概要
現実には、紛れもない極悪人にもかかわらず人を引き付ける魅力(カリスマ性)を持ち合わせた者が存在する。
日本の歴史上で言えば石川五右衛門など。
カリスマ性はその人物によってさまざまだが、強い思想や欲望を持ち合わせているためか何事にも臆さず己に強い自信を持ち合わせた人物が多く、部下のなかにはその姿に陶酔し崇拝にも近い忠誠心を抱く者もいる。
フィクション作品における悪のカリスマ
創作物にもそうした造形のキャラクターは多く描かれる。
カリスマとは言っても本当に劇中で多数の信奉者がいるタイプだけでなく、逆に劇中ではほとんど部下がいない、あるいは完全に孤立しているが、読者や視聴者の支持を得てカリスマとして扱われているタイプも含まれることがある。
ただ、あまりに悪のカリスマとして「完成されすぎたキャラ」を作ってしまうと、制作側にとって続編の敵キャラを生むのに重い障害となってしまう場合もある(ブロリーや志々雄、クルーゼなどが顕著)。前作には勝らずとも別方向に魅力的な悪役を描ければこの限りではないが、描ききれなかった場合は脚本の被害者呼ばわりされてしまう事も珍しくない。
悪役にもかかわらず作品の人気投票で上位にランクインしたり、有名作品の悪役などはテレビのマンガ・アニメ特集で「人気悪役」「悪のカリスマ」と特集が組まれたりもする。
主な特徴
カリスマと称される悪役は、以下のいずれかが該当する(複数の要素を兼ねている者も勿論多い)。
ここでは代表的な悪のカリスマを記載する。
その他の具体的なキャラクターについては悪のカリスマ一覧を参照。
組織・集団の長
例:フリーザ、ラオウ、悪魔将軍、志々雄真実、藍染惣右介、サー・クロコダイル、烏丸蓮耶、鬼舞辻無惨、サカキ、エンペラ星人、ユーハバッハ、オール・フォー・ワン、黒川イザナ、エスデス、アカギ、ファニー・ヴァレンタインなど
そのカリスマ性により多くの人間を惹きつけ、己を主とする組織を有していることが多い。もしくは物語中に下克上や独立により、最終的に一組織の最高幹部に成り上がるというパターンもまれに存在する。その規模は人によってさまざまで、各地に点々と部下を持つ者もいれば、巨大な国家を有する人物もいる。
もちろんただ単に頭数を率いるだけではなく、有能な人材を見いだしその実力を最大限に活用できる舞台を与えるなど、人事に関しても頭の回る人物が多い。
部下の多くは、カリスマの圧倒的な力に恐れたり、あるいは人心掌握術や演技力により従わされていたり、その支配力に肖(あやか)ろうとする小悪党もいる。なかには主のカリスマ性に陶酔し、崇拝にも近い忠誠心を抱く者もいる(異性の部下であればほのかな恋心を抱く者も)。
ただし、当の本人にとってはあくまでも「己の目的達成のための手駒」でしかないため、利用価値のなくなった部下はあっさり切り捨てるなどその扱いはひどくぞんざいであることが多い。逆に、自身が気に入った部下に対しては寛容だったりもする。
悪役であっても「理想の上司じゃないか」という評価を受ける悪のカリスマもいれば、「悪のカリスマだとは思うが、正直上司にはなって欲しくない」という評価を受ける悪のカリスマも。
自信家
例:DIO、セル、ガノンドロフ、ギルガメッシュ、ラインハルト、嶋野太、大魔王バーン、ハマーン・カーン、ウルトラマンベリアル、ウォロなど
強い思想や欲望を持ち合わせているためか、何事にも臆さず己に強い自信と威厳を持ち合わせた人物が多く、そのカリスマ性に違わぬ実力も備えている。
キャラクターによってはその自信からか、実力を認めた人物に対して「部下にならないか」と勧誘したり、フェアもしくは自身に不利なルールでの戦闘を挑んだりと、ある種の敬意をみせることもある。並のアクシデントやイレギュラーでは動じないほど肝が据わっていることも多い。
しかし、相手が自身より圧倒的なまでの実力の差を見せてくると、それまでの自信を喪失し、場合によっては卑劣な手段に出るパターンもある。さらには「卑劣上等、どんな手を使っても最後に勝てばよい」と開き直っている悪党もいる。
なお、自信家の悪は皆必ずしも組織のトップに立ちたがるわけではない。なかにはキルバーンや市丸ギンのように第三勢力のスパイだったり、仮初の姿で潜入していたり、別の思惑があって長に従っている振りをしていたり…という悪のカリスマもいる。
野心家
例:ゲーチス、カーズ、マーシャル・D・ティーチ、大蛇丸、羂索、鶴見中尉、ムスカ、鳳暁生、鬼龍院羅暁、フレイザード、ギース・ハワード、カルロ・セレーニ、獅子王司、音上楽音、ムルタ・アズラエル、ピンガ、董卓など
自身の持つ野望や欲望に正直で、そのためには手段を選ばない。
むしろ「己に逆らう者こそ悪」と言わんばかりに己の行動に迷いのない人物が多く逆にいえば、自分の理想や信じる道に一直線なドリーマーともいえなくもない。
ほかのパターンに比べると「一人の悪党」として魅力がある者が多く、「集団の頭」としての手腕・カリスマはイマイチであることもしばしば。
シリーズ物の場合、何度敗れても屈することなく復活するという執念深さを見せることも多い。
悪党なりの成り上がり願望、ハングリー精神にカリスマ性を感じるファンが多い。
狂気
例:ノロイ、ゾルフ・J・キンブリー、ボンドルド、魔人ブウ、吉良吉影、ヒソカ=モロウ、真人、カミキヒカル、ン・ダグバ・ゼバ、ダークザギ、モンティナ・マックス、球磨川禊、槙島聖護、ルザミーネ、ローズ、ラウ・ル・クルーゼ、楽園防衛プログラムなど
悪役のなかには特にその狂気性や異常性、凶悪性、サイコパス気質といったもので読者や視聴者からの高い人気を得て、悪のカリスマ扱いされるキャラクターも存在する。
マッドサイエンティストやシリアルキラーといったキャラクターに多く見られる。
基本的に言動の一つひとつが常軌を逸している。作中での立ち位置は実にさまざまで、孤高の存在もいれば軍や自身のチームを所有しているなど、作中で実際にカリスマである場合もある。
仲間思い
例:クッパ、ドンキホーテ・ドフラミンゴ、クロロ=ルシルフル、ヨミ、夏油傑、リゾット・ネエロ、ルルーシュ・ランペルージ、南雲ハジメ、アインズ・ウール・ゴウン、ノリス・パッカード、グズマ、ボタンなど
敵対する者には容赦はないが、自分の部下には優しく思いやりの深い一面を見せる。
寛容かつ親分肌で面倒見がいいほか、部下に対してアドバイスもしたりするなど聡明(そうめい)な理解者でもあるため、絶対的な忠誠を誓う者も多い。
仲間同士のチームワークも良好で仲間や部下が傷つけられる、もしくは殺害された場合などは激しい怒りを見せることもあり、復讐に走る可能性も高い。
独善
例:夜神月、エンリコ・プッチ、ステイン、高杉晋助、ペイン、浅野學峯、雪代縁、フラダリ、スカイネット、シンドバッド、トレーズ・クシュリナーダなど
自身の思想・価値観に絶対的な信頼を置いている。他の悪役たちと決定的に違うのは、自らの行為が(基本的には世界や人類にとって)「正しい」と思っていることである。
当人はよかれと思ってやっているので一連の行動にまったく罪悪感がない場合が多く、下手な暴君よりタチが悪い。このタイプのキャラクターは表向きには善人を装う傾向がある。(あるいは本気で自分のことを善人だと思っている。)
多くの悪役は、多かれ少なかれ自身の「悪という立位置」に迷いや後ろめたさがあり、それを無視するか開き直る傾向があるが、このタイプのキャラクターが抱いているのは歪んだ「正義感」である。このような独善に陥った経緯はキャラクターによるが、悲しい過去からくる場合もあり、哀しき悪役と近しい部分もあるのかもしれない。
「野心家タイプ」と同様に個人主義の性質が強いため、基本的に他人を信用せず、単独犯で行動を起こしているキャラクターが多い(他人を利用することはある)。
自分を客観視できないという明確な弱みを持っているため、組織の中で高い地位にあるキャラクターであっても、自分の背後にいる本物の悪い奴の都合の良いように踊らされていただけ、という結末になってしまうことも少なくない。
強さ・インパクト
例:キング・ブラッドレイ、ルカ・ブライト、戸愚呂弟、両面宿儺、カイドウ、虚、ディアボロ、安心院なじみ、海馬瀬人、一方通行、T-800、エボルト、ズォーダー大帝、聞仲、アシュナードなど
所業や言動、いわばその価値観・思想は共感も理解も不可能なキャラクターであったとしても、劇中で見せつけた実力やインパクトによっては逆にその作品を見た人たちのあいだで人気が出た結果としてカリスマ扱いされ、一定の敬意を持たれるケースがある。
作中ではその強さが広く認知されていたり、いわゆる恐怖の象徴とされる存在であったりすることが多い。撃破数が多いのも特徴。
このタイプのキャラは倫理観以外は比較的理に適った思考・行動をする傾向があり、自らの能力を過信しない慎重さを持っていたり、損得勘定を踏まえたドライな組織運営をしたりしているので、主人公側からしてみると厄介極まりない存在である。
また、戸愚呂弟やルカ・ブライト、カイドウのようにその強さ、インパクトを残して物語から退場したため、たとえその後パワーインフレが起こっても「強かった」「あのインパクトは超えられない」と思われるキャラクターもいる。
変わったところではテッドブロイラーのような、強さがノミネートされる大きな理由とするも蓋を開けてみればそれ以外の部分が小物そのものというパターンとかさえある。
戦闘狂
例:うちはマダラ、ワムウ、天空王バロン、範馬勇次郎、ロブ・ルッチ、神威、凍座白也、ブロリー、浅倉威、アリー・アル・サーシェス、柴大寿など
いわゆる「三度の飯より戦いが好き」「戦うことこそが生き甲斐」といった戦闘狂のなかにも、読者からの支持を集めて悪のカリスマ扱いされるキャラクターが存在する。
性格はキャラクターによって実に多様。時・場所・場合に構わず戦う者もいれば、強い者とのみ戦う者、公平さ・騎士道精神といった独自の美学を重視する者、成長の見込みがある人物は敢えて殺さずその成長を待ってから戦いを挑む者なさまざまである。
共通しているのは、基本的に孤独で、戦いを至上のコミュニケーションか自己表現の場とみなしていることである。
悪堕ち
例:ガロウ、うちはイタチ、竜騎将バラン、死柄木弔、セフィロス、サウザー、うちはオビト、大道克己、佐野万次郎、東方不敗マスターアジアなど
元々は優しさなど善良な心を持った普通の存在だったのだが、過去に何かしらの不幸を負わされた経験や不遇な生い立ち、心を歪ませる力を持った第三者・環境などで性格が歪んで悪の道を進んでしまったり、もしくは世界の平和や大切な人を救うためにやむを得ず悪役的立場に立たざるを得なかった悪のカリスマも存在する。
つまり、元々善良だった人物が悪に染まってしまった結果、普通の悪役とは違った魅力とカリスマ性を持った悪役として描かれることが多いため、視聴者が感情移入しやすかったり、そのキャラの過去の掘り下げで盛りあがったりと、悪役としての人気が非常に出やすい。
神
例:ロキ、大筒木カグヤ、セト、ザマス、ナイアルラトホテップ、ラーヴァナ、エネル、クトゥルフなど
物語の中で語られる神々のなかにも、悪戯好きであったり、多くの悪行を働くといった神が存在する。また多くの人々の信仰を集めているが実は邪神だった、という場合もある。
そもそも神という存在自体がカリスマの代名詞であり、その存在が善であろうと悪であろうと、人間(若しくは自身の眷属や奉仕種族)に与える影響はとにかく大きい。そして善悪の定義も時代によって大きく変遷することも留意されたし。
現代の科学では存在が否定されているが、古き神々は神話という物語を介して、今もなお多くの人々の興味を惹きつけている。
看板
例:ジョーカー、シャア、サノス、ダース・ベイダー、ヴォルデモート、ヴェノム、デイヴィ・ジョーンズ、モリアーティ教授、大和田常務、ぬらりひょんなど
長期連載・シリーズ作品において、終始変わらず悪役として存在し続けた(もしくは現在進行形で続けている)人物に対しても使用されることがある。作品の主人公や味方キャラクターたちを差し置いてファンから根強い人気を獲得している場合も多く、ある種「作品の顔」とも呼べる存在である。
ただし、コチラの場合「失敗にめげずに自身の信じる道を貫き通す努力家」「主人公を長年引き立て続けた功労者」という見方もされ、意味合い的にはこのタグのほうがしっくりくるかもしれない。
英雄
例(歴史上の人物):織田信長、松永久秀、項羽、曹操、ネロ・カエサル・アウグストゥス、ヴラド・ツェペシュ等
歴史に名を残し英雄として称えられる一方で暴君や独裁者としても伝えられ、実際は悪人ではあった場合も存在する。有能さを兼ね備えた人物も多くおり、後世の歴史の改竄・間違った説が広まるなどによってさまざまな解釈があり、そのため悪人であることを見抜くのが極めて難しい。
しかし、創作で悪人として描かれた際には驚異的なカリスマ性を発揮し、歴史に名を残すに相応しい活躍をする。また、英雄でなくても統治する大企業の社長や国王もこれに該当する。
創作人物ではクシャナ殿下など、ナウシカのような主人公にとっては憎い侵略国のリーダーであっても、トルメキア国民にとっては人類のために前線に立って戦う英雄というケースもある。
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