『おまえが!!嫌いだ!!』
『次は 俺たちだ』
『俺は誰も許さない』
『崩壊を始める』
プロフィール
敵集団を率いる凶"個性"の男
「ヒーロー社会」を恨む 敵連合の若きリーダー
―――僕のヒーローアカデミア 公式キャラクターブック2 Ultra Analysisより
概要
"個性"を悪用する犯罪者集団・敵連合の首領にして、主人公・緑谷出久の最大の宿敵。
作中では出久達がヒーローとして日々成長していくように、それと並行して死柄木弔もまた様々な経験から多くのことを学び、悪の支配者として成長していく様が描かれている。
人物
病的な痩身と無造作な白髪、更には全身に「人の手」を模した7対14本の装飾を身に着けており、その容貌から得体の知れない不気味な雰囲気を纏っている。
「死柄木弔」という名は偽名。更にその"個性"はこの国において過去に確認されているどの個性とも類似せず、つまり彼は社会的には存在しないはずの「裏の人間」であるとされている。
社会から道を踏み外した犯罪者を惹きつける独特のカリスマ性を持ち、先生からは「次の自分になりうる歪みを持って生まれた男」と評されている。
常に気怠げで冷めた態度を取っており、シニカルで軽薄な言動の真意は計り知れない。
苛立つとガリガリと首を掻く癖がある等、外見と合わせ不気味な点が目立つが、戦闘中はしばしば解説役に回るなど、意外に饒舌な一面もある。
用意周到な奇策を用いて目的達成を狙う頭脳派で、台詞の端々から高い知性を匂わせる。
その一方で、犯罪をゲーム感覚で楽しんでいるかのような節があり、目的遂行と同時に「相手の嫌がること」を常に模索するなど、その思考回路からは幼稚で偏執的な本質を窺わせる。
ヒーローに対しては強い憎しみを抱いており、特にその象徴であるオールマイトは「社会のごみ」と辛辣に形容している。
組織内ではリーダーとして振舞っているが、その背後には「先生」と呼ばれる黒幕の存在が見え隠れする。
先生ことオール・フォー・ワンとはかなり深い関係にある様で、彼にとっての「先生」は、出久にとってのオールマイトかそれ以上の存在と思われる。
当初は自分の感情の赴くままに犯罪を繰り返し、物事が思い通りに進まないことに強い苛立ちを見せていたが、ステインとの接触、緑谷出久との対話を経た事で、オールマイトを否定することに己の信念を見出す。
この時期からは不安定ながら精神的に芯の通った様子を見せており、以降は目的のためには多少の困難を苦としない忍耐強さが見られるようになった。
ステインの加入を切っ掛けに「現在を壊す」という志を同じくする仲間も得たことで、徐々に強大な悪のカリスマへと成長し始める。
彼なりに連合メンバーのことは仲間として思うところがあるようで、彼らに対しては他と異なる表情を見せることが多い。実際に、連合メンバーの一人を手にかけたうえに別の仲間にも重傷を負わせたオーバーホールのことは相当嫌ってたようで、表向きは協力しながらも裏では裏切るために動き、最終的にかなりえげつない報復を行なっている。
AFOの出現と敗北、オールマイトの引退を招いた「神野の悪夢」は、彼にとっても大きな転換点となっており、一連の事件は彼に師を失った深い悲しみを与えると共に、再び自分の人生を見つめ直す切っ掛けとなった。
オールマイトが引退しても、オーバーホールに対する報復を果たしても、彼の心の中の破壊衝動が満たされることはなかった。
長きに渡る逃亡生活、そして人々の暮らしぶりを見る中で、やがて彼は自分が本当に憎んでいたのは「オールマイト」ではなく、「オールマイトに象徴されたこの世界の全て」であることに気づく。
そうして死柄木は、破壊以外に何も望むものがない虚ろな自己の本質を悟り、世の中の息づく全てを破壊し尽くすという極めて破滅的、刹那的な未来を思い描くに至った。
彼の抱いた夢は、道を踏み外した敵連合のメンバー、社会に不満を持つ多くの人々の意志を結束させ、遂にはこの社会を根本から揺るがすほどの大きな波乱を招くことになる。
外見
手を模したマスクで顔の大部分を隠されているが、指の隙間から覗く目は、皺だらけの瞼と異様な眼光を具えており、本人の秘しがたい狂気を表現している。
この手は死柄木にとって特別な存在であり、全身に身に着けた手を「(家族の)みんな」、特に顔面を覆う手については「お父さん」と呼び、不用意に他人に触れられると激しく感情を取り乱す様を見せている。
これらは一見、死柄木を精神的に安定させるお守りであるかのように見えるが、同時に過去のトラウマを象徴するものとして、彼の心の中の破壊衝動を増長させる役割を持っていることが後に明らかになった。
登場初期は全身の手を除けばかなりラフな服装で、ポケットの多い黒ベストに黒いズボン、オレンジに近い赤色のシューズを身に着けていた。
素顔は存外整った顔立ちをしているが、その異様な眼差しも相まってやはりどこか病的で不健康な印象を感じさせる。
右口元にホクロがあり、額から頬にかけて干乾びたような皺が刻まれ、唇の回りはカサカサに乾いている。また右目と左口元には裂けた様な傷跡がある。
神野の悪夢後
神野の悪夢以降は、季節の変化もあってか黒いロングコートを着用するようになっており、より重々しい印象を与えるデザインとなった。
髪の長さはミディアム程度であったが、それ以降は時期が進むごとに髪が伸びている。
泥花事件以降
異能解放軍との抗争後は、配下達の前で黒いスーツとファー付きのコートを身に着けた姿で登壇した。
個性の覚醒と同時に髪の色が変化しており、以前は青白かった髪の色が、この時期以降は色素の無い純白色で描かれている。
先の戦闘で失った左手の親指から中指にかけては義指を装着した。
また、家族の手の大部分はリ・デストロとの戦闘中に消失したが、奇跡的に一つだけ残っていたものを顔面に取り付けている。
しかしこれについて、死柄木自身は「ただの飾り」と称しており、実際に手を外した状態でも、以前のように精神的に不安定になる様子は見せなくなっている。
ただ死柄木がこの手に対して抱いていた感情は、今もなお彼の無意識の奥底に消えることなく染み付いており、この「家族の手」は後に死柄木本人すらも意図しない思いがけない形で活用されることとなる。
正体、そして過去
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個性
個性は『崩壊』。
5本の指で触れた人や物を崩壊させる。
対象は死柄木弔の指と接触した部分から徐々にひび割れてゆき、最終的には粉々の塵に変化する。対象が生物か否かに関わらず無差別に作用し、初登場時は極めて強固な雄英高校のシェルターを破壊し、教師達を驚かせていた。
物語が進むごとに個性の性能が向上しており、初期は人体を1分以内で塵にする程度のものだったが、冬の時期には異能解放軍との戦闘中に巨大なタワービルを数秒で粉々にする描写も見られた。
この個性の発動条件は、死柄木が「5本の指」全てで対象に触れることであり、発動条件を満たせば死柄木自身の意思に関わらず強制的に個性が発動してしまう。
本人が意識的に発動のオンオフを切り換える事ができない為、彼が物に触れる際は日常的に指の1,2本を離して掴むスタイルが癖になっている。
また、その制約から粒子状の物体に対しては個性を発動させることができないため、本編では砂を操るヒーローとの戦闘で苦戦を強いられる場面もあった。
AFOによると、この個性は両親の遺伝に由来しない「突然変異」によって生じたものであるという。作中でこの「突然変異」という表現が使われている個性は、この他には壊理の『巻き戻し』しか存在せず、全人類の8割が超常能力を持つ超人社会の中でも、極めて異質な個性であると言えるだろう。
しかし、この『崩壊』の個性について詳しくは伏せるが、本誌の重大なネタバレに触れかねない為、これ以上の詮索は厳重に注意されたし。
- 『伝播する崩壊』
個性『崩壊』の本来の能力だが、物語前半における能力と区別するために仮にこの呼称を用いる。
死柄木が自身の過去の罪の意識から解き放たれたことで、個性が真の能力を取り戻し、死柄木の指が一本でも触れれば、触れたものに接触する全ての物体に対して無差別に効果を作用させることが可能になった。
ひとたび個性を発動すれば、死柄木の手からそれに連なるあらゆる物体に崩壊が伝播してゆき、死柄木を中心とした円形の範囲内に存在する全てのものを塵に変えてしまう。
なお、この個性の大きな特徴として炎やレーザー、電撃や衝撃波といった物理的に接触することができない現象とは相互に干渉しないというものがある。
崩壊が発動するものはあくまでも死柄木の手で触れたものと、それに連なるもののみであり、人の手で掴むことができないものにまでは崩壊の効果は及ばない。
つまり、手で触れることができない攻撃を死柄木は防ぐことができないが、それと同時に、この個性に対しては明確な防御手段が存在しないということをも意味している。
土の壁や氷の壁で防御することは不可能であり、衝撃波等の飛び道具で崩壊の伝播を押し返すこともできない。
そのため崩壊の発動圏内に入ってしまった場合は、空中に逃れるか、もしくは全身に崩壊が及ぶ前に接触部分を切り落とすしかない。
この能力こそが、AFOが「突然変異」と呼んだ個性の真の力であり、破壊力という一点においては、紛れもなく作中最強最悪の個性だと言える。
しかし、死柄木がこの個性を取り戻した際には、その力があまりに強大であるために、死柄木弔自身の肉体もダメージを負ってしまうという弱点も生じることとなった(詳細は個性特異点を参照)。
長年の研究によって、AFOとドクターはこの弱点を克服する方法を既に手に入れており、更なる力を得ることを望んだ死柄木は、後にドクターによる改造手術を受けることを決意する。
動向
USJ襲撃の際は、多数の敵を引き連れ、雄英高校を襲撃しイレイザーヘッド、13号、オールマイトを負傷させ、敵連合の名が世に知られる切っ掛けになる。
ステインによる保須市襲撃事件後に義爛の紹介などで、荼毘、トガヒミコ、トゥワイス、スピナー、Mr.コンプレス、マグネ等を仲間に引き入れる。
林間合宿襲撃の際は「開闢行動隊」を送り込み爆豪勝己を連れ去り、敵連合へ勧誘しようとし、敵連合壊滅作戦、オールマイトとAFOの戦い(神野の悪夢)に繋がっていく。
死穢八斎會のオーバーホールとの接触・話し合いが行われたが、決裂しマグネとMr.コンプレスの左腕を失うことに。その後再度話し合いが行われトガヒミコ、トゥワイスが出向する事になる。
プロヒーローによる死穢八斎會の捜査が終わると荼毘・Mr.コンプレスと共にオーバーホールがいる護送車を襲撃し、プロヒーローのスナッチと交戦。人命救助を優先するヒーローの隙をつき、連携して彼を殺害し、マグネを殺害&Mr.コンプレスの左腕を破壊した報復として、オーバーホールの両腕を破壊。後述の捨て台詞で彼の尊厳を踏み砕き、個性を消す銃弾の完成品と血清を奪い去る。
「お前が費やしてきた努力はさァ!俺のもんになっちゃったよ!!」
「これからは咥える指もなく ただただ眺めて生きていけ!!」
「頑張ろうな!!」
しかし、後日増産した個性消失弾は殆ど潰され、残った弾丸すらも完全に消滅し、特に利点はなかった。
黒霧を失い今後の活動も危うくなった貧乏な状態の敵連合は、突如ギガントマキアに襲撃される。ドクターの助言もあり、後継としてギガントマキアを屈服させるため碌に眠らず1ヶ月余りの常人離れした戦闘をする。
ギガントマキアが睡眠状態に入っている間に、敵連合の解体を目論む異能解放軍との抗争になる。
リ・デストロが高みの見物をする泥花市のタワーを『崩壊』で倒壊させたことで直接対決となる。
死柄木弔:オリジン
リ・デストロとの命を削る戦いの中で、死柄木弔は失っていた自分の記憶を取り戻していく。
家族を殺めてしまった凄惨な事故。しかしそれは彼にとって決して不幸な記憶ではなかった。
自らの手によって家族が崩れていくのを見たとき、確かに彼は自分の心が軽くなっていくのを感じていた。
彼は自分の存在を否定するこの世界の全てを憎悪しており、今の死柄木は誰に指図される訳でもなく自分自身の意志でこの社会に立ち向かっていた。
これまでずっと不安定な彼を支え続けてきた『家族の手』すらも、破壊の権化としての自己を確立した死柄木にはもう不要なものだった。
「ぶっっ壊れろ」
死柄木は自身の個性を全力で解放し、泥花市における戦いをたったの一撃で終結させた。
リ・デストロはその最中、何物にも囚われず子供のように無邪気に笑う死柄木の姿に、自らが理想とする"全てから解放された"人の姿を見出す。
その圧倒的な存在を前にして、彼は戦意を完全に喪失し降伏を宣言した。
そこに駆け付けたギガントマキアもまた、死柄木弔の姿にかつての主オール・フォー・ワンの面影を見出して、感動の涙を流した。
その後、敵連合と異能解放軍を融合させた構成員十万人以上の巨大組織・超常解放戦線の最高指導者に就任した。
ドクターの提示した条件をクリアした死柄木は、更なる力を得るためにドクターの改造手術を受けることを決意し、やがては人智を超えた本物の怪物へとなり果てていく。
余談
- 触れたものを崩壊させる能力、その能力で家族を殺めた過去、「嫌い」という感情を原動力にしている人物像、そしてなにより「転弧」という本名から、一部ファンの間では作者・堀越耕平のデビュー作『テンコ』の主人公・テンコをモデルにしたキャラだと言われていた。
- そして単行本23巻のキャラ紹介ページにて、作者本人がテンコをモデルにしていると公言した。曰く、ヒロアカは作者自身の「集大成」として始めた漫画であるからだという。
- バトロワ型ゲームである「僕のヒーローアカデミア ULTRA RUMBLE」ではヒーローを差し置いて、彼の個性技が最も建物内に取り残されている一般人の救助を行いやすいと評されている。ゲーム上の仕様とはいえ彼にもヒーローとして活動できる可能性があったと考えると興味深い。