機は熟した!
わたしのものとさせてもらうぞ!
概要
ゲーム『ジョジョの奇妙な冒険アイズオブヘブン』に登場するオリジナルキャラクター。本作のラスボスを務める。通称天国DIO。
「もし、エンリコ・プッチではなくDIOが「天国へ行く方法」を完遂したとしたら?」「DIOが天国へ到達したらどうなるのか?」
そんな、読者が一度は考える「もしも」を原作者である荒木飛呂彦自身が構想・デザインして実現させた存在。
雑誌等での画像リークはあったが、実際にゲーム内映像として登場したのは、第4弾PVが初である。
死人の如き青白い肌、腰まで伸びた長髪、顔に星形の模様が出ている事が特徴。
DIOの望む「天国」
必要なものは 『わたしのスタンド』である
『ザ・ワールド』
我がスタンドの先にあるものこそが 人間がさらに先に進むべき道なのである
必要なものは 信頼できる友である
彼は欲望をコントロールできる人間でなくてはならない
権力欲や名誉欲 金欲・色欲のない人間で
彼は人の法よりも 神の法を尊ぶ人間でなくてはならない
いつかそのような者に このDIOが出会えるだろうか?
必要なものは 『極罪を犯した36名以上の魂』である
罪人の魂には 強い力(パワー)があるからである
必要なものは 『14の言葉』である
「らせん階段」 「カブト虫」 「廃墟の街」 「イチジクのタルト」 「カブト虫」
「ドロローサへの道」 「カブト虫」 「特異点」 「ジョット」 「天使(エンジェル)」
「紫陽花」 「カブト虫」 「特異点」 「秘密の皇帝」
わたし自身を忘れないように
この言葉をわたしのスタンドそのものに 傷として刻みつけておこう
必要なものは 『勇気』である
わたしはスタンドを一度捨て去る『勇気』を持たなければならない
朽ちていくわたしのスタンドは 36の罪人の魂を集めて吸収
そこから『新しいもの』を生み出すであろう
「生まれたもの」は目醒める
信頼できる友が発する 14の言葉に知性を示して…
『友』はわたしを信頼し わたしは『友』になる
最後に必要なものは 場所である
北緯28度24分 西経80度36分へ行き……
次の「新月」の時を待て……
それが『天国の時』であろう……
スタンド『ザ・ワールド・オーバーヘブン』
「真実」を自身の望むものへと上書きする能力をもつスタンド。詳細はザ・ワールド・オーバーヘブンへ。
正体
その正体は、並行世界のDIOである。
この世界のDIOは、エジプトにてジョースター・エジプト・ツアー御一行様を返り討ちにしたのちに世界征服を成し遂げ、更にスタンドを極限まで進化させていた。
ストーリーのあらすじ
SBRレース8thステージにてジョニィ・ジョースターから無限の回転を撃ち込まれたファニー・ヴァレンタイン大統領は、ジョニィの「漆黒の意思」から逃れようと並行世界を渡り続けていた。やがて彼は、「ジョースター一行に勝利したDIO」のいる世界にたどり着いた。
スタンド能力によって大統領を助けたDIOは、D4Cによって「並行世界」と「基本世界」が存在することを知ってしまった。すでに自らの世界を征服していたDIOは次の目標として「基本世界の侵略」を決定。大統領を支配下に置き、エンリコ・プッチ神父を自身の右腕に迎え、エンヤ婆やヴァニラ・アイスといった配下たちに(おそらく大統領から奪った)「聖なる遺体」を部位ごとに分けて与え、各時代に存在しているであろう「基本世界」のジョースターの血族にけしかけた。
エンヤ婆を通じてジョースター一行が追手から「聖なる遺体」を集めたことを知ると、自身が持っていた「脊椎部」を利用し「遺体同士が引き合う」性質を逆手にとって基本世界へと入門する。居合わせた承太郎、ジョルノ、ジョニィの三人をあっさりと打ち倒し、その圧倒的な力を見せつけた。遺体の殆どを奪ったものの、「同じタイプのスタンド」を持つ承太郎からだけは奪えず、トドメを刺す前に遺体の奇跡によっていずこかへ逃げられてしまう。
そして、大統領は操られてなどいなかった。「国家と国民の繁栄のために」動いていた大統領からすれば、世界の支配をもくろむDIOは脅威でしかない。そこで従う振りをして、彼を倒せる者たちを探していたのである。
しかしながらジョースターと通じていたことなどDIOはとうにお見通しであり、幾重もの並行世界へ逃げる大統領も、何度逃げようが能力によって呼び出されてしまう。圧倒的なスタンドパワーを前に「たとえ遺体をすべて集めても勝てない」と恐怖する大統領に、「あえて洗脳しなかったこと」を言い含めて、改めて自分の配下になることを要求する。が、その心と行動に一点の曇りなく、全てが『正義』である大統領には通じず、あえなくスタンドによって大統領を消滅させることとなる。
その後、「完全なる支配」のために能力を用いて再びジョースターの仲間を洗脳し、各時代に放り込んだ。その真の狙いは各時代に戦力を分散させることではなく、洗脳を利用して「最大の強敵を前に仲間たちとの戦いを強いられる」という困難によって限界まで魂の力を引き出し、スタンドのさらなるパワーアップのために一挙に魂を奪い取る…というものだった。
「わが能力は必ず『真実』に届くのだ…」
「『邪魔者は存在しない』という『真実』にな…」
各時代の対処を他の「ジョジョ」に任せ、承太郎と徐倫は二人きりでついに最終決戦に挑む。だが、「魂」のパワーでさらに強大になった「ザ・ワールド・オーバーヘブン」は圧倒的なパワーでスタープラチナとストーン・フリーを追い詰める。
しかし「基本世界」でそうだったように、追い込まれる中で「同じタイプのスタンド」を持つ承太郎も「上書き」の能力に目覚め、一度は自身の消滅を上書きし直すことにより一命を取り留める。
だがそれを使いこなすには圧倒的に経験が不足していた。決戦の最中とうとう徐倫をも消滅させられ、自身も再び消滅させられそうになる。
その寸前、脳裏に浮かんだのはファニー・ヴァレンタイン大統領が流してくれた「情報」だった。
「並行世界」を自由に移動できる大統領だけが知る「並行世界に存在する全く同じ2つのものが出会ってしまうとスポンジのように徐々に崩壊し、塵となって消滅する」という真実。(また、その際に凄まじい衝撃が発生する)
承太郎は(基本世界においてDIOの遺体はすでに日光の下でチリにしてしまっていたため)残されていた「腕輪」をどういう因果かなんとなく拾っていたのだった。
「ジョースター家…。」
「最後…。」
「血筋…。」
「消滅。」
「こいつ(腕輪)は、基本世界の物だった…。」
トドメを刺す瞬間、生き抜こうとする承太郎の肉体が腕を動かした。
ジョセフが無意識に赤石をカーズの波紋に翳したように、承太郎が突き出した「基本世界の腕輪」が砕け、「DIOの腕輪」に反応し吸着、爆裂することでDIOの片腕を破壊することに成功する。
当然DIOはそれを知らなかったため、その間隙を突いて、腕輪をメリケンサックのように装備したスタープラチナの続く一撃を防いでしまったことで、もう片方の腕も破壊されてしまう。
追い詰めたはずの承太郎に一転して追い詰められたDIOは、「基本世界」さながら「両腕が治った瞬間にスタープラチナを叩き込む」という宣言を受け、血の目潰しによる不意打ちによって奇襲を行う。
「くだらねえぜ、DIO」
「てめーの言う『真実』とやらは」
「ただのまやかしだ」
哀しいかな、「基本世界のDIO」とまったく同じ行動を取ったことで失敗に終わる。
なぜならそれは承太郎が一度経験したものであり、むしろ「同じ状況」であるなら「同じ台詞で挑発」すれば「同じ奇襲」を行うという予測を立てられており、「基本世界」では蹴りと拳の撃ち合いになった場面で承太郎が一瞬早く行動に移り、顔面に拳をクリーンヒットさせ、そのまま承太郎にオラオララッシュを打ち込まれ、完全敗北。基本世界から消え去り死亡した。
「何度も言わせるなよ…『てめーは俺を怒らせた』」
解説
「基本世界の自分」と同じパターンで、承太郎の能力開花(同じタイプのスタンド故に同じ能力を持つことに気づいた点)に動揺したり、目潰しで隙を作り殺そうとしたこと、原作と同じ台詞(例:『ジョースターというのは我が運命という路上に転がる……』など)で勝利への確信を露にしていた。よって、それらの出来事は経験していなかったと予想される。
そして、承太郎が所持していた聖なる遺体を奪えなかったシーンで、承太郎が自身の能力に対抗できる唯一の存在であることに気付いていた節があり、この時はあまり動揺しなかった。
したがって、最初から自身と同じタイプのスタンド使いであることを知っていたようにも見える。オーバーヘブンの兆しには殆ど動揺せず、オーバーヘブンが開花して初めて動揺したところから、承太郎が時止め能力に対抗できることは知っていても、本人が使えることまでは知らなかった可能性が考えられる。
ここで原作を振り返ってみよう。
原作では承太郎の磁石を使ったトリックで、あたかも彼が止まった時の中を動けると錯覚したため(本当は一瞬だけ動けたが、実は動けないと見せかけるためのブラフ)、止めを刺すのを中断している。またこの時、戦闘前に承太郎が話していた通り、スタープラチナが自身と本当に同じタイプのスタンドなのではないかと思い始めた。
そしてDIOは再び時を止め承太郎の動きを観察するも、この磁石の存在に気付き承太郎が動いたのが気のせい(この磁力のせい)だと思い込み止めをさそうとするが、スタープラチナから普通に腹パン攻撃を受けたことで承太郎が実は本当に動けたことに気付き、自分と同じタイプのスタンド使いであることを確信した。
確信する前に倒してしまった場合、DIOは性格から考えて、恐らく気のせいで済ませてしまうと思われるため、承太郎から聖なる遺体を奪えなかったシーンで、あの磁石の一件が気のせいではなく本当だったことに気付き動揺するか、もしくは承太郎ではなく他に原因があると考えたりしている筈である。彼の性格を考えると、殆ど動揺せずに承太郎に原因があると冷静に分析しているのは不自然。したがって、倒したタイミングは確信した後で、最初から知っていた可能性が高い。
時止め返しを体験しているのであれば、承太郎が自身と同じ能力を扱えることを予め知っている筈のため、オーバーヘブンに承太郎が覚醒した際にオーバーリアクションで動揺するのは不自然になる。知っていた場合も反応はするであろうが、もっと落ち着いている筈である。したがって、倒したのは時止め返しより前のタイミングである可能性が高い。
それらのことから推察すると、天国DIOは、大量のナイフか、道路標識か、ロードローラーかのどれかで平行世界の承太郎に止めを刺し、勝利したことが窺える。
なお天国DIOと同じ並行世界の住人であるプッチが「私が『1988年』のおまえと出会うのはこれで『2回目』」と初対面であるはずの承太郎に不自然な発言をしている。
原作では3部承太郎とプッチにはそのような接点が存在せず、6部のように記憶のDISCを奪う必要性もないことから、プッチがDIOの戦いに加担したとも解釈することができる。
そのため並行世界の結末は原作とは大きく異なるストーリーである可能性も考慮すべきだろう。
また、承太郎は「腕が治るまで〜」の件で一瞬間が空いているため、恐らく全く同じ状況で全く同じ台詞を吐くことでDIOの行動を誘導して確実にスタンドを叩き込むつもりだったと思われる。
実際血の目潰しを一度経験しているとはいえ、「勝ったッ!死ねいッ!」の台詞に食い気味でカウンターを食らわせた後に閉じていた目を開けているため、「血の目潰しが来る」事を確信して先んじて自分から目を閉じることで防御していた事になる。
DIOにとっては皮肉なことに「承太郎が望む真実に誘導された」ことになる。
知らなかったとはいえ、最後に残した承太郎を図らずも基本世界の自分と同じパターンで殺そうとした時点で、『承太郎に倒される』という真実を上書きできずに死ぬ運命だったのかもしれない。
DIOは「わが能力は真実に届く」と豪語していたが、この真実だけは書き換えることはができなかった。
また、皮肉にも彼の企みのおかげで、原作では死亡した花京院たちが生き残っていたり、塗り替えられた第4部の冒頭部分で承太郎が6歳の徐倫を連れて杜王町にやってくるなど、彼らの近況が良くなった部分があるため、複雑なものもある。
余談
原作者である荒木飛呂彦の著書『荒木飛呂彦の漫画術』において、『異変を戻して、「元に戻る」だとマイナスからゼロになっただけだから、そうではなく物語がプラスにならないといけない。あるゲームのストーリー脚本を監修した際に、ストーリーがマイナスからゼロに戻るものだったので、仕方なく、こちらからプラスになるような提案をさせていただいた。』という記述があることから、元々DIOが消滅して原作通りになるというストーリーだったと考えられる。開発のサイバーコネクトツーも、ファミ通のインタビューで「主人公が物語終了時にゼロからプラスになっているという条件を厳守するためなら、原作を改変しても構わないと言われた」という旨の発言をしており、このような形になったのだろう。
↑一部の2次創作もまた、『アイズオブヘブン』の設定として、読者側の受け取り方が『上書き』されることになったりしている。
天国DIOが大統領と対峙した際、再び配下になるように呼び掛けるも拒否され殺害するというシーンがあるが、これはOVA版のオマージュと思われる(OVA版では花京院と対峙した際、再び配下になるように説得しようとしたが拒否された)。