概要
『僕のヒーローアカデミア』の根幹を担う、その世界の人類が得る事になった先天性の超常変異。
人類は様々な姿と体質を得て人体という規格を失い、在り方の再編を余儀なくされた。その超常を力として奮い、敵〈ヴィラン〉となる者もあれば、それに対抗して超常を奮うヒーローも現れた。
現代における"個性"
"個性"の発現以来、超常能力を持つ人間の割合は年々上昇傾向にあり、作中では現在全人口の約8割が何らかの"個性"を発現している。緑谷たちは超常「第五世代」と言われており、超常が初めて現れ始めた時代から数えて五世代目ということになる。
超常能力としての"個性"は、社会の中でおおむね肯定的に捉えられており、自らの"個性"を人々のために使うプロヒーローは超人社会における模範的な存在、子供達の憧れの職業として広く浸透している。
その一方で、人の持つ"個性"は他人を容易に傷つけたり、社会に不利益をもたらしたりするものも少なくないため、ヒーローを始めとした有資格者を除いて、公共の場で"個性"を使うことは原則的に禁止されている。
これは警察組織も例外ではなく、警察官は職務上の取り調べや捜査において"個性"を使用してはならないという厳しい規則が設けられている。
公共の場での"個性"を使用してはならないというのが一般常識であるが、私有地や緊急事態においてはその限りではない。
現に一部の家庭では、子供が自身の"個性"を暴走させて自分や他人に怪我を負わせないよう、保護者の監督下で"個性"の訓練を行っている場合もある。
なお、個々人一人ひとりが持つ多種多様な"個性"の使用を一切禁止し、社会の中で取り締まるというのは現実的に不可能なので、社会通念上、周囲に迷惑を掛けない範囲での使用であれば注意される程度で済むというのが実情である。
国や教育にも"個性"は組み込まれており、病院で"個性"の診断を受け、戸籍と共に国に登録、学校でその取り扱いから心構えに至るまで指導を受ける。差別の歴史から"個性"で人となりを見てはならないのが一般常識とされているが、地域によっては特定の"個性"に対する差別意識が根強く残っている場合もある。
人の持つ"個性"は自分自身のアイデンティティに直結するものであり、作中においても登場人物のほとんどが成長の過程で自らの"個性"への苦悩や葛藤を経験している。
なお上述した通り、"個性"の有無や内容は国に申請し登録するが、当初診断されていたものとは異なる原理だった、無個性と思いきや特定の条件下でのみ発動するタイプだった、などが後に判明するケースもままある為、制度として登録内容は更新可能。
"個性"研究
何故人類にこのような現象が起きたのかは不明で、作中では最後まで明かされることはなかった。一説には宇宙からの感染病とも言われる。
通常4歳頃までに両親のどちらか、あるいは複合的な"個性"が発現する。
"個性"の発動原理などは不明だが、その変異した生体部分を培養して"個性"が発動する素材として扱う技術が発達している。プロヒーローの使用するコスチュームやサポートアイテムの中には、本人の細胞から培養した組織で構成され、本人の個性発動時に素材を同期させる機能を持つものがある。
"個性"を成立させるために肉体に存在する器官を『個性因子』と呼ぶ。逆に言えばこの器官が存在しない人間は"無個性"ということになる。
作中ではこの個性因子の研究が進められており、肉体から個性因子を取り除く技術、個性因子そのものを複製する技術、個性因子を他者へ移植する技術などが登場した。
個性因子を取り除いた場合はその"個性"は使えなくなるが肉体への負荷を下げることができる。
個性因子を移植した場合は自分の生まれつきの物ではない"個性"を得ることができ、負荷はかかるものの肉体が許容する限りは複数の"個性"を持つことが可能である。
個性因子が傷ついてしまうと"個性"が弱体化してしまい、最悪の場合は"個性"が使えなくなってしまう。
大抵の場合、作中の登場人物はそれぞれの"個性"に合った体質になっている。例えば、炎熱系の"個性"の持ち主は熱への耐性が高く、エンジンの"個性"を持つ飯田天哉はスピードに耐えられる体を持っている。
一方で、"個性"と体質が合っていないケースも存在し、この場合は自身の"個性"で体が傷ついてしまったり、体調不良を起こしたりしてしまう。
科学的に"個性"を分類するのは極めて困難だが、作中の時代では発動の形態、あるいは外見上の差異によって「発動型」「変形型」「異形型」の三系統に大別する手法が主流となっている。
発動型
数多くある"個性"の中で一番スタンダードな系統。多種多様で自身の意思で能力を発動させる。またその種類の多さから、発動する"個性"の種類や戦闘スタイルに応じて「増強系」や「拘束系」などに細分化されている。
変形型
通常の人間の体から、自身の意思で肉体を変化させる系統。
異形型
"個性"によって生まれたときから肉体が変化している系統。詳細は個別記事を参照。
無個性
一切の超常能力を持っていない人間のことで、作中では世界人口の約2割の人間が"無個性"とされる。
世代を重ねる程個性持ちの人間は増えており、緑谷達の属する第五世代では絶滅危惧種と言われるほどに珍しい。"個性"は親から遺伝する性質があるが、隔世遺伝的に両親が個性持ちであっても無個性の子供が生まれることがある。
無個性とはより厳密な定義で言えば「4歳までに発現するとされる個性が、その年齢までに確認できなかった人」である。成長してから個性が発現・発覚する可能性もあるようだが、作中ではかなりのレアケースとされている。
超常黎明期
作中の人類社会で超常を発現させる者たちが突如増えだした混乱期を指す言葉。
この世界において、超常能力の存在がフィクションでなく現実のものとして国際的に認められたのは、中国の軽慶市で「発光する赤児」が生まれたニュースだとされており、この報道がなされた日時が超人社会の始まりとされている。
以降始まった超常黎明期では、人間という種の規格がそれまでの常識から大きく崩れ、世界中が壊滅的な混乱に陥った。
この時代は徐々に特異体質となるものは増えていたものの、まだ超常能力を持たない人類の方が多かった時代であり、変貌して産まれた人々全体が社会から迫害を受け、人類そのものが真っ二つに割れて諍いが絶えなくなった。
作中ではこの時代の混乱がなければ、人類はとっくに外宇宙に生息領域を広げるまでに科学を発展させていたと言われている。
そんな中、覚醒した力を使い社会の秩序を乱すものたちによる犯罪件数が増加した事で、逆に覚醒した力を用い自警団的な活動する有志が次々と現れるようになる。
この時の活動を国が世論に押される形で追認し、ヒーロー公認制度によるプロヒーローなる立場・役職が誕生した。
その後、異能者は普通の人(作中現代社会における「無個性」の人)よりも増えていき、人類の変質は『個性』として社会の多様性の1つとして認められるようになる。
現在は超常能力の扱いが法整備され、"個性"の乱用や危険行為、その中でも他人を傷つける事に使った場合はヴィラン(個性犯罪者)として取り締まられる事になった。
何故"個性"と呼ばれるか
かつてまだ"無個性"の人類が多く、「異能」と呼ばれ差別された時代・超常黎明期にある母親が我が子に対して浴びせられた偏見から受ける罵詈雑言に「これはこの子の"個性"”です」と訴えた。
この逸話が「"個性"の母」として語り継がれていき、作中の超常能力は「"個性"」と呼ばれるようになった。
現代に置いて"異常なもの"を指す『異能』が『個性』と呼び変えられるようになったのは、当時はマイノリティだった超人たちが後にマジョリティになった逆転の歴史を表している。
"個性"婚
自身の"個性"を強化して子孫に継がせることを目的とした結婚。
"超常"第二世代から第三世代の間で社会問題となった。
優生思想的な考え方に基づいており、現代社会においては禁忌とされている。
個性特異点
作中で語られた、一部の研究者が提唱する終末論の一つ。
世代を経る毎に"個性"は混ざり進化していくため、より強力でより複雑化していった"個性"はいつの日か誰にもコントロールできなくなり、宿主たる人類を殺し滅ぼしてしまうのではという危惧。
「個性終末論」とも呼ばれるこの予想は眉唾物の空論とされているが…。
トリガー
"個性"を強化する薬剤。一見弱い"個性"でもトリガーを使用することでその能力を上昇させ、"個性"を鍛えているヒーローに並ぶ強力な能力を振るえるようになる。
質によって上昇幅や持続時間は様々。使用後効果が切れると反動で"個性"がしばらく使えなくなることが多い。
トリガーボムというテロ兵器も存在し、そちらは特殊なガスで一般人の"個性"を無差別に暴走させ甚大な被害をもたらすというもの。無個性には効果がない。