プロフィール
名前 | 佐々木梓 |
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誕生日 | 3月7日 |
身長 | 157cm |
星座 | 魚座 |
血液型 | A型 |
担当楽器 | トロンボーン |
趣味 | トロンボーン、ボーリング(小さいころ母親とよく行った) |
特技 | トロンボーン、プリクラの落書きのセンスがいい |
好きなもの | ポテチ、焼き芋、じゃがバター、練習 |
嫌いなもの | 予定のない休日 |
CV | 田所あずさ |
概要
立華高校の1年生で、吹奏楽部に所属。トロンボーンを担当している。
高い位置でひとつに結った黒髪のポニーテールの持ち主で、明るく快活な性格のもとに精力的に日々の生活を送っている。
彼女は中学生のころに立華高校吹奏楽部の一糸乱れぬパフォーマンスを目の当たりにして感銘を受け、それをきっかけとして同校に進むことを決めている。そののち、吹奏楽推薦によって念願の立華高校に進学を果たした彼女は、吹奏楽部初心者の名瀬あみかやトロンボーン経験者の戸川志保、的場太一とともに強豪校ならではの厳しい練習と向き合うことになる。
梓は『響け!ユーフォニアム』シリーズの主人公である黄前久美子の中学時代の同級生にあたり、かつては彼女や塚本秀一、高坂麗奈とともに同じ吹奏楽部で活動に励んでいた。
北宇治高校に進学した久美子とは、5月に行われたサンライズフェスティバルの会場で再会を果たしている。その折に、久美子から「新しいスタートを切るために北宇治高校を選んだ」という想いを告げられた梓は、自身もまた中学時代に残してきたとある同級生との破局のトラウマに思いをいたしながら、前を向いて進む決意を新たにしている。
人物
容姿
長い黒髪をヘアゴムでひとつに束ね、ポニーテールに仕立て上げた快活そうな雰囲気の女子生徒(原作1巻、7ページ、立華編前編、19ページ、原作公式ガイドブック、40ページ)。また、その前髪は演奏時の邪魔にならないように、昔から短く切りそろえられている。(立華編後編、176ページ)
幼少のころから駆けっこが得意だった彼女は、現在においてもマーチングの演技をよりよいものにするために日頃から積極的な自主トレーニングを行っている(立華編前編、161ページ、立華編前編、300ページ、立華編後編、112ページ)。そしてその成果として、贅肉(ぜいにく)とは無縁のしなやかに引き締まった肢体を手にするに至っている。(立華編後編、285ページ、75ページ)
普段の学生生活や吹奏楽コンクールなどの公式な演奏の場では、明るい空色のブレザーに黒のリボンタイ(※TVアニメ版ではネクタイ)を添えた白シャツ、落ち着いたデザインのプリーツスカートという制服一式を着用している(立華編前編、10ページ、316ページ、原作公式ガイドブック、74ページ)。一方で、パレードやドリル演奏をはじめとするマーチングの演技の際には、身体のラインに沿った鮮やかな水色のワンピース型衣装に黒のハイソックスを添え、白いリボンで髪を束ねるというスタイルをとっている。(立華編前編、164ページ、第二楽章前編、216ページ)
なお、梓の胸はほかの女子生徒のものよりも少し大きく、このことに昔からコンプレックスを抱いている。また、同時に彼女は自身よりもスレンダーな体形の持ち主である黄前久美子に対して「久美子はいいよなぁ」と羨(うらや)んでもいる。(立華編前編、195ページ、立華編後編、49ページ)
性格
明るく社交的な性格の持ち主で、その元来の面倒見のよさと物怖じしないポジティブ精神によって、幼少のころから多くの友人づきあいを持っている。(立華編前編、171ページ、原作公式ガイドブック、119ページ)
しかし、彼女の場合はただ純真無垢に皆と仲良くなりたいというわけではなく、クラスや部活動といった限定されたコミュニティにおいての自身の立ち位置をよりよいものにするため、あるいは不利な立場に立たされないようにするための手段として、他者と良好な関係を築こうとする節が見られる。「学校生活では友人の数がステータスだ」という持論や、「過剰な称賛は確実に敵を生み出してしまう」、「強すぎる自負心は、ときに対人関係を悪化させる」などといった警戒心に代表されるように、周りにいい人だと思われたい、人間関係に支障をきたしたくない、自分が不利な立場になりたくないなどという思いから他人を助けたり、みずから進んでへりくだるような場面が何度か登場している。(立華編前編、113ページ、136ページ、171ページ、原作公式ガイドブック、221ページ)
また、彼女はその性格上他者から頼られることを好んでいるものの、反対に他者に甘えることについてはめっぽう苦手であり、過去のトラウマや先行きへの不安を誰にも明かさずひとりで抱え込んでしまうような危うさも持ち合わせている。(立華編前編、141ページ、187ページ、224ページ)
生活環境
梓の実家は、京阪黄檗(おうばく)駅から少し歩いた住宅街の一角に建てられている。(立華編前編、53~54ページ)
父親は梓がまだ幼稚園に通っていたころに離婚し、現在はキャリアウーマンの母親とふたり暮らしをしている(立華編前編、56ページ)。梓の母親は朝早くから夜遅くまで毎日のように働き詰めており、梓はそんな母親の負担にならないために幼少のころからしっかりとした性格を確立するように努めている。(立華編後編、183ページ)
また、梓の高校進学と時を同じくして、祖父母の家から「ウナギ」と名付けられた雌のマルチーズを預かって面倒を見ている(立華編前編、55ページ、立華編後編、303~304ページ)。祖母の好物から名づけられたウナギは結構な老犬であるものの、キャンキャンと鳴きながら飛び跳ねたり嬉々として尻尾を振り回すなど、まだまだ元気に過ごす様子を見せている。(立華編後編、111ページ、132ページ)
その他
- 視力についてはあまりよくなく、普段の学生生活ではコンタクトレンズを、家では眼鏡をかけている。(立華編前編、132ページ、立華編後編、48ページ)
- 好きな食べ物はじゃがいもの入った料理。作中では、じゃがバターやじゃがいもとほうれん草のキッシュなどをお気に入りのメニューとして挙げている。(立華編後編、128~129ページ、236ページ)
演奏技術
小学校4年生のときからトロンボーンを演奏している、小中高合わせて7年の演奏経験を持つ楽器経験者。
現在吹いている楽器(テナーバストロンボーン)は中学進学と同時に母親から購入してもらったマイ楽器(私物)であり、まめに手入れをしているために現在でも新品同然の輝きを放っている。(立華編前編、17ページ、40ページ、320ページ、原作公式ガイドブック、140ページ)
埼玉県や兵庫県をはじめ、日本各地から吹奏楽部経験者が集まっている立華高校の吹奏楽入試(推薦入試)に合格して同校に進学していることや、立華のトロンボーンパートのメンバーたちから「パートリーダーの瀬崎未来の次に上手い」と一目置かれていること、そして並みいる2年生をごぼう抜きにして吹奏楽コンクールのA編成部門のメンバーに選ばれ、パートリーダーの未来と並んで1st(ファースト)のポジションを任されたことなどからも、彼女の秘める実力がいかに高いかをうかがい知ることができる。(立華編前編、18~19ページ、113ページ、239ページ、246ページ、298ページ、立華編後編、274ページ)
その実力を強力に支えているのが、「できない自分が許せない」「やれと言われたことは完璧にやりたい」とする完璧主義的な上昇志向である。(立華編前編、99ページ)
「ひとつやろうって決めたもんがあると、ほかのもんは全部目に入らんくなる」「ほかの何よりも、努力することが好きだった」というまっすぐで純粋な努力家としての熱量の強さは、同じパートの先輩や同級生をして「えげつない」「努力の天才」(努力の鬼)とさえいわれるほどのものである。(立華編前編、149ページ、218ページ、立華編後編、109~110ページ、252ページ)
さらなる高みを求めるたゆみない向上心とそれをバックアップする練習環境に恵まれた結果として、梓は立華高校に進学してたった1年のあいだでトロンボーンパートの1stの座を確たるものとするに至っている(原作公式ガイドブック、132~133ページ)。その座を裏付ける彼女の「異常なぐらい」の演奏技術は、北宇治高校に通う秀一や久美子をして「麗奈と並び立つほど」という高校生の域を飛び越えたレベルにまで昇華しており、聴く者の耳をすくませるほどの圧倒的な存在感と繊細な表現力を高い次元で内包したものとなっている。(原作公式ガイドブック、126ページ、141~144ページ)
経歴
幼少期~中学生時代
幼稚園生以来、片親のもとで育てられてきた梓は、小学3年生のときまで学校に併設されていた児童預り所を利用して余白時間を過ごしていた(立華編後編、9ページ)。小学4年生に進級し、人数制限を理由に児童預り所を利用できなくなった梓は、そこに代わる新たな居場所として金管バンドに所属することを決め、以降6年生になるまでトロンボーンの担当として演奏活動を行うことになる。(立華編前編、58ページ、立華編後編、11~13ページ)
北中学校に進学した梓は、同校の吹奏楽部で引き続きトロンボーンを演奏しつつ、久美子や麗奈、秀一たちとともに活動にあたっている。なお、この当時の吹奏楽部の在籍間に、中学1年生当時の久美子と先輩との確執をはじめとする部員同士のイザコザを目の当たりにした梓は、吹奏楽部が決して綺麗なまとまりで出来上がっているわけではないことを知り、そのなかで上手に渡り歩いていくための処世術を模索するようになる。(立華編前編、292~293ページ)
高校1年生時
中学生時代に立華高校吹奏楽部による『シング・シング・シング』のパフォーマンスを観て衝撃を受けた梓は、それをきっかけとして同校への進学を決意するようになる(立華編前編、14~15ページ、48ページ)。吹奏楽推薦に合格し、ほかの新入生たちよりもひと足早く高校での練習に参加した梓は、そこで吹奏楽部顧問の熊田祥江から立華高校吹奏楽部が”全国常勝”の団体たるゆえんを語られ、これから飛び込むであろう新たな世界に対して胸を高鳴らせている。(立華編前編、91~95ページ)
新学期が始まり、正式に立華高校吹奏楽部の1年生部員として迎えられた梓は、3年生の瀬崎未来が率いるトロンボーンパートの新たな一員となる。そこで梓は、立華の吹奏楽部では珍しい初心者の名瀬あみかや、梓と同じく中学時代からトロンボーンを吹き続けていた戸川志保、的場太一たちとともに、マーチングコンテスト全国常勝校ならではの苛烈な練習に身を投じることになる。
強い上昇志向に裏打ちされた高い演奏技術を誇る梓は、吹奏楽コンクールのA編成部門のメンバーを決めるためのオーディションにも合格し、パートリーダーの未来をはじめとする上級生たちとともに吹奏楽コンクール京都大会(府大会)の舞台に立つことになる(立華編前編、239ページ)。立華高校吹奏楽部は京都大会の本番において見事金賞を獲得し、より上の大会である関西大会(支部大会)への代表校に選ばれるものの、同時期から始まったマーチングコンテストに向けての練習も重なり、A編成部門の座奏の練習は必然的に限られたものになってしまう。そのような環境に置かれた梓は、吹奏楽コンクールで全国大会に行きたいという意志は崩さずにいるものの、座奏とマーチングの両立の限界という現実、また、吹奏楽コンクールの”全国常勝校”として君臨する大阪府の強豪校の存在を意識して、理想と現実とのあいだに生じたジレンマを抱え込むことになる。(原作2巻、100~102ページ、立華編後編、106~107ページ、111ページ)
立華高校吹奏楽部は吹奏楽コンクール関西大会において銀賞という結果に終わるものの(原作2巻、286ページ、立華編後編、131ページ)、”本命”に据(す)えているマーチングコンテストでは一転、普段から鍛え上げている実力を遺憾なく発揮し、京都大会、関西大会の各予選をトップの成績で通過する快進撃を見せている。梓はそんな立華高校吹奏楽部の一員としての誇りを胸に、さらなる高みを目指して日々の練習に磨きをかけることになる。
代替わり~高校2年生時
シーズンの節目となるマーチングコンテスト全国大会の終了後、パートリーダーの未来たち3年生が部から引退すると、梓は1年生部員の学年代表を任せられ、北宇治高校との合同演奏会のような各種イベントの打ち合わせに同行するようになる(原作公式ガイドブック、75ページ)。新年度を迎えて2年生に進級した梓は、早々に先輩部員としての頭角を現し、後輩部員たちから一目置かれる様子を見せている(第二楽章前編、217ページ)。また、同年度から特別顧問を招き入れた龍聖学園高等部の吹奏楽部に対していち早く興味を示し、その動静に関心を寄せてもいる。(第二楽章前編、217~218ページ)
主要キャラクターとの関係
名瀬あみか
トロンボーンパートに所属している同級生。1年生。
梓はあみかのことを「あみか」と呼んでおり、対するあみかは「梓ちゃん」と呼んでいる。
右も左もわからない完全な吹奏楽部初心者である彼女を心配に思った梓は、みずから率先して指導役を買って出て、日々の練習指導を通して彼女の世話を見ることになる。あみかもまた、気配り上手で世話焼きな梓のことを慕うようになり、二人は良好な師弟関係を結びながら日々の活動を過ごすことになる。(立華編前編、37ページ)
しかし、梓のことを強く慕い続けるあみかと、そんな彼女にずっと慕われ続けてほしい梓の関係はいつしか共依存の関係へと形を変え、同級生の志保や太一、先輩の未来たちから懸念を持たれることになる(立華編前編、263~268ページ、立華編後編、217ページ)。あみかもまた、この関係がずっと続いていくことで「このままでは、自分の足で立てなくなってしまう」(立華編前編、266ページ)と次第に思い始めるようになり、自身の力だけで梓と対等に立つための道として、梓に黙ってカラーガードを始めることを決意する。(立華編前編、335~336ページ、原作公式ガイドブック、221~222ページ)
立華高校のガードチーフ(カラーガードのリーダー)を務める小山桃花の激烈な指導にボロボロになりながらついていくあみかの様子に耐えかねた梓は、「あみかを助けてやろう」という衝動に駆られて桃花のもとに勇もうとするものの、それを間一髪のところで志保によって止められる。「あみかはもう、梓に頼らんことを選択してんで。梓はいつまであみかに頼るの」と、いまだにあみかに頼られることを望む梓を一喝した志保は、独り立ちしようとするあみかに介入せずに黙って見守ることを梓に頼み、梓もまた志保の願いを聞き入れてあみかから距離を置くことを決める。(立華編後編、52~53ページ、64~73ページ)
カラーガードの道を突き進むあみかから一旦距離をとった梓だったが、彼女との関係性まで否定して彼女に対する心を閉ざしてしまったために、その交友関係は次第に色あせたものへと変わっていってしまう(立華編後編、194~198ページ)。あみかから先に自身のもとを離れられてしまったという認識、そして自分自身の奥底にあるプライドの高さから、梓はあみかとの関係性をよい方向へ持っていくことができずにいた。そのような梓とあみかの様子を見かねたパートリーダーの未来は、ある日の夜に梓と真正面から向き合い、彼女の心の奥底にあるプライドを白日のもとにさらけ出した。自身の弱さのすべてを明かし、自身のプライドのために友達を利用していたことを認めた梓に、未来は「利用して何が悪いん? 好きじゃないと、そもそもそこまでいろいろやってあげられへんって」と前向きに捉えることを提案し、そして、ただ「好き」だから一緒にいる、友達でいる理由はそれだけで充分であることを梓に告げている。(立華編後編、216~226ページ)
そして、これまでの自身を縛っていた「頼られる人間でなければ、必要とされなくなる」という呪縛から解き放たれた梓は、師弟関係ではない”対等な友達”同士という認識のもとにあみかと向き合い、かねてからそうなることを望んでいたあみかと良好な関係を結び直すことに成功している。(立華編後編、227~229ページ)
柊木芹菜
北宇治高校に通う女子生徒で、帰宅部の1年生。梓と同じく北中学校の出身でもある。
梓は芹菜のことを「芹菜」と呼んでおり、対する芹菜は「佐々木さん」から「佐々木」、やがて「梓」と、その時々の関係性に応じて呼び方を変えている。
中学3年生だった当時、クラスの女子グループの中心にいた梓は、どこのグループにも所属していない芹菜から「佐々木さんさ、病気や思うよ」とその八方美人ぶりを看破され、彼女に対する拒否反応から芹菜の存在を意識するようになる(立華編前編、171~178ページ)。それからしばらく経ったのち、同級生の勝手な思い違いから窮地に立たされた梓を芹菜が救ったことをきっかけとして、梓と芹菜はそれぞれの抱く「友達観」の一片を知ることになる。(立華編後編、83~93ページ)
6月の修学旅行に先んじて行われた班決めにおいて、梓と芹菜はたまたま同じ班のメンバーになる。梓は班のなかで孤立していた芹菜の存在が気にかかり、ほかの班員たちではなく芹菜と一緒に行動することを決める。あからさまに嫌悪感を示す芹菜に対し、彼女の痛いところを突くことで主導権を握った梓は、そのまま彼女とふたりで行動する計画を立てる。その際に、梓から「名前で呼んでよ」と催促された芹菜は、「ほかの子と一緒じゃない、自分だけの呼び方をしたい」というひねくれた思いから、梓のことを「佐々木」と呼ぶことを決めている。(立華編後編、133~140ページ)
この修学旅行以来、梓と芹菜の距離感はぐっと近づいたものになり、「佐々木の隣に並んだときに恥ずかしくないようにしたい」と梓に自身の前髪を切ってもらうよう頼むなど、芹菜は梓に対して少しずつ心を開くようになる(立華編後編、175~185ページ)。一方の梓もまた、クラスメイトの誰も知らない芹菜の特別な表情を自分だけが知っているという事実に、えも言えぬ満足感を覚えるようになる。(立華編後編、175ページ)
しかし、芹菜が次第に社交性を身につけ、梓以外にも友達を作り始めるようになると、梓の胸中にはそれを祝福する想いとともに、「芹菜にはほかに友達ができたのだから、少し距離をおいても構わないだろう」という意識が芽生えるようになる(立華編後編、202~203ページ)。二人の距離感は日に日に疎遠になっていき、受験を間近に控えた冬のある日、そんな不自然な距離感に耐えかねた芹菜はついに「いい加減にして!」と梓に強くつかみかかる。そのまま梓を押し倒して馬乗りになった芹菜は、自分自身の優越感のために芹菜と仲良くなり、芹菜がひとり立ちしたらつまらなくなって距離を置いた梓の身勝手さを罵(ののし)るとともに、そんな彼女の人間性に幻滅して「梓にとって、私は何?」と、ありきたりな誰かと同じ呼称を使うことによって梓との決別を明確に示した。(立華編後編、201~209ページ)
その日を境として、二人の関係性はひどく表面的で他人行儀なものへと変わり果ててしまい、破綻した関係のまま二人は別々の高校へと進学することになる。
立華高校に進学してしばらくしたある日、梓は帰宅途中の電車内で偶然芹菜と再会を果たす。梓が隣に初心者のあみかを侍(はべ)らせているのを目にし、あみかの口から梓への日頃の感謝が語られるのを耳にした芹菜は、未練と憎悪をない交ぜにした口調で「梓って、ちっとも変わってないんやな」という侮蔑(ぶべつ)の言葉を梓に向けて口にしている。(立華編前編、189~193ページ)
月日は流れ、マーチングコンテストに挑むなかで次第にあみかとの不和に頭を悩ませるようになった梓は、現在のあみかとの関係をかつて破綻した芹菜との関係と重ね合わせるようになる。パートリーダーの未来と話し合った際に、自身にとっての芹菜が何であったのかを答えられなかったことを打ち明けた梓は、「そんなん、その子のことが好きやから一緒にいたに決まってるやん。大事な友達や、って素直に言えばよかったんやって」という未来の言葉に救われることになる。(立華編後編、221~224ページ)
日頃の過密な練習が祟って熱を出して部活を休んだある日、自宅にいた梓のもとに芹菜が突然の見舞いに訪れる。数か月ぶりに顔を合わせた芹菜に懐かしさを覚えた梓は、そのまま彼女をリビングに招き入れ、これまで伝えられていなかった想いのすべてを面と向かって打ち明けた。大切な友達だよ、という一年越しの梓からの答えを贈られた芹菜は「いまさらやめてよ!」と声を荒らげるが、芹菜もまた、過去と決別して新たな道を歩みたかったこと、そんな現在の自分を見せて、梓に自分を捨てたことを後悔させたかったのだと梓に明かした。梓と芹菜の双方が、互いの存在を必要としていたことを打ち明け合った末に、芹菜は「佐々木も、早く体調直しなよ!」という、かつて自分だけが使っていた特別な呼称を残して立ち去っていった。(立華編後編、301~310ページ)
その後のふたりは「芹菜」「佐々木」と呼び合うかつての親密な関係を取り戻し、芹菜のスケジュール帳に勝手にマーチングコンテストの予定を書き込んだりするなど、たびたび顔を合わせる間柄となっている。(短編集2巻『友達の友達は他人』)
瀬崎未来
トロンボーンパートのリーダーを担当しているふたつ上の先輩。3年生。
梓は未来のことを「未来先輩」と呼んでおり、対する未来は「梓」と呼んでいる。
パート内の誰よりも優れた演奏技術を持ち、他者に対する気配りを忘れることのない未来に対し、梓は強い尊敬の念を抱いている(立華編前編、161~162ページ、立華編後編、220ページ)。それと同時に、同じ楽器を吹く者同士としての強い挑戦意識も向けており、いつの日か彼女を超えることを目標にして日々の練習に打ち込んでいる。(立華編前編、136ページ、292ページ、立華編後編、214ページ)
梓はパートリーダーとしてつねに皆の先頭に立つ未来に対して強い信頼を寄せているものの(立華編後編、165ページ)、未来もまた、ハイレベルの実力者でしっかり者の梓のことを入部当初から一目置いており、吹奏楽コンクールに先駆けて行われたオーディションの前に「追われる者としての怖さを知ってしまった」と弱気な姿を見せたり、梓から向けられたまっすぐな好意に気恥ずかしくなってじたばたした挙句「威厳ある先輩計画が失敗した」と照れるなど、普段の先輩としての立ち居振る舞いの下に隠した素顔を梓だけに見せるようになる。 (立華編前編、222~224ページ、立華編後編、127~128ページ)
人に頼ることが苦手で、悩みごとをすべて抱え込んでしまう梓の性格を見透かしている未来は、梓とあみかの関係がこじれて疎遠になったことを受けて、問題解決のために梓が心の奥底に隠していたプライドを白日のもとに明かしている。自身の愚かな欲望を直視して深く恥じ入る梓に、未来は「友達を利用して何が悪いん? 好きじゃないと、そもそもそこまでいろいろやってあげられへんって」とこれまでの行いは決して悪いことばかりではなかったと肯定するとともに、「何かをしてくれるからとか、助けてくれるからとか、そんなことは関係ない。ただ、普通に、好き。友達でいることの理由はそれだけで充分」というメッセージによってそれまでの梓を縛っていた強迫観念を断ち切り、その後の梓の行動を変えるための勇気を授けている。(立華編後編、216~226ページ)
戸川志保
トロンボーンパートに所属している同級生。1年生。
梓は志保のことを「志保」と呼んでおり、対する志保は「梓」「アンタ」と呼んでいる。
梓は志保の持つ生真面目で律義な性格を評価する一方で(立華編前編、43~44ページ、144ページ)、彼女自身のプライドの高さからくる我の強さを気にかけてもいる。(立華編前編、139~140ページ)
立華高校の吹奏楽部に入部して以降、かつての自分より劣っていたはずの太一に追い抜かれ、
なおかつ思うような成長を実感できずに自暴自棄になっていた志保を、梓は自身の体験談を交えながら励まして前を向かせている(立華編前編、127~144ページ)。その後無事に自身のポジションを確立することに成功した志保は、対等な同級生としての立場から梓とあみかの共依存の関係性に対していち早く警鐘を鳴らしている(立華編前編、263~268ページ)。あみかが梓のもとを離れてみずからの道を模索し始めてからは、かつての関係性に固執する梓を一喝するとともに、独り立ちしようとするあみかを黙って見守ることを梓に勧めている(立華編後編、64~73ページ)。しかし、梓がその折にあみかに対する好意まで閉ざしてしまったのを見た志保は、梓とあみかに対等な友達同士になってほしかったという本心を明かしながら、「おせっかいせんほうが、ほんまはよかったんやろか」と、梓が他者とのあいだに構築する距離感の極端さに苦悩する様子を見せている。(立華編後編、194~198ページ)
そして、梓が未来との対話を通して友達付き合いに対する意識を変え、あみかとの仲をふたたび良好なものにしてからは、安堵した様子で二人を見守っている。(立華編後編、229ページ)
的場太一
トロンボーンパートに所属している同級生。1年生。
梓は太一のことを「的場」と呼んでおり、対する太一は「佐々木」と呼んでいる。
要領がよく演奏の才能にも優れているが、いまひとつ部活へのやる気を見せない太一に対して、梓はもったいない思いを抱いている(立華編前編、154ページ、立華編後編、251~252ページ)。一方の太一は、1年生部員のなかでも群を抜いて上手な梓の演奏技術を認め、その原動力となっているたゆみない向上心を指して「努力の鬼」と評している。(立華編後編、252ページ)
太一は梓とあみかの二人が入部以来共依存の関係に陥っていることを志保とともに危惧しており、梓にあみかのもとから離れることを勧めている。しかし、日頃の練習への関心不足が足を引っ張る形となり、当の梓からは「的場に文句言われる筋合いなんかない!」と早々に突っぱねられることになってしまう。(立華編前編、263~268ページ、288ページ)
その後も、吹奏楽コンクールB編成部門のメンバーやマーチングコンテストの補欠メンバーなど、いまひとつぱっとしないポジションに甘んじていた太一であったが、練習中に手を抜いていたことをドラムメジャーの神田南に強く指摘されたことをきっかけに、これまでとは一転して練習に本腰を入れるようになる(立華編後編、250ページ)。その姿勢の背景にはこれまでの自身に対する反省ももちろん含まれているが(立華編後編、286ページ)、「俺、佐々木ぐらい頑張ろうと思う」という、練習熱心な梓の存在を強く意識している様子もうかがうこともできる。(立華編後編、252ページ)
高木栞
トロンボーンパートに所属しているふたつ上の先輩。3年生。
梓は栞のことを「栞先輩」と呼んでおり、対する栞は「梓」と呼んでいる。
トロンボーンパートの副パートリーダーとして後輩たちの面倒を見ている栞は、2年生の先輩たちよりも上手な後輩という難しい立ち位置にいる梓を気にかけ、「もう少し、力抜いてええと思うよ。音楽以外のことですり減るの、なんかもったいないやん」とフォローする様子を見せている(立華編前編、256~257ページ)。その一方で、トロンボーンパートの絶対的エースとして君臨するパートリーダーの未来に正々堂々と挑みたいと宣言した梓に「梓ってマジ意識高い。強い」と素直な感想を口にしたり(立華編前編、254ページ)、私用で練習を休んだ未来に代わって梓がソロパートを任された際には「未来の代理でソロ吹けんの、当然やと思わんといてな」と嫉妬にも似た感情を寄越すなど、未来に次ぐ実力者である梓の存在を強く意識した言動を見せることもある。(立華編前編、298~299ページ)
橋本杏奈
トロンボーンパートに所属しているひとつ上の先輩。2年生。
梓は杏奈のことを「杏奈先輩」と呼んでおり、対する杏奈は「梓」と呼んでいる。
梓と同じく北中学校の出身であり、中学時代は吹奏楽部の同じパートの先輩として梓とともに日々の活動にあたっていた。(立華編前編、97ページ、立華編後編、76ページ)
中学時代の気弱な性格から一転して毅然とした雰囲気をまとうようになった彼女を見て、梓は立華高校の吹奏楽部で過ごす一年間の重みを感じ取っている(立華編前編、35ページ)。対する杏奈は、中学時代からしっかり者の後輩として活躍していた梓を一目置いており、初心者の後輩であるあみかの世話係としても優秀であるとして信頼を寄せている。(立華編前編、37ページ)
なお、梓は杏奈の演奏技術に関して、未来や栞を含む3年生の先輩やそこに肩を並べる自分自身と比較した上で「杏奈はまだ、A編成部門のレベルに達していない」という、現実的かつ手厳しい評価を下している。(立華編前編、240ページ)
黄前久美子
北宇治高校の吹奏楽部に所属しているかつての同級生。1年生。
梓は久美子のことを「久美子」と呼んでおり、対する久美子は「梓」と呼んでいる。
梓と同じく北中学校の出身で、中学時代は吹奏楽部の同期としてともに活動にあたっていた。小学生のころからユーフォニアムを演奏している久美子に対して梓は演奏者として一目置いているものの、彼女の持つ気弱でお人好しな性格については「舐められやすくてよく騒動に巻き込まれる」ものとして捉えている。(立華編前編、138ページ)
また、梓にとっての久美子はプライベートでも気兼ねなく遊ぶ仲のいい友人のひとりであり、5月に行われたサンライズフェスティバルをはじめ、吹奏楽コンクール関西大会の本番前、京都駅の駅ビルコンサートなど、各種イベントの合間に顔を合わせたり連絡を取り合ったりする様子が登場している。
高坂麗奈
北宇治高校の吹奏楽部に所属しているかつての同級生。1年生。
梓は麗奈のことを「麗奈」と呼んでおり、対する麗奈は「佐々木さん」と呼んでいる。
梓と同じく北中学校の出身で、中学時代は吹奏楽部の同期としてともに活動にあたっていた。自身の演奏技術に絶対の自信を持つ梓が「自分よりも上手い」と認める数少ない生徒のひとりであり、彼女は麗奈の吹くトランペットの音色を初めて聴いた際に「頭をブロックで殴られた」ような強い衝撃を受けている。(立華編前編、252ページ)
中学時代の梓と麗奈は特別仲がよかったわけではなかったものの、麗奈の卓越した演奏技術と孤高を貫く性格から、梓は彼女に対して一目置いていた(立華編前編、301ページ)。北宇治高校に進学し、久美子やトランペットパートの先輩たちと交わるなかで人間性を磨いていった麗奈と半年ぶりに言葉を交わした梓は、「麗奈は少しだけ変わった。多分、いい方向に」と、それまで彼女に抱いていた孤高なイメージを少しだけ改めている。(立華編後編、322~323ページ)
立華高校での1年間を通して実力を磨き上げた梓のトロンボーンを聴いた麗奈は、その上達具合がただならぬものであることを即座に感じ取り「佐々木さん、めっちゃ上手くなったな」という本心からの称賛を贈っている(原作公式ガイドブック、141~144ページ)。対する梓は「麗奈に褒められるとか照れるわ。お世辞とかやめて」と表面上では謙遜(けんそん)しつつも、まるでそこに立つのが当然のような振舞いで麗奈の隣に並び、肩を並べる対等な奏者としての二重奏を彼女と披露している。(原作公式ガイドブック、145~147ページ)
関連イラスト
冬制服
マーチング衣装
中学生時代
関連タグ
名瀬あみか - トロンボーンパートに所属している同級生。初心者の1年生。
戸川志保 - トロンボーンパートに所属している同級生。眼鏡をかけた1年生。
的場太一 - トロンボーンパートに所属している同級生。要領はいいが不真面目な1年生。
瀬崎未来 - トロンボーンパートに所属しているふたつ上の先輩。パートリーダーの3年生。
高木栞 - トロンボーンパートに所属しているふたつ上の先輩。副パートリーダーの3年生。
柊木芹菜 - 北宇治高校に通う女子生徒。梓と同じ中学校の出身でもある1年生。
黄前久美子 - 北宇治高校に進学した中学時代の同級生。ユーフォニアム担当の1年生。
高坂麗奈 - 北宇治高校に進学した中学時代の同級生。トランペット担当の1年生。
塚本秀一 - 北宇治高校に進学した中学時代の同級生。中学当時はホルンの担当だった1年生。
加部友恵 - 担当声優が同じ。
外部リンク
経歴・補足事項
はじめに
これより先の項目は、『立華高校マーチングバンドへようこそ』のエピローグ(後日談)と関係性の高い内容を掲載しています。
同作品を読み終えられた方、もしくはネタバレに自己責任を持てる方による閲覧を推奨します。
代替わり~高校3年生時
マーチングコンテストの終了に伴って杏奈をはじめとするひとつ上の代が引退し、梓たちの代を中核とする代替わりを迎えると、彼女はこれまでの活動を通して培ってきたカリスマ性を周囲から評価される形で立華高校吹奏楽部の第38代部長に就任している。翌年4月から始まった新年度では、部長である彼女は持ち前のずば抜けた実力や話術、率先した行動力などをフル活用して、新1年生を含む多くの部員たちを麾下(きか)になびかせている。(最終楽章前編、232~233ページ、TVアニメ版3期4話)
梓を核心とする新たな立華高校吹奏楽部は、座奏では吹奏楽コンクール京都大会において厳しい代表校争いの末に見事出場枠を勝ち取って関西大会に進んでいるほか、マーチングコンテストでは部長である梓自身がソロのパフォーマンスを披露するなど、年間を通して強豪校としての伝統を受け継いだ揺るぎない活躍ぶりを見せている。(立華編後編、342~343ページ、最終楽章前編、373ページ)
また、このころの梓は強豪校の部長としての多忙な仕事や練習をこなすかたわら、高校卒業後に音楽大学に進むことを志している。彼女自身は、幼少期から恵まれた環境のもとで育ったわけではなく、時にはほかの受験者との環境の差を意識して「自分の実力がどこまで通じるのか」というような不安や気後れを覚えることもあるものの、「もっと上へ、もっと高みへ。その先にあるものを見てみたい」と持ち前の上昇志向を燃やして着実に音大受験への手立てを講じている。(立華編後編、345ページ、最終楽章前編、268~269ページ)
関連動画
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We are 立華!!(2024年4月)