ぼくたちには、ヒーローがいる
概要
平成仮面ライダーシリーズ第6作。
元来「仮面ライダー」ではなかったヒーロー物の企画を「仮面ライダー」シリーズに転用しているため、シリーズ初の「和」をモチーフにした仮面ライダーとなっている。
仮面ライダーシリーズ全作を通して見るとデザイン・ストーリーともに異色の作品となっており、プロデューサーは制作発表の場で「平成の『仮面ライダーアマゾン』」と表現するほど(この11年後、本当に平成の仮面ライダーアマゾンが登場することとなったのだが)。
また、物語の途中でプロデューサーが交代した為、前半と後半でスタッフがほぼ全員入れ替わっており、作風も大きく変わっていった(プロデューサー:髙寺成紀→白倉伸一郎、脚本家:きだつよし・大石真司→井上敏樹・米村正二)。当時のネットでは前半派と後半派で激しい論争が起きた。
スーツの造形面では、レインボー造形の提案で1リットル数万円はかかるマジョーラを採用。光の当たり方や見る角度によって色彩は千変万化し、生物感を出している。
また、本作から完全にハイビジョン制作に移行した(『仮面ライダークウガ』〜『仮面ライダー剣』までは撮影自体はハイビジョン撮影だったが、編集の関係でSD画質だった)。
総合的な評価
上記の理由から変身アイテムがベルトではない、主役ライダーが中盤までバイクに乗らないなど仮面ライダーというものから大きくかけ離れたライダー(元々これまで平成ライダーは昭和のような仮面ライダーとは離れたような要素はそれなりにあったが)として当時の特撮ファンを驚かせた作品であり、『仮面ライダーアギト』から『仮面ライダー剣』までの登場人物の苦悩を描いた展開や人間関係のもつれなどの要素からガラッと変わり、怪人と戦いつつも主人公に憧れる少年の成長をメインとしたゆったりとしたホームドラマのような作風である。ただ、これまでの平成ライダーの作品でハラハラした作風に慣れていた視聴者は当時のゆったりとした作風に難色を示す人もいたようで、「こんなの仮面ライダーじゃない」という意見があった。さらには前述の後半からのスタッフ交代騒動による作風の変化に「本作の個性が完璧に出し切れていない」と言う人も多かった。これについては独特な作風が子供受けせず玩具売上が落ち込んだことの影響があるとも言われる。
しかし、「師匠と弟子」をテーマとした「ほのぼのとした展開がまたカッコいい」「異色だからこそ本作の面白いところ」など肯定的な意見も多く、主人公・ヒビキの人間としての器の広さやザンキ/仮面ライダー斬鬼の後半の戦いなどで名シーンも揃っており、今も根強いファンが多い作品である。
仮面ライダー50周年に際しNHKが行った全仮面ライダー大投票では
作品部門で『V3』を躱し24位、仮面ライダー部門で21位、音楽部門ではED曲の「少年よ」が22位と全部門でランクインを果たした。
登場人物
→仮面ライダー響鬼の登場人物一覧を参照。
特徴
鬼
本作の仮面ライダーは「鬼」と称される音撃戦士でそのためサポート組織「猛士」に属しており、音撃で魔化魍を清めて倒すことを仕事としている。
変身
変身ベルトを使用せず、専用の音叉(変身音叉)・ホイッスル(変身鬼笛)・弦楽器(変身鬼弦)で変身する。
『555』以降一般的になった「変身」ボイスも無く、ベルトのバックル部には、必殺武器の鍵となるパーツが備えられている。
ただし上記の道具は並ならぬ特訓をした者でないと使えず、変身時の衝撃で衣服が吹き飛ぶ為、変身後は気力で保たないともれなく全裸となってしまう。
攻撃手段
口 | 炎を吐いたり管武器を吹く際に、仮面から現れる。 |
---|---|
爪 | 手の甲から突き出る。このギミックは『仮面ライダーオーズ/OOO』でも採用された。 |
音撃 | 魔化魍を倒す為の必殺技でバックルを使って繰り出す。一つの形式でも複数の技がある。 |
ディスクアニマル | サポートアイテム。通常は魔化魍の住処を探る為に使われる。響鬼達のマスコットで、玩具はこの年のベストデザイン賞を受賞している。このアイテムの発想は後に『オーズ/OOO』や『ウィザード』などに受け継がれた。 |
音撃
音撃は、打楽器を使用する「音撃打」、管楽器を使用する「音撃射」、弦楽器を使用する「音撃斬」の三つに分かれる。
音撃打 | 鬼の顔のバチを振るい戦う接近戦タイプ。バックル部は太鼓型で、陸上型の魔化魍や夏に出現する等身大魔化魍に強い。 |
---|---|
音撃射 | 管楽器型の銃で戦う遠距離タイプ。バックル部はベル型で、打ち込んだ弾と共鳴させて倒す。飛行型の魔化魍に強い。 |
音撃斬 | ギター型の大剣で戦う斬撃タイプ。バックル部はピックアップ型で、外皮が硬い水中型の魔化魍に強い。 |
※ピックアップ - 弦の振動を拾う箇所。
各話リスト
話数のカウントは「○(漢数字)之巻」で、サブタイトルは全篇通して「動詞+名詞」というフォーマットで統一されている。
話数 | サブタイトル | 魔化魍 |
---|---|---|
一之巻 | 響く鬼 | - |
二之巻 | 咆える蜘蛛 | 屋久島のツチグモ |
三之巻 | 落ちる声 | - |
四之巻 | 駆ける勢地郎 | 奥多摩のヤマビコ |
五之巻 | 熔ける海 | 房総のバケガニ |
六之巻 | 叩く魂 | 〃 |
七之巻 | 息吹く鬼 | 奥久慈のイッタンモメン |
八之巻 | 叫ぶ風 | 〃 |
九之巻 | 蠢く邪心 | 藤岡のオオアリ |
十之巻 | 並び立つ鬼 | 秩父のオトロシ |
十一之巻 | 呑み込む壁 | 下野のヌリカベ |
十二之巻 | 開く秘密 | 〃 |
十三之巻 | 乱れる運命 | 鎌西湖のウブメ、小菅のヤマビコ |
十四之巻 | 喰らう童子 | - |
十五之巻 | 鈍る雷 | 日光のバケガニ、足尾のヤマアラシ |
十六之巻 | 轟く鬼 | 足尾のヤマアラシ |
十七之巻 | 狙われる街 | - |
十八之巻 | 挫けぬ疾風 | 東雲のオオナマズ |
十九之巻 | かき鳴らす戦士 | 鎌倉のバケガニ、箱根のバケガニ、三浦半島のバケガニ、大洗のバケガニ |
二十之巻 | 清める音 | 大洗のアミキリ |
二十一之巻 | 引き合う魔物 | 浅間山のウブメ、浅間山のヤマアラシ |
二十二之巻 | 化ける繭 | 浅間山のウブメ、浅間山のヤマアラシ、浅間山のナナシ |
二十三之巻 | 鍛える夏 | 旭村のドロタボウ |
二十四之巻 | 燃える紅 | 旭村のドロタボウ、高萩のイッタンモメン |
二十五之巻 | 走る紺碧 | 秩父のカッパ |
二十六之巻 | 刻まれる日々 | 葛野のバケガニ、猿橋のバケネコ |
二十七之巻 | 伝える絆 | 猿橋のバケネコ |
二十八之巻 | 絶えぬ悪意 | 下久保のテング |
二十九之巻 | 輝く少年 | 榧ノ木のヨロイツチグモ |
三十之巻 | 鍛える予感 | 四谷のカシャ |
三十一之巻 | 超える父 | 〃 |
三十二之巻 | 弾ける歌 | 奥多摩のカマイタチ |
三十三之巻 | 装甲う刃 | 〃 |
三十四之巻 | 恋する鰹 | 港区のウワン |
三十五之巻 | 惑わす天使 | 〃 |
三十六之巻 | 飢える朱鬼 | 長瀞のノツゴ |
三十七之巻 | 甦る雷 | 〃 |
三十八之巻 | 敗れる音撃 | 東筑波のヨブコ |
三十九之巻 | 始まる君 | 〃 |
四十之巻 | 迫るオロチ | 森のコダマ |
四十一之巻 | 目醒める師弟 | 〃 |
四十二之巻 | 猛る妖魔 | 東秩父のウブメ、東秩父のカッパ、東秩父のオトロシ、鳩山のオオアリ、鳩山のバケネコ |
四十三之巻 | 変われぬ身 | 三浦のウワン、三浦のバケガニ、三浦のテング、謎の洋館のヌリカベ |
四十四之巻 | 秘める禁断 | 三浦のバケガニ、館林のイッタンモメン、館林のカッパ、館林のバケネコ、館林のウワン、館林のコダマ |
四十五之巻 | 散華する斬鬼 | さいたまのカッパ、さいたまのウワン、さいたまのバケネコ、さいたまのヨブコ、さいたまのカシャ、さいたまのテング、長瀞のカエングモ、長瀞のバケネコ |
四十六之巻 | 極める鬼道 | 佐野のヨブコ、佐野のテング、佐野のバケガニ、三浦のアミキリ |
四十七之巻 | 語る背中 | 本栖湖のオオアリ、日高のウブメ、日高のイッタンモメン、狭山のバケネコ |
最終之巻 | 明日なる夢 | 東松山のサトリ、東松山のロクロクビ |
音楽
劇伴
『アギト』以来4年ぶりに佐橋俊彦が担当。テーマがテーマであるため、各楽器の個性を生かした楽曲が多く作成されている。
- 前期OP「輝(かがやき)」
物語の主役に合わせて鼓、菅、弦の三種類が存在する。
歌が無くメロディーのみという異色のOP曲。
『仮面ライダージオウ』の響鬼編でも使用された。
歌
- 前期ED「少年よ」
作詞:藤林聖子/作曲・編曲:佐橋俊彦/歌:布施明
『仮面ライダークウガ』の「青空になる」以来のEDテーマ。
歌詞にはヒビキから明日夢へのメッセージ性が込められている。
布施明はこの曲でこの年の紅白歌合戦に出演。
バックでは響鬼、威吹鬼、轟鬼の三人が魔化魍とアクションを繰り広げ、曲のラストには細川茂樹が登場しお馴染みのポーズを披露するという豪華絢爛なステージを披露した。
- 後期OP「始まりの君へ」
第34話から使用された。
なお、後期はEDテーマが存在しない。
- 「極めれば音撃!!」
仮面ライダー響鬼のイメージソング。劇中未使用。
- 「風雅勇伝」
仮面ライダー威吹鬼のイメージソング。劇中未使用。
- 「雷武轟々」
仮面ライダー轟鬼のイメージソング。劇中未使用。
- 「響鬼見参!!」
仮面ライダー響鬼のイメージソング。
劇伴(流用曲)
Nash Music Libraryから多くの楽曲が使用されており、他の作品で使用されるような曲もよく流れる。
『変身忍者嵐』との関連
上述した通り、本作は仮面ライダーとは別のヒーロー物として企画されていた。その企画の最初期案として提唱された物は、仮面ライダーと同じく石ノ森章太郎が原作のヒーロー作品である『変身忍者嵐』のリメイクであった。
本作が和風モチーフなこともあり、「本作は、『変身忍者嵐』のリメイクの企画をそのまま流用し、名前だけライダーにしたもの」と語られることもあるが、それは正確ではない。
実は『嵐』のリメイク企画案は「ライバル作品である『超星神グランセイザー』の後番組が忍者モチーフの作品になる」という不確定情報が入ったために、差別化のために立ち消えになっている。
そしてその後に魔法使いをモチーフにしたヒーロー案が考えられ、使い魔のイメージでディスクアニマルが設定される。「武器は楽器」「師匠と弟子の物語」と言った骨子もこの魔法使いモノのイメージを前提に考えられたものである。
しかし同時期の『スーパー戦隊シリーズ』が『魔法戦隊マジレンジャー』になることが決定されたため、スーパーヒーロータイムでモチーフを被らせるわけにいかないとして魔法使いネタは封印され、再びゼロベースで企画を練り直した結果、再び和風モチーフが採用されたのである。
ただし「使い魔」「楽器」「師匠と弟子」などのアイデアを使えることを前提にした和風モチーフであるため、初期構想であった『変身忍者嵐』のリメイク案とは全く異なるものになっている。
ただ、作中には『変身忍者嵐』のオマージュを思わせる小ネタは一応は残っていて、『嵐』を思わせるデザインの鎧「鬼の鎧」があった。また、『劇場版 仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼』には、血狂魔党という敵の一団が登場する(名前の由来は『変身忍者嵐』の敵組織「血車党」)。
のちに発売された『小説 仮面ライダー響鬼』では共演している。
余談
記念作品である『仮面ライダーディケイド』では9つのライダー世界の最後の大トリとして、『仮面ライダージオウ』では時代の移り変わりの節目に抜擢される等かなり優遇されている。
また、『ディケイド』の響鬼の世界に登場したアスムは、テレビ本編の最終話にも登場し、大ショッカーに立ち向かった。
『スーパーヒーロー大戦』より登場するヒーローが抑えられた、『スーパーヒーロー大戦Z』にも登場。
『仮面ライダーウィザード』の魔宝石の世界においては、勢揃いしたライダーと怪人軍団の戦いにおいて、一人だけ強化フォームを披露。
更に本編では1話でしか変身していないディケイド響鬼も映画や『ジオウ』では活躍が多く、ディケイドがカメンライドする作品では皆勤賞である。
「撮影予算は非常に限られていたため、響鬼のバイクはスタッフの私物を借りて撮影に使った」という都市伝説が存在しているが、後にこの説は髙寺成紀プロデューサーによって否定されており、きちんとバイクカタログから選ばせてもらえたとされている。とはいえ既成バイクをほぼ無改造で使用したことには変わりはなく、権利関係が面倒なことになっているためか響鬼のバイクは未だにフィギュア化されていない。
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鬼 楽器 妖怪
音撃戦士 関東十一鬼 音撃 ディスクアニマル 魔化魍
7人の戦鬼 小説仮面ライダー響鬼
変身忍者嵐 駈斗戦士
牙狼、ウルトラマンマックス、超星艦隊セイザーX、魔法戦隊マジレンジャー:本作とほぼ同時期に放映された特撮作品。
仮面ライダーアマゾン:仮面ライダーシリーズ第4作にして6人目のライダー、すなわち「仮面ライダー6号」であり、旧世代の独特な雰囲気を持った仮面ライダーである。「シリーズの中でも異色の作品である」「主役ライダーが変身する際に変身という掛け声を言わない、変身ベルトを使わない」「次回作がカブトムシをモチーフとしたライダーを主役としている」といった共通点がある。また、上記にもあるように本作のプロデューサーが本作を表現する際に名前を出した作品である。
仮面ライダーアギト、仮面ライダー555、仮面ライダーキバ:本作の後半とメインライターが同じライダー作品。アギトと555はプロデューサーも同じ。
太鼓の達人:バンダイナムコゲームスを代表するアーケードゲームの一つ。本作とは旧ナムコ時代にコラボレーションしており、PS2用に発売された響鬼のゲームでは当時PS2版太鼓の達人用コントローラーとして発売されていた『タタコン』と連動して響鬼の音撃を体感出来るようになっていた他、初回特典として「輝」「少年よ」が収録されている太鼓の達人スペシャルバージョンのディスクが付属していた。後の『仮面ライダーエグゼイド』のスピンオフ『【裏技】仮面ライダーゲンム』でもエグゼイドと太鼓の達人で勝負をしていた。
ニチアサ同期 | |
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30分前 | 魔法戦隊マジレンジャー |
30分後 | ふたりはプリキュアMaxHeart |
平成ライダー
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