴
青年期 ダンブルドアとの交わり
闇の魔術の教育で悪名高いダームストラング校に通っていたが、同級生を攻撃した事で退学処分となる。
その後、大おば(祖父母の姉妹の意)であり著名な魔法史家であるバチルダ・バグショットの暮らすゴドリックの谷を訪れていた。
バチルダの大おばというのが父方か母方か、祖父か祖母か、姉か妹か全く描写されていないが、中国語版では『姑婆(父方の祖父の姉妹)』という表記となっているためグリンデルバルド家からイギリスのバクショット家に嫁いだという可能性が高いことになる。
そしてそこに住んでいた当時のアルバス・ダンブルドアと断金の交わりを結び、アルバスと共に「より大いなる善の為に」というスローガンのもと、死の秘宝を探し出しマグルを魔法族の下へ屈服させる計画を練った。
その過程で、決して互いに攻撃できなくなる血の誓いをアルバスと交わす。
アルバスはグリンデルバルドの思想の過激さに気付きながらも、初めて出会った同世代の天才に惹かれてしまう(原作者曰く「恋愛的感情を抱いた」)。
しかし、2人が計画を進めるうちにアルバスは妹アリアナの世話を疎かにするようになる(アリアナはとある事情で精神的に不安定となり魔法が制御できなかったため、アルバスが面倒を見ていた)。
これに怒ったアルバスの弟アバーフォースはグリンデルバルドと口論になり、やがてアルバスを含めた三つ巴の乱闘に発展。
その巻き添えでアリアナが死亡してしまう。
アリアナの死そのものは偶発的な事故であり、彼女を死に至らしめた原因が3人のうちの誰が放った魔法であったかは不明だが、既にダームストラングでの前科があったグリンデルバルドは咎を受ける事を恐れ国外へ逃亡し行方をくらました。
この事件を気にアルバスは弟との仲が一時決裂しただけでなく、グリンデルバルトと決別する事になった。
その後、杖職人マイキュー・グレゴロビッチからニワトコの杖を盗む。
中年期 台頭
1920年代に闇の魔法使いとして台頭。
魔法族によるマグル支配を掲げ、それに賛同する魔法族を率いて反乱を起こした。
その究極的な目的は、魔法族はマグルから身を隠して生きることを義務化する「国際魔法使い機密保持法」の破棄であった。
グリンデルバルドにとっては自らが支配者となる基盤であり、支持者たちにとってはマグルから身を隠す抑圧からの解放を意味していた。
グリンデルバルドは誰よりもアルバス・ダンブルドアを恐れていたとされ、それは最強と言われるニワトコの杖や決して互いを攻撃できない「血の誓い」をもってしても拭いきれない程の事実であった。
グリンデルバルドはダンブルドアの住む英国国内では一切事件を起こさなかったが、欧州を拠点に勢力を拡大。
ブルガリアのビクトール・クラムの祖父を含む大勢の敵対者を虐殺し(これが原因でビクトールは闇の魔法使いを嫌っている)、またオーストリアの山中に築いたヌルメンガード城に閉じ込めた。
1926年を舞台にした『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』ではオブスキュラス事件の黒幕として登場。
ダンブルドアの存在ゆえに英国では一切事件を起こさなかったという設定が踏襲されている。
欧州大陸を活動拠点とし、本作ではアメリカでオブスキュラスを解き放つという大災厄を引き起こすが、渡米していたニュート・スキャマンダーらの活躍で捕縛された。
1927年を舞台にした『黒い魔法使いの誕生』においては、欧州への護送中に脱走してフランスに潜伏。腹心ヴィンダ・ロジエールら信奉者を従え、再びニュートらと相見えている。ニワトコの杖を用いたり演説により仲間を集めるなど、前作よりも堂々と活動。最終的にクイニー・ゴールドスタインやオブスキュラスであるクリーデンスを自らの配下にし、彼に自身の本当の名前を告げた。
1932年を舞台にした『ダンブルドアの秘密』では国際魔法使い連盟に取り入って自身の罪状を取り消させた上、そのトップである「上級大魔法使い」の座につこうと画策する。真っ向からの選挙では及ばないと考えたグリンデルバルドは、純粋さと善の心を見抜く希少な魔法動物・麒麟によって上級大魔法使いを選出するという古来の手法に目を付け、麒麟を殺害して亡者として操る事で自らが上級大魔法使いに選ばれる計画を実行する。しかし、今回はその過程で暴力と支配という本性を現した事でクイニーとクリーデンスに裏切られ、さらにダンブルドアの計画を実行したニュートたちの活躍により麒麟を殺害した罪を背負った上、選挙にも敗北するという完全な失策に終わる。
なお、ダンブルドアはハリー・ポッターの時系列において上級大魔法使いに就任している。また、5巻においてヴォルデモートの恐怖に屈した国際魔法使い連盟によりダンブルドアが上級大魔法使いの座を追われた事も語られている。正規の手段で上級大魔法使いに就任したダンブルドア、そんなダンブルドアすら追い落とすヴォルデモートの脅威と比較すると、今作でもグリンデルバルドはそのカリスマ性や計略を含めてもやはり一枚落ちる描写と言える。
反乱 ダンブルドアとの決闘による失墜
1939年、信奉者と共に魔法界に反旗を翻し、魔法使いが人間を支配する世界の為に反乱を起こす。逆らう者達をヌルメンガードへ幽閉、ビクトール・クラムの祖父などを殺害するといった強硬手段を取った。
反乱は6年に及んだが、その間も魔法使いが人間世界へ姿を現す目論みが実現する事はなく、グリンデルバルドの力が最高潮に達した1945年、ついに無視する事ができなくなったダンブルドアに戦いを挑まれて敗北。結果ニワトコの杖はダンブルドアのものとなったのだった。
二人の戦いは歴史に残る伝説の決闘と語り継がれているが、中にはグリンデルバルドは最初から敗北を予期し白旗を上げていたと証言するものもおり、その実情は不明となっている。
敗北後、グリンデルバルド自身がヌルメンガードの最上階へと収監された。
最期 ヴォルデモートとの対話
1998年、ハリポタ本編登場時点では改心しており、過去の自身の行いを恐ろしく思い、誤りだったと認めている。ニワトコの杖を求めるヴォルデモートがヌルメンガードを訪れた際は堂々たる姿勢を貫き、「お前は勝てない」とヴォルデモートの敗北を予言すると同時に、緑色の閃光に射貫かれて死亡した。
その最期の行動はダンブルドアの肖像画からは「悔悟の念から」、ハリーからは「ダンブルドアの墓を暴かれたくなかったから」だと推測されている。ダンブルドアの耳に届いていた通り、彼が改心していた事は少なくない魔法使いの知るところではあったようである。
グリンデルバルドも最期の最期にダンブルドアと同じ陣営に立ち、闇の帝王に立ち向かってその生涯を終える事になった。
容姿
青年期『ハリー・ポッターと死の秘宝』
闇祓い長官として
青年期は他人の容姿に厳しい人によれば金髪(ブロンド)の巻き毛、陽気な雰囲気のハンサムな容姿をしていた。
中年期は両サイドを刈り上げ前髪を後ろへ撫でつけ、口髭を蓄えている(アメリカ魔法省での収監〜脱獄時は髪が伸びている)。
また、左右の眼の色が異なる所謂オッドアイであり、右眼がかなり薄い青色、左眼が黒色(濃い青色?)であり、後述の「予言者」の能力と関りがある可能性がある。
アメリカでオブスキュラス事件を起こした際は闇祓いの長官パーシバル・グレイブスに変身していた。
能力
魔力
史上最強と言われる魔法使いの一人。
もしヴォルデモート卿という規格外が出現しなければ、史上最強の闇の魔法使いは彼だっただろうと言われている。ファンタスティック・ビーストシリーズ(以下ファンタビ)では正面から闇払い十数人の一斉放火を受けながらも一方的に相手に無双するほどの実力を披露し、並の魔法使いをはるかに凌駕する力量を見せる。
ただし操る闇の魔法力や凶悪性はヴォルデモートには及ばず、ダンブルドアもニワトコの杖を持ったグリンデルバルドに対し「おそらくわしの方が少し勝っていると思っていた」とハリーに語るなど、この2人ほど絶対的な存在ではなかった。
ファンタビ1作目では、隙を突いたニュートにあっさり拘束されたり、闇払い数人が張った保護呪文を破る事ができなかったりする。忠誠心の無いニワトコの杖でさえホグワーツの防御魔法(魔法使いが数百人束になっても壊せない)を一撃で打ち破って見せたヴォルデモートの強さには及ぶべくもない。
ファンタビ3作目では、遂にダンブルドアと対決。互角の戦いを繰り広げた。しかしニワトコの杖を用いてなお、真正面からの呪文の激突で押し込まれるなど、「ニワトコの杖を持ったグリンデルバルドよりも自分が少し勝ると思っていた」というダンブルドアの評価は間違っていなかったと言える。
人心掌握
その一方で、人心掌握術に長けていたとされており、グリンデルバルドはヴォルデモートとはまた違ったベクトルの力を持っていたという。相手に「自ら従いたいと思わせる」能力ではヴォルデモートやダンブルドアの上をいっていた。
ファンタビ2作目では巧みな演説により信奉者を増やす姿を見せている。
自身の力や容姿による魅了というよりは、少しでも心の闇を抱える人々の願いを汲み取り理知的に自身の思想へと恭順させるという側面が強い。その点で、絶対的な力による恐怖や過去には端正な容姿などあくまで自身への畏怖と崇拝で組織を束ねていたヴォルデモートとは同じカリスマでもその本質に大きな違いがある。
ファンタビの監督ディビット・イェーツは「ヴォルデモートがギャングならばグリンデルバルドは詐欺師」と的確に表現している。
ファンタビ3作目からは人心掌握に長けた面が見られなくなった。失敗を犯した部下を脅す、敵対者を磔の呪いで拷問する、魔法による小細工によって選挙に勝とうとする、純血を優遇し混血やマグルを拒絶する、といった力と恐怖、単純な純血思想の闇の魔法使いという趣が強い。今作ではそういった行動に出た事でクイニーやクリ-デンスにあっさり離反されている。ダンブルドアがグリンデルバルドの策略をあらゆる面で全て打ち壊すという物語展開もあり、海外では「強くないヴォルデモート」と言われ評判は下がり気味である。
未来視
彼はまた「予言者」(言語ではSeerなので直訳すると視る者、未来視を行う者)でもあった。
原作者はツイッターにてファンの質問に答え、「彼は予言者です、そして嘘吐きでした」と答え、グリンデルバルドが予言者(シビル・トレローニーの予言などで知られる能力を持つ者)の能力を有している可能性に言及している。 またこの能力で未来を垣間見たためか、ヴォルデモートに対して「お前は勝てない」と断言しており、現実のものとなる。
この未来視の能力はダンブルドアにも認知されており、対グリンデルバルドにおいて最重要事項として扱われている。しかし、視える未来は割とガバガバで、その能力の存在さえ知っていれば対策は容易。グリンデルバルドが視れるのはあくまでその時点における予定通りの行動を他人が完璧に取った場合のみであり、誰かが少し予定を変更しただけで意味はなくなる。作中では麒麟が入れられたトランクを手に入れようとしたものの、トランクを複製されただけでグリンデルバルドの未来視は完封された。
余談
「マグル界の世界大戦」
作中でグリンデルバルドは第二次世界大戦そして原爆投下を予測しており、ファンタビ二作目の演説時にはその映像を聴衆へ見せている。
初登場について
名前そのものは第1巻『賢者の石』から登場しているのは上述のとおりだが、その初登場は「とあるアイテムの文中に名前が一行出るだけ」という極めて僅かなもので、以降は七巻『死の秘宝』まで名前が一切出てこない。これは「グリンデルバルドが強力な魔法使いであったのは事実だが、凶悪さや実力においてはヴォルデモートに及ばなかったので霞んでしまった」という設定によるもの。
彼がホグワーツに来ていたら
ダームストロングで悪名を轟かせたグリンデルバルドであるが、ファンの間では彼がホグワーツに来ていたらどこの寮に配属されるかというテーマで度々議論が上がる。
闇の魔法使いが多い寮としてはスリザリンが挙がるが、実のところ彼の思想・特性はどちらかといえば「グリフィンドール」に近い。
彼は確かにマグルの支配を目論んでいたが、純血などの血統を重要視していたわけではなく、あくまで「魔法使いがマグルに隠れて生活しないといけない、マグルが優位に立つ現体制の打破」という背景がある。
いわば現状からの変革を望み、そのための強い行動力を持った人物であり、既得権益の維持に走りやすいスリザリンよりも、自らの正義のために大胆な行動を起こすグリフィンドールの特性が当てはまるだろう。(無論自らの支配欲も大きいが、時に傲慢になる特性はスリザリンだけでなくグリフィンドールにも当てはまる。)
「より大きな善のために」と、あくまで自らを「善」と定義づけるあたりにもグリフィンドールのような正義を重んじる姿勢が現れている。
そのためファンの間では「グリンデルバルドがホグワーツに入ったらグリフィンドールなのでは?」と言われることもしばしばある。
もしグリンデルバルドがホグワーツに入学し、グリフィンドールに配属されていたとしたら、グリフィンドールはスリザリンと並び著名な闇の魔法使いを輩出した寮として有名になっていたかもしれない。
奇しくもダンブルドア役を断わった俳優が演じたある悪役に近い立ち位置とも言える。
映画版『死の秘宝』との相違点
映画『死の秘宝 PART1』にて10代の頃の写真及び晩年の獄中で登場しているが、グリンデルバルドとダンブルドアの過去は大分カットされている。
終盤では自身の独房を訪れたヴォルデモートにニワトコの杖の在り処を教えており、殺された描写も無かった。
関連イラスト
関連項目
魔法ワールド ハリー・ポッターシリーズ ファンタスティック・ビースト
アドルフ・ヒトラー……作者が関連を明言