「地球から上がってきたばかりの奴が、ゾロアットに勝てると思ってるのかぁ!」
カタログスペック
頭頂高 | 14.5m |
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本体重量 | 8.2t |
全備重量 | 19.8t |
ジェネレーター出力 | 5,280kW |
装甲材質 | チタン合金ネオセラミック複合材 |
スラスター総推力 | 79,200kg |
概要
サイド2政庁のスペースコロニーに駐留していたサナリィ、および地球連邦軍を母体としたザンスカール帝国の軍事部門である「ベスパ」が開発した、宇宙世紀0140~0150年代における傑作量産型モビルスーツ。
型式番号はZM-S06S。末尾の[S]は宇宙戦闘用である事を示す。
ジェネレーターには、宇宙世紀0130年代以前はハイエンドモデルにしか搭載されていなかった5,000kW級を採用(地球連邦軍の量産機は4,000kW未満、Vガンダムさえ4,800kW)。学徒兵でも運用可能な癖のない操作性ながらも高い機動力を発揮し、曲面を多用した耐弾性・ダメージコントロール・生産性・稼働率・拡張性の全てにおいて非の打ち所の無い、極めて優秀な設計である。
言うまでもなくその性能は、当時の地球連邦軍宇宙用主力機ジャベリンを大きく上回る(それでも、重力下におけるゾロとジェムズガンとは異なり、パイロットの技量次第では覆せるレベルではある)。
これに加えて、ゾロアット二機を長距離宙間輸送でき、コクピット部の居住性も高い哨戒艇「シノーペ」と併せて運用する事で、『宇宙戦国時代』における“自国領”(スペースコロニーおよび周辺宙域)を高効率で巡回警備可能な仕様となっている。
サイド2の数基のスペースコロニーからはじまったザンスカール帝国が独立(宇宙世紀0149年)という大きなアクションに踏み切り、宇宙世紀0153年に至るまで領土を拡大・維持し続けられたのは、本機の開発に成功した事が主要因の一つであるとまでされる。
物語開始時点(宇宙世紀0153年4月5日)には、地球上での運用に最適化した発展機「ゾロ」が開発されており、加えて次期主力機のプロトタイプのテスト運用が始まった為に、生産ラインも徐々に他機種へと切り替えられていったが、基本性能そのものが優秀であった為にザンスカール戦争終盤のエンジェル・ハイロゥ攻防戦まで生産、最前線への配備が続けられた(そもそも『Vガンダム』自体がわずか79日間の物語であるため、ラインの切り替わりが完了するほどの時間経過が無い)。コクピットブロックおよびセンサー系、ビームシールドなどのパーツが多数の後継機に共用された事からも、初期量産機でありながら完成度の高さが覗える。
ゾロアット(鹵獲機)
第16話で鹵獲され、リガ・ミリティアでガンイージに似た白と緑に塗り替えられた機体。第18話から主にマーベット・フィンガーハットの乗機として用いられ、味方機と誤認したザンスカール兵を騙し討ち戦法で次々撃破していった。しかし第26話のサイド2のザンスカール帝国本部潜入時にマーベット共々捕獲されたため、機体も回収されてしまった。
公式では「ホワイトアット」なる愛称が付けられていたが、劇中で呼ばれることはなかった。ファンからはゴロの良さから「白アット」とも呼ばれている。
コクピット
コクピットは標準的な全天周囲モニター・リニアシートだが、操縦系統は連邦軍のMSやガンイージに採用されているスティックタイプではなく、レバーと円筒型のスロットルが一体となった形状のコントロールシリンダーを採用している。このシリンダー型のレバーは、パイロットが強く握り込むためのグリップを有しつつ、指で操作するためのスイッチ類が円周に沿って配置されているため、宇宙世紀0090年代に一時的に採用されていたアームレイカーから、「手が滑り落ち易い」という欠点を改善した、アップデートバージョンと言える。
リニアシートには、宇宙世紀0150年代には一般装備となっている、腰回りを覆い衝撃感知時にエアバッグのように膨らむことでその衝撃を緩和する「エアベルト」が採用されており、パイロットの保護にも充分な配慮が為されている。なお、当然ながらイジェクションポッドとしての機能も完備する。
上述の通り、このコクピットブロックはベスパ製のほとんどの(非変形型)MSに引き継がれており、異なるのは地上用・ヘリコ形態への変形機能を有するゾロ、トムリアット系列機や、スーパーサイコ研究所開発機程度であった。
複合複眼式マルチセンサー
ウッソに「ネコの眼かキツネ眼なんか!」と叫ばせた、ベスパ機の特徴的なセンサーユニット。
本センサーはモノアイに相当する光学部品と、可視光線の帯域に含まれない波長を感知する素子で構成されている。各センサーにはそれぞれ別の、あるいは同等の性能を持つ装置が百数十個ほど集合しており、そのデータを互いに補完しながら誤差や不確定要素を取り除いている。
また、通常時にマルチセンサーがスリット状のカバーに覆われているのは、戦闘時以外では全てのセンサーを稼働させる必要が無いことと、センサーを保護する理由からである。
そして戦闘時にはこのカバーが開き、全ての端末を稼働させて戦闘区域全体をサーチする。
サーチ時に細長い虹彩が動くように見えるのは、アクティブセンサーを順次稼働させているためで、これにより地形、敵機の配置、民間人の有無、地熱の分布、大気成分の解析など、多岐に渡る情報を瞬時に収集して、周辺状況の適格な把握を行っている。
武装
腹部バルカン砲
けん制用にばら撒く固定武装。内蔵位置などにサナリィのF9グレードとの近似が見られる。
射角に自由度が無いため、敵機を追う際には身体ごと旋回しなければならないのが難点だが、近接戦での鍔迫り合いにおいては有効な追加攻撃手段となる。
ビームライフル
大きな特徴は無いが、連邦軍が制式機として配備しているジェムズガンのそれと比べて、遥かに高出力である。
ビームサーベル
両肩部(襟部分)に一基ずつ格納された、近接武装。劇中のV1、V2との剣戟シーンから、アイドリング・リミッターを標準搭載していることが見て取れる。更にこの時代の第二期MS用サーベルは、メガ粒子の収束率が極めて高く、ビーム刃があたかも“糸”のように細く形成されるなど、隠蔽性、エネルギー効率共に申し分が無い。
ビームシールド
左肩アーマーのバインダー先端に内蔵された防御兵装。バインダーは付け根部は、シリンダーによって肩アーマーと接続されており、腕部(肩部)とは別個にある程度稼動させることができる。
ビームシールドそのものは、宇宙世紀0150年代には民間のスペースシャトルにさえ採用されている常識的な装備だが、本機のジェネレーターは5,000kWを越えているため、過去のハイエンド機同等以上の高性能となっている。
また、シールドのビームは前方に向けてやや鋭く形成され、上述の稼動軸と併せて、そのままビームソードとして転用する戦法を視野に入れた設計となっている。本パーツは後にコンティオ(量産タイプ)に転用される事となった。
左右の肩バインダー(赤色部分)は、フレーム接続の肩アーマー(黄色部分)とは独立した、事実上の二重装甲となっており、曲面形状、装甲厚と併せてダメージコントロールに優れる。事実、右肩バインダーが小破した状態でも、かまわず戦闘を継続する機体が見られた。
ビームストリングス
「ビーム」と名付けられているが、実体ワイヤーの補助武装。
右肩バインダー先端部に5基の電磁ワイヤー射出装置を内蔵しており、接触した敵機のパイロットに電気ショックを浴びせ、昏倒させる。この通電時にあたかもビーム兵器のように発光するため、本名称が採用されている。
宙間戦闘において“置く”ように仕掛けることで敵機の意表を突き、あるいは機動を制限する事のできる優秀な武装であり、複数機で連携して広範囲の『網』を張れば、敵機体の捕縛などによって更なる戦果をも望める。
戦争終盤に至ると、敵勢力の対電磁装備が充実したため、感電効果は期待しにくくなったが、やはり「敵の機動方向を制限できる」と言う点で、戦術的に極めて高い価値を維持していた。
こちらのバインダーは左肩と異なり、二軸のクランクアームとボールジョイントで接続されているため稼動範囲が非常に広く、加えてクランク部のトルクも高いため、バインダーを打突武器として応用する戦法も採られた。
なお当然ながら、1Gのかかる大気圏内では、ストリングスは(実質的に)使用できない。
ビームキャノン
オプション装備として、両肩に担ぐようにして二基を、背部ハードポイントに装着する。
しかし、ショートバレルが原因なのかメガ粒子の加速率が悪く、期待されたほどの破壊力が得られなかった。このため、機体重量の軽減を重視するパイロットは未装備での出撃を選択した。
関連動画
ゲームにて
劇中ではヤラレ役程度の扱いであった本機であるが、Gジェネレーションシリーズでは「Vガンダム」シナリオ最大の脅威として知られている。
これは標準装備であるビームストリングスが、防御無視固定ダメージ値の「電撃」属性でかつ、格闘武器扱いで非常に命中率が高いうえに通常ユニットとして多数登場するためどんなに装甲が厚く回避能力が高いユニットでも油断できず、『数の劣勢を性能で覆す』ことを是とするプレイヤー部隊と非常に相性が悪いためである。
『回避不可能なMAP兵器を味方を巻き込んで撃ちまくるズサ』と並ぶ『Gジェネ名物』として伝説を作っている。
マーベットを搭乗させることでホワイトアットへの切り替えも可能だが、ビームサーベルのモーションが通常型と違いビームシールドをサーベル代わりに使用するモーションに変更されている。
ちなみにGジェネNEO、SEEDでは、電撃属性は被弾したら一定の確率で行動不能状態に陥るという仕様に変更されている為、Vシナリオ及びVステージで敵として複数出現するゾロアットは、危険な存在といえる。
立体物
1/144スケールのシリーズ第五弾としてラインナップ。各種武装の他ディスプレイ用スタンド、背景、一部クリアパーツを採用している。 また当時の新技術「Vフレーム」と「ランナーロック方式」が採用されたキットで、現在のHGシリーズと比べてしまうとかなりの旧式であるが最新キットに匹敵する造形美を持つ。 同シリーズの武器セットに付属している「ビームキャノン」を背部に装備することができる。
MS in POCKETシリーズにラインナップ。劇中で使用した武装が同梱されていて、サーベル、シールドはクリアパーツで成形されている。 また、フレームにはダイキャストが採用されているため重量感がある。
ガシャポンガン消しゴムシリーズにラインナップ。劇中で使用した武器が同梱する。
小話
2クール目から登場
概要で述べたように、全てのザンスカール機の基礎となった機体だが、『Vガンダム』は宇宙世紀作品としては珍しく、地球から物語が始まっている。それゆえか、OPには初回から登場していたにもかかわらず、劇中で初登場したのは15話と少々遅めの登場となっている。
なおウッソは劇中、舞台を地球→宇宙(15話)→地球(33話)→宇宙(41話)→地球(49話)と、忙しなく二往復している(カミーユとタイ記録)。
また、舞台が宇宙の回では必ずと言ってもいいほど出てくる高い登場率を誇るが、実はクロノクル・アシャーがゾロアットに乗ったのは意外にも第18話の一回きりだったりする。
宇宙人
デザイナーは大河原邦男氏。そしてザンスカール帝国機のデザインコンセプトは『宇宙人』である。
このため、氏の『宇宙人』観がよくわかるフェイスデザインとなっている。