概要
遺体を焼却する葬祭方式。焼け残った骨(焼骨)の一部あるいは全部を骨壺に収骨し、土中や墓石の中のスペースに埋葬する。土葬と比べると土地面積の節約につながり、衛生的である。墓地整理の時、昔土葬された遺骨を掘り出して改めて火葬する事もある。
pixivではキャラクターが燃えているイラストにつけられる事もあるが、そもそも火葬というタグがついているイラストはあまり多くない。
火葬の歴史
日本では仏教の伝来とともに火葬が広がったと考えられているが、大量の燃料を必要とすることから一般に受け入れられるものとはなり得ず、中世までは一部の僧や貴族などに限られた。江戸時代には江戸や大坂などの都市圏で庶民にも火葬が広がったが、それでも肉体を傷つけることを禁忌とする儒教の影響から武士の多くは土葬され、歴代の将軍家も大半が土葬を選択している。
明治時代には、仏教由来の火葬はナショナリズムに基づき禁止されたが、都市部ではすぐに土地不足や葬儀代高騰に直面し解除された。昭和初期から戦後にかけて火葬の風は農山村部にも広がり、東京都など大都市圏では、戦前から条例で実質火葬一択としている。現在ではその他の自治体も火葬以外の葬送を規制しているところがほとんどとなっている。
なお、日本の法律では24時間以内に火葬ないし土葬を行ってはならない、ということになっている(6ヶ月以下の胎児と感染症による死亡者は例外的に、感染予防などの観点から火葬を行ってもよいことになっている)。また、火葬を行う場合には市町村長の許可が必要で、死亡届を受理した市町村から発行される許可証が必要。これがないと火葬場に行っても火葬を行ってくれないほか、勝手に遺体を燃やしてしまうと死体損壊罪に問われることになる。
火葬と宗教
故人の信仰していた宗教や土地柄によっては、死後の復活への信仰から火葬を禁忌と見なしている場合もある。特にイスラム教は教義上の禁忌ゆえに土葬一択である。首都圏在住のムスリムたちは遺体を故国に持ち帰るか、墓地を山梨県等の遠隔地に求めざるを得ない。
神道や儒教やキリスト教の信者、沖縄県民なども古くは火葬に抵抗があったが、スペース不足という現実には勝てず、現代日本では火葬されるのがほとんどである。アイヌでは北海道の土地が広大なこともあり伝統の土葬の復興運動が行われている。
日本以外の多くの国々でも、従来まで土葬が基本だったところが同様の理由で、土葬から火葬へと変容している場合が多い。新型コロナウイルス感染症が世界的に流行した際には、本来火葬を禁じるユダヤ教の一部のラビが「共同体を守るための火葬は認められる」として感染により死亡した故人については火葬を認める見解を出したことがある。
日本国外では火葬が選択される場合、日本のような骨上げの習慣はなく、焼き上がった後の骨は細かく砕いて遺族へ引き渡される。遺骨の扱いは比較的柔軟で、墓に納骨する他骨壺を庭や自宅内にきれいに飾ったり、メモリアルストーンやダイヤモンドなど決して肌身離さないアクセサリーに加工することで弔いとする。どっかのコメディ集団のようにコントに使うというのもあるが。
火葬場
人の死体が燃える独特の臭気が倦厭され、かつては大きな煙突が設けられていた。
しかし、現在では臭気がなくなるまで徹底的に排煙処理を行う方式のものが主になっている。その為に近年の多くの斎場では目に付くような煙突が存在しない。近年はほとんど公害問題は発生しないが、心理的抵抗感から新設する場合は近隣住民と行政の間でいさかいが起きるケースもある。
欧米の火葬場は日本のものより火力が強力で、骨の形が残らないケースが多い。これは日本と異なって骨上げの習慣がないからである。
詳細は火葬場の記事を参照。
火葬することのメリット
- 土地を節約できる。
- 埋葬後に遺体の腐敗による衛生問題が発生しない。また、伝染病での死亡者の埋葬を行う場合でも感染拡大のリスクがない。
- 野生動物に遺体を食害されるリスクがない。特に一度食べたものの味を忘れないヒグマなどは人間の味を覚えてしまい、人を襲うようになる危険性がある。
- 先祖や家族の墓に一緒に埋葬することができる。