荼毘
だび
『さァ 始まりだ 地に堕とせ』
『付せろ ゴミならせめて 燃えて俺の薪となれ』
- 火葬の類語。死体を焼いて弔うこと。用法は「荼毘に付す」など。
- 漫画『僕のヒーローアカデミア』に登場するキャラクターの一人。pixivにおいてはこちらのイラストがほとんど。本項で説明する。
全て焼き尽くす 冷たく燃える蒼き炎
真意を隠す敵連合の実力者 不遜の双眸が見つめる先は…?
―――僕のヒーローアカデミア 公式キャラクターブック2 Ultra Analysisより
敵名 | 荼毘 |
---|---|
本名 | ???※ネタバレ注意! |
個性 | 蒼炎 |
誕生日 | 1月18日 |
身長 | 176cm |
血液型 | 不明 |
好きなもの | ???※ネタバレ注意! |
性格 | つかめない |
CV | 下野紘 |
ヴィラン連合の一員。ヒーロー殺し・ステインの逮捕後、ブローカー・義爛の紹介で加入したメンバーの一人。雄英高校の林間合宿襲撃の『開闢行動隊』ではリーダーを務める。
ステインの掲げる『英雄回帰』思想に支持を表明し、その意思を全うすると宣言している。
「荼毘」は通り名で本名を始めとした素性は全て不明。本人曰く本名は「出すべき時になったら出す」と語っている。
人物像
どこかシニカルで掴みどころのない性格で初対面の死柄木弔に『気色悪い』と言ったり、同じタイミングで連合に入ろうとしたトガヒミコのことを『イカレ女』と言ったりと口が悪いが、声を荒げたりする様子はなく冷めたような態度が目立つ。
他のメンバーと同じく殺人に躊躇はなく、攻撃対象ならばたとえ子供であっても容赦はない。ヒーローは勿論のこと、チンピラなどの大義も無く生きている存在ならば躊躇いなく焼き殺す。
当初こそ死柄木とも揉めたりしたが、最近では彼のことを「リーダー」と呼んでおり、ある程度は認めている様子を見せる。
しかし、今なおどこか仲間の筈のヴィラン連合の面々にも壁を作っており、なにかと非協力的なところを見せることもある。メンバーにも前述の本名を明かさないところもそうだが、戦闘中に味方を巻き込むような範囲で"個性"を使ったり、助けるのを断ったり、食事を一緒に取らなかったりもしている(連合の皆で寿司を食べている時に、魚は嫌いという理由で断るなど)
外見
水色の瞳と無造作な黒髪。体格はかなり細身で、耳には太いピアスを付けている。焼け爛れたようなケロイド質の皮膚で覆われた全身を金属製の太い継ぎ目で繋ぎ合わせおり、まるで全身を皮膚移植をしたような異様な外見をしている。
この皮膚は通常赤黒い色で描かれることが多いが、青白い炎に照らされることで毒々しい紫色に見えることもある。
顎から首元、耳にかけては変色した皮膚が広がっており、本来は下顎や下瞼にあたる部分は皮膚と皮膚の継ぎ目になっているため、その姿が彼の表情から感情を読み取ることを一層難しくしている。
また本人曰く「涙腺が焼けて泣けない」とのことだが、感情が高ぶった際はごく稀に目の下の皮膚の継ぎ目から涙のように血を流すシーンも見られる。
敵連合加入後は長い紺色コートを羽織っている。異能解放軍との戦いの後は、袖口にコンロの様な金属パーツを装備し、デトネラット社製の耐火服を着用している。
正体について
敵連合に加入したメンバーの中では唯一素性が不明でヒーローや警察も素性が掴めていない。本人の性格としても秘密主義なところがあり、連合のメンバーに対しても自己紹介でも偽名で通しているなど、謎の多い人物である。
素性が不明な点については敵連合の立ち上げメンバーである死柄木や黒霧とも共通しているといえる。
個性は『蒼炎』
身体から蒼い炎を放射することができる。主に掌から炎を放つ。
火力、範囲共に凄まじく、蒼色の炎を操ることから火力は作中の炎系「地上最強」と評されるエンデヴァーの個性ヘルフレイムと同等以上だが、個性と体質が合わないようで長時間使用すると自身の炎で身体が焼けてしまう。
林間合宿襲撃では、森に火を放ちヒーロー側の行動を制限。トゥワイスに作ってもらった分身で相澤やブラドと交戦した。それらは撃破こそされたものの、「プロヒーローの足止め」という役割を全うしている。また、彼の声のみに反応する専用の脳無が与えられており、分身も加わった不規則な襲撃で現場をかき乱した。また、詳細は不明だが焦凍に意味深な発言をしている。
オールマイトとオール・フォー・ワンの戦い(神野の悪夢)の後、連合は潜伏のため散り散りになり、各地で人材探しなどを行っていた。しかし彼はそのついでに、思想の合わないチンピラや犯罪者を大勢焼き殺している。
ヒーローによる死穢八斎會捜査の際は、終盤にて死柄木・Mr.コンプレスと共にオーバーホールが運ばれる護送車を襲撃し、プロヒーローのスナッチと交戦。人命救助を優先するヒーローの隙をつき、連携して彼を殺害した。
この頃からホークスと接触し、彼を信用するための条件を出している。
オールフォーワンの主治医で脳無の開発者の氏子達磨とは趣味が合う様で彼に気に入られたらしく、新開発された最上位の脳無・ハイエンドの試運転を任され、九州で実戦投入を行う。ハイエンドを倒したホークスとエンデヴァーの前に現れ、消耗した二人を襲うもミルコの参戦で撤退。去り際にエンテヴァーに「精々頑張れ」と声を掛けた。
「死ぬんじゃねえぞ 轟炎司!!」
死柄木がリ・デストロに勝利したことで超常解放戦線が結成された後は、ホークスを仲間に引き入れ、自身は外典と共に開闢行動遊撃連隊『VIOLET』の隊長に任命される。
全面戦争編では、本性を出したホークスのもとに向かい、トゥワイスを助ける為にホークスと交戦。
「お前は悪くない 悪いのはいつだって屑共(ヒーロー)だ」
ホークスに大火傷を負わせるもトゥワイスを救うことは出来なかった。この時、ホークスに自身の正体を問われ、自身の正体を語った。読者へのネタバレ防止の為か、その台詞が書かれたフキダシは黒く塗りつぶされており、トゥワイスを危険人物としてマークしていたホークスに「誰よりもおまえは俺をマークしなきゃいけなかった」と語っており、正体を知ったホークスは驚愕の表情を浮かべていた。
全面戦争の終盤、290話にて遂に自身の正体が明らかとなる。
わがまま現代っ子な大人子ども・死柄木に振り回される敵連合の常識人枠。
どちらかと言えば世間一般の感覚の彼は周りに合わせたりするし、ルールや風習について真面目だったりする。ゲームでネコミミ付けて語尾に「にゃ」を付けろというならその通りにする。たとえ死柄木が隣で同系統のお題を拒否していたとしても…。
反面、本人も個人主義なところはあるので、死柄木の意見そのものには共感する部分も多い。現代モンスターに共感する自分がなんか納得いかない今日この頃。
ちょっと体温調節が苦手な体質で、夏場の運動はキツい。後、マグネに惚れられているが、荼毘本人は理解出来ていない(ちなみに、マグネは後に黒霧の方が気になった為、最後まで気付く事はなかった)
3巻で爆豪を拉致した際には、なんと車を運転していた。黒霧の台詞によると、どうやら免許証持ちらしい。
「酷えなァ、そんな名前で呼ばないでよ」
その正体は、死んだと思われていた
エンデヴァーの第一子で、焦凍の長兄・轟燈矢(24歳:※1)。
※1:燈矢は妹の冬美と1歳差である。公式ファンブックでは冬美の年齢は22歳と表記されているが、荼毘の正体判明時はそれから1年が経った頃なので現在の冬美の年齢は23歳である。よって、燈矢は24歳である事が分かる。
燈矢の詳細は個別記事で説明するが、10年前、父・エンデヴァーが使用していた山の特訓場で、自分の”個性"による暴走で山火事を引き起こし、遺体が残らなかったことから轟家一同は「燈矢は死んだ」と思っていた。
エンデヴァー「燈矢は死んだ。許されない嘘だ……。」
「俺は生きてる。
許されない真実だ お父さん!
何故俺が息子だと気付かなかった!?
炎系の個性は珍しくもないから
疑問すら抱かなかったかぁ!?」
黒髪は実は染めており、液体をかけて染料を落とし本来の髪の色を現した。元々父と同じく赤髪であったが、成長するにつれて母・冷譲りの青白い氷色へと変化した。
幼少期はエンデヴァー以上の才能を持つことから父親から目を掛けられ、自身もヒーローを目指しており家族仲は良好だった。しかし成長するにつれて、自らの炎で体を焼いてしまうようになる。親から訓練を止められるも、話を聞かず訓練を止めようとしなかったため、自身を諦めさせる為にエンデヴァーは新しく子供を作ることを決める。
最終的に元々エンデヴァーの望んでいた半冷半燃の“個性”を持つ焦凍が産まれたことで、父から見向きもされなくなり、自分を見ようとしない父に強い憎しみを抱くようになった。
全面戦争の終盤、エンテヴァーと焦凍に直接それらのことを伝えた上で、事前に録画しておいた自身の過去の境遇の告白、個性婚や轟家の真実に関する動画をスケプティックに全国のテレビとネットをハッキングさせることで世間に公表した。世間に大きな動揺を与えた上で、自身の正体に衝撃を受けるエンデヴァーをさらに絶望させるべく攻撃を行い、実の弟である焦凍と交戦し一蹴する。
実は火災事故で瀕死になっていたところをオール・フォー・ワンに拾われ、死柄木に何かあった時の保険(スペア)として氏子の再生治療を受けていたが、覚めるまでに実に三年間も昏睡していた。そして治療の過程で声や顔が別人の様になり、体質も弱体化していることを告げられる。オール・フォー・ワンからの誘いを受けるも、その誘いを跳ね除けて療養先である孤児院に放火して逃走する。
轟家に帰った際、三年前と変わらず焦凍に執着する父親の光景を目の当たりにして以来、自身の“個性”を強くするために独学で特訓を続け、今に至る。
荼毘を治療した氏子は「身体が動き始めた以上、身体は一月も保たない」と見ており、逃走した彼を追うことなく放置していた。
しかし荼毘は「父親に見てほしい」という愛憎、怨嗟交じった執念でその死に征く身体を踏み留まらせており、約十年ぶりの再会で生きていたことに驚愕した氏子は、そんな荼毘のことを「只管に死へと向かう為の熱、魔王すら見放した偏執狂の死炎」と評した。
第二次決戦では、物間のワープゲートにより神野区に転移させられ、自分を止めるために立ちはだかった弟の焦凍と対峙し、自分が荼毘となった経緯について明かした。
「一つ聞きてえんだが焦凍… お前一体どんな面して──
怯える市民と一緒に雄英に籠っていられたんだ?」
「エンデヴァーの息子 荼毘の兄弟
厄災の煮凝りみてえなてめェが!!!」
「そういう厚かましさだよ焦凍!」
「最高の環境と最適な身体がありやがるくせに、他に縋った!!全てを持って生まれたくせに、そう在ろうとしなかった!!」
「誰も言ってくれねえなら俺が言ってやろうか!?」
「てめェは何者にもなれねえよ!!!!!」
雄英で自分の身の丈に合ったヒーロー像を模索していった焦凍の生き様を徹底的に扱き下ろし、身体を顧みず赫灼熱拳で猛攻を加えるが、焦凍が長兄を止めるために編み出した新技『赫灼熱拳・燐』で炎(ねつ)を中和されていき、それでも体制を整え、大火力の炎で止めを刺そうとするも、焦凍の『大氷海嘯』で身体を凍結させられる。
焦凍「………そうだ。言う通りだよ…」
「遠回りして、迷ってばかりの半端者 …それが俺だ」
「親父の事しか見えてねえと思ってたよ」
「確り俺のことも見てくれてて よかった」
しかし、死に瀕したことで眠っていた冷の氷結の“個性”が開花し、土壇場で焦凍の「赫灼熱拳・燐」を真似てさらなる火力をもって復活。その後黒霧のワープゲートを通って群訝山荘に移動しエンデヴァーと対峙する。
さらに燈矢は『大氷海嘯』で氷漬けにされた時点から熱エネルギーを〝圧縮〟させて内に留め続けていた。燈矢の躰は保って数分~十数分で燃え尽きてしまい、同時に圧縮から解放された全ての熱エネルギーが外へと解き放たれ、直径約5㎞を無差別に灼き滅ぼす超高圧爆発を引き起こしかねない最悪の状況へと発展する。
そのままエンデヴァーのすべてを奪うために自爆しようとしたが、轟一家と、飯田の力を借りて神野区~群訝山荘間(約400km)を僅か10分で移動し駆けつけた焦凍により阻止され、完全に失敗に終わった。
彼の身体は「冷凍された焼死体」同然になり、精神面でも家族への怨み節以外にまともな疎通のできない廃人になる悲惨な決着とはなってしまったものの、何とか息が残ったまま身柄が確保されることとなり、かろうじて最悪の事態は免れた。
荼毘のもとへ集結する家族。そのとき、燈矢の体が外側から(焦凍によって)凍らされただけでなく、内側からも凍っていることに夏雄が気づき、燈矢が氷結の個性を内に宿していた事実を家族一同初めて認識した。幼少期の燈矢が死んだと思われていた山荘の火災で奇跡的に生存できたのも、今回と同様に死の危機に瀕したことで氷結の個性が発動していたためであったと目された。
「……死んじまえ クソ親父 みんな…俺も…死んじまえ」
エンデヴァー「…燈矢…! 悪かった…」
「瀬古杜岳 行かなくて……ごめんな…!!」
「…大嫌いだ…お父さんなんか…! 家族なんか…!」
人生で初めて家族全員に囲まれながら、譫言のように家族への想いをぶつける燈矢であった。
こうして、最終決戦で敵連合の幹部としてはスピナーに続く2人目の脱落者となった。
※ここから先は、単行本未収録のNo.426「地獄の轟くん家・FINAL」の内容を含みます。ネタバレをされたくない方は厳重にご注意ください。
決着から数ヶ月後、燈矢は身体を巨大な生命維持装置に繋がれていた。その見てくれは、生身の肉体が殆ど見えないレベルで全身を医療機器で拘束された異様なものであった。復讐の猛火に委ねた躯は殆ど炭と化し、ただ穏やかに迫る死を待つだけの彼の元に、轟家の面々が訪れる。
「……………ぞろぞろと」
「ハハ…観光名物じゃねぇんだよ……」
などと悪態を付いていたが、命がごく僅かなのは火を見るよりも明らかな程に彼の肉体は限界を迎えている。
エンデヴァー(炎司)は最終決戦で再起不能の重傷を負ってしまったこともあり、ヒーローを引退する(けじめをつけるためにも、引退は最終決戦が始まる前から視野に入れていた)旨を告げ、燈矢の8年にも及ぶ研鑽に「ヒーロー エンデヴァーは灼かれて死んだ」「おまえの炎は誰よりも強かった」と最大級の労いの言葉を送った。
「そっか。ご愁傷様」
今更になって諂う父を"卑怯者"と称するも炎司はそれを肯定し、息子である燈矢が『自分の事をどれだけ見ていたか、逆に自分が彼を見ようとしていなかったか』を改めて痛感する。せめて彼が死に至る前に出来るだけの罪を償うためにも、燈矢の「俺を見てほしい」という唯一にして最大の悲願に応えるためにも、炎司はこれからも毎日訪れることを伝える。
そんな中、焦凍は長兄にある質問を投げかける。
「燈矢兄 好きな食べ物 何?」
「蕎麦」
「おんなじだ」
燈矢は『自分とは決して交わることはないと否定し、自身から全てを奪った最高傑作だと憎んだ弟』と初めて心が通じ合ったことの嬉しさや自身の最大の理解者がずっと近くにいたことに気付けなかった後悔からか、燃え尽きたはずの涙腺から一粒の涙を零すのだった。
「焦凍…」
「ごめんな…」
真の余談
先述の通り、燈矢も弟の焦凍と同様、氷の“個性”を宿している事が判明した上、焦凍が炎と氷を操る『半冷半燃』に対し、燈矢は『(重たすぎる発動条件があるとはいえ)内側を冷やし、自身を燃焼させる』というエンデヴァーが本当の理想としていた形である。
現に燈矢が焼死した(と思われていた)瀬古杜岳での山火事の際に死に直面することで無意識下で氷の“個性”が発動し、個性の暴走により自身の骨肉や臓器が焼失しなかったのはこの為であろう。
氷に対する体質で火傷を負ってしまうという致命的な欠点さえ無ければ、氷の“個性”の発現がもっと早く気づいていたら……
もしかしたら子供は彼一人か冬美との兄妹で済んで、あの地獄のような家庭環境は生まれずに済んだかも知れない(その代わりエンデヴァーも自分を省みることは終生無かったかも知れないし、冷も炎司と向き合うことは無かったかも知れないが。尚、冬美の出産は冷の要望であり「きょうだいがいた方が励まし合える」という彼女の純粋な願いにより産まれている)
何より焦凍が「俺には辿り着けねえ境地だった」「俺は…最高傑作ではなかったのかもな…」と語っていることから燈矢はもうひとつの最高傑作とも言えたのかもしれない。
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