概要
加害者の親や兄弟姉妹等の総称。
近年では加害者家族に対してのハラスメントが社会問題になっている。
罪を犯した加害者当人は当然ながら裁かれるべきだが、なんの罪もない家族や親戚まで同罪と見る固定観念も根強い。
結果として「加害者の家族」という理由だけで善良な人達までもが冷遇、酷ければ攻撃されるようになってしまう。
更には秋葉原通り魔事件のように世間からのバッシングや私刑に絶望して自ら命を絶つ加害者家族も存在している等、過激化した正義感や差別感情で新たな被害者を生み出すという最悪の負の連鎖が成り立つ事となる。
加害者家族ではないが、あるグループのメンバーの犯罪行為が報道された際に、残されたメンバー達が様々な事態から憔悴しながらも記者会見に望む中、「メンバー達が今後その事件の内容を彷彿させる様なシーンや物品があるCMや番組の出演は出来なくなる」と茶化す…といったもはや他のメンバーのみならず被害者までも愚弄するかの様な悪質な記事が掲載されたニュースサイトもあった(もちろんだがその悪質さからコメント欄には怒りの声が存在していた)。
またあるグループがゲスト出演した番組では、別の仕事により出演していなかった人物がいた。この当時、犯罪行為が明るみに出ていた人物がその番組のレギュラー出演者と同じ事務所で、なおかつ出演していないメンバーの親族を演じていた事から出演を見送られたのではないかといった憶測が一部のニュースサイトであった。
また、現実でもフィクションでも加害者の中には冤罪で裁かれた者も存在しており、それも加害者家族叩きの醜さに拍車をかけている。
裁かれるべきは加害者本人であり「加害者の家族」という理由だけで罪の無い人間に危害を加える行為はそれこそ加害者になってしまう。
更には「家庭内の事件で加害者となった身内に苦しめられて被害者となった者」まで加害者家族と見なされて迫害されるケースも存在する。こちらを参照。
加害者家族叩きの行動原理は「自分には加害者とその家族を糾弾する権利がある」という優越感が根底にある。
つまり「自分は普通の立場である」「相手が加害者側なら何をしても許される」「自分は正しい」ことが最低条件にして絶対条件であるため、加害者家族が理不尽な目に遭っても罪悪感が薄れて「自分が加害者になってしまう」という自覚すら無い等、ある種の思考停止状態に陥ってしまう。
それらの行動が後々大変なことに・・・・
また、加害者の家族には大かれ小かれ「悪を生み出した」、「悪に育ててしまった」という点において決して無関係とは言えないのも事実である。特に日頃から問題行為や過ちがあった場合、その身内が矯正を怠っていた場合、事件は未然に防ぐ術がなかったのかというもしもを考えたときに行き着く理屈の先が、加害者に強い影響を与えたであろう家族に目が向いてしまうからだ。
しかも悪い事に、上述の秋葉原通り魔事件を含め、加害者本人がその家族(特に親)から何かしらの虐待を受けていた例も散見されており(その主な例に2007年に愛知県名古屋市で発生した闇サイト殺人事件(※犯人グループの内の一人が該当)、1991年の佐賀同窓会殺人事件未遂事件、殺人並びに未遂事件以外では2013年の黒子のバスケ脅迫事件があり、どの事件も犯人本人が周囲からの助けを得られなかった等、真面な救済がされていない模様)、決して幼少時に周囲から受けた仕打ちの影響が無いわけではないのもまた事実である。
この点が加害者家族が糾弾される非や落ち度なのか、第三者に糾弾されるかは別問題ではあるが、犯罪とは時に犯した当人だけの問題ではないのも事実である。
また、刑罰はともかく、未成年者の加害行為に対しては、親権者などの監督責任者が民事上の賠償責任を問われたり、加害者が死亡した場合は相続という形で責任を負担することもある。(相続放棄は可能)
だが家族の加害者との関わりの何が問題だったのか、あるいは家族以外の何かに問題があったのかを詳細かつ具体的に検討することなく、報道などの断片的情報を頼りに家族であることの一事をもって「問題があったに違いない」と言うレッテル貼りとなっているケースも見受けられる。
また、家族として加害者であれ愛情や信頼があるのは当然であり、そこから犯罪の疑いを何かの間違いではないかと考え、擁護的な立場を取ることは何らおかしなことではない。
その程度の信頼も愛情もなかったとなれば、逆にその家庭環境が犯罪の原因であることも疑われる。
しかし、それさえも許さず、庇ったことをもって共犯者同然に非難されるケースも少なくない。
実際には、償いを終えて社会に復帰した加害者を受け入れるのは家族であるケースが多い。
家族が受け入れなければ、加害者は行き先をなくし、更なる罪を重ねるのにつながってしまう。
家族に問題点があったなら、その問題点を改めた上で受け入れることは、再犯を防ぐという意味でも重要になることもある。
レッテル貼りによる加害者叩きは、再犯防止のために必要な家族の支援をも奪いかねないのだ。
ちなみに加害者家族に対する迫害はとりわけ家族主義的傾向が根強いアジアや中東諸国で強くみられる傾向にある。これは西洋のような「成人した個人の選択と行動は個人の責任」とする社会と「成人しても何かと世話を焼くのが家族であり、子はその恩に報いるべき」とする社会規範や道徳観念の違いも相まっている。(ただし欧米でも家庭環境が成人後の人生に大きく影響を及ぼすという認識は浸透しており、加害者家族バッシングは存在する)
後者の社会通念は時代や場合によっては苛烈極まりない制裁が課され、罪を犯したが最後、本人だけでなくその一族の子孫や先祖まで罪人扱いとなってしまい、古代中国などでは国家大逆などの重罪を犯した場合などは本当に血筋が絶えるまで処しつづけた。
こういった重罰主義は、罪人の家族も罪人というわかりやすい発想からも簡単に伝播浸透してゆき、犯罪抑止の予防策として受け入れられるようになる。本邦でも加害者の家族に対する村八分や同調圧力という悪い形で発揮されてしまうのである。それは仇討ちや連座制が廃止された現代でも度々起きており、問題視されている。
そして、こうした加害者の家族に対する偏見が原因で、その人物と関わった一人の若者が凶行に走り、結果一人の人間が殺されてしまった事件も存在する(参照)。現在でもSNSの発展などにより、この様な事件が発生する可能性は十分に有り得るため、こうした惨劇が二度と起こらないようにするためにも、我々は一人ひとりが自制し、その境遇に立つ者の苦しみを理解し、手を差し伸べる必要がある。
言っとくが他人事ではなく明日は我が身と肝に銘じるべきであり誰もが被害者や加害者になる可能性は有り得る
また中立的立場を持つ天皇陛下や皇族でさえ、被害者や加害者を救いたい気持ちがあるゆえに近年天皇陛下が誕生日記者会見で名指しは避けるも他者の気持ちを考えてほしいと異例のお言葉を述べる事態となった。ここで閲覧してる諸君、天皇陛下のお言葉を忘れず肝に銘じてほしい。さもなくば人を呪わば穴二つゆえにお互い不幸になるからだ。
フィクションにおける加害者家族
※劇中で加害者側の家族の問題が明確に描かれたもののみ。
- ジーニー・キャクストン(マックスアナーキー)
- 父親が死なせてしまった少女の父親である人探し専門の探偵に「あれ(娘を死なせた事)は事故だから父親を助けてくれ」と依頼をしている。ちなみにその父親に母親を殺されている被害者家族でもある。
- 真嶋護とその母親(イフリート〜断罪の炎人〜)
- 桜小路桜(CODE:BREAKER)
- 水田マリ(亭主元気で犬がいい)
- 猟奇殺人犯の兄を持ち、様々な迫害を受けた挙句に素性を承知で結婚してくれた夫を被害者遺族に殺害されている。自身も殺されようとされたが、返り討ちにして相手を警察に突き出している。
- 如月大吉郎議員(特救指令ソルブレイン)
- 第20話で登場した政治家。息子とその友人2人が留学生を殺した事件を隠蔽しようとした。留学生の父親であり、息子を殺そうとした犯人を前に被害者の女性を「馬の骨」と侮辱している。
- バウマイスター家(八男って、それはないでしょう!)
- 長男が起こした不祥事が元で父親は失脚、妻子は被害者遺族から報復を受け、他の兄弟達も不幸に見舞われた。
- 黒炭家(ONEPIECE)
- ワノ国における権力争いの中、オロチの祖父が犯した大名殺しの罪によって黒炭家は取り潰しとなり、残された黒炭家の人間もまた、「黒炭の姓を持っている」という理由だけで大衆演劇の舞台上で両親を殺されるなどと、一部の民衆から苛烈な迫害を受ける事態に遭う。そういった経緯から、オロチは自分達を迫害したワノ国に復讐するべく暗躍するようになった。
- ドンキホーテ・ホーミング聖とその一家(ONEPIECE)
- 鶴巻裕(善悪の屑)
- 自分を虐待していた父親が起こした幼女誘拐事件で居場所を失い、やがて自暴自棄になるも、誘拐事件の被害者と再会し、贖罪の意識と、終わりかけていた己の人生を変えたい強い意志で過酷な英才教育を耐え抜き、渡米し米国陸軍のレンジャー訓練校へと入隊する。帰国後、彼女の依頼で父親を捕縛し制裁を見届けた後、父親とも決別し、朝食会へと入会した。
- 湖村花夜とその家族(魔法少女サイト)
- 元々は3人組の不良少年に妹を殺された被害者家族だったが、逮捕された3人が証拠不十分の無罪放免として釈放された後、当時刑事であった父親が妹を殺した犯人達に残虐な復讐制裁を下して逮捕され、母親はその事件のショックから病床に臥せてしまう。花夜はクラスメイトから「犯罪者(殺人犯)の娘」と罵られ、酷いいじめに耐えつつも、「もし「力」があったら自分をいじめるクラスメイトを殺してやりたい」という殺意をうち秘めていた。
- サラ(ViVid_Strike!)
- かつてクラスメイトだったリンネ・ベルリネッタに対して酷いいじめを行っていた3人組の一人。しかし、いじめのせいで養祖父の最期を看取ることのできなかったリンネから激しい鉄拳制裁を受けて病院送りとなる。その事件が「いじめの被害者による暴力事件」として世間で公となり、リンネの両親の奔走で示談とリンネの転校で済むこととなるが、3人はこの事件が遭ってもなお全く反省していなかったらしく、いじめの事実を否認しようとするサラは「自分も他の2人も何も悪いことはしていない、友達同士の軽口にリンネが切れた」と兄に吹き込む。その結果、サラの兄が多勢の不良仲間を率いて拉致事件を起こし、皮肉にも身内を犯罪者にしたサラは「犯罪者(誘拐犯)の妹」となってしまった。
- 不亞幽(デュエル・マスターズ)
- 兄のザキラが南米奥地にある村を焼き払い村人を殺害した。その村の生き残りである少年ぺぺから家族を殺した悪魔の妹という理由で襲われる。
- キメラ(メルヘヴン)
- 柳周太郎の妹(ブルータル殺人警察官の告白)
- 兄が通り魔事件を起こしたため、ジャーナリスト達からしつこく取材を受け、最終的に母親が自殺した。
- 鬼塚雅春、鬼塚ありす(ブルータル殺人警察官の告白)
- 雅治は前述のジャーナリストの1人で、ありすはその娘。ありすが担任の教師をイジメて一家心中に追いやったところを父に「取材」される。該当話リンク
- キング・ハデス(探偵学園Q)
- 犯罪集団「冥王星」の創始者であり首領。天才芸術家『九頭龍匠』の息子であり、母親は「黒百合」と名乗り、殺人願望を持つ人間に殺人トリックを伝授するという有名な犯罪者だった。その為、様々な迫害を受け、親友だった相手や父親にも裏切られる。
- 下村優子とその家族(告白)
- 息子の直樹が殺人を犯した為無理心中を図ろうとしたが、逆に自分だけが命を落とした。それだけではなく、長女の真理子がショックで流産しかけてしまい、入院する事態となった。
- 川崎小夜子(ギルティ悪魔と契約した女)
- 黒幕に夫と息子を殺された被害者であるが、妹の野上芽衣子が黒幕の陰謀で濡れ衣を着せられたために被害者であるはずの自分が世間から「殺人犯の姉」と迫害され、それを苦に自殺した。
- 高倉家(輪るピングドラム)
- 夫婦と3兄妹の5人家族。夫妻はテロ組織のリーダー格であり地下鉄を狙ったテロで多数の死傷者を出した。子供たちはテロ行為に関与はしていないが家族で在る限り両親の犯した罪から逃れられず本編内では「運命」や被害者の友人達、黒幕から苛烈な仕打ちを受け続ける。
- 漆間俊(十字架のろくにん)
- 物語終盤、宿敵・至極京との決着を着けるべく、『革命倶楽部』の本拠地にたどり着くが、自身に対する「復讐者」として、自分がこれまで葬ってきた至極の取り巻きである千光寺・右代・円・久我の親達が姿を現す。何らかの形で息子が殺された事実を知った千光寺の親達から「息子の仇」として苛烈な罵詈雑言を受けながらその場で立ち尽くし、漆間に同行していた川奈美々もこの異様な光景に言葉を失ってしまう。しかし全ての覚悟を決めた漆間はこの罵詈雑言をも意に介さず、自身の一言と威圧で千光寺の親達を一蹴し、川奈と共に至極のもとへ向かった。尚、この時登場した親は、円と久我の両親、右代の母親、千光寺の父親であり、右代は元々母子家庭の育ちで、千光寺は小学4年生の頃に母が父の他に好きな人ができてしまったために両親が離婚し、父に引き取られていた。
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ネットイナゴ、正義マン、対立厨、自称「普通の人間」…加害者家族叩きをする者達と似たような心理を持つ人達。
セカンドレイプ…逆に被害者をバッシングする行為。
毒親…加害者になってしまった当人がそうなった原因として取り上げられやすい存在。…もっとも、同情の余地が皆無の毒親(もしくは親族)も少なからず存在している。こちらを参照。
正義のためなら人間はどこまでも残酷になれるんだ…とある作品の主人公が言った台詞。犯罪加害者やその親族に対して私刑含めた制裁を行う人間への警鐘ともとれる。