※Xbox360、PS3およびPCにて発売されたゲームに関してはPrototypeを参照のこと。
一般的なプロトタイプ
一般的にはデモンストレーションや技術の検証、コンペティションへの出品などを目的とした量産前の試作のことである。ただし業界によっては異なった意味合いで用いられることがある(後述)。
鉄道車両においてはこの種の車両が実際に営業運転等を行い、その成績および運営会社の懐事情を考慮して量産されるかどうかを判別するものとして扱われ、特に量産されなかった車両は使い勝手が他の車両よりよくなかったり複数車種所有によるデメリットのため速やかに廃車されたりする。
なお自動車においてはコンセプトカーという「市販(および量産)を発表時点で全く想定していない制作物(=試作ですら無い)」が俗にプロトタイプと呼ばれることもあるが、厳密には妥当な呼び方とは言えない。
デモンストレーション
「わが社はこのような製品を製造可能です」ということを示すために製造されたものである。実際にこの目的で製造されたものは量産されることは少ない。
試験目的
新たな技術や設計に対する試験のために製造されるもの。既存の量産型製品を改造して試験に供する場合もある。また、上記のコンセプトカーのように製品化を前提としないような極端なコンセプトや技術を盛り込むこともあり、これは技術試験という目的のほかに市場調査(世間の反応を見てから製品化するか考える)の狙いがある。
採用見本
実証実験、または比較目的で製造されるもの。プロトタイプに大きな問題がなければそのまま量産に入ることもあるが、テストやコンペティションの結果大幅に変更されることもある。致命的な問題が見つかった場合、量産を諦めることもある。
模型業界のプロトタイプ
機械系の模型やプラモデルにおいては、それらを制作するためのお手本にする実物(生き物以外)のことをプロトタイプと呼ぶことがある。フィクションで実際に存在しないものにはこの言葉を用いない。
モータースポーツのプロトタイプ車
モータースポーツ(自動車競技)におけるプロトタイプは即ち「レース専用設計」であることを指す。
特に2座席を備えた「プロトタイプスポーツカー」のことを指す場合が多い。
今は世界3大レースの1つに数えられるル・マン24時間では、第二次世界大戦前までは市販車をベース車両に用いることが義務付けられていた。しかし大戦後の産業の荒廃により市販車が稀少になってしまったため、「将来的に市販化する名目で制作されたものなら、ベースとなる市販車が無くともよい」という特例を認める文化が生まれた。
その結果、本来市販車では必要とされる乗り心地や積載スペースなどの要素の一切を捨てて、座席の数(2座席)という形式だけを残した以外は、完全にサーキットでレースに勝つことに特化した設計の「プロトタイプ」のスポーツカーが次々に登場した。
その後、市販を前提としないレーシングカーの規格の一つとして受け入れられるようになり、姿形を変えながら今でも耐久レースやヒルクライム競技などで用いられている。
また転じて、「市販車ベース」の逆の概念として「プロトタイプ」という呼び方が俗に遣われることもある。
ただし、この見た目でありながら公道の法規に合致させることは意外と難しくないため、排気系や安全装備に少し改造を施せば「車検も通せるし公道も走れる」というプロトタイプスポーツカーも歴史的には多数存在した。1990年代の『LM-GT1』規定では、「公道仕様車を1台以上制作する」ことが出場条件であったため、そうした類のプロトタイプスポーツカーが各メーカーから登場した(画像左)。
また英国のラディカル社はオープンカータイプのプロトタイプスポーツカーを公道仕様に改造し、現在でも実際に販売している(画像右)。
ワークスチーム(市販車メーカー系チーム)が製作したプロトタイプスポーツカーは、市販車と同じ命名規則の、あるいは市販車そのままの車両名がつけられることがよくある(例:ポルシェやプジョーの9XXシリーズ、日産のGT-R LM NISMOなど)が、これは前述のような出自に由来している。
運営もそれを意識しており、デイトナ・プロトタイプやLMDhのようにワークスチームがマシンに市販車のフロントデザインの意匠を盛り込むことを推奨あるいは義務付けるプロトタイプ規定もある。逆にアウディのR8のように、プロトタイプスポーツカーの名前を市販車につけ、レーシングカーの遺伝子を受け持つことを宣伝文句にする場合もある。
世間的に見ればF1ほど大衆人気を獲得しているわけではないが、F1マシン(フォーミュラカー)に比べれば遥かに市販車に近い出自・形状をしていることをブランド戦略上の有利と考えてプロトタイプを選ぶメーカーは、昔も今も少なからずいる。
有名なプロトタイプスポーツカーの規則としては、上述のGT1のほかに、グループC、LMP1、LMハイパーカーなどがある。
認知言語学上の「プロトタイプ」
言語学の一分野であり、言語とそれを司る人間の認知機構に注目する認知言語学では、「プロトタイプ」は人間が持つあるカテゴリーの一部分である「個人(あるいはある範囲内の集団)が持つある単語の典型例(及びその類似性)」の事を意味する。
例えば一般に「鳥は飛ぶ」と言った時に多くの人物は「鳥」について「ツバメ」や「スズメ」などを想像することだろう。ペンギンも鳥の一種であるが、一般に人は「鳥は飛ぶ」ということに疑問を感じない。
(否定をするとわかりやすく、「鳥は飛ばない」というと多くの人がそれに対して否定をするだろう。)
すなわちこの時一般的に、「鳥」として想像するものがペンギンよりも、むしろツバメやスズメなどに近い形の物であることがわかる。この「鳥」という抽象的概念がプロトタイプである。
もちろんこれは物体に対する人の認知の仕方によって大きく異なることから、プロトタイプも大きく異なりうる。このプロトタイプ理論は認知言語学において重要視される一つの要素である。
ちなみに、海外文化学習の際に言及される"Streotype「ステレオタイプ」"は「日本人は真面目である」というような、ある範囲に属した人の性格などに関するイメージの事を指し、これは学術的に説明するならば、人の性質に対して個人(あるいは集団)が持つプロトタイプのことを指す。
フィクションにおいて
フィクション(特にリアルロボット系アニメーション)においてはこの種の機体が大活躍するという話が存在するが、実際のところ(特に実用の採用見本に関しては)この種の機械は不具合を出すために作り、量産時に不具合がないようにすることが目的の一つであるため、量産機のほうが性能がよくなる傾向がある。
そのため、設定上では「コンペティション用のフルカスタム機」であるとか「試作機兼用高度技術試験機」「デモンストレーション用高性能カスタム」「設定がピーキーであるため一般人が乗りこなせない」「価格面で問題があったため量産機に採用できない機構搭載」などの設定が必要となってくる。
逆に「量産機よりも性能は落ちるものの量産機には存在しない能力などが存在する」という設定のものがあったりする。
特異な例としては、「性能や安定性に対して不備のあるプロトタイプが大事故を起こしてしまい、プロジェクトそのものの命運を変えてしまう」という例もある(YAT安心!宇宙旅行の次元トンネル・プロトタイプなど)。
pixivにおいては
pixivのタグにおいてはゲームのPrototype、試作機やコンセプトカー、あるいはボツになった初期デザインなどのイラストなどが投稿されている。
代表的なプロトタイプ
フィクション
現実
※現実におけるプロトタイプの例。カッコ内が量産型。
- 九試単座戦闘機(九六式艦上戦闘機)
- 1000形(東海道新幹線 0系)
- そうや(つがる型巡視船)
- 681系1000番台(681系0・2000番台)
- WIN350(500系900番台) - 現実においては珍しく「プロトタイプの方が高性能」なパターン。
- E231系900番台(E231系0番台)
- N700系9000番台(東海道新幹線 N700系)
- N700S系9000番台(東海道新幹線 N700S系)
- TVR・サーブラウ スピード12 - 開発中止となったためプロトタイプのみ。
- DMC-12
関連タグ
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