我が心と行動に一点の曇りなし…………!
全てが『正義』だ
概要
『ジョジョの奇妙な冒険』第7部に当たる「STEEL・BALL・RUN」に登場する人物。
1847年9月20日生まれ。第23代アメリカ合衆国大統領(史実の第23代アメリカ合衆国大統領はベンジャミン・ハリソン)。圧倒的な人気を誇り、国民の支持率が高い。
ジョジョ史上最も社会的地位と力を持った黒幕。
目的の為ならば手段を問わず、自身の謀略によって様々な人間の命を奪い、時には人を騙し陥れるのも厭わない。第7部の主人公であるジョニィ・ジョースター同様、『漆黒の意思』の体現者ともとれるが、ある意味においては彼もまた『黄金の精神』を持っているという評価もできる、二面性を持つ人間。
口癖は「どじゃあぁあん」。ただし、場面によって表記にバラつきがある。
名前の由来はスタンダード・ジャズの名曲「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」。
目的
アメリカ各地に散らばる聖なる遺体を手に入れ、アメリカを『世界の全ての中心』にしようとしている。
過去にカルフォルニア・サンディエゴ捜索隊に同行した際、「悪魔の手のひら」に遭遇し遺体の「心臓部」を入手した(この時にスタンドが発現したのかは不明)。
最終回では、レース後の大統領支持率が91%との記述があり、スティール・ボール・ランレースを成功させた功績が大きかったにしろ、とてつもなく民衆に人気があったようである。そうした背後で、彼の陰謀も抹消されてしまったと思われる。
そんな、大統領としての彼の人気を裏付けるものは、後述するその決断力、大胆な行動、時には極度でさえあった愛国心にあるようだ。
人物像
幼少の頃に軍人だった父親が戦死。父の仲間から彼の自分への『愛』と彼の持っていた『愛国心』を伝えられる。この時に父の形見である自らの誕生日が刺繍されたハンカチを心の支えとして持ち歩いている。大統領曰く、このハンカチは『わたしの原点』であるらしい。
この父の戦友の名前が『陸軍騎兵隊のヴァレンタイン大尉』であり、明言こそされていないが、母と再婚し義父となり、ファニー少年も改姓したと推測できる。
初登場時から終盤まで傲慢さと権力を利用し、私利私欲の為に遺体を集めているかのような描写が目立つが、実際に彼が遺体を集めたのは、あくまで愛国心によるものであった。
「国の為に遺体を集め、そして国民が平和と栄光を手に入れる為に、そして、どこかの悪に遺体が渡らないように遺体を集める事が目的だったのだ」とジョニィ・ジョースターに告白している。たとえその為に多くの人の血が流れ、(自分を含めた)何人もの命が失われようとも、彼は「正義の行動」と信じて疑わなかったのである。ただ、「世界には幸と不幸のバランスがあり 全ての人が幸福になる事は出来ない」とする考え方や自身のスタンドに「えげつない行為」と名付けている事実を察すると、自身の「正義の行動」が「善」であるとは限らず、誰かにとっては「悪」となるのも理解していた節がある。ジョニィからも、「少なくとも自分よりは人として正しい道を歩いてる」と評されている。
スタンド「Dirty deeds done dirt cheap (いともたやすく行われるえげつない行為)」
「隣の世界を並行させられる」能力を持つスタンド。隣の世界のものをこちらの「基本世界」に持ってきても対応するもの同士で対消滅を起こしてしまうため、「お金持ちにはなれない」と表現される。
しかし、大統領自身のみ対消滅を起こさないため、隣の世界の自分にスタンドごと全てを託して死ぬことができる。実際に劇中で大統領は数十回は死亡している。相当の覚悟や、死に対する恐れがない人間でないとできない無敵さとも断言できる。
他、詳細はリンク先を参照。
最期
終盤、Dioと激戦を演じ、追い詰められたものの逆転勝利を果たす。そしてジョニィ達との戦いへと突入。その最中、遺体とルーシー・スティールを手中に収めてD4C-ラブトレイン-の現象に至る(遺体が起こす現象を大統領が利用しているだけ。スタンドが強化されたわけではない)。その現象とは「自身に対する攻撃をどこかの誰かに災厄という形で押しつける」とする非常識なもの。この力の前にはジョニィとジャイロも歯が立たず、大統領は手始めにジャイロを銃殺する。続けてジョニィも始末しようとしたが、馬の力を用いた回転を身につけたジョニィもパワーアップを果たし、ラブトレインの能力を破られてしまう。
爪弾を撃ち込まれ「(重力がある限りどこまでも追いかける)無限に続く死の連鎖」に囚われた大統領は、どう足掻いても地面の下に埋まり続けるループに陥る。窒息しながらも別の自分にスタンドを託しても逃れられず、あまりの屈辱に涙しながら「絶対にジョニィを殺す」とを誓う。
そこでジョニィに対し敗北を認めた上で自身の愛国心を語り、「別世界のジャイロを連れてくる」取引を持ち掛ける。それを「信じようとした」ジョニィは、大統領に銃を拾い上げるように指示。大統領の言葉に嘘がないのであれば、銃を拾っても何も起こらないはず(大統領が平行世界の銃を持ち込んでいれば、この世界の銃と接触して破裂する)。それなら大統領を信じて無限の回転から救い出すと。
大統領は「私の行動の全てが正義」と告げ、銃を手にした途端、隠し持っていた別の銃でジョニィを銃撃。ジョニィもまた爪弾を撃ち返し、互いに防御を捨てた撃ち合いを展開する。最終的にジョニィが押し切り、頭部を撃ち抜かれた大統領の肉体はバラバラになって消滅していった。
……と、これで終わったかに思えたが、実は大統領にはまだ秘策があった。それは別世界で生き延びているDioに自分の遺志を託すというものだった。ジョニィと『取引』をする前に別世界のDioと接触し、遺体と国のことを託していたのだ。大統領はDioを信用していなかったが、その野心は評価に値するとして後継者に選んだのだった。
そしてジョニィは、大統領の遺物である平行世界のDioと最後の死闘を演じる。
「Eyes of Heaven」
ジョニィから無限の回転を撃ち込まれた大統領は、並行世界を移動しながら逃れる方法を探していた。
そんな時に出会ったのが並行世界のDIOだった。「真実を上書きする」能力によって助けられた大統領だが、基本世界の存在を知ったDIOは侵略を企み始める。
「愛国心」を持つ大統領にとって「世界征服」を目論むDIOは害悪でしかなく、大統領は操られた振りをしながら、DIOを倒せる者達を探し始める。当初はジョルノのG・E・レクイエムとジョニィの無限の回転に希望を見出していたが、どちらもDIOの能力には敵わなかった。
大統領は承太郎達に上記の経緯を話した後、姿を消した。その後、獅子身中の虫となっていた事実をプッチ神父に気づかれてしまう。粛清に現れたDIOから逃れるべく、並行世界を何十と移動した大統領だが「真実を上書きする」能力からは逃れられず、DIOの前へと戻されてしまっていた。DIOからは「優秀なスタンド使い」として評価されていた為、「改めて仲間にならないか?」と提案される。だが、大統領はこれを拒否。自身の正義を貫くべく戦いを挑むも敗北する。
最期まで愛国心に殉じ、『国民を守る』想いを抱いたまま消え去った。
余談
初登場時はぽっちゃり体型だったが、単行本第15巻以降、遺体を手に入れていく内に、痩せてマッチョになり身長が伸びてイケメンになり計画も順調に進んだ上、幼妻も手に入れました!本当に遺体には感謝しています!みなさんも是非お試しください!
JOJO magazineでの荒木先生へのインタビューによると、初期のぽっちゃり大統領は一見おっとりしているけどすごく強いという設定を意図してのデザインだったが自分で戦う大統領なんだし…とマッチョにしたとの事。
ジョジョには珍しく容姿の変更に明白な理由が付けられており、「自分が戦う事態になると覚悟した段階で鍛え直した」そうである。
尚、上半身裸になった場面では、背中の左上に弾痕らしきものが複数、背中の残りの部位には横向きの刀傷らしきものが多数あり、傷の模様が星条旗のように見える。
側近2人を従えている。多連カールのヒゲ(冬のナマズ)と頭頂部カールのアゴアザ(冬のナマズじゃない方)。
彼の特徴である「愛国心」であるが、荒木先生は自著『漫画術』で「読者が共感できる正しいこと、よい動機」の一例として愛国心を挙げている。作中での悪役らしからぬ高い評価はここから来たものであろうか。
実際、ジョジョのラスボスと言えば、永遠の命のせいで自殺することもできないので考えるのをやめた奴や灰になった奴、永久に世界中のどこかで死に続ける奴など悲惨な末路をたどる悪役が多い中、自分の信念や矜持とともに死に行った大統領の最期は美しいまでにあり、読者からの人気も高い。
ハンカチを受け取るシーンはパルプフィクションのパロディ。軍人が子供に形見を渡すのもそのまま。あっちは別の穴だが。
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