概要
打楽器とは、楽器の一部を叩いて音を出すタイプの楽器。「パーカッション(Percussion)」とも。
大きく分けて、
- 胴に張った革を叩いて振動させることで音を出す膜鳴楽器(まくめいがっき、いわゆる太鼓のたぐい)
- 本体そのものを何かで叩いたり、何かに打ちつけたりして音を出す体鳴楽器(たいめいがっき、大部分の打楽器がこちら)
の2種類に分けることができる。
歴史
打楽器は、装飾や音質を追求しなければ非常に単純な作りであり、硬いものや中空のものを叩いて音を出しさえすれば打楽器になるとも言えるため、昔から世界中で多様な打楽器が発達してきた。
ヨーロッパでは、中世に鍵盤楽器が発達したことや、近世以降に弦楽器や管楽器が発達したのとそれを中心にした音楽文化が進展したことで、打楽器は衰退し、近年までリズムやアクセントを付けるという脇役に甘んじてきた。
いっぽう、アフリカやアジア、そしてアフリカの影響を受けたラテンアメリカでは、打楽器は弦楽器や管楽器と同等かそれ以上の地位を得ている。とりわけアジアでは、打楽器を用いたメロディ楽器や打楽器をふんだんに使用したオーケストラが発展した。
主な打楽器
専門的な分類法も構築されているが、ここではイラストを描く参考になりやすいように、楽器の形状や持ち方に基づいて分類した。
太鼓・ドラム系
膜鳴楽器。筒型ないし壺型の共鳴胴に革を張ったもの。革の部分を棒(スティック・マレットなど)や手などで叩き音を出す。まれに共鳴胴のほうを叩くテクニックもある。
一般には決まった高さの音しか出さず、音程を作り出すことが困難であるが、ティンパニのように複数台並べて音階を演奏できるものもある。
・主な楽器:太鼓 和太鼓 鼓 ドラム スネアドラム タンバリン ティンパニ コンガ ボンゴ スティールパン/スティールドラム でんでん太鼓
銅鑼系
鳴らし方には、「ばちで叩く・こする」「楽器そのものを打ち合わせる」の2通りがある。
シンバルのハイハット(ペダル付きの台座に一組のシンバルを取り付け、ペダルで音の響きを調節する)や、革の張っていないタイプのタンバリン(枠に小さなシンバルを複数取り付け、枠ごと振ったり叩いたりして鳴らす)のような独特の奏法をするものもある。
カスタネット系
椀(わん)型・皿型または板型・棒型のほぼ同じ形(多少違うこともある)の部品から成り立っており、これがペアになっているか、またはそれ以上の個数が組み合わされてできている。それらの部品を打ち合わせたり楽器全体を振ったりすることで音を出す。
広義にみれば上記の銅鑼系の親戚筋ともいえるが、銅鑼系は単独の楽器をばちなどで叩いて音を鳴らすものであるのに対し(二枚一組にして使うことの多いシンバルにも、1枚だけをマレットなどで叩くという奏法がある)、カスタネット系は必ず、ほぼ同じ形の部品が最低2個は組み合わされていて、ばちで叩いて演奏することはまずないという点に違いがある。
・主な楽器:カスタネット 拍子木 鞭(スラップスティック) びんざさら
トライアングル系
形状は棒を何らかの形に曲げた型や平板型が多い。表面はなめらかであり、叩くところに装飾などは施されていないのが一般的である。
ばちや棒などで本体を叩いて音を出す。
ばちが楽器本体と別々になっていることと、楽器本体と明確に形が異なっている点で、カスタネット系と区別できる。また、本体の形状が皿型でなかったり中空ではなかったりする点で、銅鑼系やウッドブロック系と区別できる。
・主な楽器:トライアングル 磬(「けい」ないし「きん」)
鳴子系
形状は多様であるが、楽器本体にばちとなる棒などが組み込まれている点で共通する。
ばちは本体から外れないように一点で本体に留めつけてあるものの、その他の箇所は自由に動くようになっている。楽器を振ったり本体をじかに叩いたりすることで、ばちと本体がぶつかり合い、音が出る。
ばちが楽器本体と明確に形が異なっている点で、カスタネット系と区別できる。また、ばちが本体に組み込まれてあるか否かという点で、トライアングル系と区別できる。
・主な楽器:鳴子 ヴィブラスラップ キハーダ フレクサトーン
ギロ系
全体が木または金属などでできた棒型・板型・筒型などの楽器。体鳴楽器。
楽器の表面に多くの刻み目が入れてあったり、ビーズが巻き付けてあったりして、多数の凹凸を設けており、この部分を棒などでこすって音を出す。
ギロはひょうたんから作るので中空であるが、内部に何かを入れて演奏することはない。この点がベル系との相違点である。また、表面に凹凸が有るか無いかという点で、トライアングル系と区別ができる。
ウッドブロック・釣鐘系
全体、もしくは共鳴胴の部分が木または金属などでできた筒型・壺型などの楽器。体鳴楽器。
共鳴胴(本体そのものであることもある)が中空になっているのが特徴である。
鳴らし方は「楽器の本体を外側からばちなどで叩く」「楽器を揺らして、構成部品を打ち付け合って鳴らす」の2通りがある。ウインドチャイムのようにこの両方を生かした奏法をするものもある。
釣鐘 アゴゴベル ウィンドチャイム
ベル系
金属・陶磁器・木などの硬質の材料でできた壺型の楽器。体鳴楽器。
ウッドブロック系とは違い、楽器の中に「舌」と呼ばれる棒が取り付けてあったり、玉と呼ばれるパーツが封入されていたりするため、ばちやマレットなどで叩く必要がない。
鳴らし方は、舌や玉を楽器本体にぶつけて鳴らす。楽器本体を手に持つなどして振り動かすこともあるほか、舌のほうにひもなどをつけてこちらを振り動かして鳴らすこともある(教会の鐘など)。
・主な楽器:鈴 カウベル ハンドベル カリヨン マラカス シェイカー
シロフォン系
鍵盤打楽器。さまざまな長さの棒・板・ないし管を並べ、叩いて鳴らすもの。トライアングル系やウッドブロック系などの大きさの違うものをたくさん並べたとみなすこともできる。
棒や板などの長さによって異なる音が出せるため、楽器ひとつでメロディを演奏できるのが特徴。
鍵盤を叩くと楽器内部のハンマーが連動して金属版を叩く仕組みのものもある。
・主な楽器:木琴 鉄琴 シロフォン マリンバ チェレスタ チューブラーベル グロッケンシュピール(ベルリラ) ヴィブラフォン
打弦楽器
さまざまな長さの弦をひとつの枠に張ったもの。弦をつまびくのではなく、ばちで叩いて音を出すのが特徴。
発達した形式として、鍵盤を叩くと楽器内部のハンマーが連動して弦を叩く仕組みのものもある(ピアノが典型例)。
・主な楽器:サントゥール ダルシマー クラビコード ピアノ
その他
グラスハープ
補足事項
以下の楽器は、広義には打楽器に含まれることもあるが、叩くのではなくピンや爪で金属板や弦を弾(はじ)いて音を出すため、厳密には打楽器ではない。
オルゴール チェンバロ ハープシコード カリンバ ラチェット
関連イラスト
関連動画
ノームの森の物語/高橋宏樹
大空に翔る蒼き翼を持つ者/山澤洋之
リバーダンス(RIVERDANCE)/ビル・ウィーラン
エル・クンバンチェロ(El Cumbanchero)/ラファエル・エルナンデス 編曲:岩井直博
コパカバーナ(Copacabana)/バリー・マニロウ 編曲:岩井直博
打楽器奏者
国内
- 伊波淑(オルケスタ・デ・ラ・ルス)
- カルロス菅野(熱帯JAZZ楽団)
- 佐藤由(オルケスタ・デ・ラ・ルス)
- 鈴木喜鏤(オルケスタ・デ・ラ・ルス)
- 仙波清彦
- 仙道さおり
- 戸高一生
海外
- アイアート・モレイラ(Airto Moreira) - ブラジル
- ポール・ロヴァット=クーパー(Paul Lovatt-Cooper) - イギリス
- ミノ・シネル(Mino Cinelu) - フランス
架空の打楽器奏者
- 飯島亮輔(SOULCATCHER(S))
- 井上順菜(響け!ユーフォニアム)
- 今金(SOULCATCHER(S))
- 打樋透(SOULCATCHER(S))
- 大野美代子(響け!ユーフォニアム)
- 奥田克久(楽隊のうさぎ)
- 奥山真澄(のだめカンタービレ)
- 恩田秋桜美(うらバン!)
- 釜屋つばめ(響け!ユーフォニアム)
- 加山沙希(響け!ユーフォニアム)
- 神田南(立華高校マーチングバンドへようこそ)
- 給前志音(屋上のウインドノーツ)
- 五位堂結(神のみぞ知るセカイ)
- 堺万紗子(響け!ユーフォニアム)
- サタン田中 / 田中裕貴(ヒビキノBB)
- 滝田(SOULCATCHER(S))
- 田邊名来(響け!ユーフォニアム)
- デーモン小林 / 小林翔真(ヒビキノBB)
- 長澤真弓(碧空のカノン)
- 橋本真博(響け!ユーフォニアム)
- 林那津(グラツィオーソ)
- 東浦心子(響け!ユーフォニアム)
- 久樹友里香(アレグロ・ラガッツァ)
- 檜山界雄(ハルチカ)
- 藤咲煌介(屋上のウインドノーツ)
- 松田梓(放課後ウインド・オーケストラ)
- ミカエル佐藤 / 佐藤要(ヒビキノBB)
- 室郁子(薫風のカノン)
- 矢澤智樹(放課後ウインド・オーケストラ)
- 梁田貞子(たんさんすいぶ)
関連タグ
楽器 弦楽器 管楽器 金管楽器 木管楽器 鍵盤楽器 パーカッション
クラシック音楽 オーケストラ 吹奏楽 ブラスバンド マーチング 行進曲 JAZZ FUSION