中二病
ちゅうにびょう
中二病とは、思春期の少年少女にありがちな自意識過剰やコンプレックスより発する一部言動傾向を揶揄(からかい・嘲り)した俗語。
伊集院光がラジオ番組『伊集院光のUP'S 深夜の馬鹿力』の中で用いたのが最初と言われている。
元来そのような意味はないのであるが、差別的であるとしてこの言葉を不快に思う人々が一定数存在するため、現在はたまに表記を変えて「厨二病」とも称する傾向が強くなっている。
「病」という表現を含むが、実際に治療の必要とされる医学的な意味での「病気」または「精神疾患」とはあくまで無関係であり、このような表現により上記の表記変更原因ともなっている。
結局のところ、ただちょっと珍妙で中身がない言動を発作的に起こすだけで害はない。
ラジオ番組『伊集院光のUP'S 深夜の馬鹿力』が初出。1999年1月11日放送同番組内でパーソナリティ・伊集院光が「自分が未だ中二病に罹患している」と発言し、翌週から「かかったかな?と思ったら中二病」(1999年1月18日 - 3月22日)というコーナーを作ってリスナーから募った「症例」を体系化させていった。「(日本の教育制度における)中学2年生くらいの年代でありがちなこと」といった意味の下、投稿ネタの一枠として展開していたものである。
放送当時は番組リスナー間のみで用いられるだけの名称であったが、次第に浸透し始め、認知されて以降は自虐の意味合いというよりは、思春期の若者が行いがちな努力や能力無きアイデンティティーの獲得行為への蔑称の1つとして定着するに至っている。それに伴って、中ニ病を過剰に嫌悪することを揶揄(からかい、嘲り)した"高二病"を始め、"小二病"、"大二病"などの類似する派生語が自然発生し、同じくネットスラングとして用いられている。女の子が中二病前兆として罹る、"小六病"という単語もある。
また、天久聖一、タナカカツキ『バカドリル』にも関連記述が見られる。
千野帽子は小説「ドン・キホーテ」を、「主人公は色メガネを通して世界を認識している。人々は彼をいいくるめるためその妄想を否定せずに付合ってやるが、そうしてますます彼は自分の妄想にのめり込む」という悪循環から、『50歳からの中二病』という副題を付けたい」としている (『読まず嫌い。』角川書店)。
ラジオ番組が発症だけ在り、『伊集院光のUP'S 深夜の馬鹿力』放送以前にも中二病定義前の類似件が、90年代ラジオ界にて散見されている。
具体例
・『赤坂泰彦のミリオンナイツ』 1996年1月23日(火) 胡散臭いポップス放送日
カセットテープによる自作曲のリスナー投稿より(1人ドラえもんOPテーマ・三部合唱)
中二のリスナーがどのような経緯で1人で三部合唱を録音し編集したかは、DJ赤坂泰彦が曲のオンエアー中も説明している。内容も曲も重度の中二病と断定するに足る放送回である。
(ニコニコ動画より 1996.01.23 放送回 15:30位から)
投稿者は熱く語る「全てオレの声 オレの魂 オレの青春です……(以下略)」
赤坂曰く「これが全国へ流れている たった1人の中2のために これが全国へ流れている」
なお1990年代、当時の中学生が標準的に所持出来る物はラジカセであり、パソコンやインターネット情報網は高額で敷居が高かった。
親に隠れて1人コソコソと深夜放送を聴き、(新たな趣味に浸る=中2頃)の定石はリスナーとパーソナリティーの共通認識であったことが窺える。故に、中二病がサブカルチャーから広まりネットスラングとして定着するまでの下地は、既に出来上がっていたとも云える。
DJ赤坂泰彦の「中2の坊主」あるいは「中2の小僧」の中2呼びの原点は、少年期自身のラジオ人生に与えた2人の師に由来する。1人は毒蝮三太夫の落語調の毒舌、もう1人はAFN(旧・FEN)米軍放送の名DJウルフマン・ジャックのアメリカンジョーク。
特にアメリカ映画からジョージ・ルーカス監督青春映画『アメリカン・グラフィティ』におけるラジオDJ役ウルフマン・ジャックの台詞、ティーンエイジャー(13 - 19歳)のラジオ電話相談にジョークで応じるシーン。
少女「私、13歳(サーティーン)」 DJ「オレ、14歳(フォーティーン)」
(注・40歳近いオヤジが、わざと言い間違えたアメリカンジョークである)
これを、日本人風へ置換えた場合 中学生頃で思春期。中1は小学校から上がりたてで落ち着かない、中3は受験や勉強で忙しい。1番思春期盛りの奴らが中2頃となる。
そして、自身の深夜放送におけるラジオリスナーの中心層はティーンエイジャーであった。
転じて、当時の名パーソナリティ同士 FMラジオ界・DJ赤坂の中2呼びからAMラジオ界・伊集院氏の「中二病」へ発展し、体系化した経緯が言語変遷の一説として濃厚である。
DQN系
真面目さや臆病さの反動から、反社会的な行動や不良へ惹かれているタイプ。
喧嘩や犯罪行為についての虚言で自身を飾るが、実際に行動はしない偽悪趣味、または実際に行いそのまま「不良の道へまっしぐら」というパターンも多々ある。
原因として不良の友人、兄弟、親の影響が主だが、基本的に中学生では「不良がモテる」ので「モテ」のためにそうなることが多い。「本物の不良となって見せろ」とはいいにくいので(若いうちはI叩かれにくいが、それだけにこうしたタイプの中二病が矯正されないまま成人してしまった場合、露悪的な発言で虚勢を張り舌禍騒動を起こすため、そういう意味では厄介なタイプである。
サブカル系
流行へ埋没することへの反動から、マイナー路線へ惹かれているタイプ。
コアなオタクと同列にものを語りたがるが、そこまでのめり込んでいる訳でもないのでボロが出やすい。
ただし、その趣味の専門家でなければプロアマライン引きすら難しいし、本物になる途上や本格的にのめり込む入口のこともあるため、叩かれにくい。
他者を不快とさせる「趣味」であったりもするが、それは中二病とはまた別問題である。
邪気眼系
平凡さや地味さへの反動から、不思議な力へ惹かれているタイプ。
自分には隠された力があるという設定のキャラ作りをしている。「力を有するが故の孤独な自分」という演出を好むが、その他大勢の普通の人達ありきの特別さなので、基本的に他者の目がないところではアピールはしない。
そのため最も目に付きやすく、叩かれやすく拗らせやすい。別名、妄想系。
言語系
外国語を雰囲気重視でオリジナルに使用(誤用)するタイプ。
日本語の単語に無暗に外国語の読みを付けたり、その逆を行ったりするが、そこに正しい関連性はない。偽言語使い。
ルー語使いなどの片仮名語を乱用する意識高い系は、意味を把握して使っているので恐らく異なる。
その他、単に語彙力がなくて簡単な言葉を使いこなせないか、間違いピラミッド対策として、二字熟語や横文字と簡単な言葉が混ざった何か、俗語と敬語が混ざった何か、意味は間違っていないが意味は説明出来ない何かががゴチャゴチャと出て来てしまう亜種もいる。語尾を疑問形や「風」「的」「みたいな」「?(語尾を疑問形とする)」といった言葉でぼかす無責任型もいる。
独特の言葉使いが尊敬する親友の影響であるケースもある。
独自系
幼少時より養われた想像力を有するタイプ。
完全に他と異なる自分オリジナルの世界というものへこだわる。興味があるものへの知識は豊富であるが、自分が逆に興味がないことには無気力で、プライドが高く、自分の世界を否定されることを嫌う傾向にある。さらにオマージュパロディを自他問わずにパクリとして忌避する。幼少時に養ってくれた元ネタを完全に忘れ去ったリスペクトなき存在。
その他、本当はオマージュパロディに一切罪悪感を持っていないものの、世界からリスペクト元の存在を消されてしまった、俺ルールを用いるDQNに「それはパクリであるから駄目」といわれて苛められたといったトラウマ持ちのため、アイディンティティを求めて独自系を模索してしまうタイプ、本来はリスペクトであるもののプロトタイプを隠蔽し続けるタイプ、自然や自由という形で神と共存しようとするタイプもいる。
反王道系
王道に反発する俺カッケータイプ。
例えばロボットものに対して「スーパーロボットへ乗った若者が気合や超能力で勝つのは飽きた! 量産機を操るおっさんに社会的にやり込められて社会的に負ける作品が見たい!」といったり(硬派厨)、異世界転生に「若者が異世界で活躍出来る訳がない! チートなしで何も出来ず一生を終える作品が良い!」などと、王道に逆張りし出す。
本当に読みたいなら話は別なのであるが、往々にして「読みたいとアピールすることで、世間の流行に流されない特別な自分を演出したい」だけで、実際に該当する作品(あれやあれなど)があっても、評価する気も見る気もないのが特徴。また、陳腐な想像力しか持ち得ないため、大抵の場合は例に挙がっているような別パターンの典型に当てはまってしまう。
中二病同士の相性はどれも良くないのであるが、このタイプは特に邪気眼系との相性が最悪である。
- 洋楽を聞き始める(興味はない)。
- 上手くもないコーヒーを飲み始める(好きではない)。
- 売れたバンドを「売れる前から知っている」とムキとなる(嘘をつく or 本当であるとしても誇張する)。
- やれば出来ると思っている(やらない)。
- 母親へ対して激昂して「プライバシーを尊重してくれ」などと言い出す(大した理由はない or エロ本隠し)。 ※親が毒親であるケースは含まれない。
中二病は細分化されているので分類が難しいが優等生タイプよりもアウトドア寄りヤンキーグループとインドア寄りオタクグループへ分かれることが多く、そのグレーゾーンも多く存在する。スクールカーストは該当の項目参照。
エリートタイプも中二病となる可能性は十分あり、中二病へ罹患したクラスメートを嫌って「子供のままで何が悪い」、「闇属性よりも光属性が好きである」、「そんな暇があるなら勉強か運動をしろ」という持論を掲げ、ヤンキーやオタクは愚か自分以外の人間を見下し、信用しないエゴイストとなる。
さらに「自分のようなエリートは中二病にはなる訳がない」と他人を見下しつつ慢心するのもかなり多く見られる症例でペットを飼い出したり、絵柄がほのぼのした黒い作品にはまり出したり、(現実逃避癖・子供のままでいたい願望などから)アニメキャラコスプレにはり出したり、ダサい私服で通し出したり、入手困難な書籍を探そうとして古本屋巡りにはまり出したりといった高い能力を誇る故での数々の暇潰しを行う。
このタイプのほとんどはスポーツ選手や政治家・弁護士・医者と羨望を得やすい職種へ就き、人へ信用されるようになるには善人のように振る舞えば良いと認知し地頭が良い上に体力や病気への耐性も優れており、それを理由に「エリートでいよう」とする。
しかしそれが仇で地位や名誉へ執着し自分の実力や功績を鼻に掛けて嫌味ったらしくなり、異なるベクトルで闇落ちする。
挙句の果てには残念なイケメン(残念な美人若しくは残念な美少女)・キザ野郎・ナルシスト・多重人格・自画自賛・自己中・偽善者・ムッツリ・腹黒・人間のクズ・真面目系クズといわれるタイプとなり、元々は女よりモテていたが幻滅され、優れた実力の割に人間性はショボいと笑われ者とされる。
最悪の場合、知的犯罪や八百長へ走る可能性もある。中二病という運命は避けられない。総じてヤンキーやオタク以上の変人であり、明らかに彼らよりも質が悪いタイプで有能であってもこんなヤツを認めたくはないし敬意も払いたいとは思わないであろう。詳しくは⇒裏中二病
魔王もののフィクションへ出る「失われし記憶」という単語(作品によっては別の単語)は童心・初心・正気の暗喩であり、この気持ちを異世界転移・異世界転生・現実逃避・原点回帰という形で取戻すことがいじめ、恋愛・受験・引きこもり、お洒落等と共に、十代向けフィクションの重要なテーマの1つとなっている(「子供の気持ちを思い出す」の暗喩であり、「大人となることを否定する」の暗喩ではない)。
「(子供の頃は使えた)白魔術、喋る動物と話す能力、妖精を可視する能力を、大人となると忘れてしまう」という設定が付いている作品が多いが、邪気眼に目覚める前と後で、世界の見え方が変わってしまうことを意味している(そのため、「幼児化すると再度白魔術などの能力が使えるようになる」という設定も多い)。
背伸びするのも大人となるのを拒むのも典型的な中二病であり、「これが中二病じゃない」という症状はない。
世の中学生の大半は、上記の症例のどれかに罹患している。
発達心理学によれば、中学生の時期というのは「自分は誰であるか?」という疑問を生じる時期である。身体、精神面ともに成長が著しく、小学生のころまで抱いていた自分自身というものが大きく変容していくのを実感して不安に駆られる時期が思春期である。
このいいようがない不安を解消するため、思春期の少年少女は自分の定義付けに躍起となる。だが人生経験が浅い彼ら彼女らが哲学的思索を経て自己存在を確立することは難しく、その手段は自然と、趣味趣向やキャラ付けといった安易なものとなりやすい。
中二病、などという単語が生まれてしまったために侮蔑的な目を向けられるが、この時期に出会ったコンテンツにのめり込んだ結果、その道のスペシャリストとなることも少なくない。
ネットにおいては中二的要素を毛嫌いする風潮が蔓延しているが、いわゆる「若気の至り」、その中でも特段に安全なものを、恐らく大半は良い年しているのであろうネット住民があーだこーだといって攻撃する光景は余りにも大人気ない。
以上の「中二病は誰でも発症する」「中二病の主な症状は、普遍からの脱却である」という2点から、「普遍的な症状である中二病や中二要素を否定することこそ、中二病の普遍的な症状である」という一種のパラドックスが生じているといえる。
- 凸守早苗(同上)
- 七宮智音(同上)
- めぐみんをはじめとする紅魔族全員(この素晴らしい世界に祝福を!)
- 二宮飛鳥(アイドルマスターシンデレラガールズ)
- キド (カゲロウプロジェクト)
- ヒーロー部部員(厨病激発ボーイ)
元・中二病患者であったキャラ
- 丹生谷森夏(同上)
上記で説明されている性格(主に邪気眼系)のキャラ達。
中にはちゃんと特殊な能力を持っているキャラもいたりするが、それとは全く無関係に思わせぶりな言動だったり過剰な言動であったりする。
こういった方々の痛さを客観視することで、中二病が治療出来るといわれている。
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