概要
マーチング(Marching)とは、各種の管楽器や打楽器を演奏しながら行進する演奏形態、もしくはそれを行うバンドのことである。ほかにもドリル(Marching Drill)、鼓笛隊、パレード(Parade)、ドラム&ビューグル・コー(Drum & Bugle Corps)などの呼び方もある。
楽器の編成はさまざまであるが、おおむね管楽器と打楽器を中心とした吹奏楽に近い編成をしている。また、楽器の演奏だけではなく、カラーガードやダンスチームなどを織り交ぜた演技や大道具などの視覚的効果を含む場合も多い。
一般的に音楽と動きの調和がとれていることが望まれ、その演奏や演技を競う大会も多数開催されている。
学校で活動する吹奏楽部のほか、社会人有志の結成によるマーチング団体、そして陸海空の自衛隊や諸外国の軍隊、警察、消防などの音楽隊が演奏活動を行っている。
また、小学校などにおける情操教育の一環としてマーチングを取り入れている学校もあり、運動会や地域の行事に参加することを目標に練習をしている。
マーチングバンドの役職
ドラムメジャー(Drum Major)
マーチングバンドの指揮者。ドラムメジャーという名称は「鼓手長」を意味する。
指揮を振るほか、メジャーバトン(指揮杖)やホイッスルを用いて団員にさまざまな合図を下す。
ステージマーチングショーなど横や後ろを向いて演奏する場合においては、舞台の側方や後方にサブドラムメジャーを配することもある。
手に持つ指揮杖には赤や黄などの房が備えつけられ、着用するユニフォームも団員とは異なる特別のものであることが多い。
ホーンズ(Horns)
パレードやドリルなどで歩きながら演奏・演技を行うパート。「バンド」や「メンツ」とも。
見た目の統一性を図るため、金管楽器はホルンやユーフォニアム、チューバなども含めてフロントベル仕様のものを使うことがある。
バッテリー(Battery)
マーチングバンド内で打楽器を担当するメンバーで、スネアドラム、クウォード(マルチタム)、バスドラム、シンバルなどで構成される。
まれにグロッケン、シロフォン、キーボードを歩きながら演奏することもある。
フロントピット(Front Pit)
ドリル演奏などにおいて、舞台やアリーナの前方や側方に配される打楽器のチーム。
歩きながら演奏するという制約がないため、ティンパニやマリンバといった大型の打楽器も用いることができる。
カラーガード(Color Guard)
マーチングバンドにおいて、フラッグ(旗)やライフル、サーベルなどの手具を用いて視覚的表現を行うパートを指す。
カラーガードという名称は「旗衛隊」を意味し、かつて軍隊が国旗ないし軍旗を掲げて行進する際に随伴していた警護隊に由来している。
また、カラーガード隊を率いるリーダーは「ガードチーフ」(Guard Chief)と呼ばれる。
バトントワラー/バトントワリング(Baton Twirler / Baton Twirling)
カラーガードがフラッグやライフルを扱うのに対し、こちらはバトンを用いた視覚的表現を行う。
詳しくはリンク先の記事を参照。
用語解説
コールサイン
マーチングバンドにおいてドラムメジャーが発するさまざまな号令のこと。単に「コール」(Call)とも。
英語 | 読み | 意味 |
---|---|---|
Ten Hut | テンハット | 気を付け |
Parade Rest | パレードレスト | 休め |
Dress | ドレス | 整頓 |
Set Up | セットアップ | 楽器を構える |
Horns Up | ホーンズアップ | 楽器を構える |
基本動作
フォワードマーチ(Forward March)
ドリルなどにおける行進間の基本動作。「前進」を意味する。
リアマーチ(Rear March)
ドリルなどにおける行進間の基本動作。「後進」を意味する。
スライドステップ(Slide Step)
ドリルなどにおける行進間の基本動作。サイドマーチ(Side March)とも。
横方向への前進ないし後進を意味し、楽器を正面に構えたまま腰から下を進行方向に向けて歩く。
打楽器を担当するバッテリーは、楽器の特性上「カニ歩き」のような独特な足さばきとなる。
マークタイム(Mark Time)
ドリルなどにおける行進間/停止間の基本動作。楽器を構えながらその場で足踏みをする。
つま先を付けたままかかとを上げる「ローマークタイム」と、膝の高さまでかかとを上げる「ハイマークタイム」がある。
ホルト(Halt)
ドリルなどにおける行進間/停止間の基本動作。「停止」を意味する。
ベルアップ(Bell Up)
ドリルなどにおける行進間/停止間の基本動作。楽器のベル(音の出る部分)を上方に向ける。
トランペットやトロンボーンなど、管体とベルが正面を向いている楽器ほど与えるインパクトは大きい。
ライトフェイス(Right Face)
ドリルなどにおける行進間/停止間の基本動作。「右向け右」を意味し、2拍ないし4拍かけて右を向く。
レフトフェイス(Left Face)
ドリルなどにおける行進間/停止間の基本動作。「左向け左」を意味し、2拍ないし4拍かけて左を向く。
アバウトフェイス(About Face)
ドリルなどにおける行進間/停止間の基本動作。「回れ右」を意味し、2拍ないし4拍かけて向き直る。
トゥー・ザ・リア(To The Rear)
ドリルなどにおける行進間の基本動作。1拍で後方にスピンして向き直る。
マークタイムピボット(Mark Time Pivot)
ドリルなどにおける行進間/停止間の基本動作。ピボットターン(Pivot Turn)とも。
足踏みをしながらの方向転換を意味する。
複合動作(コンビネーション)
カンパニーフロント(Company Front)
マーチング・ショーの終盤、一番の見せ場に設定されている行進間の複合動作(コンビネーション)。
”全員で(Company)前進(Front)”という意味で、より迫力を出すために横一列に並び前進することが多い。
カンパニーという名称は、軍隊の編成単位である「中隊」から来ている。
フォロー・ザ・リーダー(Follow the Leader)
ドリルなどにおける行進間の複合動作(コンビネーション)。指示された特定のメンバーを先頭にして進んでいく。
その他
コンテ(Continuity)
パレードやドリルなどにおける各人の動きや全体のフォーメーションを記したもの。
動く方向や歩数、ベルアップといったアクションが細かく指定されている。
ポイント(Point)
ドリル演奏などを実施する舞台上に等間隔に貼られた、T字型や十字型のテープをはじめとする目印(マス目)。
基本的には5m間隔で、8歩で均等に移動するためには1歩あたり62,5cmで歩く必要がある。
ランスルー(Run Through)
演目を最初から最後まで通して練習すること。練習の最後やリハーサル前に行われることが多い。
主な演奏形態(関連動画)
パレード(Parade)
祭事やイベントなどにおいて、管楽器や打楽器を演奏しながら隊列を組んで前進する、マーチングのもっとも基本的なスタイル。
少人数の鼓笛隊から100名を超す大部隊まで、編成はさまざまである。
ドリル(Drill)
アリーナをはじめとする舞台(ステージ)上において、隊列やフォーメーションを形成しながら演奏や演技をすること。「マーチング・ショー」(Marching Show)とも。
体育館や舞台などで行われる「ステージドリル」、アリーナなどで行われる「フロアドリル」、屋外競技場で行われる「フィールドドリル」などの種類に分けられる。
なお、「ドリル」という名称は軍隊における”基礎動作の反復演練”に由来し、前進するのみのパレードはドリルとは呼ばれない。
ハーフタイムショー(Halftime Show)
フットボール競技など、試合時間が前半と後半に区切られるスポーツの興業試合において、前半試合終了後の休憩時間(ハーフタイム)に行われるパフォーマンスを指す。
演目はフィールドドリルに準じ、時としてチアリーダーなどとの合同演技も披露される。
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