『最近の若者は一段と病んでるな』
『英雄症候群の病人共』
プロフィール
世の理を壊し治す 破壊と再生の革新者
八斎會の復興を誓う 野望に満ちた若頭
―――僕のヒーローアカデミア 公式キャラクターブック2 Ultra Analysisより
概要
指定敵団体『死穢八斎會』の若頭。
零細化の進む死穢八斎會の復興と共に、自らの手で裏社会を支配するという壮大な野望の持ち主。
その目的の下、資金集めや人材確保に奔走する最中、とある事故を切っ掛けに敵連合と接触し、サー・ナイトアイにマークされる。
人物
酷薄さを感じさせる細い眼つきに、若干赤みがかった黒髪のショートヘアーの男。トレードマークの赤いペストマスクを着用し、上半身は紫色のファー付きのモッズコート、黒シャツに白ネクタイを身につけ、下半身は黒のスラックスで白いスニーカーを足首までの靴下を履いて着用している。また、ある事情から常に白手袋を身につけている。
心身共に重度の潔癖症であり、他人に身体を触れられると体に蕁麻疹が出る。
死穢八斎會に長年蓄積された悪事のノウハウを有し、高い計画性と慎重さに加えて、ある種の洗脳・人心掌握術に長ける。
個性の存在を現代特有の『病気』であると考えており、個性によって成り立つ現在の社会には強い憎悪を抱いている。
自身の親代わりの現組長への恩に報いるため、彼に代わって死穢八斎會の復興を目指している。『オーバーホール』という名は、組の実権を握った後に名乗り始めた。
しかし仁義を重んじた昔気質の組長に対し、治崎は部下の命さえもゴミのように使い捨てる強引な手腕で組織の拡大路線を推し進めているため、組長を慕う大多数の組員は彼の存在を恐れ、疎ましく感じている。
組織の運営手腕だけでなく、個としても高い戦闘能力を有しており、更に自身の個性の関係から、医薬学関連の知識も豊富。決して整っているとは言い難い自前の設備で壊理の個性の研究を行い、個性を利用した弾丸まで作り上げている。
まさに万能と言っても過言ではない多彩な能力の持ち主が、その危険性を察知されることがないよう、表向きは穏やかな一組員を装い、自分の存在を闇に潜めている。下記の計画と合わせて考えれば、ゆくゆくは非常に危険な存在になっていたことだろう。
戦闘能力
側近の玄野曰く「組の尊厳のために幼少の頃より異常なまでの努力を惜しまなかった」結果並外れた戦闘力を会得しており、個性を使用せずとも乱波のパワーとスピードを軽く捌ける動体視力や、ルミリオンをして「一介のヤクザとは思えない」とまで称する身体能力と分析能力を誇る。
個性
個性は『オーバーホール』。
手で触れた対象物を一度分解し、瞬時に修復することができる。怪我・疲労・治癒も瞬時にでき、破壊した者同士も融合可能。
- 分解
死柄木の個性(覚醒前)とは異なり、任意のタイミングでの発動が可能。
個性の影響範囲末端までタイムラグがあるが、人体程度のサイズの物体なら一瞬で分解する。修復しなければ当然即死である。
- 修復
文字通り壊れたものを元通りにするだけでなく、一度分解したものを全く別の形に修復することもできる。ただしその場合は、一度対象を粉々に分解→特定の形状に修復という二動作が必要となり、わずかな隙が生じる。
作中では地面や外壁を鋭い棘の形に変形させることで攻撃手段としていた。
医学方面に秀でた治崎ならば、人体の外傷や持病の治癒、更に死亡した直後であれば対象を蘇生することすら可能となる。ただし、分解してから一定時間が経つと修復は不可能となってしまう。
- 融合
治崎の奥の手。自身と対象に対して同時に分解、修復を行うことで肉体を融合させ、異形の姿へと変貌する。
治崎の桁外れの能力のなせる業だが、潔癖症である彼はあまりこの手を使いたがらない。
自身の個性は融合部分の手でも使用でき、更に融合させた相手の個性を使用することさえ可能。複数の個性を同時に操るその姿は、オール・フォー・ワンの名を引き合いに出して、「次の支配者となる」と語った彼の言葉が、決して誇大妄想ではなかった証拠と言える。
過去
その出自には謎が多いが、幼少期を孤児院のような場所で過ごしたことが示唆されている。その当時、「“個性”とは人類が罹った病気の一種である」とする古い学説を目にしており、これが彼のルーツの一端となっていることが窺える。
おそらくその後に死穢八斎會の現組長に拾われ、以降は組の養子として育てられることになる。
死穢八斎會の組長は、「死穢八斎會はヴィランではなく、侠客であらねばならない」とする昔気質の男で、死穢八斎會には彼の人柄を慕う多くの組員が集まっていた。
幼い日の治崎は親代わりの組長を慕う純粋な少年で、組をヴィラン扱いする子供相手に喧嘩をすることもあったらしい。組長も「カタギに手を出してはいけない」と叱りつつも、子供なりに組の面子を守ろうとした治崎には思いやりを持って接していた。
時は流れヒーロー飽和時代、そしてオールマイトの台頭により、旧来のヤクザは組織解体が進んでいく。
そんな時代のヤクザの生き残りについて、青年期の治崎は悩んでいた。このままでは組が潰れてしまう危機感を強く感じていたが、組長は自分のやり方を曲げず、表立って事業を拡げることができない。この頃から治崎は「組長(オヤジ)は大局を見ていない」と感じるようになり、組長との間に徐々に溝を深めていく。
そんな中、ある日組長は彼の実娘の娘、つまり孫である壊理を連れてきて、彼女の世話と個性の扱いを治崎に任せると言ってきた。曰く、壊理は危険な個性を持った少女で、個性を発現した際に、自分の父親を消失させてしまったのだと言う。
壊理の個性を解析・研究していく中で、その個性の真価に気付いた治崎は、彼女を利用して組復興のための計画を立てる。
だが、「壊理の肉体を原料に薬を作る」という非人道的な計画を、組長が許可するはずもなかった。そうした振る舞いを見かねた組長は、ついに治崎に対して組の方針に背くなら組を去るように告げる。
組長に対する恩義と疑念、そして社会への憎悪と組織拡大への野望。そうした思いが積み重なる中、限界を迎えた治崎は、その場で組長を植物状態にしてしまった。
その後、組の実権を握った治崎は「オーバーホール」というヴィランのような名を名乗るようになる。組長に対する恩は薄れておらず、計画が軌道に乗り、組が大きくなった後には、彼を元通りに修復する予定だったという。
そして治崎は大多数の組員には事実を伏せつつ、その壮大な野望を実現させるべく歩みを進めていた。
目的
結論から言えば、彼の計画には二つの目標があった。
ひとつは死穢八斎會の復興であり、もうひとつは"個性"によって成り立つ現在のヒーロー社会の在り方を根本から変革することである。
治崎は壊理の個性を利用することで、"個性"を破壊する銃弾と"個性"を復活させる血清という、2つの薬品の開発に成功した。
この時代、ほとんどの犯罪者は自分の"個性"を悪用することで犯罪を行っているが、"個性"使用の訓練を積んだプロヒーローを前にして、犯罪行為を達成するのは容易なことではない。
だがこの個性破壊弾を使用すれば、一転して犯罪者達が優位な状況に形勢は逆転する。
拳銃を撃てばプロヒーローから個性が失われる。たったそれだけのことで、強盗や殺人のような凶悪犯罪も容易に達成できてしまうのである。
一方のプロヒーロー側から見れば、"個性"を奪われれば一人のヒーローが活動を続けられなくなるだけでなく、ヒーローによる犯罪への抑止力が失われ、社会の混乱を招くことに繋がりかねない。
銃弾と血清の量産体制が整えば、"個性"による「ヒーローとヴィランの戦い」という構図は形だけのものとなり、その本質は「銃弾と血清の奪い合い」へと徐々に変化していくこととなる。
その過程で「"個性"を社会のために正しく使う」というプロヒーローの存在意義そのものが問われ、やがては"個性"が発現する前、ヒーローという職業が脚光を浴びる前の社会の在り方へと戻っていく。
そして、それに伴う莫大な利益は全て『薬の原料』である壊理を確保した死穢八斎會のものとなる。
これらの薬品の開発のために、治崎は壊理の身体を日常的に切り刻み、銃弾や血清の材料として彼女の血肉を採取していた。
治崎は壊理の体が実験に耐えられなくなった際には「リセット」と称して彼女の体を分解して蘇生し、実験を続けた。
"個性"が暴走した際にも壊理の肉体を分解することで強制停止させていた。
壊理がどれだけ苦しんでも、治崎は自身の計画のために実験を止めなかった。
つまり彼女は治崎の研究の実験体として何度も殺されており、その度に治崎の"個性"で蘇生を繰り返しているのであり、そのような常軌を逸した虐待行為を、治崎は壊理に対して日常的に行っていたのである。
それは人の道を捨てた治崎でなければできないことだったし、仁義と人の道を大切にする組長の同意を得られなかったことも必然だった。
治崎がこの計画を実行しようと決意した時点で、彼と組長の間の亀裂は決定的なものになっていたのである。
動向
トゥワイスにスカウトされて死柄木と対面するも、ヴィラン連合を自らの傘下に加えようとしたことで交渉が決裂、排除に乗り出したマグネを殺害、Mr.コンプレスの左腕を破壊した末に、交渉の仕切り直しとして死柄木に自らの連絡先を渡して撤退する。
後日、組員の不手際により壊理の脱走が起こり、ナイトアイ事務所にインターン中のデクとルミリオンと遭遇。なんとか壊理を自分の元に連れ戻したものの、そこから治崎の計画は一気に急展開を迎えていく。
死穢八斎會が捜索された時には、八斎衆を使ってヒーロー・警察を分断し、自身は単身向かってきたルミリオン、ナイトアイと交戦・重傷を負うも、八斎衆の生き残りを個性で融合することでパワーアップする。しかし、壊理の個性の影響を受けたデクに敗北。
その後、護送中にヴィラン連合による襲撃を受け、マグネ殺害&Mr.コンプレスの左腕を破壊した意趣返しとして、死柄木によって両腕を破壊された事で二度と個性が使えなくなってしまった上に、個性を消す銃弾の完成品と血清も死柄木達に奪われるという、あまりにも最悪かつショッキングな結末を迎えた。
彼は高すぎる理想と訪れた現実の矛盾により、己が精神を自壊させてしまい、廃人同然の状態となって特殊刑務所タルタロスに収監された。
ちなみに、ヴィラン連合が彼から奪った個性を消す銃弾の完成品はドクターによって量産されたが、ほとんどがエクスレスによって破壊された。これを見た死柄木弔は「オーバーホールも浮かばれないぜ」と嘆いた。残った銃弾さえも交戦の余波で全滅し、二度と登場することはなかったので、ヴィラン連合にとって銃弾の回収は大した利益ではなかった模様。
後にオール・フォー・ワンによってタルタロスが壊滅させられた際、AFOの指示でレディ・ナガンにターゲットのデクの確認のため連れられる形で脱獄。ある程度会話こそ出来るが、「親父(組長)に会って謝りたい」という意思を優先していること以外は終始廃人同然のままだった。
デクvsナガン戦でAFOの想定通り「デクの隙を作る為の人柱」にさせられるもデクに助けられ、両者の戦いが終わった後は駆けつけたエンデヴァーに確保される。
意識を失ったナガンに約束が違うと抗議、「壊理に組長を治してほしい」と今の思いを語ったことに対し、デクから「エリちゃんのことを償ったらナガンとの約束を引き継ぐ」と言われ、大人しく連行された。
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これより先はヒロアカ本誌『No.419 DESIGN』のネタバレを含みます、厳重注意!!
オーバーホールが幼少期を過ごした孤児院は、実はオール・フォー・ワンらが経営していた施設の一つであった。
そして、死柄木弔こと志村転弧の個性『崩壊』は実は彼自身が目覚めさせたものではなくオール・フォー・ワンが彼本来の個性を抜き取ってから与えたものであり、元々は治崎の個性『オーバーホール』の再構築の能力を取り去り、分解の能力のみを残した劣化コピー品であった。
オール・フォー・ワンとしては転孤の祖母である志村菜奈やその愛弟子たるオールマイトへのただの嫌がらせに過ぎなかったが、結果としてオーバーホールは自身の個性の模造品の持ち主に破滅させられた事になる。