概要
「X-MEN」などで主に悪役(ヴィラン)として有名なキャラクター。
初登場は、1963年11月「Uncanny X-Men」#1。
記念すべき第一話のヴィランとして登場。当初はちんけな悪党だったが徐々に設定が増え、現在の立ち位置を獲得した。
圧倒的なミュータントパワーと固い信念に基づいたカリスマでヴィラン達をまとめ、X-MENと激しい戦いを繰り返すスーパーヴィラン。ただ、後述のユートピア建国以降はチャールズ・エグゼビア(プロフェッサーX)とも仲を修復し、ヒーロー側で活躍するようになっていった。
ファンからは絶大な人気を誇っており、映画・ゲーム・アニメを問わず、多くの作品に出演している。
来歴
本名:マックス・アイゼンハート(ドイツ時代)→エリック・マグナス・レーンシャー。
ドイツをナチス・ドイツが席巻していた時代に少年時代だったとの事で、恐らく1920~1930年代のドイツ生まれ。ユダヤ系だったためにナチスのユダヤ人迫害に遭い家族を奪われ、強制収容所に入れられて同胞が次々に死んでいく様を目の当たりにした。
WW2が終戦すると彼はソ連に移住し、収容所時代に知り合った女性・マグダと結婚。娘のアーニャも生まれ、静かに暮らしていた(エリック・レーンシャーの名前はこの頃に作った)。
だがそこでミュータントパワーが発現。それが原因で住んでいた村の住民たちは、彼を拒絶し恐れるように。
もともとが村人たちも迷信深く、ミュータントパワーも悪魔の力と恐れていた。そしてその結果、エリックの家に放火。それが元で、幼いアーニャは焼死してしまう。
エリックは娘の死を目の当たりにして、怒りのあまりにパワーを暴発。村人たちを全員殺害してしまった。それだけでなく、駆けつけた軍隊も一掃する。
夫のあまりの変わりようと、その鬼神のごとき怒りに恐れをなし、マグダは彼の前から逃げてしまった。
(この時点でマグダは妊娠しており、離れた土地で双子を産んだ。これが後のワンダ・ピエトロのマキシモフ姉弟である)。
傷ついた心で放浪し、ルーツに引き寄せられたのかイスラエルにたどり着き、そこの精神病院でボランティアの看護師として働くことにして落ち着いた。その病院で同じくミュータントであったチャールズ・エグゼビア(プロフェッサーX)と出会い、親友となる。
だが、少年時代の悲惨な体験から「人類(ホモ・サピエンス)はより優秀な生物であるミュータント(ホモ・スペリオール)に支配されるべきである」との思想を固め、チャールズと決別。
チャールズがプロフェッサーXを名乗って「恵まれし子らの学園」を設立するのと同時期に、エリックは旧人類を憎むミュータント達を集めて「ブラザーフッド・オブ・イヴィルミュータント(悪のミュータント同胞団)」を結成し、エリック自身は「磁界王マグニートー」を名乗った。
チャールズの教え子X-MENとマグニートーの長い対立の歴史は、ここから始まったのである。
サイクロップスがミュータントたちをまとめ上げて「ユートピア」を建国した後は、その偉業に敬意を表するかのように恭順。チャールズとも滞りなく和解し、好々爺染みた穏やかな生活を送る。
皮肉にも、宿敵にして旧友でもあるチャールズの愛弟子がマグニートーの思想の後継者になったのだった。
人物
悲惨な半生を経て、マグニートーは大勢が少数を囲んで痛めつけて正当化する「迫害」を絶対的に憎んでいる。そして同胞(迫害に傷ついているミュータント)を守ろうとする。
彼は人間全てを憎悪しているのではない。マグニートーの目的は「同胞であるミュータントの救済」であり、ミュータントを含めた人間としての違いを口実にした拒絶・迫害を憎んでいるのである(もっとも、迫害を防ぐには「被害者であるミュータントが、加害者である通常人類を支配するしかない」と決めつけるほどには歪んでしまってもいる)。
庇護を求めたミュータントの少女が目の前で殺された時には激しく怒って即座に復讐をし、その亡骸を前に慟哭する場面もあった。
そうした事情もあり、状況によってはX-MENと和解・共闘する事もあり、X-MENのメンバーとして参加していたこともある。一時期はX-MENのリーダーとなって、若きミュータントたちを率いていた事すらあった。
「人を差別・迫害する者たちへの、被迫害者の怒りと反撃」という複雑な概念の擬人化であり、単なる悪役とはとても言い切れない人物である。
その人物像はアメリカ社会の根元病とも言える人種差別、それに立ち向かうために暴力をためらわなかったマルコムXが投影されているとも言われている。
初登場した「Uncanny X-Men」#1では、一人でケープ・シタデルの米軍ミサイル基地を占拠。磁力を用いて軍を無力化したのみならず、磁力によるフォースフィールドを展開して、己の世界征服の野望の拠点にしようと試みた。しかし、初出撃したX-MEN五人と戦い、敗退する。
この頃はまだ、「世界征服を企む、強力な超能力者」程度のキャラ付けだった。
「エイジ・オブ・アポカリプス」では、早世したチャールズの代わりにX-MENを創設。最終的にアポカリプスを打倒している。
なお教育方針はチャールズ以上にスパルタ。
現在は諸々のややこしい事情で能力が弱体化し、肉体の方も相当老齢の域に入ってしまっている。
長時間の能力使用には耐えきれなくなっているが、その卓越した戦闘能力は未だ衰えてはいない。
シリーズにもよるが、同じミュータントであるローグとは浅からぬ関係にある。
彼女の能力吸収に対し、磁気でバリアを貼る事で対応が可能。子供まで作っている。
能力・技能
「磁界王」の異名を持つ、最強のミュータントの一人。
磁力を操り、あらゆる金属を意のままにすることができる。
全身にアダマンチウムを移植されたウルヴァリンにとっては実質天敵。※下記余談も参照。
全身が金属化するコロッサスや、金属製アーマーをまとうアイアンマンも相性は最悪である。
昔は金属を操るのがメインだったが、「意のままに磁力を操れる」という能力の科学的考察が深まるにつれて、その危険度は増大の一途をたどっていった。
能力が及ぶ範囲は、血液中の鉄分から地球の磁場、宇宙空間を突き進む隕鉄まで、広範囲かつ尋常ではない強力さをもつ。
血流を弱める事で強制的に昏睡状態にできる。映画版ではミスティークによって事前に鉄分注射された看守の血から砂鉄を生成、これを武器兼足がかりとして操り、脱獄に成功している。
更には、磁力を応用して電気と重力にも干渉できる。
光をゆがめる事で光学迷彩をも可能としており、ますますチートっぷりに拍車がかかっている。
トップ画像の御馴染み衣装も、自身の能力で作った物であり、応用の幅は広い。特徴的なヘルメットはテレパシーによる精神攻撃への対抗装備。
ただ、複雑・精密な事柄を操るのはやはり負荷が大きいようで、正面からの戦闘では金属塊を飛び回らせたり電磁波制御の光線を使ったりする事が多い。
188cm86kg、頑健な巨体の持ち主だが、近接格闘をするシーンはあまりない。
勉強家で、優れた物理学者でもある。彼がそのパワーを様々に応用できるのはその科学的知識が有ってこそ。
実写版
演 / 吹替 |
---|
老年期:イアン・マッケラン / 阪脩 → 有川博 → 家弓家正 → 長克巳(劇場公開版)、家弓家正(テレビ朝日版)
|
青年期:マイケル・ファスベンダー / 三木眞一郎
|
映画シリーズ「X−MENユニバース」では、主にメインシリーズに重要なキャラクターとして登場している。
『ファースト・ジェネレーション』冒頭では幼少期が描かれており、ポーランドの強制収容所で母親と引き離されかけたことをきっかけにミュータントパワーが発現。彼の力をさらに引き出そうとしたドイツ人科学者のクラウス・シュミット(後のセバスチャン・ショウ)の指示により母親が殺害されたため、復讐者として生きることになる。
ショウを追ううちにプロフェッサーXと出会い、ヒーローチーム「ディヴィジョンX」を結成するが、後に脱退する。
少なくとも2人の女性と結ばれており、1人目のパートナーとの間にクイックシルバーを儲けているが、『フューチャー&パスト』で出会ったときはお互いに気づかなかった。また原作におけるスカーレット・ウィッチに当たる、クイックシルバーの妹は同作に少しだけ登場している。
『デッドプール&ウルヴァリン』でも名前のみ登場。過去にTVAによりどこかの世界線の個体が虚無世界に剪定されて送られてきたようだが、既に死亡してしまっていることが語られている。
LEGO
『LEGO マーベル スーパー・ヒーローズ ザ・ゲーム』にてメインヴィランの一人として登場。ヒーロー達と何度も激突する事となり、作中で最も戦闘回数の多いヴィランとなる。ムービー中でも自慢の磁力でアイアンマンのスーツをバラバラに分解し、アイアンマンを無力化した。しかしストーリー後半、ロキがギャラクタスを呼び出し、地球が滅亡の危機に直面した時は他のヴィランと共にヒーローに力を貸し、共にギャラクタスに立ち向かった。
ストーリー後半で三度目のマグニートーを倒す事でアンロックされる。
道中で見かける水色に光るオブジェクトは、彼の磁力がないと解除出来ない。
他にも空中浮遊も出来るが、アイアンマン等と違い、自由に飛行出来る事は出来ない。
更に磁力による飛び道具ややや判定の広い攻撃など、磁力を存分に発揮して戦える。
この磁力が使えるキャラクターは、当然彼と娘のポラリスのみ…と思いきやスタン・リーも使える。マグニートーの特権が…。
続編の『LEGO マーベル スーパー・ヒーローズ 2 ザ・ゲーム』では、X-MEN出身のキャラクターが軒並みリストラされ、マグニートーも残念ながら続投出来なかった。
余談
生みの親であるスタン・リーは当時を振り返り、「人種差別主義に反撃したかった」「危険な人物だが、自分はヴィランだと思ったことは全くない」と語っている。
また当初はチャールズの兄弟という設定もあったらしいが、最終的にボツになっている。
なお、「コズミック・ビーイング(マイティ・ソーなどの地球の神々さえ上回る力を持つ宇宙的存在)の1人であるビヨンダーが地球のヒーローとヴィランを別世界に転移させて戦わせる」と云う内容の1980年代のコミックのエピソード「シークレット・ウォーズ」では「私利私欲で行動している訳ではない」事を理由に「ヒーロー」に分類されている。
上記にあるように、全身にアダマンチウム鋼を移植しているウルヴァリンにとっては、相性は最悪の敵である。実際、あるエピソードにおいては、マグニートーによりウルヴァリンは全身から無理やりアダマンチウムを剥ぎ取られ、死ぬ一歩手前まで追い詰められた。
また、それが元で、チャールズは怒りのあまりにエリックの精神を破壊してしまうが、さらにそれが原因となってある存在が生まれ、世界レベルの大事件が起こる事となる。
DCコミックのキャラと合体した大規模クロスオーバー「アマルガム」では、マグニートーは合体せずそのまま。ただし、DCコミックのロボットヒーローチーム「メタルメン」を元にした、「マグネティックメン」を率いるミュータントのリーダーとなっている。
タイトルは、「MAGNETO & THE MAGNETIC MEN」
ミュータント・ハンターロボットであるセンチネルに対し、こちらもロボットの部下で対抗すべし……というところから、ロボットチーム「マグネティックメン」を引きつれ、戦いを挑むマグニートーの活躍を描く。
もう一タイトル、「MAGNETIC MEN FEATURING MAGNETO」も発行された。
本作のマグニートーは、人間とミュータント、そしてロボットも含め、全てが差別なく平和的共存する事を願っている。作中で戦った敵ですら、自分たちの本来の敵『ウィル・マグナス』と戦っていると知るとあっさり手を組むなど、妙に優しく人が良いキャラになっている。
関連タグ
オンスロート:その誕生に、深く関わっている。