神田南
かんだみなみ
立華高校の3年生で、吹奏楽部に所属。パーカッション(打楽器)を担当している。
クールビューティーという形容が似合う大人びた雰囲気を醸し出しており、普段はあまり笑顔を見せることはない。また、部内ではドラムメジャー(マーチングバンドの指揮者)という重要なポジションを担っており、冷徹かつ鋭い叱責(しっせき)とスパルタな指導内容によって、下級生をはじめとする部員たちからは”鬼のドラムメジャー”という二つ名のもとに恐れられている。
部長の森岡翔子、副部長の小山桃花とともに”幹部”と呼ばれる特別な役職についている南は、部の目標であり伝統でもあるマーチングコンテストの”全国金賞”を獲得するために、また、トロンボーンパートの瀬崎未来をはじめとする部の仲間たちからの期待と信頼に応えるために、自身にも他者にもにさらなる高みを求めながら日々の練習と向き合っている。
容姿
すらりと流した長い黒髪と、涼やかに細められた切れ長の瞳が印象的な、冷淡な雰囲気のなかに大人びた美しさを漂わせた女子生徒(立華編前編、24ページ、72~73ページ、75ページ、立華編後編、23ページ、41ページ、163ページ)。斜めに分けられた長い前髪の下の鋭い双眸(そうぼう)や無表情な面差し、聞く者の身をすくませる低い声音など、彼女のまとう一つひとつの要素はこれまでに培(つちか)ってきた豊富な実戦経験と相まって「近寄りがたい先輩」というような絶対的な威圧感を形作っている。(立華編前編、24~26ページ、立華編後編、152ページ)
ドラムメジャーとして部員たちを指導する立場にある彼女は、スレンダーな輪郭や弧を描くくびれ、襟ぐりからのぞくくっきりとした鎖骨など、入念に磨き上げられた体躯を誇っており、パフォーマンスの指導においては汗ひとつかかずに切れのある振り付けを何度も実演するといった強靭なバイタリティ(活力)も見せている。(立華編前編、25ページ、74~75ページ、立華編後編、150ページ)
性格
人当たりのいい部長の翔子とは対照的にあまり笑顔を見せることはなく、冷徹かつ淡々とした立ち居振る舞いのもとに過ごしている(立華編前編、72ページ、86~87ページ)。その性格はドラムメジャーとしての指導にも色濃く現れ出ており、一切のブレも迷いもなく飛ばされる鋭い叱責や技術のみを見据えた冷徹な指摘など、情け容赦のない徹底した構えをとっている。(立華編前編、86~87ページ、立華編後編、61ページ)
なお、それらの冷徹さの裏には”伝統ある強豪校”の一員であるというプライドと、ドラムメジャーとして部員たちを高みに導くという使命感が下地として存在しており、強い責任感のもとに職務を果たそうとする確固とした意志も見て取ることができる。(立華編後編、151ページ、281ページ、331ページ)
その他
- 座奏における担当楽器はパーカッション(打楽器)。マーチングコンテストの本番前においても、ドラムメジャーとしての伝達事項を告げたあとにパーカッションパートのメンバーたちのもとに向かっている。(立華編後編、23ページ、164ページ)
- 好きな色は紺色や藍色といった暗色系。新入部員たちとの顔合わせの際にも、翔子や桃花がメッセージ入りのTシャツを着ているなか、ひとりだけシンプルな黒一色のデザインのものを着用している。(立華編前編、25ページ)
- 立華高校吹奏楽部の全部員のなかでいちばん勉強ができると噂されており、3年生の部員たちは課題に詰まるたびに彼女のもとを訪れている。また、部長の翔子も「夏休みの宿題が終わらない部員はスパルタな南のもとで地獄の勉強合宿をさせる」というようなジョークを飛ばしている。(立華編後編、78~79ページ)
- 南本人には秘密にされているが、彼女に強い憧れを抱く後輩たちによって「南先輩ファンクラブ」が設立されており、西条花音や佐々木梓といった1年生部員たちの噂の種となっている。(立華編後編、260~261ページ)
南中学校の出身である南は、1年生の秋ごろに当時の先輩からドラムメジャーの指名を受け、2年生へ進級するとともにサブドラムメジャーとして補佐役を務めている(立華編前編、66~67ページ、立華編後編、23ページ、211ページ)。マーチングコンテストの全国大会やアメリカ合衆国の各地で行われたパレードなど、国内外のさまざまな舞台を経験した南は、それらと同時に先代のドラムメジャーから「考えんのやめて、とりあえず馬鹿になってみれば? いまは目の前にあることだけに夢中になってりゃいいと思う」というようなアドバイスも授かっている。(立華編後編、149ページ、151~152ページ)
3年生に進級し、正式なドラムメジャーとなって以降は、吹奏楽部を運営する”幹部”のひとりとして部長や副部長たちとともに練習メニューをはじめとする活動方針の立案に関わっている(立華編前編、62ページ)。また、マーチングにおける部員たちへの指導も全面的に任されるようになり、新入部員に対する『シング・シング・シング』のパフォーマンスの指導やマーチングコンテストへの出場に向けたフォーメーションの監督、そしてマーチングの本番前における気合い入れや本番演奏の指揮など、まさしく部の要(かなめ)というべきポジションに就いている。(立華編後編、27ページ、144ページ、162ページ)
一部員という身でありながらも、ほかの部員たちの面倒を見続けなければならない南は、ドラムメジャーという役職に対して「私だって、べつにガミガミ怒るのが好きなわけじゃないし」といった心的負担を覚えているものの、「でも、こういう役回りって絶対必要やから」と理解を示し、部の仲間たちに表立って弱みを見せるようなことはしていない。あわせて、歴代の先輩たちが連綿とつないできた強い上昇志向と勝利への闘志もしっかりと受け継いでおり、立華高校吹奏楽部がこれまで築いてきた伝統と栄光を後代に渡すための手立てとして、ドラムメジャーの職務と真摯(しんし)に向き合いながら活動に励むようにしている。(立華編後編、150~151ページ、331ページ)
佐々木梓
トロンボーンパートに所属しているふたつ下の後輩。1年生。
南は梓のことを「梓」と呼んでおり、対する梓は「南先輩」と呼んでいる。
入部以来、強い上昇志向のもとに精力的に活動している梓に対して、南は「吹奏楽馬鹿」と一目置きながら感心を寄せている。あわせて、ドラムメジャーに関するしんどさといった自らの弱みや先代のドラムメジャーからのアドバイスを基にした受け売りの助言、そして「お礼は本番の演技でええよ」といった悪戯っぽい笑みなど、特別に気を許すような振る舞いを見せている。(立華編後編、149~153ページ)
瀬崎未来
トロンボーンパートのリーダーを務めている同級生。3年生。
南は未来のことを「未来」と呼んでおり、対する未来は「南」と呼んでいる。
3年間の厳しい活動をともに乗り越えてきた同期生として、南と未来は互いにシンパシー(共感)を覚えるような強い信頼感を築き上げている。(立華編後編、251ページ)
普段は歯を見せてニカッと笑う未来の振る舞いに南が根負けしたようにこめかみを押さえたりするような関わりであるものの(立華編後編、313ページ)、時には周りの一切の存在を拒絶するほどの空気感をもって未来のすべてを受け止めるなど(立華編後編、270~271ページ)、他者が踏み入ることをこばむような絆の強さも漂わせている。
(梓:ドラムメジャーってしんどいですか?)
———しんどいよ。私だって、べつにガミガミ怒るのが好きなわけやないし。
でも、こういう役回りって絶対必要やから。
一年のころは先輩がなんであんなに怒るのかわからんかったけど、いまはようわかるねんな。
練習してるとさ、足りないって気持ちになんの。もっとやらんと、もっと上手くならないと、じゃないと負けるって。
立華は強豪校やし、どうしたって結果を求められる。
私たちは上に進みたい。やから、もっとって言うの。
いまのままじゃ満足できひん。もっと完璧に、もっと上手く。
そうやって初めて、次の本番の切符をつかめる。
(立華編後編、150~151ページ)
———気を抜くとすぐ角度に出てる。中途半端な演技はやめて。
これまでなんのために練習してきたの? 本番に完璧な演技をするためやろ?
いくらきつくても、それをお客さんに見せるのはダサいやんか。
めっちゃしんどそうなことも笑顔でさらっとカッコよくこなす、それが立華高校吹奏楽部やと私は思う。
今日手を抜いたことを、本番で後悔するかもしれん。
あのときちゃんとやってればって思わんように、いま全力を尽くしてください。
(立華編後編、230ページ)
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