リグ・シャッコー
りぐしゃっこー
型式番号(宙間戦闘タイプ)はZM-S22S。初登場は第26話の終盤。
ベスパが開発した、ゾロアットに代わる次世代の制式量産型MS。
試験機シャッコーで得られたデータを元に改良が加えられており、高出力ジェネレーターの搭載によって大小各種のビーム兵器を全身に装備することができる。特にビームサーベルと共に接近戦用に装備されたビームファンは、防御用のシールドと攻撃用の斧としても機能する新機軸の武器となっている。
試験機と比較すると、バックパックを大型のものへ再設計、2連ショルダービームガン含む内蔵武器の廃止、ジェネレーターの出力向上、新装甲材「ハイチタン合金ネオセラミック複合材」の採用など徹底した仕様変更が行われた。これはゾロをはじめとする同軍量産MSの運用データからのフィードバックを短期間で実施した結果であり、ベスパの開発体制の柔軟性を表している。このような急遽の仕様変更は、組織として動脈硬化を起こしている地球連邦軍には不可能となっていて、帝国側の構成員――『宇宙戦国時代』を生きるスペースノイドの気勢を体現しているといえるだろう。
ゾロアットと異なり、宇宙用([S]型)ではなく全領域対応型として開発されている。ビームシールド装備からビームローター装備と簡易的な換装のみで地上戦([G]型)にも対応可能。これは、帝国側がサイド2や周辺宙域の制圧のみならず、地球への本格侵攻およびエンジェル・ハイロゥの投入という、次のステップを見越していたことを表している。
ザンスカール戦争は、宇宙世紀0153年5月初旬に当機の初期ロット(カテジナ・ルース機)が戦場に出てから、わずか50日間で終結してしまったため、総生産数(生産ラインの切り替え)は決して多くはない。しかし、女王マリア直属の近衛師団機のベース機としても選ばれるなど、多くのバリエーションが生まれており、リグ・シャッコーの基礎性能が極めて優れていることの証明となっている。
スマートな外観に違わず、全備重量は18.5tと原型機から更なる軽量化を達成し、パワー・ウェイト・レシオは4.2倍まで上昇した。装甲材にはアビゴルで試験された「ハイチタン合金ネオセラミック複合材」を採用したことで、防御力を落とすことなく充分な硬度を確保。さらに、ジェネレーターはコンペ対抗機であった重攻撃機コンティオ同様の約6,000kW級の高出力モデルを搭載しつつ、固定武装を廃して脚部とバックパックにハードポイントを設けることで、本体ロールアウト後の新武装開発・追加装備を想定している。
また、前世代主力機であるゾロアットから、宙間戦闘でのけん制に有効なビームストリングスを引き継いでおり、これを用いた戦術に長けるベテランパイロットの機種転換にも配慮された。
帝国領土を巡回警護するための哨戒艇「シノーペ」や、高性能サブフライトシステム「アインラッド」にも対応しており、新旧あらゆるベスパの装備を最大限活用できる。
※余談であるが、コンティオはコクピットレイアウトの都合でシノーペとの連携運用が不可能であり、コンペティション結果に影響を与えた可能性がある。
リグ・シャッコーの可動域の広い四肢の仕様は、学徒兵ではない士官学校卒の正規兵が充実し始めた時勢を鑑みて、格闘戦に重きを置かれている。これは宙間戦闘だけでなく、領土コロニー内やエンジェル・ハイロゥ要塞内における、“エンジンを爆発させない”防衛戦を視野に入れていたためでもある。操作性についても優秀であり、短期訓練を受けただけの女性パイロットが実戦に耐えられる実績は高く評価できる。
総論として、前世代の主力機ゾロアットが“非の打ち所の無い”設計であったのに対し、本機は“全面的に優秀”なレベルで完成されている。『量産型モビルスーツ』でありながら、スペックノートでは前世代のサナリィ製ハイエンドモデル(ジェネレーター:5,280kW、パワー・ウェイト・レシオ:4.0倍)を全面的に上回り、ザンスカール帝国の次世代を担うに相応しい『高性能汎用型モビルスーツ』といえる。
ビームライフル
リグ・シャッコー専用に開発されたモデル。フォアグリップを備える。
ハンドビームガン
小型の射撃兵装。二丁拳銃のように、両手に持って使用することもある。
不使用時はバックパックや脚部のハードポイントに懸架できる。
ビームライフルに比べて出力は抑えられており、コロニー内戦闘など防衛戦での使用を想定している。
ビームファン
ビームを扇状に展開する手持ち武器で、ビームサーベルとビームシールドの両方の特性を持つ攻防一体の武器である。ハードポイントに接続可能。
ビームサーベルより攻撃力で劣り、ビームシールドより防御力で劣っているが、コロニー内戦闘において不必要な破壊を起こさない(威力が低い)ことがメリットとなる。
ビームストリングス
敵機の捕縛や電撃による攻撃、けん制とかく乱に有効な電磁ワイヤー。
頭部大型センサー(可動式)の先端と両足の甲、計三ヶ所に射出口を内蔵する。このためゾロアットと比べて射角は広がったが、射出口が集合していないため、「網」を張ることには適さなくなった。
ビームシールド
左肘に内蔵されたコネクターに接続する防御兵装。このコネクターには、選択式でビームローターも装備可能。
アインラッド
最前線部隊、特にモトラッド艦隊所属機が積極的に運用したサブフライトシステム。搭乗するだけで攻防の性能を底上げし、宙間での航続距離を延長できる優秀な兵器である。
しかし、シノーペとの同時運用は不可能であり、機動が直線的になるため本機の強みである運動性が活かしきれず、MSの本質である歩兵としての価値を下げてしまう。また、コロニーや要塞内といった狭所防衛戦との相性も悪く、指揮官が戦術目的に沿って配備しなければ、むしろマイナスとなる場面もあり得る。
近衛師団用
「いや、貴方の言動を見ておりますと『姫様である』と思います」
「そのモビルスーツは、私の愛した人のものだ!それを汚させはしない!」
型式番号ZM-S22SC
インペリアルガード・カスタム。専用チューンアップによって通常機より機動性、運動性が向上し、額のセンサーも大型化(高性能化)されている。
最大の特徴は、宇宙世紀0090年代以降は運用が稀となった実体兵器「メタルウィップ」を右肩に、「大型実体シールド」を左肩に追加装備していること。メタルウィップは非常に癖が強く、実体シールドは国民に対する戦意高揚を狙ったデザイン優先となっているため、十全に使いこなしてやっとビームサーベル・シールドと同等の戦力となる類いの装備である。しかし、ビーム兵器と異なり発光による敵機からの捕捉や、メガ粒子の飛散による周囲への被害拡大を生じないというメリットがある。
近衛師団機は女王マリアやカガチ宰相を始めとした要人、あるいは木星も含めた人類圏全域から集められたサイキッカーの護衛任務に最適な仕様となっている。
当然ながら、純粋な「戦力」として見ても極めて高いレベルにある。
近衛師団はマリア教の教義を至上とし、必要ならば特攻すら辞さない敬虔なマリア教信者のみで構成されているため、忠誠心を芯とした団員の高度な操縦技術練度・連携は、リグ・シャッコーの高いポテンシャルを120%引き出す。
追加装備
- メタルウィップ
右肩に増設されたマウントに巻き付けて携帯する。このマウント自体は平面形状であるが、磁力によってウィップを円錐状に収納するシステムとなっている。
ウィップは電撃によるショックバイト武装として機能するだけでなく、新体操のリボンのように回転させると中心部にI効果を発生し、メガ粒子を拡散させずに中和する防御兵装にもなる。
すなわち、コロニー付近やエンジェル・ハイロゥ内外という、ビーム兵器の仕様が極端に制限される状況下での任務に最適な装備といえる。
- 大型実体シールド
左肩に直接マウントされている、リグ・シャッコーのほぼ全身を覆うほどの大型シールド。
中央付近の上下スリットからビームシールドを発生させることも可能だが、発光による敵機からの視認確率を下げるため、基本的には表面に施された耐ビームコーティングで対応する。
下端部には、コロニー内などでの戦闘を考慮した低出力ビームガン二基が内蔵されている。
なお、不要となった左肘のシールド用コネクターはオミットされた。
ビームローター装備型
型式番号ZM-S22G。
ビームローターを装備した重力下仕様機。地球降下した部隊(イエロージャケット)の機体は、基本的にこちらの仕様となる。推進剤を消費せず巡行速度での飛行が可能な、極めて優れた陸戦機。
中でも「グラスホッパー隊」の機体は、グリーンを基調としたカラーリングで塗装され、空爆攻撃後に残った都市部の“何も残っていない”惨状もまた、大陸バッタの移動後を連想させたと言われる。
リグ・シャッコー凶(マガツ)
「ガンダムビルドダイバーズ」に登場。
フォース百鬼に所属するダイバー、オボロが操縦するリグ・シャッコーをベースとしたガンプラ。
全身が漆黒に染め上げられている他、二振りのビームナイフを主武装とする。
- TVアニメでは、地球侵攻に特化した部隊であるモトラッド艦隊を追いかけていたため、アインラッド運用に最適化されたゲドラフやブルッケングのほうが視聴者の印象に強く残るかもしれないが、『制式採用機』はリグ・シャッコーである。本土(サイド2コロニー)防衛隊のみならず、最大規模の主力艦隊である「ズガン艦隊」や、同じく主力の一翼を担う「タシロ艦隊」には、本機が多く配備されていた。
- 光の翼が装備されるプランもあったが、時同じくカトキハジメ氏も考えていた。「リグ・シャッコーとV2、どちらのMSに採用させようか?」という話し合いの末「V2に装備させよう」という答えが出たという。
1/144シリーズにラインナップ。劇中で使用した装備が同梱している。
ただし、残念ながらその造形に関するユーザーの評価は概ね低いと言わざるを得ない代物となっている。
当時のVガンダムの1/144シリーズにVフレームという内蔵ポリパーツを使用した、全体的なシルエットバランスの不自然さもさることながら、頭部の造形が左右2パーツによる簡素なものである為顔が全く別物になっているという評価が多い(当然ビームストリングスの展開も再現不可能)。
ただでさえガンダムフェイスなシャッコーを左右のはめ込みで再現するという無茶な仕様は、サイドは兎も角フロントからの見栄えが最悪で、低価格キットに対する設計側のこだわりの低さを露呈しているとさえ思えてしまう出来であった。
これがどれだけ別物かというと、比較対象としては石垣純哉氏の手掛けたDVDジャケット5巻に描かれているリグシャッコーが良い例である。頭部自体のパーツが少ない為に劇中通りの見た目に拘るにはフルスクラッチするしか手がない代物となっている。
『機動戦士Vガンダム』の番組放送中にBクラブより発売されたガレージキットの近衛師団用改造パーツには、原型師が新規造型した「劇中イメージに近い頭部」が丸ごとセットされており、当時のホビージャパンの作例記事では原型と作例を担当したモデラーの松村年信氏から「キットの頭部は使っていません。ポリパテの削り出しで造りました。キットの出来はお世辞にも良いとは言えないので改造パーツにセットされています。センサー部をパテ等で埋めればノーマル機の頭部としても使えます。」と断言されてしまっている。
このように1/144が評価の低い出来である一方「MSinポケット」シリーズにはラインナップされなかった。コンティオも1/144の評価は低いが「MSinポケット」では胴体や肩の造形が劇中に近く評価が高かったことから、このシリーズで発売されなかったことが悔やまれる。
ガシャポン ガン消しシリーズにラインナップ。こちらでは、近衛師団仕様もラインナップされている。