『緑色の…少年』
『お前を連れていく』
『大人しく従えば 手足は残してやる』
プロフィール
概要
特殊刑務所タルタロスから大量脱走したヴィラン『ダツゴク』の一人。元プロヒーローとしての経歴を持ち、かつて他のプロヒーローを殺害した罪でタルタロスへと収監されていた。
人物
ピンクとダークブルーのバイカラーの髪の毛に、他の女性プロヒーローにも勝るとも劣らない抜群のスタイルの持ち主。
他のダツゴクとは一線を画す実力者であり、オール・フォー・ワンを前にしても全く動じないほどの優れた戦闘力と豪胆さを兼ね備えている。
勝気で男勝りな性格だが、意外にも「かわいいもの」や「キレイなもの」が好きという一面があり、現役時代は子供達からも高い人気を集めていた。
※プロヒーロー時代のコスチューム。
コスチュームはプロヒーロー時代とは若干異なり、ダツゴク後は実用的なカーゴパンツからスカートに履き替えている。
また、髪型は元々はポニーテールだったが、タルタロスに収監される際に丸刈りにされ、現在はショートボブ程度まで髪が伸びている。
一般的には知られていないが、かつては法を犯したヒーローを監視、暗殺する公安直属のプロヒーローとして活動していた裏の顔を持つ。その役割上、ホークスの前任者にあたる人物だが、活動時期的に彼との直接的な面識は無い。
ホークスは彼女をワン・フォー・オールを持つ緑谷を生捕りに出来る唯一のダツゴクだと評し、緑谷に対して彼女が仕掛けてきたら全力で逃げるように警戒を促した。
現代社会のヒーロー観を悲観している一方で、両腕を失って廃人化した治崎を憐れみ、彼の介護に付きつつ行動を共にする等、私利私欲によって法を犯した他のダツゴクとは本質的に異なる考えに基づいて行動している。
AFOは彼女に対して、対等な立場における「契約」という形での取引を持ち掛け、彼女はヒーロー社会に対する忌避感を言葉巧みに利用され、AFOの協力者となった。
長い間実戦から遠ざかっていたものの、その脅威的な技量や実力は現役時代から衰えておらず、タルタロス脱獄後は、単独行動を取っていた緑谷に奇襲を仕掛けて、彼と互角以上の戦いを繰り広げた。
超人社会の『暗部』
現役時代の彼女は、人々に慕われる人気ヒーローという表の顔と、ヒーロー公安委員会専属の暗殺者という裏の顔を持っていた。
彼女の才能は学生時代からすでに発揮されており、その噂を聞きつけた前公安委員会会長から直々にスカウトを受けたことで、公安委員会直属のプロヒーローとして任命されたという。
それ以降、彼女は公安の指示の下でプロヒーローや犯罪組織への諜報活動を行い、ヴィランと癒着して利益を得ていたヒーローチームや、ヒーローへのテロを計画する組織等、社会を脅かす存在を秘密裏に抹消し続けてきた。
そもそもの話、超人社会では、街中でヒーローが活動する光景が日常的に見られるが、これはヒーローという存在が当たり前のものとして社会に受け入れられていることと同時に、超人社会における犯罪発生率が、現代日本のそれを遥かに上回っていることを暗示している。
「ヒーロー(公権力)が法の下にヴィラン(犯罪者)を退治する」という図式は、"個性"の出現に伴って生じた現代社会の歪みを権力や暴力によって無理やり抑え込むことで維持されており、多くの人々は社会に対して様々な不安や矛盾を感じながらも、ヒーロー達に自分達の安全を委ねている。
極端な話、超人社会は「ヒーローはどんなときも絶対に正しい」という信頼を前提として成り立っているため、ヒーローが犯罪に手を染めることは決してあってはならないのである。
彼女は誰にも理解されないまま、必要悪としての任務を全うし続けていたが、その中でかつて自分が思い描いていたヒーロー像とはかけ離れた現実を何度も目の当たりにすることになる。
「プロヒーロー」と「暗殺者」という矛盾した二重生活を続ける内に、やがて彼女は徐々に精神を蝕まれて幻覚を見るようになり、自身の任務に終わりの無いことを悟ったことを切っ掛けに、半ば自暴自棄となって当時の上司であった公安委員会会長を殺害してしまう。
その後、ナガンの真実が明るみに出ることを恐れた後任の会長は、彼女の罪を(おそらく彼女自身が暗殺したであろう)プロヒーローの殺害へとすり替え、機密情報の漏洩を防ぐために、彼女を強制的にタルタロスへと収監させた。
ナガンがプロヒーローを殺害したという事実は、マスメディアによって大々的に報道され、これによって彼女は自身のプロヒーローとしての資格を失うことになった。
この処遇は、ナガンの命を奪うことは避けたい後任の会長の意図が込められたものだったが、ナガン自身にとっては侮辱に他ならないものであり、彼女は屈辱と絶望の中で長い投獄生活を過ごすことになる。
個性
"個性"は『ライフル』。
右腕の肘をライフルの銃身に変形させる。
また、自身の毛髪からライフル弾やスコープといった補助具を作成することができる。
特徴的な二色の毛髪は、エポキシパテのように混ぜて練り上げることで弾丸に変形させることができ、形や配分を調整することで「ホローポイント弾」や「曲がる弾」といった用途に合わせた様々な弾丸を生成することができる。
ライフル本体も実物よりも高性能であり、連射性能が備わっているほか、銃口を大型化させることで、弾詰まりのリスクと引き換えに弾速を引き上げること等もできる。
個性そのものはシンプルだが、特筆すべきはレディ・ナガン本人の人間離れした射撃技術であり、彼女は自身の個性を「3km離れた場所から標的を狙い撃つ」、「動く標的に風や標的の動きを予測し先読みして弾を撃ち込む」といった離れ業が可能な領域まで鍛え上げている。
また、一見目立たないが攻撃力そのものも非常に高く、波動ねじれの波動エネルギーでも傷一つつかないマスターピース・死柄木弔の腕を一撃で吹き飛ばすほどの極めて高い貫通力、破壊力を備えている。
更には相手に距離を詰められた際の対策として、伸縮するライフルの砲身を駆使した近接格闘術も習得しており、まさに遠近共に隙が無い。
戦闘スタイルこそ異なるものの、個性の練度は現トップヒーローのエンデヴァーやホークス等にも引けを取らないものであり、スナイプが彼女の存在によって遠距離系"個性"で戦うヒーローの二番手に甘んじていたこと等からも、現役時代はトップヒーローの一角を担う存在だったのではないかと思われる。
- 『エアウォーク』
空中を歩くように移動できるというシンプルな"個性"。
AFOと契約した際の"手付金"として与えられた。
狙撃手である彼女の戦闘スタイルとの相性は抜群で、『ライフル』と併用することで、戦場の地形や空間に囚われず、あらゆる地点から自在に狙撃が出来る『高速移動長距離砲台』へと進化を遂げた。
活躍
ヒーロー勢と超常解放戦線の全面戦争が勃発したその日の夜。死柄木弔の体を乗っ取ったAFOは特殊刑務所・タルタロスを襲撃し、彼女はマスキュラーやムーンフィッシュ等の名だたる凶悪な敵達と共に、刑務所の外へと解き放たれることとなった。
なおその際、彼女は両腕を失って自分の部屋から出られずにいた治崎廻の独房の扉を開けてやっており、以降はなし崩し的に行動を共にすることになる。
「叛逆のヒーロー、麗しきレディ・ナガン。会えて光栄だ」
治崎を連れてタルタロスを脱出しようとした際に、彼女はAFOから直々に声を掛けられ、緑谷出久の捕獲を依頼される。
当のナガンは依頼を引き受けるつもりは無かったものの、AFOはナガンが仲間のヒーローを殺して投獄されたことを引き合いに出し、彼女を言葉巧みに唆した。
そして依頼報酬の”手付金”として、彼女はAFOから個性『エアウォーク』を受け取り、自らAFOとの取引に応じることになる。
その後、偶然にも緑谷との面識があった治崎の案内を受けて、彼女は雨の日の夜に単独行動中の緑谷を襲撃した。
手始めに遠距離狙撃で通信端末を破壊した上で、自前の個性と与えられた個性、桁外れな技術を駆使して緑谷を翻弄していく。
序盤は通信機器の破壊と超長距離&超曲射狙撃、更にデータにない『エアウォーク』で一気に優勢に立つ。しかし緑谷がこちらも習得訓練をしてないOFAの中にある六つの個性の1つ『発勁』をぶっつけ本番で実戦登用したことによる急激なスピードアップと、弾道から動きを予測され追い込まれる。
追いつめられた彼女は、治崎に銃口をむけて発射することで緑谷の判断を鈍らせようとするという元ヒーローにあるまじき戦法をとるものの、これも緑谷の『黒鞭』と『発勁』を使う新技の擬似100%で防がれ同時に虎の子の銃身を折られる。
薄れゆく意識の中、旧敵を迷うことなく助けた緑谷に「本物のヒーロー」の影を見て行くが、緑谷に助けられ、彼から治崎を狙った弾は軌道がズレてたことと、そもそも初撃で自身の腰を撃ち抜いていれば終わりだったと言われ、「闇を知っているのなら照らすべき方向は分かるはずだから、僕たちと共に戦って欲しい」と言われたことで、心から緑谷を本物のヒーローだと認めた。
だがその直後、AFOから個性を受け取った時にかけられていた契約不履行時の保険によって全身に亀裂が入り、爆発して瀕死の重傷を負ってしまう。
地面に落ちて行く最中にホークスに助けられ、彼が自身の後釜であることを知り、何故自身と同じく裏の汚れ仕事をしているのに学生時代の自分や緑谷と同じくキラキラした目をしてるのかと疑問を持ち、ホークスに自身が知りうる限りの情報を教え、最後に自身は心が保たなかったのになぜ保っているのか聞き、ホークスの答えを聞いた直後に意識を失う。
その後はセントラル病院で治療を受けるも「何故この状態で死なないのか」と言われる程の重傷であり、意識不明の状態が続いていたが、最終決戦時に病院が襲撃されたタイミングで意識を取り戻す。
身体の傷がまだ治っておらず生死に関わる満身創痍な状態の中、敵の場所を知り戦闘に参加しようとするが、医師から身体の状態と脱獄囚でもあることから1度は止められる。しかし尚も戦おうとする理由が緑谷に頼まれた約束を果たすためだと知ったロックロックから、ナガンが緑谷を想い動くのなら自分が自身を信じ責任を取ると告げられ、彼から現在の戦闘情報が分かる情報デバイスを渡されて遂に参戦。
ライフルでの射撃の負荷に身体が耐えきれない状態の中で、自身の生きた意味を緑谷に届けるために、セントラル病院から天空の棺にかけての超遠距離狙撃を敢行。崩壊を使おうとした死柄木の腕を放った弾丸2発が吹き飛ばしてこれを阻み、天空要塞の崩壊を阻止した。
戦いが終わった後は、再び何処かの留置所に収容されている。
ラブラバやジェントル同様に決戦での貢献が認められ出所の許可が下りたのだが、近いうちにそうする事は示唆しつつもまた利用される事を恐れたナガン自身が拒否している。
出所までの間は今後社会がどう変わっていくかを見極めながら「税金で飯を食わせてもらう」と冗談めかして言っており、これを聞いたホークスからは皮肉混じりに「ヴィランめ」と返された。
余談
- 原作者は、映画『ウォンテッド』からナガンの個性のアイデアを得たと述べている。
- ヒーロー名の由来は1890年代初期にナガン兄弟によってベルギーで開発された回転式拳銃『ナガンM1895』、又は1930年に同氏が開発したボルトアクション式狙撃銃『モシン・ナガン』と思われる。
- 皮肉なことに、レディ・ナガンの裏切りを受けて、同じ失敗をしない為に現公安委員会会長がホークスで実践した「より若いうちから公安直属のヒーローを教育・訓練する」という方法は、奇しくも死柄木弔のスペアとしての荼毘の育成に失敗したAFOに通じる部分がある。
- 単行本32巻幕間の解説によると、「ヒーロー飽和社会」と呼ばれるプロヒーローの増加に比例して、プロヒーローによる犯罪は増加の一途を辿っていたようである。彼女は法を犯したヒーローを粛清することで陰ながら社会に貢献し続けたが、実際問題として、増加し続けるヒーロー犯罪を永久に大衆から隠し続けることは現実的には不可能であったと言える。たとえヴィランの反乱がなくとも、全面戦争前のヒーロー社会は、遅かれ早かれ大きな変革が求められていたのかもしれない。
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関連タグ
- ベロス:ワールドヒーローズミッションに登場した同じ射撃型個性のヴィラン。彼女の場合、射出した物体の操作が可能だが、射出する物体を自己生産できない点で差別化されている。