概要
湊かなえのデビュー作。
2007年、第一章「聖職者」が小説推理新人賞を受賞。
小説推理にて、第二章、第三章を連載した後、後半を書き下ろし、2008年8月5日に単行本化。
2008年度の「週刊文春ミステリーベスト10」第1位。
同年度「このミステリーがすごい!」第4位。
2009年「本屋大賞」受賞。
2010年6月5日、中島哲也監督による映画が公開。主演は松たか子。
5月15日には、映画公開に先んじて木村まるみによるコミカライズが発売されている。内容は映画版に準ずる。
あらすじ
三学期最後の日。市立S中学校1年B組の担任教師・森口悠子は生徒たちに、間もなく自分が教師を辞めることを告げる。
原因は“あのこと”かと生徒から質問が飛ぶ。彼女はシングルマザーだったが、数カ月前、学校のプールで彼女の一人娘・愛美が死んだのだ。森口は、娘は事故死と判断されたが本当はこのクラスの生徒2人に殺されたのだと、犯人である少年「A」と「B」を(匿名ではあるがクラスメイトには分かるように)告発し、警察に言うつもりはないが、彼らには既に恐ろしい復讐を仕掛けたと宣告して去っていく。
登場人物
森口悠子(もりぐち ゆうこ)
主人公にして語り部。S中学校、1年B組の担任だったが、娘が殺されたことによって復讐を誓い、犯人が自信が担当するクラスの生徒2人であることを確信する。その2人に間接的で恐ろしい復讐を施した後、クラスで「娘を殺した犯人に復讐した旨」を告げて退職。
渡辺修哉(わたなべ しゅうや)
森口が担当する1年B組→ウェルテルが担当する2年B組の生徒。
成績優秀な優等生だが、その正体は森口に「少年A」として告発された犯人(殺人未遂)。実母からの理不尽な虐待を受けたことと、継母と実父により邪魔者扱いされたことによって歪んだ人格の持ち主になってしまった。そして、渡辺を誘う形で愛美へのイタズラを計画。プールに誘って電気ショックを与えることで気絶させた。
下村直樹(しもむら なおき)
森口が担当する1年B組→ウェルテルが担当する2年B組の生徒。
一見おとなしそうだが、その正体は森口に「少年B」として告発された犯人(実行犯)。母親の身勝手な教育に抑圧されて鬱憤がたまっており、周囲に不満を抱いていたところを渡辺に付け込まれて共犯者となる。渡辺によって気絶した愛美を発見するが、犯行発覚を恐れてプールへと投げ込み、結果的に愛美を死亡させた。
北原美月(きたはら みづき)
森口が担当する1年B組→ウェルテルが担当する2年B組のクラス委員長。作中での中立的な視点で物語を動かす貴重な存在。
渡辺に次いで成績優秀だが、それ故に周囲からは疎まれ友達はおらず、親からもぞんざいにされているなど居場所がない状況だった。かつては下村が好きだったが、渡辺に寝返る。しかし、そのことが彼女自身の運命を決定づけることとなった。
家族を毒殺したルナシー事件の犯人に憧れを抱いており、その犯人が用いた毒薬をコレクションしているなど、ある種の中二病。
寺田良輝(てらだ よしき)
通称「ウェルテル」。森口の後任として2年B組の担任になった新米の数学教師。過去に起こった事件を知らない。
森口の夫である桜宮正義にあこがれて教師になったが、生徒の感情を読み取れないため、教師としては明らかに未熟。そのため、クラス内でのいじめが深刻化してしまう。
その未熟さを森口の復讐に利用されてしまう。
映画版
映画化にあたって中島が時系列を少々入れ替えるなどの改変を行っている。
第14回プチョン国際ファンタスティック映画祭審査員特別賞。
第83回米アカデミー賞外国語映画賞部門・日本代表作品。
2010年キネマ旬報ベスト・テン日本映画ベスト・テン第2位。
2010年日本アカデミー賞最優秀作品賞。
キャスト
森口悠子:松たか子
寺田良輝:岡田将生
下村優子:木村佳乃
渡辺修哉:西井幸人
下村直樹:藤原薫
北原美月:橋本愛
森口愛美:芦田愛菜
余談
- 「日本工科大学理工学部」群馬・昭和庁舎内での爆破シーンは、歴史ある建物ゆえに火薬などを使った撮影は許可が下りず、ブルーシートを張ってCGを使った撮影となった。
- 公開初日の2010年6月5日限定でテレビCMの中で映画のラストシーン、松が泣きながら生徒の髪をわしづかみにし「あなたの更生はこれから始まるの」と鬼の形相で迫るシーンが放送されたが、ラストシーンをCMに使用するのは異例のことであり、中島はネタバレを恐れて「ここまでやらなきゃいけないのか」と不安をもらした。